ソノマ・ヴィントナーズが主催する試飲会が5月に初めて開催され、その前日、セミナーとランチに参加しました。セミナーでは、18あるソノマのAVAの中から6つのAVAを取り上げ、そこのワイナリーのワインを試飲しました。

まずは基本的なところをおさらいしましょう。

ソノマの魅力は多様性――ソノマ・カウンティ・ヴィントナーズ ミニインタビュー」でも書いたように、ソノマが隣のナパと比べて勝っているところの第一は多様性です。

ソノマは東西68km、南北84kmというかなりの広さ。ぶどう畑はこの中で約6%を占めています。ちなみにぶどう畑だらけに見えるナパでも、総面積に対しては9%程度。選ばれたところにだけぶどう畑があると言えばいいのでしょうか。作られているブドウの種類は66もあります。

ソノマに入植者がやってきたのは19世紀初頭のこと。19世紀半ばには米国で最古となるワイナリー、ブエナ・ビスタ(Buena Vista)などが生まれました。

セミナーで試飲したのは以下のワイン。
セミナーで試飲したワイン
コービン・キャメロン(Korbin Kameron)ソーヴィニヨン・ブラン2017(ムーン・マウンテン)
フリーマン(Freeman)シャルドネ「涼風」2016(グリーン・ヴァレー)
アーネスト(Earnest)ピノ・ノワール グランド・ヴェント・ヴィンヤード2015(ペタルマ・ギャップ)
アリシアン(Alysian)レッド・ブレンド エステート・グリスト・ヴィンヤード2014(ドライ・クリーク・ヴァレー)
シュグ(Schug)カベルネ・ソーヴィニヨン2014(ソノマ・ヴァレー)
ドネラン(Donelan)シラー オブシディアン・ヴィンヤード2014(ナイツ・ヴァレー)
AVAマップ
順番に見ていきましょう。AVAの特徴やワインの試飲コメントを載せていきます。

ムーン・マウンテンは2013年に策定された新しいAVAです。ソノマとナパを隔てるマヤカマス山脈の西側の斜面でソノマの街の北側にあたります。標高が高いところにあるのが特徴で、海からの霧がかからず、比較的温暖です。そのためボルドー品種やジンファンデルなどが作られています。

コービン・キャメロンのソーヴィニヨン・ブランは青りんごの風味にはちみつ。グレープフルーツやレモンといった柑橘系の味わい。非常に香り高く、太陽をよく浴びたブドウで作られた感じがします。

次は、グリーン・ヴァレー。ロシアン・リバー・ヴァレーのサブAVAであり、ロシアン・リバー・ヴァレーの中でも太平洋に近く、涼しいところになります。

フリーマンのシャルドネ「涼風」は、グリーン・ヴァレーに吹く太平洋からの涼しい風をイメージして付けたワイン。上品なバニラの香りにオレンジ、レモンの風味。フルボディのシャルドネですが、酸の豊かさが上院さを演出しています。

ペタルマ・ギャップは2017年に策定された、ソノマでは最も新しいAVA。トランプ政権が誕生してから初めて認められたAVAにでもあります。ここの特徴は風。太平洋から、南のサンパブロベイまで、谷間を風が吹き抜けます。4000エーカーの土地の中で現在のワイナリーは9個。これからが期待されるAVAの一つです。

アーネストの畑「グランド・ヴェント」はフランス語(フランス語読みすればグランヴァン)で大きな風のこと。涼しい風と称したフリーマンと比べて荒々しい気候が想像できます。午後4時には下の写真のように霧に覆われてしまいます。
午後4時の写真
ワインは酸の強さが第一印象。きれいだけど張りのある酸にラズベリーなどの赤系の果実、ホワイトペッパーなどのスパイスの風味を感じます。ジャムのような煮詰めた感じもあるのですが、酸が豊かなので甘ったれた感じはありません。これはかなり気に入りました。

次のドライ・クリーク・ヴァレーは1983年に策定された古いAVA。ロシアン・リバー・ヴァレーの上流になり、海から離れる分、温暖になります。樹齢の高いジンファンデルの畑なども特徴の一つです。

アリシアン(Alysian)はロシアン・リバー・ヴァレーのピノ・ノワールのパイオニアとして知られるゲイリー・ファレルが自身の名前のついたワイナリーを売却後に作ったワイナリー。ピノ・ノワールが中心ですが、2013年にゲイリー・ファレルが引退し、それ以外のワインにも力を入れるようになりました。

今回のレッドブレンドはジンファンデル50%、シラー40%、プティ・シラー10%という構成。2014年に作り始めたワインです。プラムやジャムっぽい味わいに、温暖な気候が感じられます。シラー由来と思われるブラック・ペッパーのニュアンスもあります。

次はソノマ・ヴァレー。シュグの創設者ウォルター・シュグはジョセフ・フェルプスでインシグニアを最初に作った人。その後、ソノマ・ヴァレーの入り口にシュグ・ワイナリーを設立。昨年惜しまれつつもなくなりました。

カベルネ・ソーヴィニヨンは非常に抑制された味わい。美味しいです。ここはソノマ・ヴァレーの特徴というよりシュグのワイン造りを堪能する感じでした。

最後はナイツ・ヴァレー。有名なワイナリーで言えばピーター・マイケルがここにあります。ナパのベリンジャーが作るナイツ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンも非常にコスパ高く人気のワインです。場所はナパのカリストガの北。地勢的に見ても、ナパの延長線上で考えた方がわかりやすいところだと思います。ボルドー品種が有名ですが、セントヘレナ山があり、標高が高いところもあるため、もう少し冷涼地向けのブドウも作られています。代表的なものにはピーター・マイケルのシャルドネがあります。

ドネランはシラーで有名なワイナリー。ソノマのシラーとして初めて「パーカー100点」を取ったワイナリーです。今回のオブシディアン・ヴィンヤードでも最高99点を取っています。

といった情報は後から調べたもので、セミナーでは先入観なく試飲したのですが、これはビックリ。ものすごくタニックでがちがちのワインなのですが、味わいの奥行きが半端ない。ナイツ・ヴァレーのシラーも初めてだと思いますが、すごいポテンシャルがあると思います。

ただ、一つとても残念な話があります。この、オブシディアン・ヴィンヤード、昨年10月の火事で灰燼に帰してしまったのです。普通はぶどう畑は防火帯として働くのですが、収穫後、水分もなくカラカラの状態になっていたそうで、数少ない、畑自体が燃えてしまった例になってしまいました。今後植え替えをするのだそうですが、すぐに同じクオリティのブドウができるわけではなく、少なくとも数年間はここのワインは作られないでしょう。

閑話休題。セミナーの翌日、布袋ワインズオーナーのビル・キャンベルさんと少し話をしたのですが、ソノマの焼け野原になったところ、今は青々と草が生えてとてもきれいだそうです。滅多に見られない景色なので、ソノマ方面に行かれる方は、その辺りもぜひ回ってみてください。

6つのAVAからの6つのワイン。どれもレベル高く、ソノマらしさも発揮していました。ソノマの多様性という題目は十分に出ていたと思います。

セミナーの演者