シリコンバレー・バンクによるワイン業界の分析レポートが発表されました。2024年にはワイナリーのテイスティングルーム経由での販売などDtC(Direct-to-Consumer)のチャネルが回復することが期待されていましたが、実際には低迷を続けており、需要低迷への打開策はあまり見えていないのが現状です。

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上のグラフはプレミアムなワイナリーの成長率を2000年からプロっとしたものですが、コロナ禍での一時的な伸びはあったものの、成長率は低落傾向にあり、マイナスが常態化するのも遠い未来のことではなさそうです。

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アンケート調査から昨年がいい年だったのか悪かったのかを集計したものを、この3年間で比較したグラフです。グラフの右の方ほど、前年が良かったことを示しますが、2022年は「A good year」から右が70%で「A disappointing year」から左が18%。それに対して昨年は「A good year」から右が29%で「A disappointing year」から左が50%。ネガティブな評価が上回っています。

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実際のワイン消費量を見ても2020年はコロナ禍の巣ごもり需要で増えましたが、2021年以降はマイナス成長に陥っています。

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ワイン消費が伸び悩む大きな理由が50代以下でのワイン人気の低さです。20代、30代、40代、50代、60代、70代のワインとビール、スピリッツその他の好みを聞いた結果として若年層ほど、スピリッツや「その他」の比率が高くなっています。健康志向でアルコールそのものを飲まなかったり、金銭的余裕がなくて比較的高額なワインに触手が伸びなかったりと、理由はさまざまですが、ともかく若い人のワイン消費の低迷がワイン全体に響いているのは確かです。若年層のビールやスピリッツ市場との競争に勝つため、新たなマーケティング戦略を構築する必要があると見られています。アルコールの健康への影響についても、厳しいガイドラインが今年発動されると見られており、低アルコールやノンアルコールワインの開発で、新たな市場を開拓する必要も出てくるでしょう。

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アンケート結果では59%がオーバーサプライ状態であるとしています。現在の需要に応じた生産調整は必須の状況です。2024年のブドウの生産量は2008年以来の少なさでしたが、それでもオーバーサプライは続きます。2025年は市中在庫の調整が進むと見られていますが、2026年までずれこむという見方もあります。沿岸の高級ワインを算出するエリアではまだ状況は悪くありませんが、内陸の大量生産エリアでは売りに出ているブドウ畑にほとんど買い手がいないと言われています。どの産地においても、ブドウ価格は下がる可能性が高いです。

このレポートも以前は100ページを超える大著でしたが、2023年のシリコンバレー・バンク破綻を経て、昨年は60ページ、今年は40ページとだいぶ薄くなってしまいました。目を通すのはだいぶ楽になりましたが、読み応えというところでは少しさびしさを感じます。