ナパのラザフォードにある名門ワイナリー「クインテッサ(Quintessa)」の2018年を試飲し、ワイナリーの方々に話を伺いました。昨年に続くインタビューです。

昨年のインタビューはこちら。
進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力



クインテッサの説明を全部再掲すると長くなりすぎるので、簡単にまとめておきます。
クインテッサはチリのコンチャ・イ・トロのCEOだったアグスティン・ヒューネウスが1990年に設立。当初から有機栽培、現在はバイオダイナミクスでブドウを栽培しています。ワイナリーの名の付いたカベルネ・ソーヴィニヨン系ワイン1つだけを作っており、セカンドワインも出していません。200エーカーを超える自社畑は斜面や土壌など多様な環境。ほとんど米国内にしか出荷していませんでしたが、2019年からはオーパス・ワンなどと同様に、ボルドーのネゴシアン経由で世界市場にも販売しています。

初めに、昨年の火事の影響(クインテッサはグラスファイアーでワイナリーの直接被害があったところからあまり距離がありません)を聞きました。

2020年はシェーファーなどワインの醸造を諦めたワイナリーも少なからずありましたがクインテッサでは収穫・醸造をしています。一番の理由は「火事はこの年だけでなくまた起こる」から。そのときにどうやって対処するのがいいのかを学ぶために収穫も醸造もしたとのこと。したがって最終的にどういう形でワインになるのか、あるいはならないのかはまだわからないようです。

また、2021年のヴィンテージについては干ばつの影響が大きく、ブドウの木が十分に育たず、タンニンがハードになりがちだとのこと。気温は温暖だが暑くはなく、早めの収穫になりそうだとのことでした。

コロナの影響で収穫の労働力確保が大変という話もありますが、クインテッサでは自社で収穫のチームを持っているため、そういった問題はなさそうです。

クインテッサでは現ジェネラル・マネージャーのロドリゴ・ソト氏の就任以降、畑をより精緻に調べ、最適な栽培法などを追い求めています。昨年話を聞いたときには土壌の影響を調べるために畑に穴を掘って根の張り方などを見ているといったことがありました。例えば火山性の灰が固まった「モン・カリース」という土壌では、想像以上に水を保持せず、それがここの区域のブドウのタンニンをきついものにしていることがわかりました。そこでカバークロップを増やしたり、灌漑の水を増やすことで、やわらかいタンニンに変わりました。それまではブレンドから除外されることも多かったブロックですが、今では最重要なブロックの一つだそうです。

2018年のヴィンテージではイタリアから剪定の専門家を呼んで剪定についても調べているとのことでした。その結果、太い幹を横には這わせないコルドンの方が合っていることがわかってきたそうです。ただ単にバイオダイナミクスで栽培すればそれでいいというわけではなく、ブドウ栽培のいろいろな要素がワインに複雑に絡み合っていることが伺えます。

さて、2018年のワインですが、2017年には入っていなかったカベルネ・フランが加わりました。92%CS、2%Merlot、3%CF、2%Carmenere、1%PVという構成です。カルメネールが入っているのが、コンチャ・イ・トロ出身の創設者のこだわりの一つです。

カベルネ・フランは温かいヴィンテージはあまりよくなく2017年には入れてなかったのですが、2018年は涼しかったので加えたそうです。

カシスやブラックベリー、ブルーベリーといった青黒系の果実未に加え、杉やコーヒー、トースト、タバコといったフレーバーが顕著に見られます。緻密なタンニン。酸はやや高め、フルボディで非常に長い余韻。素晴らしいワインです。モダンナパ系というよりも、CASK23やアイズリー、リッジのモンテ・ベッロのようなクラシックなスタイルに近いワイン。20年30年の熟成でむちゃくちゃ美味しくなると思いますが今も十分に楽しめます。

ちなみにジェームズ・サックリングはこのヴィンテージに99点を付けています。2018年は今月出荷が始まっているので日本市場にも年内には入ってくると思います。リッジのモンテ・ベッロやCASK23、アイズリーと比べれば1万円以上安いですから、このスタイルのワインが好きな人には狙い目のワインの一つです。

こちらは前ヴィンテージの2017。