コスタ・ブラウンが、トレードマークとなった過熟気味なスタイルから変わろうとしているという記事が出ていました(Kosta Browne reverses course on its lush, ripe Pinot Noir style - San Francisco Chronicle、有料会員のみ閲覧可能)。

参考:
Kosta Browne Winery: ピノ時代の寵児になった21世紀的ワイナリ

Kosta Browne Pinot Noir

コスタ・ブラウンは2018年春に、初めてテイスティング・ルームをオープンする予定。そして、創設者のダン・コスタとマイケル・ブラウンは、出資者としては残るもののワイナリーのオペレーションから離れていくことになります。

未だに、メーリング・リストは数年の待ち行列ができていますが、社長兼CEOのスコット・ベッカーは、「このままでは滅びてしまう」と懸念しています。

こんなエピソードがあります。2015年からワインメーカーを務めるニコ・クエバとベッカーがニューヨークの有名なレストラン「ブレスリン」に行ったとき、ニコ・クエバは「ジョリー・レイド」という、ソノマでマイナー品種のワインを作るワイナリー(このブログで紹介しているワイナリーだと、マイケル・クルーズやブロック・セラーズのようなところ)のTシャツを着ていったところ、ソムリエは「そのワイナリーから来たの? そこのワインは好きだよ」といい、コスタ・ブラウンという名前については「聞いたことない」という反応だったそうです。

IPOBのような活動においても、コスタ・ブラウンは「濃くて甘くて、食事に合わないワイン」の典型だとしてやり玉にあがることが多くあります。そのスタイルでの成功が自らを苦しめる元になりつつあるのです。

現在、マイケル・ブラウンとダン・コスタはそれぞれのプロジェクトを始めています。マイケル・ブラウンは「サーク(Cirq)」、ダン・コスタは「アルデンアリ(AldenAlli)」です。どちらもソノマ・コーストのブドウを使い、コスタ・ブラウンと比べてエレガントなスタイルになっています。

コスタ・ブラウンでも、大樽を使った醸造や熟成、天然酵母などを試しているとのことで、今後は大きくスタイルを変えていくことになりそうです。そういえば、2016年には「コスタ・ブラウンがアンダーソン・ヴァレーのセリースを買収」というニュースもありました。リトライで知られる「薄旨」系のセリースの畑を買ってどうするのだろうと思ったものですが、背景にはこういったスタイルの変革があるのですね。

分かれていく3者がいずれも同じような方向性に行くというのも、ちょっと奇妙な感じがしないでもないですが、コスタ・ブラウンでさえも、時代の流れには逆らえないということでしょうか。個人的には、コスタ・ブラウンだけは、あのスタイルを堅持してくれてもいいのではないかとも思うのですが。

コスタ・ブラウンが「ブレイク」するきっかけになった2003年の貴重なワインです。この年のワインがWine Spectatorで絶賛されたことがピノ・ノワール・ブームの走りにもなりました。


2012年の単一畑もの。10年前は単一畑どころかAVAものも入手困難でした。


調べていて気付いたのですが、このサークはむちゃくちゃ安いです。Wine-Searcherの平均価格で172ドルですから。世界一安いかも。全力でおすすめします。
参考:サーク(Cirq)はやっぱりおいしかった(キスラーも)