Vinographyが偽ワインについて記事を書いています。ここで取り上げているのはNew York Timesの記事と,その元ネタとなった論文(要約,PDF)。

元論文は,eBayで取引される高級ワインの空ボトル(ドイツでは月に40~50あるらしいです)と,その中身が入ったものとの関係を調べ,オークションの落札価格が市場価格に影響している,すなわちeBayで落札した空ボトルに別のワインを詰めたものが市場に流通している可能性が高いことを示しています。例えば,1982年のラフィットの空ボトルに100ユーロもの価格が付く理由はそれしかないだろう,ということです。

日本では偽ワインの話題はほとんど表に出てきませんが,英国では昨年2月,18000ポンド(300万円弱)の1962年ペトリュス・マグナムをレストランで頼んだ客が「偽ワインだ」と主張し,「Petrus police」が調べた(結果は「偽ワインではないと100%言い切ることはできない」という微妙なもの)など,全く知られていない話ではありません。米大統領ジェファーソンが持っていたという「ジェファーソン・ボトル」の真偽については今も係争中ですし,本も出ています(紹介済み)。この本は2010年に映画になる計画もあるようです。

では,日本は偽ワインに無縁なのでしょうか。NY Timesの記事では中国やロシアなどワインの伝統がない国が食い物にされている可能性があると指摘しています。確かに「1970年のオー・ブリオンをコカコーラと混ぜて飲む」ような香港のビジネスマンは,ボトルに何が入っていても気がつかない可能性が高いでしょう。日本はそれほどひどくない,といいたい気持ちもありますが,銀座や六本木などのクラブなどで開けられるボトルを考えると日本も狙われている国の一つであっても全く不思議はありません。