ワインライター/翻訳家の立花峰夫さんがカリフォルニアワインあとりえとコラボしてワインを紹介する企画で取り上げられていたワインの一つがスコリウム・プロジェクトのジンファンデル「FTP-Z」です。

スコリウム・プロジェクトはオーナーであるエイブ・ショーナーが一人で取り組むワイナリー。スコリウムというのは「school」などと語源を共にする語で、ワインに学ぶということを意図しているらしいです(scholiumの単語としては「傍注」といった意味があります)。基本的には先人がやってきたことから学んでワインを作るというプロジェクトなのですが、皆と同じようなワインを作るというのではなく、むしろほとんどメインストリームには乗らないようなワインがほとんどです。畑も、だれも聴いたことないような場所にあるものが多数。生産量もごくわずかです。

峰夫さんによると、エイブ・ショーナーはかなりの奇人。
カリフォルニアの醸造家にも、「奇人変人」のカテゴリーに属するひとたちが少なからずいます。

その1:いろんな理由で人格が破綻しているヒト
その2:ゴリ系の自然派的・野獣派的なひと
その3:人文系の学者あがり

それぞれのカテゴリーで、具体的な人物名と理由を記した詳細リストは別売りになりますが(ウソ)、スコリウム・プロジェクトのオーナー醸造家であるエイブ・ショーナー -Abe Schoener-は、上記その1~その3の全部にあてはまるという、なかなか残念な人物のようです。
ジョン・コングスガードやウォーレン・ウィニアルスキーといったまともな人に師事しているのですが、どうもその人達の負の部分ばかりを吸収してきたようで…

スコリウム・プロジェクトのワインもそれなりに試飲してきましたが、美味しく飲めるワインももちろんありますが、いわゆる「ニューカリフォルニア」系の生産者の中でも「おっとこれは」と思うものに当たる比率も、高い方になるかと。そういう意味ではちょっとドキドキしながら試飲するワイナリーです。ワイン・アドヴォケイト、ワイン・スペクテーター、ヴィナスでもあまりレビューはされておらず、時には「ファンキー」などと形容されることもあります。それでも、一部の愛好家には絶大な支持を得ているようです。
エイブ・ショーナー
今回のジンファンデルFTP-Zは峰夫さんが「このワインはマトモです。というか、ちゃんと美味しい。瓶詰め前の添加とはいえ、亜硫酸もちゃんと入っているから、めだった気まずい臭いもしません。若干の揮発酸臭はあるものの、ワタシ的には「赤いフルーツのアロマを、揮発酸が持ち上げてくれてるから、むしろオッケー」な感じですし、酸化臭、還元臭、腐敗酵母臭、マメ臭など自然派にありがちなイケナイ匂いはしませんです」と書いており、だまされたと思って買ってみたのでした。

畑はロウダイのキルシェンマン・ランチ。ターリー(Turley)のワインメーカーとして知られるティーガン・パサラクアが個人として所有している畑です。ターリーのほかベッドロックやカーライルといったジンファンデルの達人達がワインを作る銘醸畑。100年を超える古木の畑と言われています。

飲んでみました。赤系の果実がきれいで、意外といってもいいほど飲みやすいワイン。ザクロやラズベリー、ストロベリーの味わい。かすかにミンティな風味もあります。

濃厚さは全くないワイン。ワイン名のFTP-Zは「F*CK Tegan Passalacqua-Zinfandel」の略だそうで、あなたブドウ分けてもらってその言い方はないでしょうと思ってしまいますが、それでも許される魅力がこのひとにはあるんでしょうね。