7月頭なので、もう2カ月近く前になってしまいましたが、ソムリエなどワインのプロによる非営利団体ギルドソム(GuildSomm)のケリ・ホワイトさんのカリフォルニアワイン・セミナーに出席してきました。ケリ・ホワイトさんはギルドソムのシニア・スタッフ・ライター。ニューヨークでソムリエをしたあと、ナパに住み、レストラン「Press」のワイン・プログラムに携わったり、「Napa Valley、 Then & Now」という本を出版したりしています。



今回のセミナーは2時間でカリフォルニア全域を紹介し、12種のワインを試飲するというもの。講義はすべて英語で通訳はつきません。どうやってこれだけカバーするのだろうと思っていたら、ワインはどんなワインかの説明を簡単にするだけで試飲はそれぞれが話を聞きながら勝手にするという形。確かに効率を重視するのなら、こういう方法もあるのだなと思いました。

また、カバー範囲が広いため、説明の内容は比較的概要レベルでした。今回の出席者はカリフォルニアワインのプロが多かったため、基本的と捉えられた人も多かったかもしれませんが、カリフォルニアワインにそれほど詳しくない人に、このレベルのセミナーをもっと提供できると、カリフォルニアワインへの理解も進むのではないかと思いました。

興味深かったのがワインの選択です。日本に輸入されているワインという制約はあるものの、ケリ・ホワイトさんがある意味、その地域を代表するワインとして選んだということだと思うからです。

特に最初のワインは面白い選択。
マサイアソン タンデュ 2016、カリフォルニア(Matthiason Tendu 2016)
です。いわゆるニューカリフォルニア系の白ワインでヴェルメンティーノ(Vermentino)というイタリア系の品種が90%、フレンチ・コロンバードが10%。アルコール度数は10.3%という低さです。

ケリ・ホワイトさんはスティーブ・マサイアソンを「ニュー・ロックスター」と表現していました。昔からのイメージのカリフォルニアでは考えられないワインですが、白い花の香りやピーチの風味、チョークのニュアンスなど面白く、とても良くできていました。1リットルのボトルで国内での価格は3350円。価格以上の充実感があります。

ワインは4種ずつ供されましたが、最初のグループはマサイアソン以下
The Hilt CHardonnay 2015, Santa Barbara
Storm Pinot Noir 2014, Santa Barbara
Tablas Creek 'Cote de Tablas Rouge' 2013, Paso Robles

ヒルトはリッチながらきれいな酸があり、レベルが高いワイン。ストームのピノ・ノワールはダーク・チェリーの風味。個人的にはこの味は米国の子ども用風邪薬を思い出します。ケリ・ホワイトさんは「ビューティフル・ピノ・ノワール」と表現。どちらも比較的新しいワイナリーです。

一方、急成長しているパソ・ロブレスからは新しいワイナリーではなく老舗のタブラス・クリークを選んだのは歴史的重要性も鑑みたのでしょうか。ここはナーサリー(苗木業者)もやっていて、地域のワイナリーに苗木を提供しています。パソ・ロブレスのワインは果実味が強いものが多い印象がありますが、ここのワインはスパイシーさや複雑さがより感じられます。

次の4本は
Ridge Monte Bello 2007, Santa Cruz Mountains
Eden Rift Chardonnay 2016, Cienega Valley
Arnot-Roberts Gamay 2017, El Dorado
Failla Estate Vineyard Syrah 2013, Fort Ross-Seaview
リッジで2007年のモンテベッロを持ってきたのもこだわりを感じます。このワインはカリフォルニアでは珍しく熟成させるほど魅力を増していきます。エデン・リフトはシエネガ・ヴァレーというマイナーな産地(カレラの近くです)にありますが、1849年設立というカリフォルニアでも最も古いワイナリーの一つ。古いワイナリーですが、ワインは「新しいスタイル」とケリ・ホワイトさんは言っていました。複雑味のあるワインでした。

その後もニューカリフォルニア系生産者のアルノー・ロバーツでエル・ドラドのガメイだとか、冷涼なフォートロス・シーヴューのシラーだとかこだわりの感じられるワインが続きます。

最後の4本は
Buena Vista Zinfandek 2016, Sonoma
Schramsberg Blanc de Blancs 2016, North Corst
Trefethen Estate 'Dry' Riesling 2017, Oak Knoll District
Freemark Abbey Cabernet Sauvignon 2014, Napa Vally
今度はうってかわって、ナパやソノマからクラシックな味わいのワイン。新しいものと古いもののミックスが面白く感じました。

普段のワインセミナーとは違う刺激を受けたセミナーでした。今度はもっと深堀りするような話を聞いてみたいです。

本来、もっと早く報告するセミナーでしたが、ちょうど個人的にいろいろあったところでなかなか手を付けられなかったこと、関係各位、もうしわけありませんでした。