X(旧Twitter)で旧知の間柄の安ワイン道場師範がゴールデンウイークに勝沼のワイナリー巡りはどうでしょうかと声をかけていたので、参加してきました。せっかくなのでと、昨年アカデミー・デュ・ヴァンで教えた生徒さんたちにも声掛けしてみたところ、5人参加いただき、総勢14名というなかなかの人数のツアーです。とはいえ、ゆるゆるの集まりですから、途中から参加も途中でドロップアウトもありで、最後のお疲れ様会だけは予約するので守りましょうという、周りから見たらちょっと不思議な感じの集団だったかもしれません。

ツアーの詳しいことは安ワイン道場師範がアップしてくれるはずなので、私は手抜きして感想だけを書いていきます。

我が家からだと長津田駅を6:42の電車(横浜線)に乗れば、八王子・高尾と鈍行で乗り継いで勝沼ぶどう郷駅に8:55着。特急使っても10分くらいしか変わらないので、リーズナブルに各駅で行きました。

今日のツアーはすべて徒歩。結果的には2万歩ほど歩いています。

最初のワイナリーはシャトー勝沼。ここは大きなワイナリーで観光バスのツアーにも入っています。入るとプラカップでいくつかのワインが試飲できます。ボトルを見ても品種が書いておらず、ほの甘のワインが中心で、品質については言わずもがな。500円で2杯飲める有料試飲も試しましたが、どちらも明らかに酸化していて、ちょっとどうなのかなあという感じ。まじめにワインをテイスティングしにくる人は珍しいのかもしれません。

ここはおみやげ物も充実していて観光バスで来たお客さんもそちらが中心のもよう。おみやげはどこかで買えるかと楽観していたのですが、実はほかでは全く買えなかったので、実は貴重な店だったようです。

次の目的地は原茂ワイン。1924年に創設され、今年で丸100年という老舗ワイナリーです。

建物の外には1949年に植えられたという「シトロンネル」というブドウの樹もあります。



ここの試飲はコイン(100円)を入れてボタンを押すとワインがサーブされるというもの。勝沼に来たのは2016年以来ですが、前回はまだこういうスタイルのものは見なかったような気がします。行ったワイナリーの違いもあるでしょうが、今回はシャトー勝沼以外はプラカップ試飲もなく、試飲のレベルはだいぶ上がっている印象がありました。

ただ、ここも基本的には勝手に試飲してくださいというスタイルなので、ワインの説明などは特にありません。ワイナリーツアーはエデュケーションという面も重要だと思っているので、ここはちょっと残念だったところ。

次のワイナリーはマルサン葡萄酒。こちらは若尾果樹園という観光のブドウ園も経営しているそうです。


オーナーの若尾亮さんが自らワインをサーブして説明してくださいます。甲州は最近は早摘みするところが多くなっているが、ここは遅めに収穫して敢えて皮の苦みとかも出しているなどの話を伺いました。やっぱりどうしてそう作っているのかなどの話が聞けると楽しいです。ここはなんと試飲も無料。スタンダードな甲州を購入しました。

あと、面白かったのは観光用の生食のブドウで余ったものを使って作るワイン。その性質上、年によって比率が異なるそうですが、17種類ものブドウを使っています。

今回行った中ではここが個人的には一番良かったです。

この後はランチ。慶千庵というほうとうの店に行きます。とはいえ大人数で入れるか心配だったのですが、ちょうど12人入れる部屋が空いていて(ランチ時は12人でした)ラッキーでした。肉ほうとう、自家製の味噌によるスープや、味変用の自家製柚子胡椒などが美味しかったです。ワインもいただきました。

ランチ後はシャンモリ(盛田甲州ワイナリー)へ。ここは6年前にも来たことがあります。そのときは無料のプラカップ試飲だった気がしますが、今回は有料でグラスの試飲にグレードアップしていました。

カウンターで4枚550円のチケットを買ってグラスを渡してもらい、別の試飲スペースに行ってチケットを渡して試飲するというスタイル。最後は元のところにグラスを戻しにいくのですが、この形だと、例えば追加で試飲したいと思っても、一回カウンターのある建物に戻らないといけないのがちょっと面倒。試飲して美味しかったワインを買いたいというときにも、一回場所の移動が入ることでちょっと勢いがそがれてしまう感じがしてもったいないと思いました。ここもワインの説明はなし。

シャンモリからはすぐ近くのシャトー・メルシャンに向かいます。

さすがに大手だけあって90分3000円のツアーもあり、それは満席になっていました。ちなみに今回行った中でツアーがあるのはここだけのようでした。テイスティングのメニューも様々用意されていましたが、今回は安ワイン道場師範のおごりで、庭でスパークリングワインを皆でいただきました。師範ありがとうございました!

ここは無料で見られる資料館もあり、棚栽培が主流の勝沼では珍しい垣作りの畑もあります。庭も広々としていて良かったです。

メルシャンの次はワイナリーの目的地としては最後のグレイスワイン(中央葡萄酒)に。


ここは勝沼、というよりも日本を代表するワイナリーの一つといっていいでしょう。テイスティングメニューもいろいろ魅力的なものがありましたが、私は1800円で畑違いの甲州が3種類試飲できるセットにしました。


ここは樽は使わず、シュールリーもしないすっきりタイプの甲州。酸がきれいに伸びてくるのがいいですね。さすがの作り手と感じました。ただテロワールの違いはなかなか難しい。比べて飲めば違いがあるのは分かりますが、多分一通り試飲した後で、一つ飲んで当てろと言われても外しそうな気がします。

ほかの方が試飲していたキュベ三澤(メルロー中心のブレンド)も一口おすそ分けいただきました。ピラジン(ピーマン香のもと)を感じるのは、この日試飲したメルローに共通していますが、その中では果実の熟度も高く、単にタニックなのではないストラクチャーもあって、レベルの高さを感じました。

ここはスタッフもワインの知識がちゃんとあって、質問すると答えていただきました。そういった面でもやはり優れたワイナリーだと思います。場所も広いのでフリーテイスティングだけでなく、スクール形式のテイスティングとかもしたら面白いのにと思いました。

グレイスの後は、山梨のワインを買うならここ、という新田商店に向かいます。

歩いている途中に「ハーブ庭園」というところを発見。入場無料ということで、ちょっとツアーから抜けて、見に行きました。

ローズマリーやミント、セージなどワインのコメントにもよく使われるハーブももちろんありますし、初めて香りをかいだものもありました。

これはカレーのにおいがするハーブ。

ここは面白いです。もっと時間かけて寄りたかったくらいでした。


新田商店ではワインの購入はもちろん、試飲もできます。1000円でコイン3つもらってサーバーから注ぐスタイル。ワインはかなりレアなものもあり、試飲だけでも良かったです。特にダイヤモンド酒造のPetit diXという上位のキュベは、これまで飲んだことのあるマスカット・ベーリーAとは一線を画すレベル。美味しかったです。ワインは何か買おうか迷っている間に時間切れ。

新田商店からお疲れ様会の「パパソロッテ」までは徒歩で30分以上、最後はかなりの坂道を上りました。

パパソロッテは勝沼ぶどう郷駅近くでは唯一といっていい本格的なレストラン。食事ができる店の少なさもどうなのと思いますが、ゴールデンウイーク中なのに、この日それほどほかの観光客を見かけませんでした。どうしてなのかなあ。観光バスで来る人くらいなのでしょうか。ワイナリーツアー自体が知られていないのでしょうか。もっともっと発展する余地はあるような気がします。

話がずれましたが、パパソロッテは素晴らしいレストランでした。あらかじめコースを頼んでいたのですが、飲むワインを決めたら、料理の仕上げをワインに合わせて変えてくれるのです。

例えばこればメインのチキンのソテーですが、これにボルドータイプのワインを合わせるため、赤ワインを煮詰めたソースを使っています。料理単体でも美味しいのですが、ワインと一緒だとまさにマリアージュでどちらの美味しさも増します。美味しすぎてあっという間に食べてしまうのだけが難点。



ワインもかなりレアなものを揃えています。これは地元で生産者と直接つながっているからできること。しかもワインの値段もリーズナブルです。

食事が終わって、8時32分の電車に乗り、10時半ころには地元の駅に戻ってきました。ちゃんとディナーを食べてもこの時間に帰れるのもありがたい。私も初めて電車で行きましたが、運転がないので試飲も自由にできていいですね(前回は石和温泉泊で、勝沼では妻に運転してもらいました)。

ちょっとネガティブなことも書きましたが、よりワインツーリズムが盛んになってほしいと思ってあえて書いています。もっと多くの人にワイナリーに行ってほしいものです。