カリストガの山麓を後にし、ヴァレーに戻ってカリストガのフィッシャー(Fisher)でディナーです。この日のディナーのテーマは家族経営の小規模生産者による珠玉のワイン。

実はナパの生産者の92%は家族経営で、生産量も1万ケースに満たないところが大半です。実際この日に回ったワイナリーも前日に回ったワイナリーもすべて家族経営のところでした。生産量も1万ケースに達していないところが多いと思います。

今回はフィッシャーのほかにクロスビー・ローマン(Crosby Roamann)、マッケンジー-ミューラー(McKenzie-Mueller)、スタッグリン・ファミリー(Staglin Family)、スチュワート・セラーズ(Stewart Cellars)の4つのワイナリーがディナーに参加していました。この中でクロスビー・ローマンはSWIRL、マッケンジー-ミューラーはヴィレッジ・セラーズが、スタッグリン・ファミリーは中川ワインが、スチュワート・セラーズはセンチュリートレーディングカンパニーが日本に輸入しています。



会場となったフィシャーは1973年に設立されたワイナリーです。当初はマヤカマス山脈のソノマ側にありました。おそらくいちばん有名なのはナパではなくソノマにある「ウェディング・ヴィンヤード」の畑で作るカベルネ・ソーヴィニヨン。1975年からナパでもワインを作り始め、今回のワイナリーは2019年に作られた新しい建物です。ナパのワインではフラッグシップのコーチ・インシグニア(Coach Insignia、ジョセフ・フェルプスのインシグニアとは別のワインなので注意)というカベルネが有名です。今回はLamb Vineyardという単一畑のワインが供されました。
ヴィンテージは206年。予想以上に酸のしっかりしたカベルネ・ソーヴィニヨンでした。

マッケンジー-ミューラーはボブ・ミューラーが妻のカレン・マッケンジーと1989年にカーネロスで作ったワイナリー。カーネロスとオークノールに畑があります。今回はカベルネ・フラン 2018でした。生産量全体で2000ケースという小さなワイナリーでカベルネ・フランは250ケースほどです。オークノールの畑は1970年代の樹もまだ残っているとのこと。このワインは80%カベルネ・フランでマルベック、メルローもブレンドされています。
飲んだ感想としては、ハーブやレッド・チェリー、ザクロなどの赤果実などカベルネ・フランらしい風味が前面に出ています。カカオやタバコの風味もあります。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの違いを典型的に表現しているいいワインだと思います。

クロスビー・ローマンからは2018年のメルロー。80%メルローで15%がカベルネ・ソーヴィニヨン、残りがカベルネ・フランです。樽発酵樽熟成しており、発酵には20日間と比較的ながくかけています。生産量600ケースのワイン。
飲んだ感想としては赤と黒の果実の風味。メルローとしてはかなりタンニンを強く感じ、ストラクチャーもしっかりしています。

スタッグリン・ファミリーはラザフォードのマヤカマス側のベンチ(山麓)にあるワイナリー。ボーリュー・ヴィンヤード(BV)が持っていた畑を自社畑として使っています。この畑からはフィネスのあるワインが作られるとのことです。ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネ、および「Salus」というセカンドのカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネの4つをメインに作っています。
今回のワインはカベルネ・ソーヴィニヨン 2014。ラザフォードの素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンの典型のようなワインです。肉厚なボディに黒系の果実の風味。黒鉛のような芯の通った風味もあります。きめ細かいタンニン。個人的にはこのディナーのベストでした。


スチュワート・セラーズはヨントヴィルにあるワイナリー。2000年に設立されています。ベクストファーのト・カロン、ドクター・クレーン、ミズーリ・ホッパー、ジョージIIIといった素晴らしい畑とも契約してワインを作っています。今回のワインは2019年のリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンでHannah Vineyard80%、Juliana Vineyard20%という構成。
スタッグリンと比べるとより果実味が強く芳醇な味わい。果実味が好きな人はこれが合うと思います。

最後にスペシャル・ワインとして1996年のフィッシャーのカベルネ・ソーヴィニヨンを出していただきました。まだまだ濃厚でリッチな味わいのカベルネ・ソーヴィニヨン。貴重なワインをありがとうございます。




ディナーは昨日もそうでしたが豪華な食事というよりも、食材の美味しさをシンプルに引き出したものが中心です。野菜のグリルにチキンやビーフのローストを取り分ける形でのディナーでした。特にポテトやピーマン、アスパラガスといった野菜のグリルは美味しく、カリフォルニアはやはり野菜が美味しいと再確認しました。なお、取り分ける形になっていたのは少食な人も大食いな人も自分に合わせて取れるようにというNVVの気遣いからのものでした。