先日、あるメルマガでIPOB(In Pursuit of Balance)は失敗だったというような記述を読み、ちょっともやもやしていました。

参考までに、IPOB解散が発表されたときに、各ワイナリーからいただいたコメントを以下の記事で紹介しています。
驚! IPOBが年内に活動を終了へ
IPOB解散――メンバーはどう受け止めたか(スティーブ・マサイアソン)
IPOB解散――メンバーはどう受け止めたか(ボブ・ヴァーナー、マット・リックライダー)
IPOB解散――メンバーはどう受け止めたか(ニック・ペイ)
IPOB解散――メンバーはどう受け止めたか(ジム・クレンデネン)
なぜ、このタイミングでIPOBをやめるのか(ジャスミン・ハーシュ)
なぜ、このタイミングでIPOBをやめるのか(ラジャ・パー)
IPOB解散――メンバーはどう受け止めたか(サシ・ムーアマン)

正直、IPOBのワインが日本で売れたのかどうかは、私にはわかりません。「失敗した」というインポーターがいるのであれば、セールスが今ひとつだったということなのでしょう。このブログで紹介したワインに限って言えば、ヴァーナーなどはかなり反応があったように感じましたが、そもそも輸入量が少ないので売上というところでは大したことはなかったのかもしれません。

ただ、カリフォルニアでこういう動きがあるということを世間に知らせたという意味ではやはり無駄ではなかったと思うんですよね。短期的にはセールスにつながらなくても、カリフォルニアもいつまでも、濃い甘いワインだけではないということを発信することは必要だと思います。

パリ・テイスティングから40年たちましたが、それでもまだカリフォルニアのワインの産地としてオールドワールドより下に見る人はたくさんいます。人の印象を変えるのは大変です。IPOBのような活動も本来、10年20年といったタームで評価すべきものでしょう。

それだけに短期間で解散してしまったことは、今でも残念ですし、IPOBという方向性は正しかったと思うのですが、そのグループの運営という面では失敗したところもあったとは思います。

例えば、IPOBのメンバーを絞ることにより、グループに入れなかったワイナリーからの反発があったと聞いています。大きなムーブメントにするには、もっと門戸を広げる方向が必要だったでしょう。

ワインの種類をピノ・ノワールとシャルドネに限ってしまったのにも不満はありました。例えばカベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルなどでも新しいスタイルのものは出てきていますし、近年では古い品種を改めてピックアップするような動きもあります。例えば、ウルトラマリンで超人気のマイケル・クルーズや都市型ワイナリーで、各地のユニークな畑のブドウからワインを作るブロック・セラーズのようなワイナリーはIPOBでは取り上げられませんでした。
参考:ナパ・ガメイ? ヴァルディギエ?

そのように、自らの動きを制限してしまったことは、残念なところではありました。

一方で、最後の例のようにIPOBというグループがあるかどうかにかかわらず、バランスを重視したワインへの動きは今も続いています。少なくともジョン・ボネが提唱した「ニュー・カリフォルニア」の火は消えたわけではありません。

なんてことをつらつら思っていたら、10月には「ニュー・カリフォルニア」の試飲会があるという話も伝わってきました。やはり日本のインポーターも、この動きを消してはいけないと思っているのでしょうね。

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