進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力
「クインテッサ(Quintessa)」はナパのラザフォードで1990年に設立されたワイナリーです。オーパス・ワンなどと同様、ワイナリー名のワインただ一つを作り続けています。1990年代には日本でもそこそこ知られていた印象がありますが、近年は輸出をほとんど行っていなかったため、あまり目立たない存在になっていたかもしれません。2019年に出荷された2016年ヴィンテージからはオーパス・ワンやハーラン・ファミリーのプロモントリーといったエリートワイナリーと並んで、ボルドーのネゴシアン経由で輸出されるようになりました。2015年まではファインズが輸入していましたが、現在はどのインポーターでも輸入できる状態になっています。
そのクインテッサが2017ヴィンテージの出荷を始めたところで、ジェネラル・マネージャーのロドリゴ・ソト氏に詳しく話を伺いました。
クインテッサは設立以来、オーガニックで栽培をしており、現在はデメターからバイオダイナミクス(ビオディナミ)の認証も受けています。ナパのラザフォードでオーガニックというとフロッグス・リープが有名ですが、フロッグス・リープが有機栽培を始めたのは1988年で、実は2~3年しか違いません。また、フロッグス・リープは有機栽培にあとから転換したのに対して、クインテッサの場合は、畑を切り開いた最初から有機栽培であり、土地に農薬が一度も使われていないという価値があります。
場所はラザフォードの東北部。ちょうどナパ・ヴァレーがぐんと幅を狭くしていくあたりです。西側はナパ・リヴァー、東側はシルバラード・トレイルに挟まれた200エーカーを超える広大な畑を持っています。ヴァレー・フロアではありますが畑の中に丘や池などがあり、5種類の斜面からなり、土壌などもかなり変化に富んだ畑です。
ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドなど。珍しいところではチリの固有品種であるカルメネール(正確にはボルドーから持ち込まれた品種ですが、現在ではほとんどチリだけで作られています)を一部植えています。オーナーで創設者のアグスティン・ヒューネウス(Agustin Huuneus)はチリの出身で1960年代にはチリのコンチャ・イ・トロのCEOでした。そのため、コンチャ・イ・トロを通じてチリから持ち込んだものです。ソト氏によると、ナパではほかに聞いたことがないとのことでした。
カルメネールは、やや樹勢が強くなりすぎるのが欠点ですが、フィロキセラがいないチリでは自根で育てているのに対し、ナパでは接ぎ木。そのせいかいい感じに樹勢が抑えられているといいます。カルメネールを加えることでスパイシーな風味が加わるとともに「面白い要素」が入ってくるそうです。
クインテッサはボルドー流の1エステート1ワインに倣うと同時に、複数ブドウのブレンドといった面でもボルドーに倣っています。ボルドーだとリスク管理の意味合いも大きいですが、ナパではワインに多様性を与えることを目的にしています。「完璧なワインを作るには多様性が必要」とソト氏はいいます。自社畑のブドウしか使っていないことにもこだわりが見えます。
クインテッサはナパの中でも恵まれたところに畑がありますが、その割には「フルポテンシャルを引き出せていないのではないか」といった見方もされてきました。ソト氏の就任後は、畑に穴を掘って、根などの状態を調べる「再勉強」をしています。例えば「モン・カリース」というブロックはナパでは珍しい白い土壌があるところ。
左から2人めはワインメーカーのレベッカ・ワインバーグ
モン・カリースの土壌は中央の白い石
これは、火山性の灰が固まったものですが、想像以上に水を保持せず、それがここの区域のブドウのタンニンをきついものにしていることがわかりました。そこでカバークロップを増やしたり、灌漑の水を増やすことで、やわらかいタンニンに変わりました。それまではブレンドから除外されることも多かったブロックですが、今では最重要なブロックの一つだそうです。
ワイナリー(醸造設備)はすべて丘の下にあり、ポンプを使わず重力でワインを移せる設計になっています。
写真の左側は一般的なステンレススティールのタンクですが、右側はコンクリート製です。近年はこちらの使用比率も上がっています。コンクリート槽で発酵させることによって、よりタンニンがまろやかになるとのこと。
品種や多様なブロックのため、ブレンディングは重要かつ非常に大変なプロセスです。クインテッサではブレンディングのマスター・ブレンダーとして20年前からミシェル・ロラン(写真)を雇っています。一貫性と、潜在力の発揮を重視しているとのこと。
出荷が始まったばかりの2017年のワインを試飲しました。
第一印象は非常にエレガントです。ミディアムプラスボディで、ナパの濃いワインをイメージしていると驚くかもしれません。カシスやブラックベリーといった果実味以外に、ちょっとオリエンタルなスパイスの風味や杉、クローヴなど果実以外の風味もかなりあります。おそらく10~20年後に熟成感が出てくるともっと面白いと思いますが、今でも非常に美味しく飲めます。おそらく、和食と合わせても違和感がないくらいのエレガントさです。いわゆるナパのワインとは違いますが、この味わいは日本人の好みにも合うでしょう。
自然派を売りにしているわけではありませんが、むしろそれをもっと打ち出してもいいのではないかという気もします。自然派っぽい味わいではありませんが、この柔らかさは自然派の好みにも繋がる感じがします。
そのクインテッサが2017ヴィンテージの出荷を始めたところで、ジェネラル・マネージャーのロドリゴ・ソト氏に詳しく話を伺いました。
クインテッサは設立以来、オーガニックで栽培をしており、現在はデメターからバイオダイナミクス(ビオディナミ)の認証も受けています。ナパのラザフォードでオーガニックというとフロッグス・リープが有名ですが、フロッグス・リープが有機栽培を始めたのは1988年で、実は2~3年しか違いません。また、フロッグス・リープは有機栽培にあとから転換したのに対して、クインテッサの場合は、畑を切り開いた最初から有機栽培であり、土地に農薬が一度も使われていないという価値があります。
場所はラザフォードの東北部。ちょうどナパ・ヴァレーがぐんと幅を狭くしていくあたりです。西側はナパ・リヴァー、東側はシルバラード・トレイルに挟まれた200エーカーを超える広大な畑を持っています。ヴァレー・フロアではありますが畑の中に丘や池などがあり、5種類の斜面からなり、土壌などもかなり変化に富んだ畑です。
ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドなど。珍しいところではチリの固有品種であるカルメネール(正確にはボルドーから持ち込まれた品種ですが、現在ではほとんどチリだけで作られています)を一部植えています。オーナーで創設者のアグスティン・ヒューネウス(Agustin Huuneus)はチリの出身で1960年代にはチリのコンチャ・イ・トロのCEOでした。そのため、コンチャ・イ・トロを通じてチリから持ち込んだものです。ソト氏によると、ナパではほかに聞いたことがないとのことでした。
カルメネールは、やや樹勢が強くなりすぎるのが欠点ですが、フィロキセラがいないチリでは自根で育てているのに対し、ナパでは接ぎ木。そのせいかいい感じに樹勢が抑えられているといいます。カルメネールを加えることでスパイシーな風味が加わるとともに「面白い要素」が入ってくるそうです。
クインテッサはボルドー流の1エステート1ワインに倣うと同時に、複数ブドウのブレンドといった面でもボルドーに倣っています。ボルドーだとリスク管理の意味合いも大きいですが、ナパではワインに多様性を与えることを目的にしています。「完璧なワインを作るには多様性が必要」とソト氏はいいます。自社畑のブドウしか使っていないことにもこだわりが見えます。
クインテッサはナパの中でも恵まれたところに畑がありますが、その割には「フルポテンシャルを引き出せていないのではないか」といった見方もされてきました。ソト氏の就任後は、畑に穴を掘って、根などの状態を調べる「再勉強」をしています。例えば「モン・カリース」というブロックはナパでは珍しい白い土壌があるところ。
左から2人めはワインメーカーのレベッカ・ワインバーグ
モン・カリースの土壌は中央の白い石
これは、火山性の灰が固まったものですが、想像以上に水を保持せず、それがここの区域のブドウのタンニンをきついものにしていることがわかりました。そこでカバークロップを増やしたり、灌漑の水を増やすことで、やわらかいタンニンに変わりました。それまではブレンドから除外されることも多かったブロックですが、今では最重要なブロックの一つだそうです。
ワイナリー(醸造設備)はすべて丘の下にあり、ポンプを使わず重力でワインを移せる設計になっています。
写真の左側は一般的なステンレススティールのタンクですが、右側はコンクリート製です。近年はこちらの使用比率も上がっています。コンクリート槽で発酵させることによって、よりタンニンがまろやかになるとのこと。
品種や多様なブロックのため、ブレンディングは重要かつ非常に大変なプロセスです。クインテッサではブレンディングのマスター・ブレンダーとして20年前からミシェル・ロラン(写真)を雇っています。一貫性と、潜在力の発揮を重視しているとのこと。
出荷が始まったばかりの2017年のワインを試飲しました。
第一印象は非常にエレガントです。ミディアムプラスボディで、ナパの濃いワインをイメージしていると驚くかもしれません。カシスやブラックベリーといった果実味以外に、ちょっとオリエンタルなスパイスの風味や杉、クローヴなど果実以外の風味もかなりあります。おそらく10~20年後に熟成感が出てくるともっと面白いと思いますが、今でも非常に美味しく飲めます。おそらく、和食と合わせても違和感がないくらいのエレガントさです。いわゆるナパのワインとは違いますが、この味わいは日本人の好みにも合うでしょう。
自然派を売りにしているわけではありませんが、むしろそれをもっと打ち出してもいいのではないかという気もします。自然派っぽい味わいではありませんが、この柔らかさは自然派の好みにも繋がる感じがします。