近年、自然派ワインが人気だと聞きます。自然派とは何かというややこしい問題は置いておいて、ナチュラルなものに傾倒する人が多くなっているのは実感します。カリフォルニアでも有機栽培(オーガニック)に取り組む生産者は着実に増えています。昨年にはナパを代表する銘醸畑であるト・カロンが有機栽培の認証を受けました。天然酵母で発酵するワイナリーも多く、SO2の添加量も規定よりはるかに少なく抑えているワイナリーが多々あり、事実上「自然派」といっていいワインはかなりの数になるでしょう。

一方で、サスティナブルに取り組む生産者も増えており、こちらはもはや当たり前のようになってきています。

では、コンシューマーから見て、オーガニックとサスティナブルってどうですか? 
オーガニックは、まあまあ分かりやすいですよね。農薬を使わず自然に優しい農法で作っていて、好感度高いと思う人が多いのではないでしょうか。自然派ワインとしてオーガニックなものしか飲まないという人もいると思います。
一方、サスティナブルはちょっとわかりにくいですよね。農法においては農薬を減らすことは規定していても、全く使わないとまでは決めていません。オーガニックに向かう途中の人たちにも都合がいいようなものなんじゃない、などと思っている人もいるのではないでしょうか。「このワインはオーガニックだよ」というのと「このワイナリーはサスティナブルだよ」というのだと、オーガニックを選びたくなる人の方が多いだろうと思います。

先日、ナパのハドソン(Hudson)のオーナーのリー・ハドソンさんに「オーガニックについてはどう考えているのか」と聞いてみました。ハドソンはサスティナブルの認証は受けていますが、オーガニックとは言っていません。


「もちろん、オーガニックで栽培できる部分はそうしているけど、オーガニックかどうかは自分にとって最大の問題ではないんだ」とリー・ハドソン。
「それよりも大事なのはハドソンで働く従業員だ。50数人いる従業員にちゃんと給料を払って、家に住めるようにして、子供に教育ができる。そういった環境を続けていくことの方がオーガニックにこだわることよりも優先度が高いんだ」
つまり、農薬を全く使わないと決めてそれに縛られるよりも、ちゃんと作物ができて病気などでやられないようにする、そういった持続性をより大事にしているわけです。
オーガニックは農法だけを扱っていますが、サスティナブルは企業として持続していくことも含んでいます。そっちの方が大事だというのは言われてみれば当たり前ですが、気が付きにくいところです。

ただ、企業として持続していくことはワインの味とは無関係では? そういう意見もあるでしょう。確かに従業員の生活はワインの味に直結しないかもしれませんが、従業員をちゃんと守る会社とそうでない会社のどちらのワインを飲みたいと思うか。SDGsの考えも浸透してきていますから、従業員を守る会社のワインを選ぶというのは十分にあり得ることです。また、長期的に見たら、従業員が満足して働いている会社の方が、品質のいい製品を生み出していくだろうと思います。

この話は日本ワインの在り方についての話などにもつながっていくと考えており、ここ数日で何人かの私よりワイン業界の様々なことに詳しい方々ともお話させていただきました。その話もしたいところですが、長くなったし私の専門でもないので、割愛させていただきます。

個人的にはオーガニックよりサスティナブルが大事。そう考えるようになりました。
あなたはこの問題、どう考えますか?

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