新生カリフォルニアワイン協会のグランドテイスティングではセミナーにも参加しました。

テーマは
「カベルネ・ソーヴィニヨンを通じて知るカリフォルニアワインのサステイナビリティ」

講師はマスター・オブ・ワインに挑戦中の小原陽子さん。小原さんとは数年前からネット上では交流を続けていましたが、直接お会いするのは今回が初めてでした。今年、カリフォルニアに取材に行かれた内容をまとめたセミナーです。
小原さん
セミナーの内容は、知り合いの酒類ジャーナリスト森田真希子さんがネットにまとめられたものが、簡潔かつ内容をしっかり押さえていたので、お許しを得てコピペさせてもらいます。

なお、セミナー資料はこちら(PDF)から見られます

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サステイナビリティの実現には、「環境に優しい」「経済的に実現可能」「社会的に公正」の3つの条件が必要となる。カリフォルニアでは2002年にはCSWA(カリフォルニア サステイナブル ワイングローイング アライアンス)認証制度をスタートさせ、産地全体でサステイナビリティに取り組んでいる。
「ザ・コード」と名付けられた規約集には、栽培技術で140、醸造技術でも104もの細かな規約が定められ、成果を自分で解析し、改善するサイクルを回すことで、継続的な向上が見込まれる。

サステイナビリティの実現に向けての取り組みをいくつか紹介する。
「カバークロップ」=目的は、ぶどう樹との水分・養分の競合、土や養分の流出防止など。
「コンポスト」=土が豊かになり、空気を抱き込むが、短所は化学成分と比べて成分が明確でなく、効果が遅いこと。
「益虫・益鳥・益獣」=殺虫剤や毒エサ、除草剤などの化学物質を使わずにぶどうに最適な環境を整える試み。てんとう虫はアブラムシ、コウモリは昆虫、ふくろうはネズミなどのげっ歯類を駆除する。
「IPM(総合的病害虫管理)」=農薬使用の最適化、人や環境のリスクを軽減または最小限に抑えること。
「太陽光および風力発電」の活用
「水不足の問題」=灌漑には、1haあたり2,650,000Lが必要となる。ドリップイリゲーションが一番効率的で、雑草が抑えられ、土壌や養分の流出が少ないという利点もあるが、短所は目詰まり、初期投資、設置・設定の知識。生育期のドライファーミングに取り組む生産者もいるが、収量は非常に低く、土壌の条件も必要。
「リサイクル」=絞りかすやおり、濾過材、樽、瓶、ダンボールなどだけでなく、貴重な水資源も固形物は沈殿や濾過で、生物学的有害物質は微生物処理で、さらに逆浸透膜、ナノ濾過などを使いリサイクルされる。

なお、カリフォルニア全体におけるサステイナビリティの認証畑は全体の約22%にあたる1,099。ワイナリー数は127軒。ナパ、ソノマ、ローダイなど、生産地ごとに独自の取り組みも盛んで、認証畑やワイナリーは年々拡大しており、現在認証ワイナリーによるワインは74%を占める。
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ちなみに最後のところの認証畑とワイナリー数は「Certified California Sustainable Winegrowing」が認証した数です。認証プログラムにはほかに、ナパのナパ・グリーンやローダイのローダイ・ルールなどがあります。

ソノマは2019年までに全ワイナリーがサスティナブルの認証を受けることを目標にしていますが、認証プログラムは作成しておらず、これらさまざまな認証のどれかを受ける形になります。

さて、タイトルに「カベルネ・ソーヴィニヨンを通じて知る」とあるようにカベルネ・ソーヴィニヨンの試飲もありました。正直言って、試飲しても「これがサスティナブルな味」というようなものがあるわけではないので、少なくとも現状ではワインの味とサスティナブルは切り離して考えた方がいいような気がしますが、試飲したワイナリーはいずれも熱心に取り組んでいるところであり、ワインもレベルの高いものでした。

試飲したワインは
ローダイからランゲ・ツインズ カベルネ・ソーヴィニヨン 3,300円
リヴァーモアからウェンテ・チャールズ・ウェットモア カベルネ・ソーヴィニヨン 3,600円
サンタ・バーバラからスターレーン・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン・ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ 7,000円
ラザフォードからボーリュー・ヴィンヤード ラザフォード カベルネ・ソーヴィニヨン 7,862円
オークヴィルからロバート・モンダヴィ・ワイナリー オークヴィル カベルネ・ソーヴィニヨン 10,320円
サンタ・クルーズ・マウンテンからリッジ・ヴィンヤーズ カベルネ・ソーヴィニョン・エステート 12,000円

ランゲ・ツインズとウェンテは3000円台のワインですが、非常にまとまりよく美味しかったです。
スターレーンはカリフォルニアらしいカベルネ・ソーヴィニヨンでレベル高いです。万人向けの味わい。
ボーリュー(BV)とモンダヴィでは、やや北で温かいBVの方が暖かさを感じる味わいではないかという話がありました。モンダヴィは先週アカデミー・デュ・ヴァンのセミナーでも試飲しましたが、全般に酸を強めでエレガントな味わいです。ラザフォードよりオークヴィルの方が若干涼しいということも関係あるかもしれませんが、モンダヴィの個性の部分もかなりあるように思いました。
最後のリッジは素晴らしい。ハーブの風味が独特で、長期熟成を可能にしています。クラシカルな味わいが好きな人にはたまらないワインでしょう。モダン系のスターレーンとは好対照でした。
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