充実したナパツアーもいよいよ最終日です。この日の午前中はスタッグス・リープにあるシルヴァラード・ヴィンヤードでのテイスティングとセミナーです。

まず、最初に30分ほど「ディスカヴァー・プルミエ・ナパヴァレー・テイスティング」として、毎年2月に開催される業界向けのオークション「プルミエ・ナパヴァレー」についての説明と試飲がありました。説明をしてくれるのはなんと贅沢なことにアンディ・エリクソン。ナパヴァレー・ヴィントナーズの会長様です。


試飲したワインは2つ。どちらもプルミエ・ナパヴァレーに出したワインで5ケースしか作られていない超限定ワインです。

アンディ・エリクソンのFaviaからは2018年のリザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨンです。深い味わいで、旨味があります。産地のクームズヴィルは風化した火山性土壌が中心で、灰や粘土がミックスされており水はけがいいとのこと。ナパの中では比較的涼しく、それがワインにも現れているようです。
もう1本はシルヴァラードから。2021年のワインなので、ちょうど今年2月に出展したものです。これもクームズヴィルから。実はシルヴァラードはワイナリーのあるスタッグス・リープだけでなくクームズヴィルにも畑を持っています。このワインはカベルネ・ソーヴィニヨン70%にメルローを30%ブレンドしています。ボルドー右岸のワインをイメージして作ったとのこと。
このワインが実際に落札者に渡るのは、秋以降なので、これはいわゆるバレルサンプルです。若いワインだけあってかなりタニックですが、とにかく香りが素晴らしい。普通のシルヴァラードのワインと一風異なるものを試飲できました。
プルミエ・ナパヴァレーは、業界向けなので一般人は参加できませんが、だからこその特別なワインが素晴らしかったです。

セラーでの試飲の後は部屋に移動してセミナーです。今回のツアーで最後のセミナー形式でした。テーマは土壌とつなげて理解するカベルネ・ソーヴィニヨンということで、ナパの5つの地域のワイナリーからワインメーカーが参加しています。

まず、クームズヴィルからFaviaのアンディ・エリクソン、スタッグス・リープ・ディストリクトからはシルヴァラード・ヴィンヤーズのアリソン・ロドリゲス、オークヴィルのグロス(Groth)からはテッド・ヘンリー、セント・ヘレナのガリカ(Gallica)からはローズマリー・ケークブレッド、プリチャード・ヒルのブランド(BRAND)からマット・ジョンソン。そうそうたるメンバーです。モデレーターはマスターソムリエのデズモンド・エチャヴァリー。


5つのカベルネ・ソーヴィニヨンをテイスティングしながら、パネルディスカッション形式で話が進みます。
ワインは以下の5つ。
Favia Cabernet Sauvignon Coombsville 2018
Silverado SOLO Cabernet Sauvignon Stags Leap District 2018
Groth Reserve Cabernet Sauvignon Oakville 2018
Gallica Estate Cabernet Sauvignon St. Helena 2018
BRAND Napa Valley Cabernet Sauvignon 2019 (AVAではないがPritchard Hill)

最初の質問は「土壌の色とそれがワインのフレーバーにどのように出るか?」でした。

Faviaはクームズヴィルの3つの区画の畑からブレンドしています。土壌は鉄分が多い赤い土壌が中心ですが、圧縮された沖積土壌や白い火山灰、川が運んできた土壌もあります。クームズヴィルはカルデラであり溶岩に火山灰がミックスされていて涼しさと凝縮さがワインにあらわれています。

Silveradoのカベルネ・ソーヴィニヨン「SOLO」の畑はスタッグス・リープ・ディストリクトの北の方に位置しています。ヒルサイドと小さな谷があり、扇状地の部分はナパリヴァーの沖積物が中心となりますが花崗岩が風化した土壌もあります。ここから豊穣さとシルキーなテクスチャーが生まれ、標高の高さからパワーが生まれるとのこと。

Grothのオークヴィルは多様性がある土地ですが、Grothはヴァレーフロアと呼ばれる中央部に100エーカーの畑を持っています。沖積系の土壌が中心ですが、粘土質、砂質、チャートなどが見られます。ソーヴィニョン・ブランは粘土質のところに植えており、カベルネ・ソーヴィニヨンは粘土のないところに植えています。化石からのミネラル感が見られるとのこと。また、Grothのリザーブはヴァカ山系で鉄分が多い土壌で育てられ、フレッシュ・フルーツの風味があるとのことでした。

Gallicaはセント・ヘレナで沖積系で小石の多い土壌の畑です。扇状地に見られるコルティナと呼ばれる水はけの良い土壌です。セント・ヘレナは温かい地区であり台木が重要だとのことでした。Gallicaではセントジョージと10Rを使っているとのこと。

BRANDのあるプリチャードヒルはオークヴィルの東側の山地で火山性の土壌です。鉄分が多い赤い土壌で岩がゴロゴロしています。表土が薄く水はけがいい土地です。岩の割れ目に根が張り、ブドウの実は小さく凝縮したものになります。ワインはいきいきとした酸味やミネラル感が特徴です。

次の質問は各地区の温度に関するもの。日較差やそのワインに与える影響を聞いていました。

Faviaのアンディ・エリクソンによるとナパの北部のカリストガがFaviaのあるクームズヴィルでは夏の日中の気温が華氏4~5度(摂氏2~3度)違うとのこと。2022年の場合、オークヴィルの畑とは収穫が6週間も違ったとのことです。この涼しさは色やアロマティクスに影響しており、ハーブなどフルーツ以外の要素が大きくなるとのことです。

Silveradoのあるスタッグス・リープ・ディストリクトでは海からの冷却効果によって日較差が大きくなります。この4月だと最低気温が摂氏2度で昼間は20度くらい、夏だと10度から33度くらいまでと日較差がとても大きな地区です。特にこれは成熟期に重要で、夜にブドウが休憩できることが昼間の光合成にも影響し、長い生育期間になります。

Grothのあるオークヴィルはちょっと涼しさもありますが、昼間は暖かくなります。日較差によって酸味とフレッシュ感が保たれるとのことです。

Gallicaのあるセント・ヘレナでも朝は霧が入ってきますが10時ころまでには晴れてきます。午後からは風が強くなります。オークヴィルと比べると10~12日収穫が早いとのこと。

BRANDのあるプリチャードヒルは丘で標高が高いため、夜は温暖で昼は涼しくなります。いわゆるフォグラインより少し上なので霧の影響はありません。穏やかな気候が続きます。ブドウはよく成熟し、タンニンもあり色調は濃くなります。

次の質問はワインメイキングとワインのスタイルについてでした。

BRANDは果実が小さく凝縮感ある。ワイン造りではたくさんのことを施さない。ストラクチャーを出したいと考えている。新樽率は60~65%で樽のニュアンスは溶け込ませたいとのことでした。50エーカーの畑で台木とクローンの組み合わせを13種も試しているそうです。

Gallicaのローズマリー・ケークブレッドはスポッツウッドなどで計40年の経験を持っています。いかに素晴らしいブドウをワインにするかが問題でワインメイキングでは手を入れないようにしています。新樽は使っていません。

Grothのリザーヴのブロックはタンニンが高くフレーバーのいきいき感があります。Gallicaとは対称的にこちらは100%新樽使用。抽出も長めに取っています。

Silveradoは、土壌がすばらしく果汁のPHや酸のバランスがよく、ワインメーカーができることは少ないとのこと。

Faviaのアンディ・エリクソンには、クームズヴィルとオークヴィルなど様々な地区のワインを作る上で、ニュアンスの違いをどのようにしてきたか、という違う質問が投げかけられました。

アンディ・エリクソンの答えは、サイトの個性を出したいとのこと。それをどう表現するか何を語りたいかを考えます。例えばマヤカマスのあるマウント・ヴィーダーはほかとは全く違います。素朴なスタイルでタンニンを表現したいと考えて作っています。オークヴィルは洗練されたスタイルでやわらかさを出したい、アトラスピークは黒系アロマ、クームズヴィルは酸とタンニンのバランスとのことでした。