という過激な記事をLA Timesに書いたのはワイン評論家のアリス・フェアリング(Alice Fiering)。In Vino Veritasというブログでも知られており,「The Battle for Wine and Love: or How I Saved the World from Parkerization」といった本を出版予定です。
"When I first stopped drinking the Left Coast, it was because I was offended by the overuse of wood, boring flavors and lack of structure. The wines, many of which had plenty of edge and personality, seemed neutered to me. I soon learned that the other part of the story was that an arsenal of technology was deployed to make them that way: yeast, enzymes, tannin, oak and acid, as well as over-extracting techniques, micro-oxygenation, dialysis and reverse osmosis."

California wine? Down the drain - Los Angeles Times

彼女が主張しているのは,カリフォルニアワイン(引用文中ではLeft Coast=West Coastとさらに拡張しています)は評論家に高いレイティングを付けてもらうために人為的操作が加わりすぎている。というものです。一方,フランスワインにも屑はあるが「there is also an ever-expanding band of winemakers fiercely committed to working with, not against, nature」だと,その違いを言っています。また,カリフォルニアでもCathy CorisonやMike Dasheなどがそうでないワインを作っているがそれは「評論化には出せないもの」だと。

彼女の記事に対してWine Enthusiast誌のブログではカリフォルニアだけを画一的に捉えるのは正当ではないと反論。「なぜカリフォルニアだけがバッシングの対象になるのだろうか」と疑問を呈しています。

僕も彼女のバッシングがフェアなものだとは思いません。例えばArcadianのように,エレガントを重視したワイン作りをし,それを評論家にも評価してもらっているワイナリもありますし,reverse osmosisのような技術はカリフォルニアのトップクラスのワイナリよりもフランスのトップクラスのワイナリの方が多く使っていると思われます(堀賢一さんの「ワインの自由」などを読む限り)。

上述のような人為的操作は,どちらかというと低価格ワインで使われることが多いと思いますが,先日書いた記事にあるように,実は一般的なユーザーは高級ワインよりも,こういったやや人工的な味付けのワインの方を好む傾向があるわけです。消費者に受け入れられるワインを作ることの何がいけないのでしょう…

IT技術の世界では「キャズム」と呼ばれる大きな溝が,先駆的なユーザーと一般的なユーザーの間にあると言われています。ワインの世界にもこういったキャズムがあるのでしょう。したがってワイン自体もどちらをターゲットにするかによって作り方も変わってくるのだと思います。彼女のバッシングの仕方は自分向けでないものに非難を加えるような筋違いな部分がありそうです。