先月、シェーファー・ヴィンヤーズのオーナーであるダグ・シェーファーが約1年半ぶりに来日し、ランチに招待いただきました。今年3月に創設者のジョン・シェーファーが亡くなり、延期になっていたものです。

シェーファーについてはアカデミー・デュ・ヴァンのセミナーでも単独で取り上げており、フラッグシップのヒルサイドセレクトを含む、現行ヴィンテージの全ワインをその際に試飲しています。今回はそれに加えてヒルサイドセレクトのオールド・ヴィンテージまでいただくことができました。なお、店は丸の内の「モートンズ・ザ・ステーキハウス」。米国のシカゴで40年ほどの歴史を持つレストランです。



シャルドネのレッドショルダー・ランチは樽発酵、樽熟成。新樽と木製の樽と同サイズのステンレスの樽を使います。除梗はなし、収穫は夜に行います。マロラクティック発酵しないので、さわやかさを保ちながら、ナパらしい果実味の豊かさを味わえる上質なシャルドネです。シェーファーのラインアップ中、唯一の白ですが、やや過小評価されているような気がします。

その次はTD-9。日本でも人気が高かったメルローの後継となるワイン。シェーファーとしてはメルローは生産量も品質も安定しないことが多く、毎年一定量を造るのが悩みの種でした。そこでメルローをベースとしながらもメルローと名乗るのをやめることで、より安定した品質と量のワインを造ることにしたのがこのTD-9。前回ダグ・シェーファーが来日したときがちょうどこのワインのデビュー時期でしたが、すっかりラインアップに溶け込んだ感じがします。果実のふくよかさと酸味のバランスよく、柔らかい味わい。これだけは購入ブドウを含んでいますが75%ほどは自社畑のブドウだそうです。


次はカベルネ・ソーヴィニヨンのレギュラー版であるワン・ポイント・ファイブ。この名前はダグ・シェーファーが創設者のジョン・シェーファーから見れば2代目ですが、実際にはワイナリーの比較的初期から携わってシェーファーをもり立ててきたことから1.5世代目という意味を込めています。なお、ダグ・シェーファーは2人の奥さんとの間に5人の子供がいますが、一人もワインビジネスには携わっていません。そこは無理強いしない方針だとのことですが、将来を考えるとちょっと残念な気もします。このワイン、とても安定してレベルの高いワインです。1万5000円前後というのは決して安くはないですが、1万円台のナパ・カベルネ・ソーヴィニヨンとして、お薦めできるワイン。

その次はシラーのリレントレス。シェーファーの顔といえば、ダグ・シェーファーですが、長年ワイン造りを担っているのはイライアス・フェルナンデスという人。ダグ・シェーファーのUCデーヴィスの数年後輩ですが、イライアスの方が成績はずっと上だったとのこと。シェーファーは、初期を除くとワインの失敗作がほとんどないのも特徴だと思っているのですが、その品質の安定性も彼なしではできなかったことでしょう。その妥協しない厳しい姿勢から命名したのがこのシラーです。タンニンと果実味、酸のバランスが素晴らしい。カリフォルニアのシラーは、やや甘めの果実味爆弾方向の造りのものがやや目立ちますが、これはもっとローヌっぽいシラーです。

最後はフラグシップのヒルサイドセレクト3本。2014年、2009年、そして2000年です。
個人的に一番と思ったのは2014年。果実味豊かで酸がきれいに伸びてくるのとストラクチャーがしっかりしていることが特徴。カベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインとして最高のワインの一つだと思います。ボルドーブレンドのワインはまたその良さがありますが、これだけ美味しいカベルネ・ソーヴィニヨンを飲むと、ブレンドする意味はないのではないかと思ってしまうこともあります。
2009年はちょうど熟成が始まった感じ。スパイス感がいい感じです。
2000年は複雑さがかなり出てきています。料理に合わせるという意味では2014年よりいいかもしれません。ヒルサイドセレクトは熟成力も十分にあることを改めて感じました。

ところで、シェーファーは2015年頃からTD-9とシャルドネでDiamという合成コルクを使っています。これの成果について聞いてみたところ、素晴らしく満足しているそうです。ヒルサイドセレクトにも使う可能性があるのか質問したら、予定はあるとのこと。当初からヒルサイドセレクトでも一部をDiamにして熟成などを検証しているそうで、ここ数年のうちにはヒルサイドセレクトを含めてDiamに変わる可能性が高そうです。トップクラスのカリフォルニアのワイナリーで全面的に合成コルクを使うのは初めてかもしれません。