Floraという極めてマイナーなブドウ品種の記事がSFクロニクルに出ていました。FloraはUCデーヴィスの有名な学者だった故ハロルド・オルモ氏がゲヴェルツトラミネールとセミヨンをかけあわせて作った品種。セミヨンの蜂蜜のような香りやゲヴェルツトラミネールの持つ花の香りを合わせもったようなブドウになることを目指して作ったものです。

元記事にはフローラを現在育てているのはナパのヨントヴィルにあるYount Mill Vineyardのみとなっていますが、2022年のクラッシュ・レポートによるとカリフォルニア全体で14.1トンのフローラの収穫があり、うち11.3トンがナパ産となっています。このほかサン・ルイス・オビスポ、サンタ・バーバラ、ヴェンチュラの3郡の中で1トン、シエラ・フット・ヒルズのあたりで1.8トンとごく少量作られています。

Yount Millの畑ではこの品種が発明された直後の1958年からFloraを植えているとのこと。最初の顧客はチャールズ・クリュッグだったそうです。

そして、1972年からこの品種を買っており、最大の顧客となっているのがシュラムスバーグ。この品種のアロマティックな性質が、デザートワインに向いていると考え、ドゥミセックのスパークリングに採用しています。
Flora
残念ながらこのワインは国内輸入がないようです。

このほかマサイアソンのヴェルモットでも使われています。日本でも販売されていた「No.4」という4回めに作ったヴェルモットでも80%がFloraです。ワインの説明には以下のように書かれています。

まず、私たちのベルモットは、ワインが主役です。ベースとなるワインは80%がフローラです。フローラという品種は、1950年代に伝説的なハロルド・オルモがUCデイヴィスで育てたものです。フローラはセミヨンとゲヴェルツトラミネールの交配種です。今となってはオルモに直接質問して私たちの説を確かめることはできませんが、彼が酒精強化ワインのために特別に作ったものだと確信しています。カリフォルニアのワイン産業は、この種のワインから遠ざかり、フローラは幻の存在になりました。しかし、ヨント・ミル・ヴィンヤードの有機農法で栽培されたフローラがまだ存在すると知り、私たちはすぐに果実の提供をお願いに行きました。通常、私たちはすべての果物を自家栽培していますが、この希少で歴史的な品種からワインを造るという誘惑には勝てませんでした。

このほかZDがロゼを作り、栽培家であるHoxsey-Onyskoが「Elizabeth Rose」というブランドで白ワインを作っています。

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シュラムスバーグのクレマン・ドゥミセックはワイナリーの売上のわずか2%でしかありませんが、熱烈なファンが付いているそうです。また、これは非常に長熟なスパークリングにもなるとのこと。

マサイアソンのヴェルモットは試飲したことがあって、とても美味しかった記憶はありますが、こんなマニアックな品種を使っているとは知りませんでした。次に輸入されたらぜひ飲んでみたいと思います。