「オレゴン・ワイン・ボード」と「ワシントン・ステート・ワイン・コミッション」が共同で行う「ノースウエスト・ワイン・コアリション」による「上級スペシャリスト」に合格しました。20数人(かな?)の受講生の中で2位という好成績だったのは望外でした。ちなみに、上級スペシャリストの講座をやるのが世界中で今回が2回目。日本ではもちろん初です。なお2021年に初級を受けています。
オレゴンとワシントンのワインの認定スペシャリストに合格しました!

月曜日は午前・午後とオレゴンの勉強と試飲、火曜日は午前・午後とワシントンの勉強と試飲、水曜日はテストというなかなかのハードスケジュール。テキストも180ページあり、2日で頭に入れるのは無理です。
講師はブリー・ストックMW。オーストラリアからオレゴンに移住したという方です。明快koな語り口で、説明も分かりやすく、すごくいい人でした。



講義では、午前に白ワインのフライト、午後に赤ワインのフライトが2回という試飲も行います。

最初はオレゴンの白です。
Argyle Vintage Brut 2019 Willamette Valley
Del Rio Rock Point Pinot Gris 2022 Oregon AVA
Etheric Wine Workshop Skin Contact Pinot Gris 2022 Oregon AVA
Domaine Drouhin Rose Rock 2021
Lingua Franca Estate Chardonnay 2021
Phelps Creek Chardonnay 2021 Columbia Gorge AVA
オレゴンというと従来ピノ・グリが多かったのですが、シャルドネの品質の高いクローンが導入されるようになって、急速にシャルドネが増えています。近々逆転するだろうとのことでした。個人的にはリングア・フランカのシャルドネ(AVAはエオラ・アミティ・ヒルズ)が素晴らしかったです。ハーブやスパイス感があり、かんきつ系の味わいと酸がキリっと芯を作ります。複雑で余韻も長い。
ピノグリではオレンジワインの方法で作られるスキン・コンタクトのピノグリが面白かった。ビオディナミを実践している生産者で、ワイン造りもナチュラル系。独特の風味が苦手という人もいましたが、ナチュラル系をあまり飲まない私も、これは許容範囲でした。ピノグリはピノ・ノワールからの変異種なので皮に赤系の色素があります。そのため普通のオレンジワインのような色ではなくロゼのようになります。赤果実の味わいに、ホールクラスター的なスパイスのニュアンス。タンニンによるグリップ感もあります。


赤の最初のフライトはピノ・ノワール。
Ponzi Laurelwood PN 2021 Laurelwood
Beaux Freres 2021 Ribbon Ridge
Domaine Drouhin 2021 Dundee Hills
Soter Vineyards Mineral Springs Ranch Pinot Noir 2021 Yamhill Carlton
Lingua Franca Estate Pinot Noir 2021
Cristom Eileen Vineyard Pinot Noir 2021

Ponziはやや黒系果実の味わいがあり、タンニンも比較的強いスタイル。ボー・フレールは一番エレガントな作り。ドルーアンはチェリー・コークのスパイス感に高い酸でエレガント。ソーターはパワフルで樽も強く凝縮感があるスタイル。リングア・フランカは紅茶の風味が特徴的。酸高くなめらかな味わい。クリストムはうまみがあり凝縮感も。
6つともそれぞれ良いのですが、なかなか甲乙をつけるのは難しいです。オレゴンのワインはこのあたりが難しい。もっと「変」なワインが出てくると面白いのになあなどと、傍観者としては思ってしまいます。


赤の二つ目は南オレゴン中心のフライト。
Del Rio Rock Point Pinot Noir 2022 Oregon AVA
Grachau Cellars Gamay Noir 2018 Willamette Valley
Abacela Barrel Select Tempranillo 2020 Umpqua Valley
Troon Vineyard Syrah 2021 Applegate Valley
Jackalope Wine Cellars Cabernet Franc 2021 Applegate Valley

テンプラニーリョとか植わっているの知らなかったです。シラーが結構好きでした。シナモン、スパイス、胡椒、干し肉、酸高く、青い果実もあります。
ブリー・ストックMWはガメイノワールが伸びてくると予想していました。赤い果実の風味に酸の高さ、フレッシュ感など、ピノ・ノワールに近い魅力はありますが、複雑さにはやや欠けたように思います。まだ真価はつかみかねています。


二日目はワシントンの白からです。
Eroica Riesling 2022 Ancient Lakes AVA
Nine Hats Riesling 2022 Columbia Valey AVA
Airfield Estate Sauvignon Blanc 2022 Yakima Valley AVA
L'Ecole No.41 Luminesce 2022(Semillon/Sauvignon Blanc) Walla Walla AVA
Devona Chardonnay 2020 (Columbia Valley AVA & Columbia gorge AVA)
リースリングが2つに、ソーヴィニヨン・ブランが2つ、それにシャルドネです。ちなみに白の生産量ではシャルドネが一番多く、次が僅差でリースリング。ソーヴィニヨン・ブランはその4分の1くらいです。

リースリングは二つとも残糖があるタイプ。エロイカはワシントン州最大手のシャトー・サン・ミシェルがドイツ・モーゼルのドクター・ローゼンと共同でやっているワインでモーゼルのスタイルのリースリングを作っています。そういう意味では安心して選べるワインですが、逆にわざわざこのワインを選ぶ理由があるかというところは課題かもしれません。Nine Hatsの方は残糖少な目でジンジャーのようなスパイス感がちょっと面白い。ブリー・ストックMWは「マルガリータのよう」と言っていました。
L'Ecole No.41のソーヴィニヨン・ブランはボルドー的なスタイル。樽のニュアンスが少しあり、クリーミーなテクスチャーとハーブやストーンフルーツの風味が高級感を出しています。


赤の最初のフライトはシラーなど。
Syncline Gamay Noir 2021 Columbia Gorge
Rocky Pond Clos CheValle Syrah 2020 Lake Chelan
Hedges Descendants Liegeois Dupont Syrah 2018 Red Mountain
K Vintners The Deal Sundance Vineyard 2020 Wahluku Slope
Kobayashi Cabernet Franc 2021 Yakima Valley
Dunham Trutina Red Bland 2020 Columbia Valley

Synclineのガメイはオレゴンのものより個人的には高評価。イチゴミルクにフランボワーズ、ホワイトペッパー、酸豊かで少しタンニンも感じます。美味しい、
ワシントンのシラーは基本的に好きなのですが、今回はあまり響くものがなかったです。三つの中では温暖なレッド・マウンテンで作るHedgesが良かった。K Vintnersは好きなワイナリーですが、今回のワインは全房発酵による茎の要素が前面に出ていて味わいに落ち着きがなかった。もう少し熟成するといい感じになるかもしれません。
Kobayashiのカベルネ・フランは日本のミズナラの新樽を使った珍しいワイン。ブリー・ストックMWによると、この樽からは甘さやバニラがほとんど出てこず、うまみ系の味わいやサンダルウッドの風味があるそうです。私の印象は、酸やや高くタニック。クランベリー。悪くないですが、現状ではタンニンに果実味が負けている感じ。もう少し熟成してタンニンが落ち着くと良くなるのかどうか。個性的な味わいなので評価は難しいです。


最後はワシントンのボルドー系品種のフライト。
Ste Michelle Canoe Ridge Estate Merlot 2019 Horse Heaven Hills
Seven Hills Vineyard Merlot 2020 Walla Walla Valley
Pomum Cabernet Sauvignon 2021 Rattlesnake Hills
DeLille Four Flags Cabernet Sauvignon 2021 Red Mountain
Woodward Canyon Artist Series Cabernet 2021 Columbia Valley
Matthews Cabernet Sauvognon 2021 Royal Slope

ブリー・ストックMWによるとワシントンの生育環境はメルローに合っているとのこと。スロープや風が小粒のブドウを作り、ワインにストラクチャーが生じます。普通はカベルネ・ソーヴィニヨンがストラクチャーが強く、メルローはやわらかな味わいを出しますが、ワシントンの場合はメルローのストラクチャーを和らげるためにカベルネ・ソーヴィニヨンがブレンドされるとか。
このフライトの5つのワインの中で個人的ベストは「Ste Michelle Canoe Ridge Estate Merlot 2019」。パワフルで密度高く、しなやかなタンニンがあります。果実味は赤から青。杉やミントの風味もあります。とてもいい。
Seven Hillsのメルローもタンニン強いですが、きれいで美味しい。
最後のマシューズは、ワシントンで最も評価が高いカベルネ・ソーヴィニヨンを作ってきたQuilceda Creekのチームが移籍して作っているワイナリーで、注目されています。今回のワインはややタニックですが、バランスよく美味しいです。ただ、個人的には今飲むならPomumかDeLilleを選びます。

メルローの良さに感激していたのですが、あとから3年前の初級編のときの記事を読んだら、同じことを書いていて成長していなさにがっくりきました。

三日目は選択式のテストと6種のワインのテイスティング(コメントを書いて品種とその判断理由も記します)。火曜日家に帰ってからかなり勉強したのですが、テストはあまりしっかり覚えていなかった歴史の問題が結構出て、だいぶ苦戦しました。テイスティングは白はあまり迷わなかった(2番は残糖と花の香りからリースリング、1番は最初はピノグリと少し迷ったのですが、キリっとした酸と後からバニラの風味が出てきたのでシャルドネ、おそらくエオラ・アミティ・ヒルズと判断。3番は酸の柔らかさなどからピノグリ)のですが、赤は結構迷いました。
1番は最初は赤果実にキャンディも感じたような気がしてガメイかと思ったのですが、時間が経つにつれて杉やカシスが出てきて、タンニンも強く感じるようになりました。ボルドー系品種までしぼって、メルローかカベルネかかなり迷ったのですが、リーンな味わいからカベルネを選択(答えはメルローでした)。
2番は紫系の色とスパイスの風味、青系果実からシラーと判断。
3番は赤系果実で色も薄くピノ・ノワールかと思いましたが、ピノ・ノワールにしては酸が高くなく、色も薄めとはいえ、ピノにしてはガーネット感があり、ガメイもワンチャンありそう。だいぶ迷った結果、キャンディ感が出てこなかったのでピノ・ノワールにしました(正解)。
結局メルロー以外は正解と、実力以上の結果で、おかげで2位になれたようです。ちなみに1位になったワッシーズの青木さんは赤の2番だけ間違えたとのことでした。




これからはカリフォルニアだけでなく、オレゴン・ワシントンも教えられるようにならないとですね。