シュラムスバーグ、酸へのこだわりと超貴重な長期熟成もので見た真の実力
ナパというかカリフォルニアのの代表的なスパークリングワインの生産者であるシュラムスバーグ(Schramsberg)から現オーナーのヒュー・デイヴィーズ(Hugh Davies)氏が来日し、極めて貴重な蔵出しの熟成ものを含むワインを試飲しました。
この日のラインアップは
2021 Blanc de Blancs
2018 Blanc de Blancs
2015 J. Schram Blanc
2004 J. Schram Late Degorge
2020 Blanc de Noirs
2018 Blanc de Noirs
2014 J. Schram Noirs
2007 Reserve Late Degorge
2004 J. Schram Late Degorgeと2007 Reserve Late Degorgeは、レギュラー品ではなく、デゴルジュしたばかりの極めて貴重な蔵出しのものとなっています。
シュラムスバーグの設立は1862年。創設者はドイツ移民のシュラム夫妻。ナパのダイヤモンド・マウンテンの先駆けとなるワイナリーでした。その後禁酒法でワイナリーはクローズし、打ち捨てられた状態だったのを1965年にデイヴィーズ夫妻が購入して、現在のシュラムスバーグが誕生しました。そのときに米国初の瓶内二次発酵方式のスパークリングワインを造ることにしたのですが、その理由をヒュー・デイヴィーズ氏に聞いたところ「元々スパークリングワインが好きだったのと、新しいものにトライしたいという気持ちが強かったのだろう」とのことでした。今年が60回目のヴィンテージになります。
ただ、ダイヤモンド・マウンテンはナパの北部にあり、シャルドネやピノ・ノワールを育てるには気温が高いところです。その時代はまだ品種ごとの適地といった知識もあまりなかったわけですが、だんだん冷涼な海に近いところがいいということがわかってきて、今はナパのカーネロスに加えマリン郡、ソノマ郡、メンドシーノ郡の畑からもブドウを調達しています。マリン郡などはワインの産地としては相当冷涼で、それだけ酸を大事にしているそうです。
温暖化による影響は、という質問がありましたが、今のところカリフォルニアでは寒流の温度には大きな変化がなく、気温もそれほど大きく変わっていないとのことでした。
ブドウは大体19Brixで収穫しますが、16~17Brix程度のかなり酸っぱいものも一部アクセントとして使っているとか。とにかく酸にこだわるのがシュラムスバーグの流儀です。
ワインのテイスティングに移ります。
Blanc de Blancs 2021
ブラン・ド・ブランはシュラムスバーグの生産の40%を占める主要なワイン。2021年は66%ソノマ、31%ナパ、2%メンドシーノ、1%マリン。樽発酵は18%、総酸量は9.0g/L、残糖は9.0g/L。樽発酵を入れるのはテクスチャーをリッチにして、ゆるやかに酸化させるためだとのこと。ニュートラルな樽を使っているので樽香はほとんどつきません。マロラクティック発酵は10%くらいしています。
フレッシュな酸があり柑橘にハーブ。焼きリンゴのようなちょっと甘い香り。イースト香もわずかにあります。
個人的な印象としてはシャンパーニュのブラン・ド・ブランと比べても酸のきりっとした感じが強いように思います。
次に2018年のBlanc de Blancs。総酸量は8.6g/Lとわずかに少なく、残糖も8.0g/Lと少し少なくなっています。
熟成によるアーモンドの風味があり、2021年よりも少し柔らかく感じられます。酸は高いですが、テクスチャーはまろやか。
3つめはJ. Schram Blancs 2015。8年間熟成させて今年2月から3月にデゴルジュしています。ブランですが、16%ピノ・ノワールが入っています。畑はナパのウィルキンソン、シュワルツ、ラムゼイ、マリンのスティーブンス、ソノマのぴ江戸ら・リブレ。総酸量は9.7g/Lとブラン・ド・ブランよりも多くなっています。残糖は9.0g/L。樽発酵34%。WEで98点を得ています。
アーモンドの風味とイースト香が顕著にあります。柑橘はレモンというよりもオレンジの印象。レイニアチェリー。ブラン・ド・ブランよりもリッチでクリーミー。テクスチャーが素晴らしいです。
ブラン・ド・ブラン系の最後はJ. Schram Late Disgorged 2004。2004年のワインですが、デゴルジュしたのは2022年9月。18年熟成させています。生産量はわずか120ケース。
ナッツにキャラメル、焼きリンゴ、焼き栗とトースト系の香りを強く感じます。とてもリッチでJ. Schram Blanc以上にテクスチャーもリッチです。ここまでのスパークリングワインを味わう機会はほとんどありません。
ブラン・ド・ノワール系に移ります。
まずは現行の2020 Blanc de Noirs。65%ソノマ、17%メンドシーノ、14%マリン、4%ナパ・ヴァレーという構成。ブラン・ド・ノワールですが、シャルドネが10%使われています。樽発酵18%。総酸量7.8g/L。残糖は8.0g/L。
白い花、オレンジ、アプリコット、チェリー、アーモンド、酸高くリッチでエネルギーを感じるワインです。
次は2018 Blanc de Noirs。シャルドネの比率が14%と少し高くなっています。
リッチで複雑な味わい。ストーンフルーツや香木といった、他のワインではあまり感じなかったフレーバーを感じます。ヒュー・デイヴィーズ氏によるとシーフード(ウニにも)に合うとのこと。
次はJ. Schram Noirs 2014。今年デゴルジュマンしたばかりのワインです。シャルドネの比率は19%。
エレガントでシックなワイン。ナッツやアプリコット、少し樽の風味もあります。
最後はReserve Late Disgorged 2007。今年8月にデゴルジュマンしたばかりのワイン。生産量234ケースという貴重なワイン。
ドライフルーツのようなリッチな感じにナッツ。エネルギーの詰まったワイン。コクがありさわやかな香りも感じます。素晴らしい。2014のJ. Schram Noirsと比べてもリッチで熟成感もあり、とても美味しいワインでした。
と、これで最後のはずだったのですが、おまけにもう1本登場しました。
Cremant Demi Sec
フローラ(Flora)というセミヨンとゲヴュルツトラミネールの交配で、UCデーヴィスで1940年代作られた品種を中心に使っています。シュラムスバーグでは1972年からナパのヨントヴィルで栽培しています。Demi Secとあるようにオフドライの巣アイルで残糖は35~40g/Lもあるとのこと。
ゴールドに輝いており、カスタードの香りに紅茶の風味、ストーンフルーツ。リッチでテクスチャー豊か。これはまた全然違っていて魅力的なワインです。酸の高さのためか残糖ほど甘さを感じないですが、リッチで豊かなフレーバーがあるので、食後酒的に飲んでもよさそう。
ちなみに2025年春には2000年のLate Disgorgedを出荷する予定だそう。200ケースでシャルドネとピノ・ノワール両方入ったものです。25年熟成のものを出すのは初めてとのこと。こういった長期熟成ものを出すためにワインを保存していますが、そろそろ2000年のものは最後だそうです。
一通り試飲した後は、アンダーズ東京の食事と楽しみました。魚介類は言うに及ばず、豚ロースのグリルといった料理にもピノ・ノワール系のものがしっかり合って、美味しかったです。
この日のラインアップは
2021 Blanc de Blancs
2018 Blanc de Blancs
2015 J. Schram Blanc
2004 J. Schram Late Degorge
2020 Blanc de Noirs
2018 Blanc de Noirs
2014 J. Schram Noirs
2007 Reserve Late Degorge
2004 J. Schram Late Degorgeと2007 Reserve Late Degorgeは、レギュラー品ではなく、デゴルジュしたばかりの極めて貴重な蔵出しのものとなっています。
シュラムスバーグの設立は1862年。創設者はドイツ移民のシュラム夫妻。ナパのダイヤモンド・マウンテンの先駆けとなるワイナリーでした。その後禁酒法でワイナリーはクローズし、打ち捨てられた状態だったのを1965年にデイヴィーズ夫妻が購入して、現在のシュラムスバーグが誕生しました。そのときに米国初の瓶内二次発酵方式のスパークリングワインを造ることにしたのですが、その理由をヒュー・デイヴィーズ氏に聞いたところ「元々スパークリングワインが好きだったのと、新しいものにトライしたいという気持ちが強かったのだろう」とのことでした。今年が60回目のヴィンテージになります。
ただ、ダイヤモンド・マウンテンはナパの北部にあり、シャルドネやピノ・ノワールを育てるには気温が高いところです。その時代はまだ品種ごとの適地といった知識もあまりなかったわけですが、だんだん冷涼な海に近いところがいいということがわかってきて、今はナパのカーネロスに加えマリン郡、ソノマ郡、メンドシーノ郡の畑からもブドウを調達しています。マリン郡などはワインの産地としては相当冷涼で、それだけ酸を大事にしているそうです。
温暖化による影響は、という質問がありましたが、今のところカリフォルニアでは寒流の温度には大きな変化がなく、気温もそれほど大きく変わっていないとのことでした。
ブドウは大体19Brixで収穫しますが、16~17Brix程度のかなり酸っぱいものも一部アクセントとして使っているとか。とにかく酸にこだわるのがシュラムスバーグの流儀です。
ワインのテイスティングに移ります。
Blanc de Blancs 2021
ブラン・ド・ブランはシュラムスバーグの生産の40%を占める主要なワイン。2021年は66%ソノマ、31%ナパ、2%メンドシーノ、1%マリン。樽発酵は18%、総酸量は9.0g/L、残糖は9.0g/L。樽発酵を入れるのはテクスチャーをリッチにして、ゆるやかに酸化させるためだとのこと。ニュートラルな樽を使っているので樽香はほとんどつきません。マロラクティック発酵は10%くらいしています。
フレッシュな酸があり柑橘にハーブ。焼きリンゴのようなちょっと甘い香り。イースト香もわずかにあります。
個人的な印象としてはシャンパーニュのブラン・ド・ブランと比べても酸のきりっとした感じが強いように思います。
次に2018年のBlanc de Blancs。総酸量は8.6g/Lとわずかに少なく、残糖も8.0g/Lと少し少なくなっています。
熟成によるアーモンドの風味があり、2021年よりも少し柔らかく感じられます。酸は高いですが、テクスチャーはまろやか。
3つめはJ. Schram Blancs 2015。8年間熟成させて今年2月から3月にデゴルジュしています。ブランですが、16%ピノ・ノワールが入っています。畑はナパのウィルキンソン、シュワルツ、ラムゼイ、マリンのスティーブンス、ソノマのぴ江戸ら・リブレ。総酸量は9.7g/Lとブラン・ド・ブランよりも多くなっています。残糖は9.0g/L。樽発酵34%。WEで98点を得ています。
アーモンドの風味とイースト香が顕著にあります。柑橘はレモンというよりもオレンジの印象。レイニアチェリー。ブラン・ド・ブランよりもリッチでクリーミー。テクスチャーが素晴らしいです。
ブラン・ド・ブラン系の最後はJ. Schram Late Disgorged 2004。2004年のワインですが、デゴルジュしたのは2022年9月。18年熟成させています。生産量はわずか120ケース。
ナッツにキャラメル、焼きリンゴ、焼き栗とトースト系の香りを強く感じます。とてもリッチでJ. Schram Blanc以上にテクスチャーもリッチです。ここまでのスパークリングワインを味わう機会はほとんどありません。
ブラン・ド・ノワール系に移ります。
まずは現行の2020 Blanc de Noirs。65%ソノマ、17%メンドシーノ、14%マリン、4%ナパ・ヴァレーという構成。ブラン・ド・ノワールですが、シャルドネが10%使われています。樽発酵18%。総酸量7.8g/L。残糖は8.0g/L。
白い花、オレンジ、アプリコット、チェリー、アーモンド、酸高くリッチでエネルギーを感じるワインです。
次は2018 Blanc de Noirs。シャルドネの比率が14%と少し高くなっています。
リッチで複雑な味わい。ストーンフルーツや香木といった、他のワインではあまり感じなかったフレーバーを感じます。ヒュー・デイヴィーズ氏によるとシーフード(ウニにも)に合うとのこと。
次はJ. Schram Noirs 2014。今年デゴルジュマンしたばかりのワインです。シャルドネの比率は19%。
エレガントでシックなワイン。ナッツやアプリコット、少し樽の風味もあります。
最後はReserve Late Disgorged 2007。今年8月にデゴルジュマンしたばかりのワイン。生産量234ケースという貴重なワイン。
ドライフルーツのようなリッチな感じにナッツ。エネルギーの詰まったワイン。コクがありさわやかな香りも感じます。素晴らしい。2014のJ. Schram Noirsと比べてもリッチで熟成感もあり、とても美味しいワインでした。
と、これで最後のはずだったのですが、おまけにもう1本登場しました。
Cremant Demi Sec
フローラ(Flora)というセミヨンとゲヴュルツトラミネールの交配で、UCデーヴィスで1940年代作られた品種を中心に使っています。シュラムスバーグでは1972年からナパのヨントヴィルで栽培しています。Demi Secとあるようにオフドライの巣アイルで残糖は35~40g/Lもあるとのこと。
ゴールドに輝いており、カスタードの香りに紅茶の風味、ストーンフルーツ。リッチでテクスチャー豊か。これはまた全然違っていて魅力的なワインです。酸の高さのためか残糖ほど甘さを感じないですが、リッチで豊かなフレーバーがあるので、食後酒的に飲んでもよさそう。
ちなみに2025年春には2000年のLate Disgorgedを出荷する予定だそう。200ケースでシャルドネとピノ・ノワール両方入ったものです。25年熟成のものを出すのは初めてとのこと。こういった長期熟成ものを出すためにワインを保存していますが、そろそろ2000年のものは最後だそうです。
一通り試飲した後は、アンダーズ東京の食事と楽しみました。魚介類は言うに及ばず、豚ロースのグリルといった料理にもピノ・ノワール系のものがしっかり合って、美味しかったです。