中川ワインの試飲会に参加してきました。全体からのお薦めワインは次回に紹介する予定ですが、今日はその中からまず、新入荷になるワンス&フューチャー(Once & Future)のワインを紹介します。

ジンファンデルの「3R」あるいは「4R」と言われた名門ワイナリーの1つがレイヴンズウッド(Ravenswood)。その創設者であるジョエル・ピーターソンが70歳を迎えて、新たに作ったブランドがワンス&フューチャーです。

ジョエル・ピーターソンの息子がベッドロックのモーガン・ピーターソンであることは、何度も書いているのでご存知の方が多いと思いますが、ワンス&フューチャーは息子の活躍に触発されたのでしょう。ベッドロックの畑からのワインも作るなど、まさに親子競演の状態です。

ちなみに、ベッドロックとワンス&フューチャーについては、以下の記事もご参考になさってください。
Bedrock Wine: 5歳からワインを作る天才の夢を載せるワイナリ
ついに来た!「天才」Morganが作るBedrockが国内正式輸入開始
古木の畑の謎に迫るベッドロックのモーガン・ピーターソン
ベッドロックの新作、圧巻の自社畑
レイヴンズウッドのジョエル・ピーターソン、原点に返って新ワイナリー設立
44年かけて、夢見ていたワイン作りができると語るジョエル・ピーターソン

今回試飲したのは4種類のワイン。ヴィンテージはどれも2015年です。

まず、いきなりベッドロック・ヴィンヤードのジンファンデルです。
Once & Future Bedrock Vineyard Zinfandel
一口飲むと、プラムの風味が口の中に広がります。いかにもジンファンデルという味わい。そしてブラックペッパーなどのスパイスが味を引き締めています。心地よい酸味。第一印象はトラディッショナルなジンファンデルなのですが、重かったりくどかったり甘すぎたりといった、昔のジンファンデルの悪いところは取らず、引き締めるべきところは引き締まった味わい。クラシックだけどモダン。ジンファンデルを知り尽くしたジョエル・ピーターソンの底力を感じます。

ちなみに、隣にはベッドロックの「ザ・ベッドロック ヘリテージ・レッド・ワイン」もありました。ワンス&フューチャーのベッドロックがジンファンデル85%なのに対し、こちらは同じ畑ですがジンファンデル55%。父親のワインよりもバランスや複雑さを出すことを中心にしているように感じました。ここのワイン作りは極めてクラシカルな手法を使っていますが、味わいの出し方はやはりモダン。同じ畑でありながら、父親との方向性の違いもまた面白いところです。

Once & Future Petite Sirah Palisades Vineyard
2番目はプティ・シラー。畑はカリストガにあります。パリサデス・ヴィンヤードは50年ほどの歴史を持つ畑。ナパでは珍しくなったプティ・シラーであり、Torやカーライルなどのワイナリーがここのブドウを使っています。

これはパワフル。爆発的な果実味としっかりした酸。最初のジンファンデルよりもスパイシーで、タンニンもすごい。久しぶりに口がすぼまるほどのタンニンを感じました。しかし、これもパワフルなのだけどやり過ぎになっていないところがとても上手。これはもしかしたら、今まで飲んだプティ・シラーの中でもベストかも。

Once & Future Tekdeschi Vineyard Zinfandel
3本目はまたジンファンデルに戻ります。畑はドライ・クリーク・ヴァレーのテルデスキ。ベッドロックではロレンツォズ・ヘリテージがここの畑。またオールド・ヴァイン・ジンファンデルにもブレンドされています。

これも美味しい。味の作り方は前述のジンファンデルに似ています。このとき既に20本以上試飲していたので、僕の試飲能力ではこれより細かい違いは味わいきれませんでした。

Once & Future Mataro
最後はマタロ(ムールヴェードル)。熟成肉のような独特の風味があります。これもスパイシーですが、果実味は他のワインに比べると少し弱く感じました。

久しぶりに、興奮するワインに出会いました。ただ、残念ながら日本への入荷はかなり少ないようです。まあ、元々も数百ケースしか作っていないのですが。おそらくショップへの割当も初回のみで限定本数になるのでしょう。買えるようになった際にはまた紹介したいと思います。

それから、写真を撮り損ねたのですが、ベッドロックでは、前述の「ザ・ベッドロック ヘリテージ」に加え、定番のオールド・ヴァイン・ジンファンデルや安価なブレンド品のシェバングの赤、白がありました。

気の置けないパーティワイン的なシェバングもいいのですが、ワンス&フューチャーの強烈なワインの後で試飲するオールド・ヴァイン・ジンファンデルもまたよかったです。複数の畑のブレンドなので、個性を出すというよりはバランスを重視したワインですが、定価4000円台でこれだけのレベルのワインを出せるのはやはりすごい。これも何回も書いてますが、ベッドロックって本当においしいの? って思っている人はまずはオールド・ヴァイン・ジンファンデルを飲んでください。

これが美味しいと思うなら、ベッドロックの他のワインの魅力も分かると思いますし、美味しいと思わないのであれば、多分高いのに手を出す必要はないと思います。