40年目を迎えたスポッツウッド、エレガント・ナパの極致を味わう
ナパのセント・ヘレナにある名門ワイナリー「スポッツウッド(Spottswoode)」のベス・ノバックCEOが来日し、バックヴィンテージを含む7種のワインを試飲してきました。
スポッツウッドのフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニヨンは最新が2021年。1982年にワイナリーを始めているので、これが40回目のヴィンテージということになります。
まずはソーヴィニヨン・ブランから。スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランはナパでもトップクラスの一つであり、個人的にも大好きなソーヴィニヨン・ブランの一つです。ちなみに、ソーヴィニヨン・ブランは1984年から作っており、こちらも今回の2023年が40回目のヴィンテージです。
スポッツウッドの初代ワインメーカーはトニー・ソーター。その後、ダラ・ヴァレやアラウホ(現アイズリー)、ニーバウム・コッポラ(現イングルヌック)、ヴィアデルといったそうそうたるワイナリーでワインメーカーを務め、1990年代にはナパで一番有名なワインメーカーの一人となった才人です。現在はオレゴンでソーター・ヴィンヤーズを立ち上げてワインを造っています。
トニー・ソーターは肩書きはワインメーカーですが、スポッツウッドの畑を見て栽培にもかかわりたいと思い、1985年からは栽培も担当しています。スポッツウッドはナパで初めて有機栽培を始めたワイナリーですが、それもトニー・ソーターが主導して実現しました。
スポッツウッドは有機栽培の認証であるCCOFのほか、Demeterによるビオディナミの認証、公益性の高い企業を認証するB Corpの認証。そしてここ数年注目が増している再生可能型有機栽培(ROC=Regenerative Organic Certified)の認証も得ています。電力はすべて再生可能型のものを使っています。
1990年代にフィロキセラで全て植え替え。
ソーヴィニヨン・ブランはセント・ヘレナの自社畑にもわずかに植わっていますが、1990年以降は購入したブドウも使うようになっています。すべてトニー・ソーターが選んだ畑であり、家族経営でオーガニック栽培の畑ばかりです。
マップには現在の畑が示されています。ナパだけでなくソノマの畑も入っています。ソノマのブドウを使い始めたのは2000年過ぎくらいから。カーネロスのハイド・ヴィンヤードのソーヴィニヨン・ブランを契約していましたが、それを引き抜いてしまうということで、紹介をしてもらったのがきっかけだそうです。現在ではソノマ・マウンテンやナイツ・ヴァレーなど標高の高い畑をソノマから調達しています。
スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵容器を使っています。2023年の場合、ステンレスの小樽、普通の樽、コンクリートエッグ2つ、セラミックの発酵槽1つ、アンフォラ5つとなっています。複数の発酵槽を組み合わせることで服雑味が生まれ、フレーバーが層のように感じられるようになるそうです。今回、ライブラリーものとして持参された2013年はフレンチオークの樽とステンレスの小樽、コンクリートの発酵槽だけでしたから、種類が増えています。スポッツウッドだけでなく、近年の高級ソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵槽を使うところが多いようです。ほかの品種ではあまりそういった例を見かけないので興味深いです。
このほか、2013年との違いでは2023年の方はセミヨンが加わっていることがあります。セミヨンはカリストガのトファネリとソノマ・ヴァレーのバーソロミューという畑のものを使っています。
試飲に移ります。
2023年は柑橘やグアバ、カモミール。酸高く、厚みのある味わい。改めてカリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの中でもトップクラスの一つであることを感じました。ベス・ノバックさんは「ストラクチャー、バランス、エナジー、酸味、フレッシュ感」があるソーヴィニヨン・ブランだとおっしゃっていました。
一方、2013年はまだまだフレッシュ感があり、きれいで複雑。さわやかだけど柔らかさもあります。柑橘に香木の香り。ソーヴィニヨン・ブランはあまり熟成させて飲むことはありませんが、熟成による複雑さの魅力も感じられるソーヴィニヨン・ブランでした。
その次はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンのセカンドであるリンデンハースト(Lyndenhurst)です。リンデンハーストというのは1908年に屋敷につけられた名前だとのこと。ちなみにSpottswoodeは2010年にここを購入したSpotts夫人が名付けたもの。
リンデンハーストで使うブドウの半分は自社畑のもの。外部の栽培家はすべて有機栽培です。ファーストのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べると果実味が前面に出ていてアプローチしやすいワインではありますがシリアスなナパのカベルネでもあります。
現行ヴィンテージは2021年。
酸柔らかく、カシスやブルーベリーの風味。シルキーなタンニンで飲みやすいですが、ストラクチャーも感じられるいいワインです。
ベス・ノバックさんはスポッツウッドのカベルネについて、フレッシュネスを大事にしているといいます。また、コアにパワーを感じるワインにすること、アルコール度数は14%を超えないことを基本にしています。
アルコール度数を考慮すると収穫時の糖度は24Brixくらいになります。温暖なセント・ヘレナでは収穫を遅くすると水分が蒸発して糖度も上がってしまいます。成熟のピークで収穫できるようにするために、ブドウに日陰を造ったり、カバークロップを植えることで土壌の冷たさを保っています。スポッツウッドやコリソンといったナパの中でもエレガント系なカベルネ・ソーヴィニヨンを造るワイナリーが、温暖なセント・ヘレナにあって、このスタイルをキープしているというのも面白いところです。
エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンは現行の2021に始まり、2016年、2006年、1996年とさかのぼって試飲しました。
2021年はまだまだタンニンの堅さを感じます。酸も高く引き締まった印象。スパイスや黒鉛、ブラックベリー。
2016年もまだ堅いです。酸も高くエレガント。
2006年は素晴らしい。ブラックベリー、カシス、ブルーベリーの果実味。複雑で重層的。飲み頃的にも素晴らしいです。
1996年。スポッツウッドは1990年代にフィロキセラの被害に遭い、ブドウ畑を全面的に植え替えました。何年かかけて行ったため、1996年にも一部初期に植えたブドウが入っています。滋味深い味わい。ウーロン茶の風味。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・ソーヴィニヨンのほかカベルネ・フランとプティ・ヴェルドがブレンドされています。プティ・ヴェルドは2009年に植樹されました。いいクローンが見つかったとのことです。新樽率は60%程度、リンデンハーストでは40%です。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパの中では非常にエレガントな部類に入ります。果実味が爆発するようなワインではないので、もしかするとやや地味に感じられるかもしれませんが、レベルは非常に高いです。
スポッツウッドのフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニヨンは最新が2021年。1982年にワイナリーを始めているので、これが40回目のヴィンテージということになります。
まずはソーヴィニヨン・ブランから。スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランはナパでもトップクラスの一つであり、個人的にも大好きなソーヴィニヨン・ブランの一つです。ちなみに、ソーヴィニヨン・ブランは1984年から作っており、こちらも今回の2023年が40回目のヴィンテージです。
スポッツウッドの初代ワインメーカーはトニー・ソーター。その後、ダラ・ヴァレやアラウホ(現アイズリー)、ニーバウム・コッポラ(現イングルヌック)、ヴィアデルといったそうそうたるワイナリーでワインメーカーを務め、1990年代にはナパで一番有名なワインメーカーの一人となった才人です。現在はオレゴンでソーター・ヴィンヤーズを立ち上げてワインを造っています。
トニー・ソーターは肩書きはワインメーカーですが、スポッツウッドの畑を見て栽培にもかかわりたいと思い、1985年からは栽培も担当しています。スポッツウッドはナパで初めて有機栽培を始めたワイナリーですが、それもトニー・ソーターが主導して実現しました。
スポッツウッドは有機栽培の認証であるCCOFのほか、Demeterによるビオディナミの認証、公益性の高い企業を認証するB Corpの認証。そしてここ数年注目が増している再生可能型有機栽培(ROC=Regenerative Organic Certified)の認証も得ています。電力はすべて再生可能型のものを使っています。
1990年代にフィロキセラで全て植え替え。
ソーヴィニヨン・ブランはセント・ヘレナの自社畑にもわずかに植わっていますが、1990年以降は購入したブドウも使うようになっています。すべてトニー・ソーターが選んだ畑であり、家族経営でオーガニック栽培の畑ばかりです。
マップには現在の畑が示されています。ナパだけでなくソノマの畑も入っています。ソノマのブドウを使い始めたのは2000年過ぎくらいから。カーネロスのハイド・ヴィンヤードのソーヴィニヨン・ブランを契約していましたが、それを引き抜いてしまうということで、紹介をしてもらったのがきっかけだそうです。現在ではソノマ・マウンテンやナイツ・ヴァレーなど標高の高い畑をソノマから調達しています。
スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵容器を使っています。2023年の場合、ステンレスの小樽、普通の樽、コンクリートエッグ2つ、セラミックの発酵槽1つ、アンフォラ5つとなっています。複数の発酵槽を組み合わせることで服雑味が生まれ、フレーバーが層のように感じられるようになるそうです。今回、ライブラリーものとして持参された2013年はフレンチオークの樽とステンレスの小樽、コンクリートの発酵槽だけでしたから、種類が増えています。スポッツウッドだけでなく、近年の高級ソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵槽を使うところが多いようです。ほかの品種ではあまりそういった例を見かけないので興味深いです。
このほか、2013年との違いでは2023年の方はセミヨンが加わっていることがあります。セミヨンはカリストガのトファネリとソノマ・ヴァレーのバーソロミューという畑のものを使っています。
試飲に移ります。
2023年は柑橘やグアバ、カモミール。酸高く、厚みのある味わい。改めてカリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの中でもトップクラスの一つであることを感じました。ベス・ノバックさんは「ストラクチャー、バランス、エナジー、酸味、フレッシュ感」があるソーヴィニヨン・ブランだとおっしゃっていました。
一方、2013年はまだまだフレッシュ感があり、きれいで複雑。さわやかだけど柔らかさもあります。柑橘に香木の香り。ソーヴィニヨン・ブランはあまり熟成させて飲むことはありませんが、熟成による複雑さの魅力も感じられるソーヴィニヨン・ブランでした。
その次はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンのセカンドであるリンデンハースト(Lyndenhurst)です。リンデンハーストというのは1908年に屋敷につけられた名前だとのこと。ちなみにSpottswoodeは2010年にここを購入したSpotts夫人が名付けたもの。
リンデンハーストで使うブドウの半分は自社畑のもの。外部の栽培家はすべて有機栽培です。ファーストのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べると果実味が前面に出ていてアプローチしやすいワインではありますがシリアスなナパのカベルネでもあります。
現行ヴィンテージは2021年。
酸柔らかく、カシスやブルーベリーの風味。シルキーなタンニンで飲みやすいですが、ストラクチャーも感じられるいいワインです。
ベス・ノバックさんはスポッツウッドのカベルネについて、フレッシュネスを大事にしているといいます。また、コアにパワーを感じるワインにすること、アルコール度数は14%を超えないことを基本にしています。
アルコール度数を考慮すると収穫時の糖度は24Brixくらいになります。温暖なセント・ヘレナでは収穫を遅くすると水分が蒸発して糖度も上がってしまいます。成熟のピークで収穫できるようにするために、ブドウに日陰を造ったり、カバークロップを植えることで土壌の冷たさを保っています。スポッツウッドやコリソンといったナパの中でもエレガント系なカベルネ・ソーヴィニヨンを造るワイナリーが、温暖なセント・ヘレナにあって、このスタイルをキープしているというのも面白いところです。
エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンは現行の2021に始まり、2016年、2006年、1996年とさかのぼって試飲しました。
2021年はまだまだタンニンの堅さを感じます。酸も高く引き締まった印象。スパイスや黒鉛、ブラックベリー。
2016年もまだ堅いです。酸も高くエレガント。
2006年は素晴らしい。ブラックベリー、カシス、ブルーベリーの果実味。複雑で重層的。飲み頃的にも素晴らしいです。
1996年。スポッツウッドは1990年代にフィロキセラの被害に遭い、ブドウ畑を全面的に植え替えました。何年かかけて行ったため、1996年にも一部初期に植えたブドウが入っています。滋味深い味わい。ウーロン茶の風味。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・ソーヴィニヨンのほかカベルネ・フランとプティ・ヴェルドがブレンドされています。プティ・ヴェルドは2009年に植樹されました。いいクローンが見つかったとのことです。新樽率は60%程度、リンデンハーストでは40%です。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパの中では非常にエレガントな部類に入ります。果実味が爆発するようなワインではないので、もしかするとやや地味に感じられるかもしれませんが、レベルは非常に高いです。