Twitterである人が、「日本の消費者はワインの輸入業者に騙されている。国内価格は海外の3倍もする」という旨の書き込みをしていました。具体的に、どういう例があるのか聞いてみたところ、「ナパで8ドルのワインが日本で2500~3000円」とのことでした。

日本にワインを運ぶのには送料がかかるわけですから、日本の値段が米国の小売価格より高くなってしまうというのは、誰でも考えることです。ただ高いからといって、輸入業者が騙しているということにはなりません。

では本当に、8ドルのワインが2500円にまでなって売られているのでしょうか?

その人に言わせると、その値段は「ふつう」とのことなので、米国での価格が8ドル程度のワインをまずは調べてみました(ちなみにNapa ValleyのAVAで8ドルのワインというのはまずありません。ほとんどが10ドルを超えているでしょう。なのでナパというのは最初からあまり条件には入れていません)。

例えばMondaviのWoodbridgeのカベルネは実売約8ドルですが、日本の値段は1000円程度です。意外と値段は変わりません。日本でも人気のCycles Gladiator(サイクルズ・グラディエーター)。これのカベルネも米国では8ドルくらい。日本では1400円くらいなので、2倍くらいになっています。ちょっと高い気はしますが、3倍には至りません。Smoking Loon(スモーキング・ルーン)のMerlotも米国での実売が8~9ドル。日本では1800円くらい。これは3倍には至りませんが、倍以上ですね。大分高い感じはします。

ちなみに日本での価格がCycles Gladiatorと同程度のMcManis Family(マクマニス・ファミリー)のワインは米国では11ドル程度。10ドル超えるとランクが一つ上がるので、日本でのコスト・パフォーマンスはこちらが大分上に感じます。

もう一つメジャーなワインでKendall-Jackson(ケンダル・ジャクソン)のVintner's Reserve Chardonnay。これは米国で13ドルくらい、日本では2000円強です。倍くらいですね。これはやや価格差大きいなあと以前から思っていた銘柄です。

もっと高いところで調べてみると、例えばRidgeのLytton Springsハーフ・ボトル。これは米国で18ドル程度が日本で4000円強と、今の為替レートで約3倍。これはやや極端な例ですが、正直Ridgeは全般に高いです。大塚食品(製薬?)の子会社なのだから、ここまでマージン乗せなくてもいいと思うのですが。

KistlerのVine Hillシャルドネは米国で75ドル程度。日本では安い所で1万1000円くらいですが、高いところだと1万6000円超。これは2倍を大分超えます。Kistlerは割高傾向が強い方です。

日本で割高なワインとして有名だったOpus One。2000年ころだと米国で120ドルくらいのが、日本では約3万円でした。3倍近くです。しかし今は米国で160ドル~200ドルくらいに対して日本では安いところだと1万円台です。実はこの10年で価格差はほとんどなくなりました。

ここでは価格差が大きいものばかりを紹介したので、やっぱり日本のワインは高いと思われるかもしれませんが、実際には、ここまで差がないものの方がずっとたくさんあります。米国での税金の高さなどを考えると実質的に日本の方が安いワインもあるのです。

私は「格安ワイン」のコーナーを書くときには必ず米国の値段も調べますから、かなりのワインについて日米の価格を見ています。ここで挙げたのはその中で、これは高くて紹介できないなあと思っているものです。それでも8ドルが2500円という例は見つからなかったのですが。

また、Opus Oneの例にあるように、日米の価格差は10年前と比べて随分縮まってきているのも感じます。それは輸入業者の努力の賜物といっていいでしょう。これからもそういった輸入業者や、頑張っているワインショップを応援していきたいと思います。