1972年に設立されたワイナリーが今年50周年を迎えます。その多くが今もなおカリフォルニアワインを牽引していると言っても過言ではない名門ワイナリーです(California’s ‘class of 1972’ wineries continue to raise the bar)。

19世紀に急激に広がったカリフォルニアのワイン生産でしたが20世紀に入り、1920年から33年までの禁酒法の期間に多くのワイナリーが廃業に追い込まれました。ワイナリーが減ったこと以上に大きかったのが、消費者が美味しいワインを求めるという嗜好を失ったことで、禁酒法期間の倍以上の30年間ほど、高品質なワイン造りはイングルヌック(Inglenook)やボーリュー(Beaulieu)などごくごくわずかなワイナリーを除いてはほとんど行われていませんでした。

1960年代に入り、ハイツ・セラー(Heitz Cellar)、シュラムスバーグ(Schramsberg)などの今に続く高級ワインのワイナリーが少しずつ誕生してきました。その象徴的存在が1966年に設立されたロバート・モンダヴィ(Robert Mondavi)であり、モンダヴィ傘下で働いた人たちが次々と名門ワイナリーを興すようになるのです。60年代にはすでにスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag's Leap Wine Cellars)がオープンしていますが、その動きがさらに活発になったのが1972年でした。

ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズによるとこの年、少なくとも8個のワイナリーが開業しており、60年代全体に匹敵するほどでした。ナパでは70年代に40を超えるワイナリーがオープンしていますが、まさにカリフォルニアワインが開花を始めた時期と言っていいでしょう。

1972年にオープンしたのはケイマス(Caymus)やシルバー・オーク(Silver Oak)、ダイヤモンド・クリーク(Diamond Creek)、クロ・デュ・ヴァル(Clos du Val)、マウント・ヴィーダー(Mount Veeder)、スミス・マドローン(Smith Madrone)など。また、そのまではドライ・クリーク・ヴィンヤード(Dry Creek Vineyard)やジョーダン(Jordan)がこの年に生まれています。ケイマスやシルバー・オーク、ジョーダン、ドライ・クリークなど創業した家族が今も経営を続けています。

ちなみに冒頭に写真を載せたシャトー・モンテレーナ(Chareau Montelena)は1882年設立と設立は古いのですが、禁酒法以降は休眠状態であり、1972年にそれを買い取ったジム・バレットによって再生を始めたのでした。翌年のシャルドネが1976年のパリスの審判で1位になったのは周知の通りです。

何百年も続いている欧州の名門に比べれば歴史の短いカリフォルニアワインですが、それでもしっかりと年を刻んできています。50年ともなると、ブドウの樹は植え替えも経ているのが普通であり、シャトー・モンテレーナでも現在3回めの植え替えをしているとのこと。歴史の浅さが品質の低さになるようなことはもうないと言っていいでしょう。