絶妙なシャルドネにエレガントな赤、ハドソン・ヴィンヤーズ
ハドソンの記事を書いたので、続いてハドソンの生産者ランチの報告をしておきましょう。今回は創設者のリー・ハドソンさんが奥さんのクリスティーナさんと10年ぶりの来日。プライベートな旅行がメインだったそうですが、東京ではイルドコリンヌでランチが開かれました。ちなみにクリスティーナさんは中学生のときに愛知県に、大学生のときには慶応に留学経験があり、日本語も上手です。
ハドソンの創設者のリー・ハドソンは子供の頃から農業に興味を持っていて、大学でも園芸を学びました。1975年から76年にかけてはブルゴーニュのドメーヌ・デュジャックで収穫の手伝いをしました。後にテッド・レモンが米国人としては初のワインメーカーになるワイナリーですが、リーはデュジャックで働いた最初の米国人だったそうです。ここで土地の個性をワインに表現することや、卓越したものを達成するための姿勢などに共感して、ワイン造りを志します。77年にUCデーヴィスで栽培や醸造を学び、81年に29歳のときに、まだ土地が安かったナパのカーネロスに土地を購入しました。全く何もない土地を切り開いて畑や牧場にしていきました。現在では200エーカーのぶどう畑があり、14種類の品種が植わっています。
現在ではキスラーやコングスガード、オーベールといった超一流の生産者がハドソンのブドウ、特にシャルドネを購入し、トップクラスのワインを作っています。ハドソンのブドウを買っているワイナリーは30にもなるとのことです。一部はハドソン自身でワインを作っています。
今回はハドソン自身のワインを日本未輸入のものを含め6種類いただきました。
ハドソンはカーネロスの中でもナパとソノマとの郡境に近いところのナパ側にあります。上に畑のマップを載せましたが、かなり広大な土地で、畑も海に近い南側と、やや山に近い北側と大きく2つに分かれています。シャルドネの生産量が4割くらいあり、北側の畑がやや多いですが、南側にもシャルドネの畑があります。シャルドネは「ヘリテージ・クローン」(UCデーヴィスなどで管理しているクローンではなく代々受け継がれてきたクローン)の一つであるショット・ウェンテというクローンが植えられています。非常に小ぶりの房をつけるシャルドネで、果実も小さいのが特徴です。果皮の比率が高くなるためワインに奥行きが出るとのことです。
ワインはまずはエステートのシャルドネ 2020からです。これはシャルドネの各畑のブレンドで、ハドソンを代表するワインと言っていいでしょう。ハドソンの中ではエントリー的な位置づけで、新樽率は25%と抑えめ。樽熟成は11カ月。黄金色といってもいいくらいの見るからに果実感のある色合いで、白桃やスイカズラ、はちみつ、ナッツ、ミネラルなどを感じます。酸はやわらかく、きれいでするすると飲めてしまうワイン。美味しくていくらでも飲んでしまいそうで危険です(私はそんなに強くない方ですが、この日は思わずおかわりしてしまいました)。
ちなみに、2020年は山火事でワインを作るのをやめたワイナリーも少なくない年ですが、カーネロスは火事の地域からやや距離があり、上空は煙が見られたそうですが、ワインへの悪影響は避けられたとのことです。
次に日本未輸入のシャルドネ2つ。リトル・ビットとレディバグの2020年です。畑の名前は3年前に付けたとのことですが、家族のニックネームを使っています。リトル・ビットはお孫さん、レディバグは奥さんのクリスティーナのニックネームです。地図でわかるようにリトル・ビットは南の標高が低く海に近いところ、レディバグは北の山に近く標高が高いところなのですが、土壌はリトル・ビットが火山性でレディバグは砂地なのだそうです。海に近い方が砂なのかと思ったらそうではないとのこと。難しいですね。この2つのワインはどちらも新樽率が80%と高く、樽熟も22カ月と長くなっています。とはいえどちらも樽の印象が強いわけではなく、溶け込んでスムーズな味わいです。
どちらもむちゃくちゃ美味しい。最初のワインと比べるとややリッチな味わいでふくよかさが印象的ですが、その中でもリトル・ビットの方が酸がより感じられて個人的には好きでした。
白の4本目は当初の予定にはなかったワインですが、飛び入り参加です。この前の週にカベルネ・フランのワイン会をある方の自宅で開催し、イルドコリンヌの山本香奈さんも私も参加していたのですが(後日報告予定)、その方がハドソンのワイン会をするならと提供してくださったワインです。ホワイトスタディという限定品でラベルも真っ白。ビートルズのホワイトアルバムを意識したデザインだとか。ブドウ品種はトカイ・フリウラーノにリボッラ・ジャッラ、それに少しシャルドネが加わっています。スキンコンタクトなし、マロラクティック発酵なし、新樽なしの作り。スイカズラや白桃のピュアな味わい。優しい味です。アルコール度数も12.1%とかなり低め。
赤はフェニックスというメルロー中心のレッド・ブレンドの2020年と、オールド・マスターというカベルネ・フラン中心のレッド・ブレンドの2016年。フェニックスはボルドー右岸のポムロール、オールド・マスターはシュヴァル・ブランを意識しているそうです。
フェニックスはザクロやレッド・チェリーなどの赤果実に、黒鉛のようなしっかりとした風味が重なります。ちなみにこの名前は2016年の同ワインが2017年の山火事のときに奇跡的に難を逃れたことから付けられたとのこと。
オールド・マスターはフェニックスよりもさらに引き締まった風味。ミネラル感を感じます。個人的には非常に好きな味わい。名前はルネッサンス時代の芸術家に敬意を評したものだとのこと。
ハドソンの畑は前述のようにシャルドネが約4割。他の品種は多い順にメルロー、シラー、カベルネ・フラン、ソーヴィニョン・ブラン、グルナッシュ、アリアティコ、リボッラ・ジャッラ、トカイ・フリウラーノ、アルバリーニョ。カーネロスにあって意外なことにピノ・ノワールはありません。どうしてピノ・ノワールを作らないのか聞いたところ、「ビジネスとして成り立たないものはやりたくない。ピノ・ノワールは収量が非常に少なく儲からないんだ」とのこと。それでもリボッラ・ジャッラなどと比べたらずっと高い値段でブドウも売れると思うのですが、「そんなこともないんだ。リボッラ・ジャッラは1エーカーあたり6トンくらい収穫できるが、ピノ・ノワールはこのあたりだと1.5トンくらいしか収穫できない。安くてもリボッラ・ジャッラの方がお金になるんだ」とのことでした。
ハドソンの畑は今月ナパのツアーでも訪問するのですが、実際に畑を見てみるのが楽しみです。ただ、訪問する日はご夫妻はまだ日本でナパではお会いできないのが残念です。
ハドソンの創設者のリー・ハドソンは子供の頃から農業に興味を持っていて、大学でも園芸を学びました。1975年から76年にかけてはブルゴーニュのドメーヌ・デュジャックで収穫の手伝いをしました。後にテッド・レモンが米国人としては初のワインメーカーになるワイナリーですが、リーはデュジャックで働いた最初の米国人だったそうです。ここで土地の個性をワインに表現することや、卓越したものを達成するための姿勢などに共感して、ワイン造りを志します。77年にUCデーヴィスで栽培や醸造を学び、81年に29歳のときに、まだ土地が安かったナパのカーネロスに土地を購入しました。全く何もない土地を切り開いて畑や牧場にしていきました。現在では200エーカーのぶどう畑があり、14種類の品種が植わっています。
現在ではキスラーやコングスガード、オーベールといった超一流の生産者がハドソンのブドウ、特にシャルドネを購入し、トップクラスのワインを作っています。ハドソンのブドウを買っているワイナリーは30にもなるとのことです。一部はハドソン自身でワインを作っています。
今回はハドソン自身のワインを日本未輸入のものを含め6種類いただきました。
ハドソンはカーネロスの中でもナパとソノマとの郡境に近いところのナパ側にあります。上に畑のマップを載せましたが、かなり広大な土地で、畑も海に近い南側と、やや山に近い北側と大きく2つに分かれています。シャルドネの生産量が4割くらいあり、北側の畑がやや多いですが、南側にもシャルドネの畑があります。シャルドネは「ヘリテージ・クローン」(UCデーヴィスなどで管理しているクローンではなく代々受け継がれてきたクローン)の一つであるショット・ウェンテというクローンが植えられています。非常に小ぶりの房をつけるシャルドネで、果実も小さいのが特徴です。果皮の比率が高くなるためワインに奥行きが出るとのことです。
ワインはまずはエステートのシャルドネ 2020からです。これはシャルドネの各畑のブレンドで、ハドソンを代表するワインと言っていいでしょう。ハドソンの中ではエントリー的な位置づけで、新樽率は25%と抑えめ。樽熟成は11カ月。黄金色といってもいいくらいの見るからに果実感のある色合いで、白桃やスイカズラ、はちみつ、ナッツ、ミネラルなどを感じます。酸はやわらかく、きれいでするすると飲めてしまうワイン。美味しくていくらでも飲んでしまいそうで危険です(私はそんなに強くない方ですが、この日は思わずおかわりしてしまいました)。
ちなみに、2020年は山火事でワインを作るのをやめたワイナリーも少なくない年ですが、カーネロスは火事の地域からやや距離があり、上空は煙が見られたそうですが、ワインへの悪影響は避けられたとのことです。
次に日本未輸入のシャルドネ2つ。リトル・ビットとレディバグの2020年です。畑の名前は3年前に付けたとのことですが、家族のニックネームを使っています。リトル・ビットはお孫さん、レディバグは奥さんのクリスティーナのニックネームです。地図でわかるようにリトル・ビットは南の標高が低く海に近いところ、レディバグは北の山に近く標高が高いところなのですが、土壌はリトル・ビットが火山性でレディバグは砂地なのだそうです。海に近い方が砂なのかと思ったらそうではないとのこと。難しいですね。この2つのワインはどちらも新樽率が80%と高く、樽熟も22カ月と長くなっています。とはいえどちらも樽の印象が強いわけではなく、溶け込んでスムーズな味わいです。
どちらもむちゃくちゃ美味しい。最初のワインと比べるとややリッチな味わいでふくよかさが印象的ですが、その中でもリトル・ビットの方が酸がより感じられて個人的には好きでした。
白の4本目は当初の予定にはなかったワインですが、飛び入り参加です。この前の週にカベルネ・フランのワイン会をある方の自宅で開催し、イルドコリンヌの山本香奈さんも私も参加していたのですが(後日報告予定)、その方がハドソンのワイン会をするならと提供してくださったワインです。ホワイトスタディという限定品でラベルも真っ白。ビートルズのホワイトアルバムを意識したデザインだとか。ブドウ品種はトカイ・フリウラーノにリボッラ・ジャッラ、それに少しシャルドネが加わっています。スキンコンタクトなし、マロラクティック発酵なし、新樽なしの作り。スイカズラや白桃のピュアな味わい。優しい味です。アルコール度数も12.1%とかなり低め。
赤はフェニックスというメルロー中心のレッド・ブレンドの2020年と、オールド・マスターというカベルネ・フラン中心のレッド・ブレンドの2016年。フェニックスはボルドー右岸のポムロール、オールド・マスターはシュヴァル・ブランを意識しているそうです。
フェニックスはザクロやレッド・チェリーなどの赤果実に、黒鉛のようなしっかりとした風味が重なります。ちなみにこの名前は2016年の同ワインが2017年の山火事のときに奇跡的に難を逃れたことから付けられたとのこと。
オールド・マスターはフェニックスよりもさらに引き締まった風味。ミネラル感を感じます。個人的には非常に好きな味わい。名前はルネッサンス時代の芸術家に敬意を評したものだとのこと。
ハドソンの畑は前述のようにシャルドネが約4割。他の品種は多い順にメルロー、シラー、カベルネ・フラン、ソーヴィニョン・ブラン、グルナッシュ、アリアティコ、リボッラ・ジャッラ、トカイ・フリウラーノ、アルバリーニョ。カーネロスにあって意外なことにピノ・ノワールはありません。どうしてピノ・ノワールを作らないのか聞いたところ、「ビジネスとして成り立たないものはやりたくない。ピノ・ノワールは収量が非常に少なく儲からないんだ」とのこと。それでもリボッラ・ジャッラなどと比べたらずっと高い値段でブドウも売れると思うのですが、「そんなこともないんだ。リボッラ・ジャッラは1エーカーあたり6トンくらい収穫できるが、ピノ・ノワールはこのあたりだと1.5トンくらいしか収穫できない。安くてもリボッラ・ジャッラの方がお金になるんだ」とのことでした。
ハドソンの畑は今月ナパのツアーでも訪問するのですが、実際に畑を見てみるのが楽しみです。ただ、訪問する日はご夫妻はまだ日本でナパではお会いできないのが残念です。