サンタ・バーバラのドメーヌ・ド・ラ・コートとサンディ、ピエドラ・サッシ、オレゴンのイヴニングランドでワインメーカーを務めるサシ・ムーアマンが5月に来日し、セミナーに参加しました。

今回の来日の目的はサシの母親の「モーマン行世」さんが、春の叙勲で旭日章を受けたこと。行世さんは米国の公立高校で40年近く日本語教育に携わっており、その功績が称えられました。サシはその付添として来日しました。短い滞在時間の中でのセミナーであり、彼のワインを輸入している2つのインポーター、中川ワインとWine to Styleの共同開催という珍しい形態になっています。



セミナーで試飲したワインは上の4本。左から
イヴニングランド ピノ・ノワール ラ・スルス 2019
サンディ シャルドネ ロマンス 2021
ドメーヌ・ド・ラ・コート ピノ・ノワール ラ・コート 2021
ピエドラ・サッシ シラー リムロック・ヴィンヤード 2020
いずれも各ワイナリーのトップと言っていいワインです。



4つのワイナリーのうちイヴニングランドとドメーヌ・ド・ラコートは自社畑のブドウからワインを作るドメーヌタイプのワイナリーで、サンディとピエドラ・サッシは買いブドウで作るネゴシアンタイプのワイナリーです。その中でも今回は自社で栽培も手掛けているワインを試飲します。それぞれのブランドを象徴するスタイルのワインとなっています。

サシ・ムーアマンによると、共通しているのは醸造で人の介入を少なくしている点。SO2の添加も非常に少ないレベルです。SO2を減らすと、ワインの表現がより強く出るようになります。香りも味わいも強くなるとのこと。SO2を添加することが悪いというわけではなく、ワインが若い段階では少ない方がよりわかりやすいという意味だそうです。基本的には醸造時にはSO2を加えず瓶詰めのときだけわずかに加えています。

栽培も手掛ける2つのワイナリーのうちイヴニングランドはビオディナミで、ドメーヌ・ド・ラ・コートはオーガニックで栽培しています。イヴニングランドがビオディナミなのは創設者であるコント・ラフォンがビオディナミに取り組んで認証まで受けたため、それを引き継いでいる形です。サシの考えではビオディナミかオーガニックかの違いはそれほど大きくなく、それよりもこれらの栽培方法で認められているボルドー液を撒くか撒かないかが大事だといいます。ボルドー液には硫酸銅が含まれています。それ自体が人体に害を及ぼすわけではないといいますが、土壌のためには良くないと考えています。

ちょっと脱線しましたが、イヴニングランドの土地は全部で85エーカーあり、ブドウ以外の果樹の植樹も増やしています。他の果樹を加えることでブドウの健康が維持でき、ワインも良くなります。イヴニングランドの畑は森や小川にも囲まれており、動物も多く、生物多様性が保たれています。

サンディとドメーヌ・ド・ラ・コートはどちらもサンタ・バーバラにあり、サンディは基本買いブドウ、ドメーヌ・ド・ラ・コートは自社畑のみという棲み分けがありますが、今回のロマンス・ヴィンヤードは実はドメーヌ・ド・ラ・コートの畑であり、自社畑という位置づけになります。2015年に植樹した畑で、ドメーヌ・ド・ラ・コートの畑の中でも一番海に近い西側の端にあり、シャルドネの一番寒い畑となっています。アルコール低く、凝縮感強いワインができるとのこと。エネルギーとフレッシュさが両立する畑です。

ピエドラサッシはサシ夫妻とワシントンDCでイタリアン・レストランのシェフをしているピーター・パスタン夫妻によるワイナリー。冷涼な地区の畑から、北ローヌのスタイルのシラーをメインで作っています。温暖化によってローヌではアルコール度数14%以下は非常に難しいと言いますが、ピエドラサッシではアルコール度数が低く、スパイシーで冷涼感のあるシラーを作っています。ここも基本は買いブドウですが、今回の「リム・ロック・ヴィンヤード」は栽培をピエドラ・サッシが任されているとのこと。実質的には自社畑です。


イヴニングランドのスルス2019は3分の1、全房発酵を使っています。発酵時にはパンチングダウンを1回、ポンプオーバーを2回くらいとごくごくわずかしか果帽の管理もやっていません。オレゴンの方がタンニンが多く、丁寧に作ることが必要になります。ブルゴーニュに例えるとボーヌのようなところで、土壌は粘土質が多く、果実味が前面に出てきます。赤い果実の風味がイヴニングランドの特徴だといいます。

クランベリーやレッド・チェリーの風味。酸はやや強く。ボディもタンニンも比較的高い、かなりしっかりとしたピノ・ノワールです。果実味からくるふくよかさや全房から来たと思われるちょっと青い風味もあり、リッチで複雑さもある素晴らしいピノ・ノワールでした。

サンディのシャルドネはエネルギーを感じるワイン。酸は高いがそれよりも果実の凝縮感が第一印象としては強いです。ミネラル感や蜜の香りなどを感じます。シャルドネは土壌に粘土が多いと重い味わいになるので、砂利質の土壌を選んでいます。

ラ・コートはドメーヌ・ド・ラ・コートでは新しい世代の畑。2007年に植樹しており密植のスタイルです。非常に冷涼で糖の上がるのが遅いところです。今ではブルゴーニュより涼しいといいます。

100%全房発酵。サンタ・リタ・ヒルズのシグニチャーとも言える、ちょっと塩味を感じるワインです。全房発酵らしい、ちょっと青臭さを感じるような味わい。イヴニングランドと比べてよりボディを強く感じます。

ピエドラサッシの今回のシラーの畑はアロヨ・グランデ・ヴァレーの非常に冷涼なところにあります。海から5kmほど。元々シャルドネが自根で植わっていました。そこにシラーを接ぎ木しています。アルコール度数は12.8%と非常に低いです。エレガンスはワインの最重要要素だと考えています。100%全房発酵です。

シラーとしては珍しいほど酸が高く、タンニンも強いワイン。黒鉛やクランベリー、カシスなど噛みしめるような味わい。非常にエレガントですが力強さもあります。

Q&Aでは全房発酵についての話が多くでました。最近はブルゴーニュでも全房発酵するところが増えているとのこと。従来使っていなかたワイナリーでも増えています。一般論としてはコート・ド・ニュイではステムを入れるところが多く、コート・ド・ボーヌでは少なくなります。砂利の土壌ではブドウの茎が細くなるため、全房にしやすいとのこと。
全房発酵は魔法のレシピではなく、いいところと悪いところがあります。悪いのは酸が低くなること。いいのはアルコール度数が低くなることだそうです。

最後にフリー試飲で、上記以外の様々なワインを試飲しました。
印象に残ったワインを名前だけ載せておきます。
2019 イヴニングランド スルス シャルドネ
2019 イヴニングランド スマム ピノ・ノワール
2020 サンディ シャルドネ セントラル・コースト
2021 サンディ ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ
2021 ドメーヌ・ド・ラ・コート ブルムーズ・フィールド ピノ・ノワール
2020 ピエドラ・サッシ シラー サンタ・バーバラ
どれも非常にレベル高く、またテロワールを感じさせるワインでした。
ドメーヌ・ド・ラ・コートは先日の記事でも書きましたが、生産量少なく、最近はブルゴーニュファンも探すワインになってきているので、市場から消える早さがどんどん高まっています。

カリフォルニアワインあとりえです。


柳屋です。


Wassy'sです。なんとブルームズ・フィールドもあります。