2月末に開かれたカリフォルニアワイン協会の「Alive」テイスティングで気になったワイン、美味しかったワインを報告します。


ピゾーニが作るピノ・ノワールのロゼ「ルーシーロゼオブピノ・ノワール2021」(4840円、価格は税込みの希望小売価格、以下同)です。ロゼとしてはやや高価ですが、ピュアな果実味がきれいでピノ・ノワールらしさもしっかりあり、とてもいいロゼです。輸入はilovecalwine。


同じくilovecalwine輸入でサンドラーとオーガスト・ウエストのピノ・ノワールとシャルドネ。7700円はこのレベルにしては安いです。特に一つ選ぶならばオーガスト・ウエストのロシアン・リバー・ヴァレー ピノ・ノワール 2021。


バークレーの有名レストラン「シェ・パニーズ」のハウスワインとして使われていることで知られているグリーン&レッドのジンファンデル。3種類出ていましたが、私のベストはチャイルズ・ミル・ヴィンヤード2017(7700円)。生産者と撮っていただきました。


ヴィノスやまざきが輸入を始めたアレキサンダー・ヴァレー・ヴィンヤーズ。レッドブレンドとジンファンデルが5500円でカベルネ・ソーヴィニヨンが6380円。ヴィノスやまざき輸入のワインは芳醇でふくよかなものが多い印象がありますが、これは果実味豊かで酸もしっかりあってとてもバランスが良いタイプ。アレキサンダー・ヴァレーのワインの中でもこのバランスの良さは秀逸でしょう。


もう一つヴィノスやまざきからウォーターストーンのメルロー2018(5500円)。メルローらしさが出ていてコストパフォーマンスもいいと思います。


パソ・ロブレスで注目のダオ(Daou)が作るもう一つのブランドPatrimony。今回未輸入ワインということで参加していましたが、中川ワインが扱うようです。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プロプライエタリのカーヴ・デ・リオンの3つが出ていました。どれも濃厚でパワフル。個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンがバランス的に良かったです。



リッジのエステート・カベルネ・ソーヴィニヨン2016(14850円)。リッジのフラッグシップで、パリスの審判30周年の再戦で1位になったモンテベッロと畑は同じカベルネ・ソーヴィニヨン。モンテベッロとの違いは、モンテベッロが超熟型で最低10年は経たないと本領を発揮してこないのに対し、エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンはリリース直後から飲みやすくできていること。下級品ではありません。価格は半額以下ですが。とはいえこれも7年熟成でこなれた感じは出ています。とても美味しい。いろいろ高値になっている中で、価格が変わっていないこのワインはむしろ割安感が出てきています。


もう一つパリスの審判銘柄で、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの「アルテミス」カベルネ・ソーヴィニヨン2019(11000円)。こちらはセカンドの位置づけ。とてもバランスよくまとまっています。インポーターはファインズ。


シャルドネの人気が高いジャム・セラーズの「Butter」からのカベルネ・ソーヴィニヨン2018(4290円)。バターの名前が似合うリッチでまろやかな味わい。4000円台だとちょっと高く感じられますが、実売だと3000円強といったところで納得感が出ます。ちなみに、JaMカベルネという赤いラベルのカベルネもあります。中川ワイン。


美味しいメルローを探すのは美味しいカベルネを探すのより10倍くらい難しく感じます。ナパ・ハイランズのメルロー2020(5280円)とリザーブ・メルロー(7700円)はその中で納得できるクオリティと価格のワイン。個人的にはレギュラークラスが特にバランスもよく、うまくまとまっている感じがしました。こちらも中川ワイン。


桃井隆宏さんが作るアーサー・セラーズのチェリーリッジ・ピノ・ノワール2021(6820円)とロシアンリバー・ヴァレー・ピノ・ノワール2021(5720円)。
2つともアーサー・セラーズの新作ですが、多くのワインの中に埋もれてしまうかもしれないこの記事に書くのはちょっともったいないかもしれないワインです。チェリーリッジはロシアンリバー・ヴァレーの中でも冷涼なグリーン・ヴァレーにある畑ですが、なんと栽培を手掛けているのはコブ・ワインズのロス・コブ氏。2021年は、全域的にブドウの収量が少なく、調達に苦労していたという桃井さんが、たまたま縁があってこの畑のブドウを手に入れられたとのこと。アーサー・セラーズのワインはピュアな果実味が特徴的ですが、これはその中にさらにエレガンスが加わって、これまでのアーサーのワインとも一味違う出来になっています。一方、ロシアンリバー・ヴァレーのAVAものは、アーサーらしい果実味豊かで陽性な味わいが前面に出たワイン。飲んでいると美味しくて思わず微笑んでしまうようなワイン。どちらもこの価格はとても安いです。


レイモンドのリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2019(左、8800円)とリザーブ・メルロー(右、4620円)。このワイン、まずラベルが面白いです。ベルベットのような手触りの紙が使われています。さすがJCBという感じです(詳しくは「レイモンドの強烈な世界に皆ノックアウトされる」を参照)。ラベルが面白いだけでなく、味わいも本格派です。どちらもコスパの良さが際立ちますが、特にメルローは、ぎゅっと引き締まった感じもあって美味しかったです。インポーターはアサヒビール。


上の方に挙げたPatrimonyと同じくダオ(Daou)兄弟が作るワイナリー。Soul of a Lion2019(30800円)はDaouブランドでのフラッグシップ。シルキーなテクサチャーで素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンです。ナパのワインに例えるならば、PatrimonyはHundred Acre、Soul of a LionはHarlanといった感じです。インポーターはナニワ商会。新橋のワインバー「ワイン蔵」の会社です。


個人的注目のエドナ・ヴァレーのタンジェント・ワインズによるソーヴィニョン・ブラン・パラゴン・ヴィンヤード2019(3850円)。冷涼産地のソーヴィニョン・ブラン、すばらしいです。輸入元はワインライフ。


平林園枝さんが作るシックス・クローヴズのシャルドネ・リンダ・ヴィスタ2020(8140円)、ピノ・ノワール・アルダー・スプリングス(9900円)、マグノリア・レッド・ブレンド2019(7700円)。シャルドネのリンダ・ヴィスタはナパでスティーブ・マサイアソンが栽培する畑です。エレガントで旨味があります。ピノ・ノワールのアルダー・スプリングスはメンドシーノの北のほうにある孤高の畑。深みのある味わいがすばらしい。マグノリア・レッド・ブレンドは冷涼感があってバランスよくできています。園枝さんの作るワインはどれもとてもエレガント。従来のカリフォルニアワインのイメージで飲むとちょっと違うかもしれませんが、エレガント好きな人にはたまらないと思います。インポーターは布袋ワインズ。


ナパのマルドナド・ヴィンヤーズのシャルドネ・ロス・オリヴォス・ヴィンヤード2020(価格未定)。畑はカーネロスにあります。リッチで美味しいシャルドネ。インポーターはデプト・プランニング。


オー・ボン・クリマの別ブランドであるクレンデネン・ファミリーのプティ・ヴェルド2013(6600円)。畑はなんとビエンナシードです。冷涼なビエンナシードのプティ・ヴェルドなんて、際物のように思うかもしれませんが、これがエレガントでむちゃくちゃ美味しいです。10年熟成で角が取れているのもいいのかもしれません。驚きました。インポーターはJALUX。


オルカ・インターナショナルが最近輸入を始めたザ・ヴァイスのカベルネ・ソーヴィニヨン「ザ・ハウス」2020(7480円)、カベルネ・ソーヴィニヨン オークノール 2020(10780円)、カベルネ・ソーヴィニヨン スタッグス・リープ2019(16500円)。どれもよくできています。「ザ・ハウス」は入門的な位置づけだと思いますが、やはりバランスよくまとまっています。カベルネ・ソーヴィニヨンのオークノールはエレガンスがあります。最近はナパのカベルネでもオークノールやクームズヴィルといった少し冷涼な地域でエレガンスを持ったワインが人気が上がっている感じがします。一方、スタッグス・リープは、期待にそむかない濃厚さ。三様で美味しいです。