Steven Spurrier - Stierch
「パリスの審判」の名前で知られる1976年のパリ・テイスティングの主催者であり、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の創設者であるスティーヴン・スパリュア氏が2021年3月8日、亡くなりました。79歳でした。

イギリス出身のスパリュアは1971年、パリに「レ・カーヴ・ドゥ・ラ・マドレーヌ」というワインショップを開き、1973年にワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」を始めました。当時はワインスクールはフランスではほとんどなかったため、人気を博したようです。

1976年にアメリカの建国200年を祝って何かイベントを開きたいと考えた彼は、スクールで彼の右腕として働いていたパトリシア・ギャラガーの発案を受け、当時ブティック・ワイナリーが次々と登場していたカリフォルニアワインとフランスワインのブラインド・テイスティング・イベントを行いました。当初はお祭り的なイベントで、カリフォルニアワインもこんなに美味しくなったよというのを見せようとしていましたが、最終的にはブラインド・テイスティングで真っ向勝負することになりました。

結果的には白(シャルドネ)も赤(ボルドー系)もカリフォルニアワインが勝利することになり、それをこのとき唯一取材していた米Times誌の記者ジョージ・テイバーが「Judgement of Paris」として記事を載せたことで一気に世界中にその快挙が轟き、カリフォルニアワインが世界の一流に並ぶきっかけとなったのでした。

おそらく、このイベントがなければカリフォルニアワインの地位が上がるのに、もう20年はかかったのではないかと思います。それだけインパクトが大きく、カリフォルニアだけでなく新世界のワイン生産者すべてに勇気を与えたものでした。

彼の功績はこれで終わったわけではなく、英デカンター誌にはたびたび記事を執筆し、現在に続く大イベントDecanter World Wine Awardsを始めました。ワインスクールも各地に開きましたが、現在はクローズしたものが多く、日本のアカデミー・デュ・ヴァンが一番成功しているようです。

ご冥福をお祈りします。
null
「レ・カーヴ・ドゥ・ラ・マドレーヌ」の前にて(Academie du Vin Library)