ロバート・パーカーの掲示板で「カリフォルニアのベスト・ピノ・ノワール・ワインメーカー」に選ばれた名匠エド・カーツマン。ご本人はいたって謙虚で人柄よく、名匠なんて付けたら嫌がりそうな方なのですが、あえてそう呼ばせていただきます。

テスタロッサやシャローンで力を付けた彼の名前を上げたのがオーガスト・ウエスト(August West)とロアー(Roar)。ロアーはサンタ・ルシア・ハイランズをピゾーニ(Pisoni)と並んで一流産地にした銘醸畑ゲイリーズ(Garys')やロゼラズ(Rosella's)のオーナーであるゲイリー・フランシオーニのワイナリーでエド・カーツマンは創設時からのワインメーカーでした。そしてゲイリー・フランシオーニとソノマのグラハム・ファミリー・ヴィンヤードのオーナーのハワード・グラハム、そしてエド・カーツマンがパートナーとして始めたのがオーガスト・ウエスト。フランシオーニのロゼラズのピノ・ノワールやシャルドネなどが大人気を博し、冒頭の人気1位につながったのでした。

彼の作るワインはチャーミングで、思わず笑みがこぼれるような美味しさを持ち、しかも熟成させる魅力も持っています。日本人にも特に人気が高く、彼に師事したのがフリーマンのアキコ・フリーマンさんとアーサー・セラーズの桃井隆宏氏。フリーマンのワインはオバマ大統領の晩餐会でも使われ、アーサー・セラーズのピノ・ノワールは品評会などで高く評価されています。

前置きが長くなりましたが、オーガスト・ウエストからはゲイリー・フランシオーニが手を引くことになり、現在ではソノマのグラハムのほか、サンタ・ルシア・ハイランズのコルタダ・アルタ(Cortada Alta)という畑からピノ・ノワールを作っています。コルタダ・アルタはサンタ・ルシア・ハイランズの中で最も標高の高い畑(標高1100~1600フィート)で、霧の影響は少ない一方で、朝晩は冷え込んで寒暖差が大きくなる畑です。

オーガスト・ウエストはこれらの畑から、単一畑名称ではなくAVA名称としてロシアン・リバー・ヴァレーとサンタ・ルシア・ハイランズのピノ・ノワールを作っています。生産量は2019年の場合でロシアン・リバー・ヴァレーが189ケース、サンタ・ルシア・ハイランズが46ケース。ワインはいずれも36ドル(税別)なので、ワインが全部売れても売上は10万ドル程度。こんなので商売になるのかと心配になるレベルです(エド・カーツマンはほかにサンドラ―としてもワインを作ってますがそちらも全部合わせて400ケースくらいです)。

しかも日本の価格は実売で税込み5000円と米国とさして変わらないレベル。いくらAVA名称で作っているピノ・ノワールとはいえ、エド・カーツマンが手塩にかけて作ったものですから、大量生産品とは比べられないです。なお、ヴィンテージはどちらも2018年。とにかくトラブルのほとんどなかった年であり近年のベスト・ヴィンテージと言われています。

紀伊国屋リカーズ



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