ナパのラザフォードにある名門ワイナリー「クインテッサ(Quintessa)」のワイナリーの方に話を伺い、最新の2019年ヴィンテージを試飲しました。2017年、2018年に続いて3年連続でのインタビューと試飲になります。


2017年
進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力
2018年
クラシックスタイルのトップ級、さらに進化するクインテッサ

この3年間を比べると、2017年はやや暖かいヴィンテージ、ソノマとナパの間で大きな山火事があった年ですが、その影響は大きくなかったようです。2018年はやや涼しいヴィンテージ。暖かい年よりもやや涼しい年に品質が上がるカベルネ・フランの比率が上がっています。2019年はその中間的なヴィンテージとなりました。

一般的には2017は2013~2019年の中ではやや評価の低いヴィンテージです。山火事の影響で理想的な状態での収穫ができなかったワイナリーもありました。2018年と2019年は非常に評価が高いですが、2019年はフルボディになる傾向があり、2018年はややエレガント。どちらが好きか好みが分かれるところでもありますが、2018年の評価がだんだん上がっていっているように感じます。

クインテッサも2018年は非常に素晴らしいワインでした。2017年も、レベルは高かったですが、2018年はよりクラシックなスタイルで、長期熟成してもむちゃくちゃよくなりそうなワイン。ジェームズ・サックリングは99点を付けています。


クインテッサはすべて自社畑のブドウを使っていますが、上の図にあるように、中央に貯水池があり、それを囲むようにさまざまな向きの斜面があります。土壌の種類も多く、ワインの味わいに複雑さを出しています。

例えば東側(マップでは上側)は火山灰が多く白っぽい土壌。乾燥しやすくチョコレートの風味が出やすいといいます。一方、貯水池の周囲は火山性の土壌と沖積層が混じり合った土壌で水はけがよく、タンニンやグラファイトの風味が出ます。

ベンチと呼ばれる斜面はシストとクレイの混じった土壌。クラシックなナパのヴァレー・フロアの土壌で豊潤で柔らかいワインになります。

近年の干ばつについて質問したところ、貯水池があるので、他のワイナリーに比べると問題は少ないですが、非常にストレスを感じているとのこと。2021年も干ばつの影響で、木を刈り込んだりした結果、収穫は30~40%減ったそうです。

2019年のワインを試飲しました。
レッド・チェリーのような赤果実、カシス、ブラックベリーの黒果実の風味を感じます。ナパのカベルネとしてはやや明るめの味わい。チョコレートやコーヒー、グラファイト、ココナッツ、トーストなど。酸はやや強め。タンニンはかなり強いですが、ギシギシというより、いい意味での若さにつながっています。ストラクチャーがしっかりしており素晴らしい余韻があります。2019年はフルボディでリッチなワインというイメージがありましたが、だいぶ予想を裏切り、個人的には好みの方向の味わいです。2018とくらべても遜色ないレベルです。

なお、クインテッサはオーパス・ワンなどと同様、ボルドーのネゴシアン経由で世界市場に出荷しています(参考「ボルドーネゴシアン経由のワイン流通は成功の方程式か?」)。そのため、国内の固定的なインポーターはなく、どのインポーターでも輸入できる状態です。2019ヴィンテージは9月から出荷が始まっているので、そのうち日本にも入ってくると思います。

2018年、柳屋です。


よりレアなソーヴィニヨン・ブランもごく少量日本に入っています。