見かけによらぬ堅実派、ポール・ホブズはどれ飲んでも美味しい
ソノマに拠点を置くワイナリー「ポール・ホブズ(Paul Hobbs)」のポール・ホブズ氏が来日し、セミナーに参加しました。Forbes誌では「ワイン界のスティーブ・ジョブズ」、ワイン・スペクテーターでは「マスター・オブ・シャルドネ」、ワイン・アドヴォケイトでは「ワイン・パーソナリティ・オブザイヤー」2回取得など数々の異名や名誉を持ち、米国だけでなく、アルゼンチンやスペインなどでもワイン造りを手掛けるフライング・ワインメーカーでもあり…
ワイン業界の中でも雲の上の人感がありますが、実は本人はとても堅実な性格らしく、東京でも高級ホテルでなく庶民的なホテルに泊まっていると聞いて、いい人感の認識を新たにしました。
以前お会いした時と変わらず若々しく溌溂としており、今年70歳というのもびっくり。しかもこの秋の収穫が80回目のヴィンテージとのことでそのバイタリティにも驚かされます。ちなみにヴィンテージが年齢よりも多いのは南半球でもワインを造っていて1年に2回ヴィンテージがあるから。
ニューヨーク州バッファローの農場で生まれたポール。農場にはチェリーやピーチ、リンゴなどさまざまな果樹がありましたが、ブドウはなく食卓にはワインはおろか酒類が出ることもなかったと言います。曾祖母が医者で医者になるつもりだったといいますが、ノートルダム大学の牧師がワイン造りを勉強することを薦め、親に内緒でカリフォルニアに行ってワインを勉強し、母親に激怒されたとか。
ちなみに父親は歴史やアドベンチャーが好きで、6週間かけて世界旅行をするような人。普通農家が6週間家を空けるということはなく、それだけ旅行好きだったというのは、今も世界を飛び回るポールに受け継がれているようです。
ポールは11人兄弟の2番目で、家は決して裕福ではなく子供時代は納屋のようなところで寝起きし、カリフォルニアに来たときもポケットに500ドルが入っているだけだったそうです。
ノートルダム大学を卒業した後は、UCデーヴィスで栽培と醸造の修士を取りロバート・モンダヴィに職を得ます。オーパス・ワンの初代醸造チームにも加わり、1985年にはシミ(Simi)のワインメーカーになるなど順調に経歴を重ねていきます。
ソノマのセバストポールにポール・ホブズ・ワイナリーを設立したのは1991年。北欧デザインを採用し、シンプルで美しくクリーンなワイナリーにしています。
ワインメーカーとしての印象が強いポール・ホブズですが、実は自社畑も複数持っており、栽培にも力を入れています。ポール本人も「ワインメーカーと呼ばれるよりもヴィネロン(フランスで栽培とワイン造りを両方担当する人)と呼ばれたい」と言っています。また、ワイン造りは自然への介入を最小限にしています。
ワイナリーのあるあたりはゴールドリッジと呼ばれるロシアンリバー・ヴァレーを代表する土壌があります。砂と少しシルト、細かくなって舞い上がったものが落ちてたまった土壌です。セバストポールシリーズという派生した土壌もあります。やや粘土が多く(色が赤で鉄分多い)小石の層もあります。ブドウの樹齢が6年くらいになると下層土に達して灌漑が不要になります。土壌としては粘土質の方が樹の水分のために良いと思われがちですが、粘土自体が水をキープするので樹には水は入りにくく、むしろゴールドリッジの方が水を吸いやすいのだそうです。
ポール・ホブズではブドウはすべてナイトハーヴェストで収穫します。収穫にナイフでなくハサミを使うのもこだわりです。ナイフだとブドウにダメージを与えるからだそうです。機械収穫と比べると4~5倍もコストがかかります。ポール・ホブズには畑のクルーが40人ほどもいます。ただ、収穫期にはこれでも足りないので季節労働者も雇っています。
醸造はすべて野生酵母、MLFも自然に行います。
シャルドネの醸造ではピュアなジュースを取り出すことを重視しています。ジュースと果皮などとの接触を最小限に抑えるために除梗や破砕をせずに、全房のままプレスします。果汁は4時間タンクで落ち着かせてから小樽に移します。樽はあえて完全充填ではなく1割程度空きスペースを作って空気に触れさせます。その方が酵母が活発に動くからだそうです。こうして作ったワインは「開けて3日たっても劣化しない」といいます。
興味深いのは樽の木材の「目の詰まり方」を重視しているということ。樽一つひとつを目視で確認して目の詰まり方を端に記しています。下の写真で「T」と書かれているところが目の詰まった(Tight)なところで「M」が中間的なところとなっています。それから、以前は熱湯で樽を消毒していたのを今は水洗いだけだそうです。理由は忘れてしまいましたが、あまりクリーンにしすぎないということなのでしょうか。
ワインの試飲に移ります。
シャルドネ ロスステーション・エステート 2021
ロシアンリバー・ヴァレーの自社畑でシャルドネの実をおs立てています。ハドソン由来のウェンテ・クローンやカレラ・クローン、マウント・エデン・クローンが植わっています。
高級感あるシャルドネでピュアな果実味が印象的。酸高く、柑橘や青リンゴなどの風味が豊かに広がります。
次はシャルドネ キュベ・ルイーザ ゴールドロック・エステート 2021
ルイーザは末娘の名前だとのこと。ウエスト・ソノマ・コーストの自社畑です。畑を購入したときに植わっていたクローン76(フランス由来のクローンですが、取り立てて大きな特徴はないそうです。植え替え時にはロスステーションと同様のヘリテージ・クローン(カリフォルニアで独自に発展したクローン)を使う予定だとか、
ワインはロスステーションよりミネラル感があり、シルキーなテクスチャが特徴的です。素晴らしく美味しい。リンゴ、柑橘、イチジクなど。
ピノ・ノワール ゴールドロックエステート2021
14%全房発酵を使っています。赤果実から黒果実系の味わい。酸豊かでイチゴのシロップ煮のような柔らかさも。シルキーでグリップ感を感じるテクスチャ。
ピノ・ノワール、ジョージメニニ・エステート 2021
15%全房発酵。果実感強い一方で、果実以外の腐葉土や紅茶などのニュアンスも強く感じる。ややワイルドな印象。
カベルネ・ソーヴィニヨン ネイサン・クームズ・エステート 2020
クームズヴィル初の「100点カベルネ」となった2021年の1年前のヴィンテージです。
カベルネ産地としてはやや冷涼なクームズヴィル。冷涼感を感じつつも、果実の風味としてはダークな黒果実。シルキーなテクスチャ、腐葉土。今飲んでも十分おいしいですが20年以上熟成させて飲んでみたいワイン。
カベルネ・ソーヴィニヨン ベクストファー・ト・カロン 2019
泣く子も黙るベクストファー・ト・カロンのカベルネ・ソーヴィニヨンです。ベクストファー・ト・カロンの中でも、ダークなフルーツの風味が強いクローン4だけのブロックのブドウを使っています。
きめ細かなタンニンに、コーヒーやカカオの風味。やや赤果実を含んだ青果実の風味。
ワイン業界の中でも雲の上の人感がありますが、実は本人はとても堅実な性格らしく、東京でも高級ホテルでなく庶民的なホテルに泊まっていると聞いて、いい人感の認識を新たにしました。
以前お会いした時と変わらず若々しく溌溂としており、今年70歳というのもびっくり。しかもこの秋の収穫が80回目のヴィンテージとのことでそのバイタリティにも驚かされます。ちなみにヴィンテージが年齢よりも多いのは南半球でもワインを造っていて1年に2回ヴィンテージがあるから。
ニューヨーク州バッファローの農場で生まれたポール。農場にはチェリーやピーチ、リンゴなどさまざまな果樹がありましたが、ブドウはなく食卓にはワインはおろか酒類が出ることもなかったと言います。曾祖母が医者で医者になるつもりだったといいますが、ノートルダム大学の牧師がワイン造りを勉強することを薦め、親に内緒でカリフォルニアに行ってワインを勉強し、母親に激怒されたとか。
ちなみに父親は歴史やアドベンチャーが好きで、6週間かけて世界旅行をするような人。普通農家が6週間家を空けるということはなく、それだけ旅行好きだったというのは、今も世界を飛び回るポールに受け継がれているようです。
ポールは11人兄弟の2番目で、家は決して裕福ではなく子供時代は納屋のようなところで寝起きし、カリフォルニアに来たときもポケットに500ドルが入っているだけだったそうです。
ノートルダム大学を卒業した後は、UCデーヴィスで栽培と醸造の修士を取りロバート・モンダヴィに職を得ます。オーパス・ワンの初代醸造チームにも加わり、1985年にはシミ(Simi)のワインメーカーになるなど順調に経歴を重ねていきます。
ソノマのセバストポールにポール・ホブズ・ワイナリーを設立したのは1991年。北欧デザインを採用し、シンプルで美しくクリーンなワイナリーにしています。
ワインメーカーとしての印象が強いポール・ホブズですが、実は自社畑も複数持っており、栽培にも力を入れています。ポール本人も「ワインメーカーと呼ばれるよりもヴィネロン(フランスで栽培とワイン造りを両方担当する人)と呼ばれたい」と言っています。また、ワイン造りは自然への介入を最小限にしています。
ワイナリーのあるあたりはゴールドリッジと呼ばれるロシアンリバー・ヴァレーを代表する土壌があります。砂と少しシルト、細かくなって舞い上がったものが落ちてたまった土壌です。セバストポールシリーズという派生した土壌もあります。やや粘土が多く(色が赤で鉄分多い)小石の層もあります。ブドウの樹齢が6年くらいになると下層土に達して灌漑が不要になります。土壌としては粘土質の方が樹の水分のために良いと思われがちですが、粘土自体が水をキープするので樹には水は入りにくく、むしろゴールドリッジの方が水を吸いやすいのだそうです。
ポール・ホブズではブドウはすべてナイトハーヴェストで収穫します。収穫にナイフでなくハサミを使うのもこだわりです。ナイフだとブドウにダメージを与えるからだそうです。機械収穫と比べると4~5倍もコストがかかります。ポール・ホブズには畑のクルーが40人ほどもいます。ただ、収穫期にはこれでも足りないので季節労働者も雇っています。
醸造はすべて野生酵母、MLFも自然に行います。
シャルドネの醸造ではピュアなジュースを取り出すことを重視しています。ジュースと果皮などとの接触を最小限に抑えるために除梗や破砕をせずに、全房のままプレスします。果汁は4時間タンクで落ち着かせてから小樽に移します。樽はあえて完全充填ではなく1割程度空きスペースを作って空気に触れさせます。その方が酵母が活発に動くからだそうです。こうして作ったワインは「開けて3日たっても劣化しない」といいます。
興味深いのは樽の木材の「目の詰まり方」を重視しているということ。樽一つひとつを目視で確認して目の詰まり方を端に記しています。下の写真で「T」と書かれているところが目の詰まった(Tight)なところで「M」が中間的なところとなっています。それから、以前は熱湯で樽を消毒していたのを今は水洗いだけだそうです。理由は忘れてしまいましたが、あまりクリーンにしすぎないということなのでしょうか。
ワインの試飲に移ります。
シャルドネ ロスステーション・エステート 2021
ロシアンリバー・ヴァレーの自社畑でシャルドネの実をおs立てています。ハドソン由来のウェンテ・クローンやカレラ・クローン、マウント・エデン・クローンが植わっています。
高級感あるシャルドネでピュアな果実味が印象的。酸高く、柑橘や青リンゴなどの風味が豊かに広がります。
次はシャルドネ キュベ・ルイーザ ゴールドロック・エステート 2021
ルイーザは末娘の名前だとのこと。ウエスト・ソノマ・コーストの自社畑です。畑を購入したときに植わっていたクローン76(フランス由来のクローンですが、取り立てて大きな特徴はないそうです。植え替え時にはロスステーションと同様のヘリテージ・クローン(カリフォルニアで独自に発展したクローン)を使う予定だとか、
ワインはロスステーションよりミネラル感があり、シルキーなテクスチャが特徴的です。素晴らしく美味しい。リンゴ、柑橘、イチジクなど。
ピノ・ノワール ゴールドロックエステート2021
14%全房発酵を使っています。赤果実から黒果実系の味わい。酸豊かでイチゴのシロップ煮のような柔らかさも。シルキーでグリップ感を感じるテクスチャ。
ピノ・ノワール、ジョージメニニ・エステート 2021
15%全房発酵。果実感強い一方で、果実以外の腐葉土や紅茶などのニュアンスも強く感じる。ややワイルドな印象。
カベルネ・ソーヴィニヨン ネイサン・クームズ・エステート 2020
クームズヴィル初の「100点カベルネ」となった2021年の1年前のヴィンテージです。
カベルネ産地としてはやや冷涼なクームズヴィル。冷涼感を感じつつも、果実の風味としてはダークな黒果実。シルキーなテクスチャ、腐葉土。今飲んでも十分おいしいですが20年以上熟成させて飲んでみたいワイン。
カベルネ・ソーヴィニヨン ベクストファー・ト・カロン 2019
泣く子も黙るベクストファー・ト・カロンのカベルネ・ソーヴィニヨンです。ベクストファー・ト・カロンの中でも、ダークなフルーツの風味が強いクローン4だけのブロックのブドウを使っています。
きめ細かなタンニンに、コーヒーやカカオの風味。やや赤果実を含んだ青果実の風味。