エレガント系カリピノ/シャルの最先端 コブのワインを味わう
ウエスト・ソノマ・コーストの旗手ロス・コブ氏が2年ぶりに来日してセミナーが開かれました。
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ウエスト・ソノマ・コーストは2022年に策定された新しいAVA。ソノマ・コーストAVAがあまりにも広すぎ、ロシアン・リバー・ヴァレーなどの内陸の産地までも含んでいるため「真の冷涼な沿岸地域」として策定されたものです。
ウエスト・ソノマ・コーストの中央あたりにはフォートロス・シービューAVAが含まれています。マーカッシンやフラワーズ、ウェイフェアラーなどの有名ワイナリーを含むこの地域は標高が高く、霧がほとんどかからないため、極めて冷涼でありながら、太陽の光をしっかりと浴び、濃厚でパワフルなワインになりがちです。一方、この地域の南の方は標高が低いため、霧に覆われている時間が長く、エレガントなワインになります。コブのワインは基本的にウエスト・ソノマ・コーストの南部か、その東側のグリーンヴァレーなどの冷涼地域のブドウから作られており、カリフォルニアのピノ・ノワール、シャルドネの生産者の中でもエレガントさでいえばトップといっていいでしょう。
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コブのワイナリーがあるのは地図で示したところ。ここにコーストランズ(Coastlands)という、ロス・コブの両親が1989年に最初に開墾した畑があります。太平洋からの距離は約6km、標高は300mあまりです。当時、ロス・コブは大学1年生。カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校に通っていました。生物学を専攻していましたが、畑に興味を持ち土壌科学に転科しました。
両親の時代はワインはまだ作っておらず、ピノ・ノワールをWilliams-Selyemに売っていました。Williams-Selyemでは1994年から現在に至るまでコーストランズのピノ・ノワールを作っており、ワイン・アドヴォケイトで最高97点という高い評価を得ています。
ロス・コブ氏自身は大学卒業後、ソノマのフェラーリ・カラーノやウィリアムズ・セリエムなどで働き、2001年から「コブ・ワインズ」として自身のワインも作り始めています。現在は、コーストランズのほか、ワイナリーの500mほど南にあるドックス・ランチ(Doc's Ranch)、グリーン・ヴァレーのフリーマンのワイナリーのすぐ隣にあるアビゲイル(Abigail's)の自社畑を持ち、このほかメンドシーノを含めた10あまりの畑から単一畑のワインを造っています。
試飲の最初のワインはリースリング。メンドシーノにあるコール・ランチ(Cole Ranch)という畑。ここは
Cole Ranchという極めて小さなAVAに属す唯一の畑です。
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リースリングは低温(10℃)で発酵せます。ステンレスタンクで発酵させ、小樽で熟成させます。残糖はありません。
Cole Ranch Riesling 2022
蜜の香りに青リンゴ、白い花。酸高く、ジューシーな味わい。残糖なしなのでキリリとした味わいです。92点
次はシャルドネ2本。H.Klopp Chardonnay 2020とDoc's Ranch JoAnn's Block Chardonnay 2020です。
H. Kloppの畑はロシアン・リバー・ヴァレーのセバストポール・ヒルズと呼ばれる地域にあります。ウエスト・ソノマ・コーストのマップの中で色が薄く表示されている右下のあたり。ここは元々AVAに含めたかった場所ですが、他のAVAとオーバーラップする領域が認められないように制度が変わったために、含められなかったところです。現在はSebastopol Hillsという名前でAVAを申請しています。
Klopp家は古くからこの地域で果樹園などをやっており1990年代からはブドウも作り始めました。2012年に新しい畑を増やすためにロス・コブに依頼をして、開発したのがこのシャルドネの畑で、シャルドネだけが植わっています。
樽発酵樽熟成で10%新樽で22カ月熟成しています。MLFは100%。アルコール度数12.3%というのはちょっと驚きました。
焼きリンゴやマシュマロ、蜜のような甘い香り、バニラ、オレンジ。香りにリッチ感はありますが、上述のようにアルコール度数は低く、味わいも濃すぎることなく、うまい。リッチで柑橘系の味わいのあるマウント・エデン・クローンやトロピカルな風味が出るロバート・ヤング・クローンの良さが引き出されているようです。素晴らしい。96点
Doc's RanchのJoAnn's Blockはわずか1エーカーのシャルドネのみのブロックです。一番スタンダードなウェンテ・クローンであるUCD5を使っています。
シュール・リーでうまみを引き出しているとのこと。MLF100%。
花の香り、クリーム・ブリュレ、複雑でリッチなワイン。92点
最後はピノ・ノワール3種です。Doc's Ranch 2019、Rice-Spivak 2021、Coastlands 2021。
Doc's Ranch 2019はシルキーなテクスチャーが印象的。赤い果実や花の香りがあり豊かな酸があります。93点
Rice-Spivak(ライス・スピーヴァック)はロシアン・リバー・ヴァレーに含まれる畑。少し低地にあり冷気がたまるため、非常に冷涼なところだといいます。ゴールドリッジと火山灰による土壌でアロマやミネラル感を感じやすいとのこと。
バランスよくきれいなワイン。赤い果実に少しコクがあって複雑、酸はDoc's Ranchよりちょっと低い。94点
最後はCoastlands 2021です。一番タンニンがあり、グリップを感じます。これも赤い果実に複雑な風味。ジューシーさと複雑さでこれが一番好きでした。95点
コブのワインは、どれもアルコール度数は低めですが、味わいは淡白でなく、しっかりとしたフレーバーがあります。これだけ低糖度でフェノール類はしっかりとたまるということは、やはりかなりの冷涼さがあることがうかがえます。今回6種類を試飲することで、改めてそのレベルの高さを感じました。
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ウエスト・ソノマ・コーストは2022年に策定された新しいAVA。ソノマ・コーストAVAがあまりにも広すぎ、ロシアン・リバー・ヴァレーなどの内陸の産地までも含んでいるため「真の冷涼な沿岸地域」として策定されたものです。
ウエスト・ソノマ・コーストの中央あたりにはフォートロス・シービューAVAが含まれています。マーカッシンやフラワーズ、ウェイフェアラーなどの有名ワイナリーを含むこの地域は標高が高く、霧がほとんどかからないため、極めて冷涼でありながら、太陽の光をしっかりと浴び、濃厚でパワフルなワインになりがちです。一方、この地域の南の方は標高が低いため、霧に覆われている時間が長く、エレガントなワインになります。コブのワインは基本的にウエスト・ソノマ・コーストの南部か、その東側のグリーンヴァレーなどの冷涼地域のブドウから作られており、カリフォルニアのピノ・ノワール、シャルドネの生産者の中でもエレガントさでいえばトップといっていいでしょう。
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コブのワイナリーがあるのは地図で示したところ。ここにコーストランズ(Coastlands)という、ロス・コブの両親が1989年に最初に開墾した畑があります。太平洋からの距離は約6km、標高は300mあまりです。当時、ロス・コブは大学1年生。カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校に通っていました。生物学を専攻していましたが、畑に興味を持ち土壌科学に転科しました。
両親の時代はワインはまだ作っておらず、ピノ・ノワールをWilliams-Selyemに売っていました。Williams-Selyemでは1994年から現在に至るまでコーストランズのピノ・ノワールを作っており、ワイン・アドヴォケイトで最高97点という高い評価を得ています。
ロス・コブ氏自身は大学卒業後、ソノマのフェラーリ・カラーノやウィリアムズ・セリエムなどで働き、2001年から「コブ・ワインズ」として自身のワインも作り始めています。現在は、コーストランズのほか、ワイナリーの500mほど南にあるドックス・ランチ(Doc's Ranch)、グリーン・ヴァレーのフリーマンのワイナリーのすぐ隣にあるアビゲイル(Abigail's)の自社畑を持ち、このほかメンドシーノを含めた10あまりの畑から単一畑のワインを造っています。
試飲の最初のワインはリースリング。メンドシーノにあるコール・ランチ(Cole Ranch)という畑。ここは
Cole Ranchという極めて小さなAVAに属す唯一の畑です。
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リースリングは低温(10℃)で発酵せます。ステンレスタンクで発酵させ、小樽で熟成させます。残糖はありません。
Cole Ranch Riesling 2022
蜜の香りに青リンゴ、白い花。酸高く、ジューシーな味わい。残糖なしなのでキリリとした味わいです。92点
次はシャルドネ2本。H.Klopp Chardonnay 2020とDoc's Ranch JoAnn's Block Chardonnay 2020です。
H. Kloppの畑はロシアン・リバー・ヴァレーのセバストポール・ヒルズと呼ばれる地域にあります。ウエスト・ソノマ・コーストのマップの中で色が薄く表示されている右下のあたり。ここは元々AVAに含めたかった場所ですが、他のAVAとオーバーラップする領域が認められないように制度が変わったために、含められなかったところです。現在はSebastopol Hillsという名前でAVAを申請しています。
Klopp家は古くからこの地域で果樹園などをやっており1990年代からはブドウも作り始めました。2012年に新しい畑を増やすためにロス・コブに依頼をして、開発したのがこのシャルドネの畑で、シャルドネだけが植わっています。
樽発酵樽熟成で10%新樽で22カ月熟成しています。MLFは100%。アルコール度数12.3%というのはちょっと驚きました。
焼きリンゴやマシュマロ、蜜のような甘い香り、バニラ、オレンジ。香りにリッチ感はありますが、上述のようにアルコール度数は低く、味わいも濃すぎることなく、うまい。リッチで柑橘系の味わいのあるマウント・エデン・クローンやトロピカルな風味が出るロバート・ヤング・クローンの良さが引き出されているようです。素晴らしい。96点
Doc's RanchのJoAnn's Blockはわずか1エーカーのシャルドネのみのブロックです。一番スタンダードなウェンテ・クローンであるUCD5を使っています。
シュール・リーでうまみを引き出しているとのこと。MLF100%。
花の香り、クリーム・ブリュレ、複雑でリッチなワイン。92点
最後はピノ・ノワール3種です。Doc's Ranch 2019、Rice-Spivak 2021、Coastlands 2021。
Doc's Ranch 2019はシルキーなテクスチャーが印象的。赤い果実や花の香りがあり豊かな酸があります。93点
Rice-Spivak(ライス・スピーヴァック)はロシアン・リバー・ヴァレーに含まれる畑。少し低地にあり冷気がたまるため、非常に冷涼なところだといいます。ゴールドリッジと火山灰による土壌でアロマやミネラル感を感じやすいとのこと。
バランスよくきれいなワイン。赤い果実に少しコクがあって複雑、酸はDoc's Ranchよりちょっと低い。94点
最後はCoastlands 2021です。一番タンニンがあり、グリップを感じます。これも赤い果実に複雑な風味。ジューシーさと複雑さでこれが一番好きでした。95点
コブのワインは、どれもアルコール度数は低めですが、味わいは淡白でなく、しっかりとしたフレーバーがあります。これだけ低糖度でフェノール類はしっかりとたまるということは、やはりかなりの冷涼さがあることがうかがえます。今回6種類を試飲することで、改めてそのレベルの高さを感じました。