ジンファンデルの誤解を解く
多くの人のジンファンデルのイメージは「濃くて甘くてジャミーなワイン」だろうと思います。高級ワインになる品種というより安価な日常ワイン向けの品種と思っている人も多いでしょう。私自身、かつては「ジンファンデルはバーサタイル(幅広い)なワインになる」と聞いて首を傾げたこともありました。
この記事ではそんなジンファンデルについて、歴史を紐解きながら、誤解を解くことに挑戦したいと思います。
ジンファンデルがクロアチア起源であることを突き止めたのがUCデーヴィスのキャロル・メレディス教授(当時)。それ以前からイタリアのプリミティーボと同じでは、とかクロアチアのプラヴァッツ・マリと同じではといった噂はありましたが、DNA鑑定によって、クロアチアにわずかに残っていたツールイェナック・カシュテンランスキーという品種と同じであること、またプリミティーボも同じ仲間であることが分かりました。
一方、ジンファンデルという名称については、ニューヨークの苗木商が名付けたという説が有力です。ハンガリーに「Zierfandler」という白ブドウの品種があり、そこに紛れ込んでいた黒ブドウが「Black Zinfindal」と呼ばれたというものです。カリフォルニアに多くの苗木を輸入したアゴストン・ハラジー(ハラスティ)が持ち込んだ説も見かけましたが、ニューヨークには1930年代にはあったことが分かっていますので、ニューヨークが先であることは間違いありません。
これがゴールドラッシュとともにカリフォルニアに持ち込まれ、一躍メジャー品種になったわけです。理由の一つが育てやすさ。ジンファンデルはゴブレットやヘッド・プルーンと呼ばれるような垣を作らない育て方が容易にできるブドウです。ゴールドラッシュの時代、金属は貴重品であり垣のためのワイヤーも調達が大変でした。そこでヘッド・プルーンに向くジンファンデルがはやったと言われています。栽培に手がかからず、収量が多かったことも人気につながったと思います。当時のカリフォルニアの政府が推奨品種として挙げていたということも普及を後押ししたのでしょう、当時の畑で今に残るところはほとんどがジンファンデルが中心に植えられています。
このジンファンデル、果実の色は濃いですが、ブドウの実も房も大きくタンニンは低めになります。果皮が薄いのでワインの色はあまり濃くなりません。ジンファンデルとしばしば一緒に植えられていた品種の一つとしてアリカンテ・ブーシェがあります。アリカンテ・ブーシェは皮だけでなく果実も赤いのでワインは非常に色が濃くなります。ジンファンデルの色の薄さを補うために一緒に植えられていたものと考えられます。プティ・シラーも一緒に植えられることが多いですが、こちらも色が濃く、またタンニンも強いブドウです。ジンファンデルの色の薄さやタンニンの低さを補う狙いがあったと思われます。
このように、ジンファンデルというのは本来はエレガントな味わいの品種なのです。
ジンファンデルのもう一つの特徴は果実の成熟が不均一ということです。同じブドウの房の中に緑色のブドウと完熟したブドウが共存するといったことが普通に起こります。このため、緑色の果実が熟すのを待つと早く熟した果実はレーズン化してしまいます。これがジンファンデルのワインがしばしばジャミーな味わいになる理由です。ジャミーなワインにはジャミーなワインの良さや楽しさがあるので、それを否定するわけではありませんが、そういったスタイルにするかどうかはあくまで生産者の判断によるものであり、それがジンファンデルに共通するスタイルというわけではないのです。
Turleyがアルコール度数16%を超えるようなジンファンデルで一世を風靡したころは、完熟というより過熟なブドウによるジンファンデルが幅を利かせていましたが、今はもっとバランスが取れたスタイルのワインが多くなってきています。Turleyのワインも昔とは全くスタイルが違っています。
ジンファンデルの楽しみ方としてぜひ知ってほしいのが古木の畑のワインです。カリフォルニアには19世紀から20世紀初頭に植えられた樹齢100年を超えるジンファンデル主体の畑が今もなお何十と残っています。前述のようにこれらの多くは他の品種と混じって植えられています(フィールド・ブレンドといいます)。この比率は畑によって違いますので、畑による味わいの違いが、土壌や気候以外の要素でも出てくるわけです。そういった畑ごとの個性を味わってほしいと思っています。これらのワインはジンファンデルの中では高価ですが、それでも1万円を超えるのはめったにないので、他の品種に比べると割安感があります。
以下ではお薦めのジンファンデル(ジンファンデル主体を含む)を挙げておきます。
コスト・パフォーマンス抜群。甘やかですがジャミーではないジンファンデル。
ベッドロックが作るエントリーライン。気軽に飲むスタイル。
この価格でパーカー95点。
古木の畑の保護に力を入れるベッドロックが、様々な古木のブドウをブレンドして作る格安品。
ターリーの入門編
100年超える畑のブドウでこの価格。
エレガント系ジンファンデルの老舗。時代が追い付いてきた?
ベッドロックの自社畑。100年超える古木。ベッドロックのモーガンのMW論文はここのフィールド・ブレンドを分析したものでした。
リッジのジンファンデル系を代表するのがソノマのリットン・スプリングスとガイザーヴィル。数kmしか離れていないこの二つの畑の違いを味わってほしい。
ジンファンデルのゴッドファーザーと呼ばれるジョエル・ピーターソンが作る、現存する最も古い畑のジンファンデル。
鬼才エイブ・ショーナーがジンファンデルを作るとこうなる
この記事ではそんなジンファンデルについて、歴史を紐解きながら、誤解を解くことに挑戦したいと思います。
ジンファンデルがクロアチア起源であることを突き止めたのがUCデーヴィスのキャロル・メレディス教授(当時)。それ以前からイタリアのプリミティーボと同じでは、とかクロアチアのプラヴァッツ・マリと同じではといった噂はありましたが、DNA鑑定によって、クロアチアにわずかに残っていたツールイェナック・カシュテンランスキーという品種と同じであること、またプリミティーボも同じ仲間であることが分かりました。
一方、ジンファンデルという名称については、ニューヨークの苗木商が名付けたという説が有力です。ハンガリーに「Zierfandler」という白ブドウの品種があり、そこに紛れ込んでいた黒ブドウが「Black Zinfindal」と呼ばれたというものです。カリフォルニアに多くの苗木を輸入したアゴストン・ハラジー(ハラスティ)が持ち込んだ説も見かけましたが、ニューヨークには1930年代にはあったことが分かっていますので、ニューヨークが先であることは間違いありません。
これがゴールドラッシュとともにカリフォルニアに持ち込まれ、一躍メジャー品種になったわけです。理由の一つが育てやすさ。ジンファンデルはゴブレットやヘッド・プルーンと呼ばれるような垣を作らない育て方が容易にできるブドウです。ゴールドラッシュの時代、金属は貴重品であり垣のためのワイヤーも調達が大変でした。そこでヘッド・プルーンに向くジンファンデルがはやったと言われています。栽培に手がかからず、収量が多かったことも人気につながったと思います。当時のカリフォルニアの政府が推奨品種として挙げていたということも普及を後押ししたのでしょう、当時の畑で今に残るところはほとんどがジンファンデルが中心に植えられています。
このジンファンデル、果実の色は濃いですが、ブドウの実も房も大きくタンニンは低めになります。果皮が薄いのでワインの色はあまり濃くなりません。ジンファンデルとしばしば一緒に植えられていた品種の一つとしてアリカンテ・ブーシェがあります。アリカンテ・ブーシェは皮だけでなく果実も赤いのでワインは非常に色が濃くなります。ジンファンデルの色の薄さを補うために一緒に植えられていたものと考えられます。プティ・シラーも一緒に植えられることが多いですが、こちらも色が濃く、またタンニンも強いブドウです。ジンファンデルの色の薄さやタンニンの低さを補う狙いがあったと思われます。
このように、ジンファンデルというのは本来はエレガントな味わいの品種なのです。
ジンファンデルのもう一つの特徴は果実の成熟が不均一ということです。同じブドウの房の中に緑色のブドウと完熟したブドウが共存するといったことが普通に起こります。このため、緑色の果実が熟すのを待つと早く熟した果実はレーズン化してしまいます。これがジンファンデルのワインがしばしばジャミーな味わいになる理由です。ジャミーなワインにはジャミーなワインの良さや楽しさがあるので、それを否定するわけではありませんが、そういったスタイルにするかどうかはあくまで生産者の判断によるものであり、それがジンファンデルに共通するスタイルというわけではないのです。
Turleyがアルコール度数16%を超えるようなジンファンデルで一世を風靡したころは、完熟というより過熟なブドウによるジンファンデルが幅を利かせていましたが、今はもっとバランスが取れたスタイルのワインが多くなってきています。Turleyのワインも昔とは全くスタイルが違っています。
ジンファンデルの楽しみ方としてぜひ知ってほしいのが古木の畑のワインです。カリフォルニアには19世紀から20世紀初頭に植えられた樹齢100年を超えるジンファンデル主体の畑が今もなお何十と残っています。前述のようにこれらの多くは他の品種と混じって植えられています(フィールド・ブレンドといいます)。この比率は畑によって違いますので、畑による味わいの違いが、土壌や気候以外の要素でも出てくるわけです。そういった畑ごとの個性を味わってほしいと思っています。これらのワインはジンファンデルの中では高価ですが、それでも1万円を超えるのはめったにないので、他の品種に比べると割安感があります。
以下ではお薦めのジンファンデル(ジンファンデル主体を含む)を挙げておきます。
コスト・パフォーマンス抜群。甘やかですがジャミーではないジンファンデル。
ベッドロックが作るエントリーライン。気軽に飲むスタイル。
この価格でパーカー95点。
古木の畑の保護に力を入れるベッドロックが、様々な古木のブドウをブレンドして作る格安品。
ターリーの入門編
100年超える畑のブドウでこの価格。
エレガント系ジンファンデルの老舗。時代が追い付いてきた?
ベッドロックの自社畑。100年超える古木。ベッドロックのモーガンのMW論文はここのフィールド・ブレンドを分析したものでした。
リッジのジンファンデル系を代表するのがソノマのリットン・スプリングスとガイザーヴィル。数kmしか離れていないこの二つの畑の違いを味わってほしい。
ジンファンデルのゴッドファーザーと呼ばれるジョエル・ピーターソンが作る、現存する最も古い畑のジンファンデル。
鬼才エイブ・ショーナーがジンファンデルを作るとこうなる