Wine Spectator誌Executive EditorのThomas Matthews氏が同誌の掲示板に「Wine Spectator Has Been Scammed」(Wine Spectatorは詐欺にあった)と題して,今回の問題について何があったのか説明しています。

Matthews氏はまず,掲載するすべてのレストランを訪問してはいないこと(これは以前にも明らかになっていたことですが),ワインリストを公正に評価していること,レストランから得られたワイン・リストは実在して現実にあっていると想定していること,を明らかにしています。

一方で,それらを確かめるために,①レストランに数回電話した(そのたびに留守番電話が現在閉まっていると言っていた),②レストランをググり(原文はGoogling),それがミラノに実在する場所であることを確認した(こういうときストリート・ビューがあったらよかったのにね),③レストランがメニューリストを載せたWebサイトのリンクを送ってきた,④「Chowhound」というサイトで2008年1月~8月の間このレストランに行った経験を書いていた人たちがいたのを確認した,とのこと。

また,ワインリストについて,非常に評価が低いワインを載せていた旨書かれていたわけですが,実際にはリストに掲載されていたワインは256本あり,そのうち15本だけが80点以下であったとのことです。ちなみに53本が90点以上102本が80点以上,139本はWine Spectatorにレビューなしでした。

これらのことから,詐欺には誰でも引っかかる可能性があり,破廉恥な人間が32年の名声を持つ雑誌を攻撃できてしまった,Wine Spectatorは今後はもっと注意深くするであろうとしています。また,今回の「詐欺事件」が他の賞を取ったレストランを貶めるものではないと締めています。

Wine Spectatorのフォーラムでは同誌に好意的な意見が相次いでいますが,実在確認が直接店を訪問していないというのはやはりどうなのかと思います。ワイン・リストにしてもWine Spectatorに提出したものと実際に店にあるものとの整合性を見るわけではないし,客が提出されたリストを見られるわけでもないのだから,いくらでも嘘をかけます。レストラン評論家の友里征耶さんも,日本のミシュランで「ワインリスト偽装」があるのではないかと問題提起していますが,店を訪問しているミシュランでさえ,こういうことが起こるのに,Wine Spectatorの方法であれば,店側はやりたい放題です。せめて,提出されたワインリストや値段をWS誌のWebに掲載するなどの公明性がひつようなのではないかと思います。