ナパ・ヴァレー・レジスターにラジャ・パーの4つ目のワイナリーの記事が出ていました。数年前からやっているプロジェクトですが、全然知らなかったので紹介します。

raj parr
写真は2014年に来日したときのもの

ラジャ・パーは有名なソムリエ/ワイン・ディレクターで、サンフランシスコの著名レストラン「ルビコン」のソムリエに始まり、マイケル・ミーナという著名レストラン・グループでのワイン・ディレクターなどを勤めました。また、2011年に始めたIPOB(In Pursuit of Balance)は、カリフォルニアワインに低アルコール化の流れを作る機運を作り、自身のワイナリーであるサンディ(Sandhi)とドメーヌ・ド・ラ・コート(Domaine de la Côte)では、エレガントなシャルドネとピノ・ノワールを作って注目を集めました。さらに、オレゴンで有名ソムリエのラリー・ストーンと、ブルゴーニュのコント・ラフォンが始めたイヴニング・ランドを買収し、オレゴンでもトップクラスのワイナリーに仕立てました。

ブルゴーニュ・ワインのファンであることを公言しており、これまでのワイナリーでも基本的にはシャルドネとピノ・ノワールだけを作ってきたラジャ・パーの4番目のプロジェクトがフェラン・ファーム(Phelan Farm)です。他のプロジェクトがサシ・ムーアマンと共同で手掛けているのに対し、フェラン・ファームはラジャ・パーだけのプロジェクトになっています。

フェラン・ファームは、今年AVAとして認定されたSLO(スロー、San Luis Obispoの略)コーストにあります。カリフォルニアで一番冷涼なAVAと言われていたエドナ・ヴァレーと、その隣のアロヨ・グランデ・ヴァレーを含む非常に冷涼なエリアです。フェラン・ファームも太平洋からわずか5kmしか離れていないところにあるというので、ブドウがちゃんと育つのかどうかも心配になるくらい冷涼なエリアになります。

フェラン・ファームは1851年にフェラン家が作った農場で1100エーカーの農場の中でわずか11.5エーカーだけがブドウ畑になっています。グレッグ・フェランが2007年に自根で植えたシャルドネとピノ・ノワールがあります。

このブドウ畑をリースしたラジャ・パーの当初の計画は、土地の耕起をしない再生型農業でなるべく自然のままでブドウを育てようというものでした。ラジャ・パーを含めたわずか3人のチームで畑仕事を全部賄い、収穫時も3人だけピッカーを雇うという最小の人員でのオペレーションを志しています。

ブドウ畑の健康を強化するためにイラクサ、ヤナギの樹皮、ルーピンなど、自生する植物から作った発酵スプレーを散布しています。さらに、「ターメリックやニームオイルのプレップ(調合剤)は、海の水を使って作っています」とアーユルヴェーダ的なタッチを加えます。

2017年から2018年にかけては、接ぎ木によってフランスのジュラとかサヴォワ地区原産の15種類のブドウを植えました。植えた品種はモンデュース(Mondeuse)、サヴァニャン・ヴェール(Savagnin Vert)、サヴァニャン・ジョーヌ(Savganin Jaune)、プルサール(Poulsard)、アルテス(Altesse)、トゥルソー(Trousseau)、ガメイ・ノワール(Gamay Noir)など。また、サイダー用にハーフエーカーだけりんごも植えました。

ワインはすべて除梗なしで天然酵母を使って発酵、ニュートラルな樽で熟成します。SO2は添加しません。ピノ・ノワールにガメイ・ノワールとモンデュースのブレンドなど、ユニークなワインも様々作っています。

1500ケースの生産量ですが、これまでのところ販売は順調のようです。