ナパの人気ワイナリー、ルイス・セラーズ(Lewis Cellars)の創設者ランディ・ルイス(Randy Lewis)と、現社長でランディの亡き妻デビーの子であるデニス・ベルが来日しました。ルイスは、2016年にワイン・スペクテーターのワイン・オブ・ザ・イヤーを取得しており、いかにもカリフォルニアらしい果実味豊かなワインを作っています。

――ランディさんはレーシングカー・ドライバーから転身されましたが、その理由は。
ランディ ワイン造りを手伝ってほしいと言われたのがきっかけだった。ルイス・セラーズは92年に妻のデビーと始めた。レーシングカー・ドライバーとワイナリーでは大きく違うが、共通することもある。レーシングカーでは一番いいクルマが必要なように、ワイナリーでは一番いいブドウが必要だ。いいチームがいないと成り立たないのも同じだ。

――家族経営で、跡継ぎに困って手放すワイナリーも多くありますが、うまくやっているように見えます。
ランディ 10~20年同じチームで続けている。ワインを売っているのは自分とデニスだけで、あとはみなワイン造りにかかわっている。デニスの息子も、ワイナリーに興味を持っており、あと数年したら加わるだろう。

――最初のワインメーカーはだれだったのですか。
ランディ 最初はジョー・カファーロという人がワインメーカーだった。とてもいい人物で、ワイン造りについていろいろ学ぶのに役立った。ただ彼は品質を突き詰めるタイプではなく、我々が期待するレベルのワインは作ってくれなかった。そこで1996年にヘレン・ターリーをコンサルタントとして雇った。彼女は94年や95年のワインをファインチューンしてくれ、96年のワインを作ってくれた。すべては畑におけるブドウの出来にかかっていること、できたブドウからすべてを抽出すること、といったルイスのフィロソフィーはそのときにヘレン・ターリーに教わったことであり、今も変わらずに続けている。その後はポール・ホブズなどもワインメーカーを努めていたことがあった。

――ワイン・オブ・ザ・イヤーの反響はどうでしたか。
ランディ すごかった。我々が一番いいカベルネの一つを作っていることが認められたと思う。デビーは当時もうガンで病床についていたがとても喜んでくれた。彼女がルイスのハートでありソウルなんだ。ちなみにワイン・スペクテーターには広告を出したりはしていないよ。

――ルイスはスペクテーターでは、コンスタントに高評価を得ていますが、アドヴォケイトやヴィナスではほとんどレビューもされていません。なぜでしょうか。
ランディ スペクテーターでカリフォルニアを担当していたジム・ロビー(Jim Laube)はルイスに最初に来た人だったんだ。それでいろいろ話をして友達になった。それでコンスタントにレビューされるようになった。発行人であるマーヴィン・シャンケンにも彼が紹介してくれた。我々はいいレビューを得るためにワインのサンプルを送るといったことはしていない。ジムとは個人的につながっているが、われわれをよく知らなかったり、気にもしていないような人にワインを送ってレビューしてもらおうとは思わない。ワイン造りは人とのつながりが大事なパーソナルなビジネスなのだ。ちなみに、ジェブ・ダナックは我々のコロラドのディストリビュータと仲がよく、最近サンプルを送付したよ。

デニス スコアを見てワインを買う人はほとんどいない。スコアを通じて我々のワインに興味を持って顧客になるケースはあるが。顧客は我々のブランドを知っていて、一貫して同じスタイルであることをわかっていて買っている。

ランディ ワインはとても個人の結びつきを大事にした商売なんだ。カリフォルニアでは、うちはディストリビュータを使っておらず、500軒のワインショップと直接契約して取引している。うちは小さな家族経営のワイナリーで、それで生計が立っている。特に大儲けしようなどとは考えずこのままの形で続けていきたい。

――自社の畑を持っていないのはなぜですか。
ランディ 生産者とも長期的な関係を築いている。60~70%の畑は昔から使っており、そもそも我々のために畑を作ってもらったという経緯がある。ルートストックからスペーシングから剪定から、すべて我々が思う通りにしている。ヴィンヤード・マネージャーがすべて管理しており、灌漑や葉の落とし方、実の残し方なども決めている。

――これからのプランを教えてください
ランディ いい畑はいつでも探している。ワインの生産量を増やすつもりはないが、少しずついろんな畑を使っていきたい。

試飲のワインは2017年のシャルドネ、2016年のカベルネ・ソーヴィニョン。2016年のアレックス・ブレンドだ。
シャルドネはレモンなどの果実味が豊かできれい。ヴァニラの風味もここちよい。酸がとてもいい感じであり、クリームシチューのようなテクスチャもいい感じです。

ランディ シャルドネはオークノールの畑を多く使っている。カーネロスはうちが求めるスタイルにはちょっと涼しすぎる。オークノールがちょうどいい感じなのだ。ワインは樽発酵、樽熟成で天然酵母を使っている。
――樽発酵させる理由は何ですか。
ランディ ステンレスのタンクを使った方が温度調節も簡単であり、チェックするのも楽だ。一つずつ樽の状態を確認するのは大変な作業だ。また、ステンレスのタンクで発酵し、樽で熟成する方が樽香がつきやすい。我々は樽香ぷんぷんのワインを作りたいのではない。樽発酵の方が味がインテグレートされるのだ。

次はカベルネ・ソーヴィニョンです。
スモーキーでタニック。カシスやブラックベリーの風味。酸は控えめ。かなりタニックなワインだが、タンニンはスムーズであり、ワインに溶け込んだ感じがします。

――カベルネ・ソーヴィニョンの畑はどこですか。
ランディ これも多くがオークノールだ。オークノールに3つの畑がある。西側と東のベンチランド、ヴァレー・フロアにもある。標高が上がることで太陽が一日中あたるようになる。カベルネ・ソーヴィニョンの畑はカリストガなどにもあり、ヴァレーの南北から取っています。これによって天候が不順な年もめるrこ

最後はシラーとメルローのアレックス・ブレンドです。
とにかく香りがすばらしいワイン。タンニンもかなりあり、しっかりとしたストラクチャ。おいしいです。

ランディ このワインにはちょっとしたエピソードがある。最初はともかく余ったワインを混ぜたものをアレックス・ブレンドとしたんだ。アレックはデニスの息子の名前なんだが、ちょっと申し訳ないね。今はメルローもシラーもそれぞれ単独の品種のワインとして出しているのと同じレベルのブドウをまぜている。

デニス 私は社長ですが、名刺を交換するときに、アレックの父親です、というのが一番受けるのです(笑)。