シックス・クローヴズ(Six Cloves)のブランドで、カリフォルニアでワインを作る平林園枝さん。4年ぶりに日本でのセミナーが開催されました。

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平林園枝さんの第2作を改めて試飲、やっぱりこれは美味しい



今回は、コロナ禍のころの話などをうかがい、最新ヴィンテージの2021年など4種のワインを試飲しました。
これまで、ニュージーランドのKusuda Wine。チリのMontsecano、カリフォルニアのLittoraiなどを含む様々なワイナリーで働いてきた園枝さん、今年はソノマのフリーマン(Freeman)で醸造を手伝いながら自分のワインも作ったそうです。フリーマンといえば、アキコさんがワインメーカーとして知られていますが、今年からはナパのシレノスなどで働いていた赤星さんもチームに加わりました(ちなみに赤星さんは「ブドウ王」と呼ばれた長沢鼎の弟の末裔です)。

2020年はコロナ禍もありましたが、ナパやソノマでは山火事の影響が大きかった年でもあります。園枝さんも赤ワインは全く作れず、スティーブ・マサイアソンのリンダ・ヴィスタの畑のシャルドネだけが作れました。
一方、2021年は山火事はなかったものの、干ばつ続きで収穫量が少なかった畑も多く、2020年とは逆にリンダ・ヴィスタのブドウは手に入らなかったそうです。
その代わりに、2021年はメンドシーノのアルダー・スプリングスのシャルドネとピノ・ノワールが手に入りました。
Alder Springs
メンドシーノというとアンダーソン・ヴァレーを思い浮かべる人が多いと思いますが、アルダー・スプリングスはアンダーソン・ヴァレーよりもはるかに北に位置しています。私の知る限り、周囲数十kmの範囲では著名なブドウ畑はないと思います。サンフランシスコから車で3時間はかかるという、たどり着くだけでも大変そうなところ。ちなみに一般の見学は受け入れていないのでワイナリー関係者だけがその畑を訪れることができます。ブドウの販売先にはパッツ&ホールやリース(Rhys)、アルノー・ロバーツ、ベッドロックなどそうそうたる名前が並んでいます。園枝さんは、日系人ワインメーカーのバイロン・コスゲさん(かつてセインツベリーでワインメーカーをしていた人です)の紹介で訪れることができたそうです。2020年にグルナッシュやシラー、ムールヴェードル(GSM)を欲しいと思っていたそうですが、火事による煙の被害で入手できなかったとのこと。

アルダー・スプリングスの最初からの顧客で、この畑の名前を世に知らしめたのがパッツ&ホールですが、私は以前パッツ&ホールのメーリングリストに入っており、そこでこの畑を知ったのでした。パッツ&ホールのワインの中でも長熟タイプで異彩を放っており、私が同ワイナリーの中で一番好きなワインがこの畑のものでした。そんなこともあり、個人的にはアルダー・スプリングスと聞くと、それだけでわくわくしてしまいます。


試飲は2020年のシャルドネ、リンダ・ヴィスタからです。ナパのオークノールにあるスティーブ・マサイアソンの畑でオーガニックで栽培されています。園枝さんは、現在はオーガニック栽培の畑のブドウだけを使いたいとしています。醸造中に酸化還元電位というPHの指標となる値を計測するのですが、この畑のワインはその数値が非常に安定しているそうです。この値が安定していることは熟成のポテンシャルの目安になるとのことでした。
ミネラル感強く、花梨やかんきつの香り。白い花。エレガントです。新樽を29%使っているのですが、かなりライトトーストなものを使っており樽感はあまり感じません(時間がたって温度が上がってきたらちょっとずつヴァニラの風味がでてきました)。ちなみにステンレスタンクの発酵は還元的な味になるので、樽発酵の方がなじみがいいとのことでした。

次は2021年のシャルドネ、アルダー・スプリングスです。クローンはシャンパーニュ由来だというクローン95と、コート・ドールから来たらしいクローン76の二つを使っています。
香りが華やかです。オレンジやヴァニラ、クリームブリュレも感じます。リンダ・ヴィスタと比べてパワフルでエネルギーを感じるワイン。こちらは旧樽しか使っていないのですが、意外にもリンダ・ヴィスタよりも樽感を感じました。ここは標高が高く霧がかからないため、ブドウの皮が厚く、それで味わいも強くなるようです。

次は2021年のピノ・ノワール、アルダー・スプリングス。クローン459というクローンを使っています。栽培が難しく、色づきがあまりよくないというなかなか気難しいクローンのようです。園枝さんは「フランスぽい」とおっしゃっていました。全房を50%使っています。
赤果実ですが、ザクロなど熟度の高さを感じます。一方で酸も強い。全房らしい複雑さがあり、全体的にはエレガントですが、うちに秘めたパワーがあるワインです。天ぷらとかに合わせてみたい。

パッツ&ホールのアルダー・スプリングスは、若いときはちょっと気難しく、4~5年経つとそのエネルギーが出てくるような印象でしたが、園枝さんのアルダー・スプリングスは気難しくなく、園枝さんらしいエレガントさがある一方で、秘めたエネルギーという点ではアルダー・スプリングスらしさが出ているような気がしました。ともかく、個人的には「萌える」畑の一つなので、こういった形で世に出るのはとてもうれしいです。

最後は2019年のマグノリア・レッド・ブレンド。このワインは以前も試飲したことがあります。
ソノマのカーネロスで作るカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローという非常にユニークなワイン。赤果実と黒果実がありトマトのような風味。血液や杉など少しだけ熟成感もでてきているようです。以前飲んだときはもっと堅さがありましたが、4年たってこなれた味になっています。会席料理など幅広い和食に合わせたい味わいです。

今回のワイン、園枝さんらしいエレガントさがあるのはいつも通りですが、それとアルダー・スプリングスのパワーとのぶつかり合いが特に面白いと思いました。単独で飲んでももちろん美味しいですが、アルダー・スプリングスの他のワインと飲み比べたりしてみるとさらに興味がわきそうです。

Wassy'sです。