四日目(ナパでは三日目)の午前は、小グループに分かれて畑の作業を学びました。グループによって少しずつ内容が違っていたようですが、私はティエラ・ロハ(Tierra Roja、スペイン語で赤土という意味)というワイナリーのグループでした。

ティエラ・ロハはリンダ・ニール(Linda Neal)の小さなワイナリー。オークヴィルの東のヒルサイド、ジョセフ・フェルプスのバッカス・ヴィンヤードのすぐそばに畑を持っています。丘を上った先はダラ・ヴァレ、Silverado Trailを渡って100メートルほど行けばボンドのセント・エデン、スクリーミング・イーグルも数百メートル先に見えるという超一等地です。


リンダはブドウ畑を管理する会社を20年もやってきた業界の大ベテラン。会社をやめて今は自身のワイナリーでの栽培に専念しています。ワイナリーでは醸造は委託。2019年まではトアー(Tor)のワインメーカーでもあるジェフ・エイムス(Jeff Ames)、2021年からはレアム(Realm)やティーター・トッター(Teeter-Totter)のブノワ・トケ(Benoit Toque)という素晴らしいワインメーカーに依頼しています。Tierra Rojaのワインはフレンチ・ランドリーにもリストされています。

今回は、彼女から剪定などを教わるのがメインです。彼女自身の畑ではなく他の畑で作業します。

最初に向かったのはカーネロスの畑。そこで「芽かき」の作業をします。

ヴィンヤード・ワーカーに最初に必要なのは「帽子」だとのことでティエラ・ロハのキャップをいただきました。帽子が似合わないことには自信があるのですが、かぶって作業しました。

今回の畑は、いわゆる短梢剪定、コルドンのタイプの剪定をしている畑です。樹の幹が地面から1メートルくらいの高さまで伸び、そこから左右に分かれていきます。

今回の畑の作業で一番の基本となるのは「ブドウの実を付けるのは、その年に新しく伸びた枝(シュート)だけである」ということと、「枝が出てくるのは、昨年1年めの枝だった梢からだけである」ということです。昨年の枝を長く残して、そこからシュートを出すのが「長梢剪定(ケイン・プルーニング)」です。



今回の短梢剪定((スパー・プルーニング)では、コルドンのところどころに短いスパーが残されている形になります。このスパーから芽が出てくるわけですが、基本的には一つのスパー当たり2つの芽を残して後は取ってしまいます。これが芽かきです。また、芽は幹から直接出てくることもありますが、こういった芽が伸びて枝になってもあまり実を付けないのでそういった芽も取ってしまいます。

と、これだけ書けば簡単そうですが、実際にはスパーから出ているのか幹から出ているのか、ちょうど間で判別が難しいことも多々あります。また1カ所から2つの芽が出ているときもあり、そういったときはどちらを残すか判断しないといけません。ブドウの房になるところがもう出ている方の芽を残したり、まっすぐ上に出ている芽を残したりといったことが基準になるそうですが、リンダさんは最終的には自分の好き嫌いで決めているようで、素人の我々には「どっちを選んだらいいの?」というのがかなり悩ましかったです。わずか数十分の作業でしたが、とても楽しく作業しました。


その次は、ラザフォードにあるリンダさんの知り合いが趣味で持っている小さな畑に行って剪定作業を学びました。本当はもう剪定は終わっていないといけない時期ですが、本業が忙しくてほったらかしになっていたそうです。我々にとってはラッキーなことでした。



この畑も短梢剪定(こちらの方が比較的易しいようです)を使っています。剪定作業は昨年実を付けた枝をカットして、今年の芽が出る場所を決めてあげることになります。枝の中で節のようになっているところから芽が出るので、1本に付き2カ所それを残した形でカットしていきます。また、1カ所から2つ枝が出ているところもあるので、そういったところは片方を根元からカットします。


それから垣に沿ってワイヤーが這っていますが、幹がない部分もあります。そういったところには幹を伸ばしていく必要があります。具体的には、昨年の枝を将来の幹にするために育てていくのですが、そのためには幹に育てる枝を選んで、それだけは短くカットしないといった判断も必要になります。

ここは同じ短梢剪定といっても、1本の樹についてコルドンが4つずつある形です。片側だけの作業では終わらないのがちょっと面倒(な気がする)、

今回はハサミを持った作業なので怪我をしない・させないように注意も必要です。エプロンも付けて鞘に入ったハサミをポケットに入れます。砥石ももらい、最初はハサミを研ぐところからです。

研いでいても、枝をカットするのはかなり力が要ります。片手では難しいこともしばしばありました。特に根元からカットするときは幹の部分まで切り取ることになるのでさらに力が必要です。リンダさんもぐりぐりハサミを回しながら切っていたので、それを真似て作業しました。

根元からカットするのはかなり力が必要です。男性でも両手を使わないと難しいですが、リンダさんは片手で切っていきます。

最初はジャングルのようだった畑が剪定をしていくうちにきれいになっていくのはかなり気持ちいいです。すっきりしてくると、カットした枝を引き抜くのも楽になります。短い時間で全部できなかったのがみんな残念だったようで、時間を伸ばせないか聞いてみましたが、それは無理でした。

剪定してすっきりするとかなり気持ちがいいです

あと、もう一つ細かい作業をしました。先程、幹に育てる枝を残すと書きましたが、この枝がちゃんとワイヤーに沿って横に伸びるようにテープでくくりつけるという作業です。これもなかなか楽しい。

こうしてあっという間に畑の作業は終わってしまいました。予想以上に楽しく、またやりたいと思ったのは私だけではなかったと思います。


メキシカンスーパー

その後はメキシカンのスーパーに行ってランチをピックアップし、ティエラ・ロハ(つまりはリンダの自宅)にいきます。グループによってはちゃんとしたメキシカンのレストランでテイクアウトしたところもあったようですが、私のグループはメキシコ人の労働者が実際に毎日のように食べている食事です。食事に合わせるのもビール。この日はまだワイン飲んでいません(笑)。

ランチはかなりのボリュームです

食べたのはまずブリトー。何はなくともこれがあれば食事になるオールインワンの食べ物です。日本人にとってのおにぎりのような感じでしょうね。ただしかなりでかい。多分一つでコンビニおにぎり3つか4つ分くらいの分量があると思います。
それから「タマーレ」。これはトウモロコシの粉を蒸して、ひき肉と混ぜて皮に包んでさらに蒸したようなもの。日本でいうとちまきみたいな感じです。大きさはこれもちまき2つ分(笑)。
それからカサディーヤ。薄いトルティーヤにチーズを挟んだようなものですが、日本で食べるのの倍くらいの厚みがあります。
そしてタコス。これだけは普通サイズ(笑)。
最後に、豚の皮を揚げたもの。皮までちゃんと食べるというのはサスティナブルです。見るからに高カロリー。日本人にとっての鶏の唐揚げみたいな感じなのでしょう。カリカリでビールが進みます。残さず食べたらかなりお腹いっぱい。さすがにちょっと食べすぎました。

ランチの後は少しだけ時間があったので、ティエラ・ロハの畑を見学します。ここも短梢剪定でしたが、病気になった樹を植え替えたところがあったり、上を切って接ぎ木をしたところがあったりと、やはり実地で見るのは面白いです。

上を切って接ぎ木した木

ここの畑は前述のようにオークヴィルの東側のヒルサイド。プリチャード・ヒルから降りてきたところで、プリチャード・ヒルと同じ、鉄分が多く、石だらけの赤い土があります。これも頭では知っていましたが、実際に見るとまさしくそのとおりで納得しました。

そして残り時間10分くらいでようやくティエラ・ロハのワインの試飲です。ヴィンテージは2019。ジェフ・エイムスの作ったもの。これがワイナリーでの最後の在庫(生産量は多くて250ケースというごく少量のワイナリーです)。


果実味しっかりあって、濃厚なワインですが、重くない。今回たくさんカベルネ・ソーヴィニヨンを試飲して感じましたが、やはり素晴らしいワインは重くない。おそらく酸などとのバランスやさまざまな複雑な風味によるものなのでしょう。それは多くのワインに共通していたと思います。

このワイン、買いたかったなあと思ったのに在庫がなくて残念だったのですが、最後の最後にサプライズ。バックヴィンテージのワインを一人1本プレゼントいただいたのです。これには感激しました。

そして時間がないところでもう一つ、倉庫にいってルートストック(台木)を見せてくれました。これはセント・ジョージという台木で、ここの斜面にはこの台木が必要なのだそうです。樹勢が強く、根をしっかり張るので、ここの斜面でも根付くとのこと。ほかの台木だと根付くことが難しいのだそう。逆に肥沃な土地ではセント・ジョージは樹勢が強すぎてあまり良くないと言っていました。そして、これは苗木屋で売っている時点ですでにカベルネ・ソーヴィニヨンが接ぎ木した状態になっています。このまま植えればいいとのこと。


リンダはカーナビ付けながらもしょっちゅう道を間違えるし、ハラハラしながらもとってもチャーミングで面白く、また畑の管理のことについてはとても真面目なのがよくわかって(車の中では、ヴィンヤードワーカーの管理や確保などいろいろな話を聞きましたが、ここでは省略します)とても素敵な人でした。ちなみに寒いのが苦手なので、カーネロスには午前中の早い時間しか行かないそうです(10時くらいをすぎると風がだんだん出てきて寒くなるそうです)。そういったお茶目なところも魅力的でした。