国際宇宙ステーションでの滞在中にスペースシャトル「コロンビア」の事故によって,帰る手段が失われてしまったアメリカ人二人,ロシア人一人の宇宙飛行士たちの話を中心にしたノンフィクション。「本の雑誌」が2008年のノンフィクション1位に選んでいる。

いかにもアメリカの良質ノンフィクションといった作り。宇宙飛行士達の生い立ちから宇宙ステーションに行くまでのことや,米国とロシアの宇宙滞在計画の歴史などを丹念に追う。実は話の中心は米ロの対立と協調であり,宇宙ステーションからの帰還それ自体は核ではあるものの,全体に占める比重は意外に少ない。

宇宙飛行士3人がそれぞれ魅力的な人物であり,それがシビアな状況を扱う本書を明るいものにしている。



宇宙もののノンフィクションでは以前立花隆の「宇宙からの帰還」を読んだことがあるが,こちらは様々な宇宙飛行士へのインタビューから宇宙に出るということが人間の心理にどういう影響を与えるかを探るという,非常に日本的なノンフィクション。話の深さではこちらに軍配が上がりそうだ。