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Date: 2023/0331 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのワイナリー「ガーギッチ・ヒルズ(Grgich Hills)」は3月24日、環境再生型有機認証(Regenerative Organic Certification=ROC)を獲得したと発表しました。カリフォルニアではタブラス・クリーク、フェッツァー、ニール・ファミリーに次ぐ4番目の認証です。

環境再生型有機認証は、従来の有機栽培の認証に加えて健康な土壌の構築、生物多様性の促進、動物福祉と社会的公正などを盛り込んだ包括的な認証です。有機認証やビオディナミの認証が栽培だけに関わるのに対して、より環境や公正さといったことに踏み込んだSDGsに近い考えのものになっています。



ワインメーカーで、ブドウ畑と生産の副社長であるイヴォ・ジェラマズ(創設者マイク・ガーギッチのおい)は「再生型農業の原則は本当に新しいものではありません。実際、叔父のマイク・ガーギッチと私はブドウ園で働き、原産地のクロアチアで多くのブドウを使ってワインを作っていたので、それは私にとって「バック・トゥ・ザ・フューチャー」です」と語っています。

ちなみにマイク・ガーギッチさん、4月1日で100歳におなりです。言うまでもないと思いますが、パリスの審判で白ワイン1位になったシャトー・モンテレーナの当時のワインメーカーです。

こちらも合わせて読んでいただくといいと思います。
テッド・レモン大先生のスイッチを入れてしまったある質問
Date: 2023/0330 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワイン協会が4月1日から5月31日にワインが当たるキャンペーンを開催します。


応募方法は以下の通りです。
Step.1:カリフォルニアワインを料飲店で注文、またはオンラインショップや小売店で購入し、そのワインを楽しんでいる素敵な写真を撮影してください。
Step.2:カリフォルニアワイン協会の公式インスタグラム(@calwinesjp)をフォローしてください。
Step.3:指定ハッシュタグ「#カリフォルニアワインを楽しもう」を付けて、「@calwinesjp」をタグ付けし、購入した店舗の位置情報(または店舗名をキャプション内)に入力して投稿してください。投稿は通常の投稿とストーリーズ投稿、どちらも対象となります。
※アカウントを非公開設定にしている方は、公開設定にしてからご応募ください。

店舗で飲むだけでなく、買ったワインを飲む場合でも応募できるのはいいですね。
まずはともかくインスタアカウントをフォローしておきましょう。
カリフォルニアワイン協会(@calwinesjp) • Instagram写真と動画

応募は何回でもできます。たくさん応募すると有利になるのかどうかはわかりませんが、おそらく抽選に当たる確率は高くなるのではないかと思っています(私は関係者ではないので適当です)。なお、当選は一人最大1本です。

キャンペーン参加の飲食店はこちら。同じページの下の方に小売店やオンラインショップのリストもあります。
参加店一覧|カリフォルニアワイン・スプリングプロモーション2023


どさくさ紛れに私のインスタも宣伝しておきます。フォローしていただけると嬉しいです。
Andy Matsubara(@andyma) • Instagram写真と動画
Date: 2023/0329 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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昨年、合併して欧州ワインも扱うようになった新生Wine to Styleの試飲会に行ってきました。とはいっても時間制限があったので、米国ワインのブースを回るので精一杯でした。早速いってみましょう。


ファー・ニエンテの新ブランド「ポスト&ビーム」のカベルネ・ソーヴィニヨン2020(9500円、税抜き希望小売価格、以下同様)。ナパらしい果実味とエレガントさが同居して1万円以下の価格にちょっとびっくりしました。調べたら2021年の試飲会でもおすすめに挙げていたようです。


NBAの八村塁選手がプロデュースしたワイン「ブラックサムライ」のカベルネ・ソーヴィニヨン2019(26000円)。醸造はファー・ニエンテ系のニッケル&ニッケルのワインメーカーであるジョー・ハーデン氏が担当しています。リッチで果実味が爆発するようなカベルネ・ソーヴィニヨン。


ファー・ニエンテのシャルドネ2020(14500円)。クラシックな銘柄で、リッチな味わいも確かにクラシックですが、マロラクティック発酵なしなので、くどくなくきれいな味わいを持っているところが好きです。最近はあまり話題に上がらないワインですがもっと評価されていいと思います。


アイズリーのカベルネ・ソーヴィニヨン2019(120000円)。もう一つクラシックなワインが続きます。12万円はもちろんとてもお高いですが、リッチさだけでなくエレガントさが際立っており、本当に素晴らしいワイン。ワイン・アドヴォケイトで100点とのこと。


トゥエンティ・ロウズのリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2020(4200円)。実売では税込み3000円台半ばから売っているワイン。ちょっと甘やかさが強いですがリッチなカベルネ・ソーヴィニヨンとしてお薦めできます。


安いものと高いものが混在しておりますが、今度はまた高い方でコンティニュアムの2019年(45000円)。ゴージャスでバランスの良さが素晴らしいです。コンティニュアムとしてはややタニックなので、しばらく置いておいた方がよさそうです。


ホールのソーヴィニョン・ブラン2021(4300円)。果実味が豊かなソーヴィニョン・ブラン。ナパのソーヴィニョン・ブランのベンチマーク的なワインになりそうです。よくできています。


ハーンのシャルドネ2021(2850円)。樽の効いたリッチなシャルドネ。2000円台は安いです。


中央はOZVのロゼ・オブ・プリミティーボ2020(2550円)。ジンファンデルで人気のワイナリーのロゼ。果実味がフレッシュで美味しい。左は同じワイナリーが作る「3 Girls」というブランドのカベルネ・ソーヴィニヨン2019(2450円)。リッチなスタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンです。かなりよく出来ています。


ニュージーランドで岡田さんが作るフォリウムのピノ・ノワール2020(4200円)。すなおに美味しい。4200円はバーゲンです。


サイクルズ・グラディエーターのソーヴィニョン・ブラン2021(2100円)。引き締まった感じもありコスパ高い。


ここ数年でカリフォルニアのコスパ系の定番になったベンド。シャルドネは樽の効いたリッチなスタイル。


ボー・リヴァージュ シュナン・ブラン 2019(3900円)。ワイン・アドヴォケイトでブルゴーニュなどを担当するウィリアム・ケリーが作るワイン。ローダイの北のクラークスバーグのシュナン・ブランを使っているそうです。酸がきれいでうまみもあり、とても美味しいです。ここのワインは初めて飲んだような気がしますが、美味しさに驚きました。


ウルトラヴァイオレットのカベルネ・ソーヴィニヨン2021(2900円)。ここのワインは毎回紹介しているような気がしますが、いつ飲んでもコスパにびっくりします。エレガントですが適度な凝縮感もあり、やわらかな味わいでおいしい。


レインのロイヤル・セント・ロバート・キュベ ピノ・ノワール2019(10500円)うまみ強く美味しい。とてもいいです。


サンディのシャルドネ セントラル・コースト 2020(4600円)。サンディのAVAもの。クラシックな味わいでコスパ高いです。


スコリウム・プロジェクトのワインメーカーが独立して作ったワイナリーがメートル・ド・シェ。スコリウムは結構ファンキーな味のワインも多いので個人的にはちょっと苦手としていますが、メートル・ド・シェはきれいな味わいでおいしい。ロゼ2021が4800円、レッド・テーブル・ワイン2021が4700円。グルナッシュが主体でうまみがあってしっかりしています。ジンファンデル2020はきれい系(5300円)。どれもいいです。


アイ・ブランド&ファミリーもニューカリフォルニア系でコスパ高くきれいなワインを作るワイナリー。ル・プティ・ペイザン シャルドネ2019(3800円)はうまみあってとても良いです。ル・ペティ・ペイザン オールド・ヴァイン カベルネ・ソーヴィニヨン2020(3800円)は樹齢60年と45年の畑のブレンド。エレガントでミネラル感のあるカベルネ・ソーヴィニヨン。


ブルゴーニュ・ファンにも支持されているラシーヌのシャルドネ2019(9500円)とピノ・ノワール2019(10000円)。エレガントで美味しい。個人的には特にピノ・ノワールが好きでした。


セバスティアーニのシャルドネ バターフィールド・ステーション 2020(3000円)。ブレッド・アンド・バター系の味わいかと思いましたが、意外とバター感は強くなくすなおに美味しいです。


ザ・ペアリングはこれまで何度も記事で紹介していますが改めて。シャルドネ2020(4500円)、ピノ・ノワール2020(4500円)、レッド・ワイン2017(4500円)。ちょっと値段は高くなりましたがそれでもコスパ高いです。個人的にはピノ・ノワールがエレガントで特に好きでした。


最後はザ・ペアリングの上位になるザ・ヒルト。エステート・シャルドネ2019(6500円)、エステート・ピノ・ノワール2019(6500円)。最近まではシャルドネとピノ・ノワールのセットで1万円を切るショップもありましたが、さすがにもう厳しいでしょうね。ワインはどちらもきれいな作りでとてもいいです。
Date: 2023/0328 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマでスパークリング・ワインのカスタム・クラッシュ(委託醸造)を行うラック&リドルがシャルマ方式のスパークリング・ワインを作るための設備を導入しました。コッポラ・ブランドのオーナーであるデリカート・ファミリーから、コッポラのソフィア・スパークリングに使っている設備をリースし、ソフィアの醸造をラック&リドルが請け負います。また、ラック&リドルは設備を増強して他のワイナリーからの依頼にも応える予定です。

従来の瓶内二次発酵方式では、一次発酵によって作られたワインを瓶に詰め、そこに糖と酵母を追加して二次発酵を行います。シャルマ方式では、一次発酵によって作られたワインを密閉タンクに入れ、糖と酵母を追加して二次発酵させます。瓶内二次発酵よりもコストがかからず、期間も短くなります。具体的には瓶内二次発酵で1~2年かかるところが45~60日程度で済むとのこと。また、ワインが空気に触れないため、より果実のフレッシュさが残るとも言われています。近年、需要が急速に伸びているイタリアのプロセッコで使われている方式です。

ソフィアの設備は米国で最大規模のシャルマ方式の製造設備と言われています。ラック&リドルとしては従来の瓶内二次発酵に加え、シャルマ方式をカスタム・クラッシュのメニューに加えられそうです。
Date: 2023/0327 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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ヘンドリー「ブロック8」と聞いて心ときめかすのは、オールドファンではないかと思いますが、ヘンドリーのカベルネ・ソーヴィニヨン2018が、実質ブロック8のワインになっています。この「ブロック8」、1980年代から1990年代にかけてはオーパス・ワンやロバート・モンダヴィのリザーブの主要コンポーネントとして使われていたブドウなのです。

ヘンドリー

ヘンドリーの畑はオーク・ノールAVAにあります。オーパス・ワンやモンダヴィのあるオークヴィルと比べるとマイナーなイメージですが、そこの丘の上の畑になっており、中でもブロック8のブドウは前述のようにモンダヴィやオーパス・ワンに認められていました。現在のオーパス・ワンは自社畑だけになり、ヘンドリー自身も基本的に自社のワイナリーでの使用に変わっています。ただ、モンダヴィでチーフ・ワインメーカーを務めるジュヌヴィエーヴ・ジャンセンズ氏のプライベート・ブランド「ポートフォリオ」では、現在もブロック8をメインのブドウとして使い続けています。このことからも、ブロック8への高い信頼がわかります。

以前は、ヘンドリーとして「ブロック8」のカベルネ・ソーヴィニヨンがあったのですが、現在はブロック名称のないカベルネ・ソーヴィニヨンだけになっています。ただ、2018ヴィンテージについてはブロック8の中のBとDとFという3つのセクションしか使っていないとワイナリーのサイトには書いてあります。このうち、DとFは1974年に植えられたセクションでBだけは2006年と新しいセクションになっています。

昔に比べると高くなった感はありますがそれでもまだ1万円台半ば、オーパス・ワンやモンダヴィのリザーブと比べたらずっとリーズナブルな価格です。



Date: 2023/0326 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2月末に開かれたカリフォルニアワイン協会の「Alive」テイスティングで気になったワイン、美味しかったワインを報告します。


ピゾーニが作るピノ・ノワールのロゼ「ルーシーロゼオブピノ・ノワール2021」(4840円、価格は税込みの希望小売価格、以下同)です。ロゼとしてはやや高価ですが、ピュアな果実味がきれいでピノ・ノワールらしさもしっかりあり、とてもいいロゼです。輸入はilovecalwine。


同じくilovecalwine輸入でサンドラーとオーガスト・ウエストのピノ・ノワールとシャルドネ。7700円はこのレベルにしては安いです。特に一つ選ぶならばオーガスト・ウエストのロシアン・リバー・ヴァレー ピノ・ノワール 2021。


バークレーの有名レストラン「シェ・パニーズ」のハウスワインとして使われていることで知られているグリーン&レッドのジンファンデル。3種類出ていましたが、私のベストはチャイルズ・ミル・ヴィンヤード2017(7700円)。生産者と撮っていただきました。


ヴィノスやまざきが輸入を始めたアレキサンダー・ヴァレー・ヴィンヤーズ。レッドブレンドとジンファンデルが5500円でカベルネ・ソーヴィニヨンが6380円。ヴィノスやまざき輸入のワインは芳醇でふくよかなものが多い印象がありますが、これは果実味豊かで酸もしっかりあってとてもバランスが良いタイプ。アレキサンダー・ヴァレーのワインの中でもこのバランスの良さは秀逸でしょう。


もう一つヴィノスやまざきからウォーターストーンのメルロー2018(5500円)。メルローらしさが出ていてコストパフォーマンスもいいと思います。


パソ・ロブレスで注目のダオ(Daou)が作るもう一つのブランドPatrimony。今回未輸入ワインということで参加していましたが、中川ワインが扱うようです。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プロプライエタリのカーヴ・デ・リオンの3つが出ていました。どれも濃厚でパワフル。個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンがバランス的に良かったです。



リッジのエステート・カベルネ・ソーヴィニヨン2016(14850円)。リッジのフラッグシップで、パリスの審判30周年の再戦で1位になったモンテベッロと畑は同じカベルネ・ソーヴィニヨン。モンテベッロとの違いは、モンテベッロが超熟型で最低10年は経たないと本領を発揮してこないのに対し、エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンはリリース直後から飲みやすくできていること。下級品ではありません。価格は半額以下ですが。とはいえこれも7年熟成でこなれた感じは出ています。とても美味しい。いろいろ高値になっている中で、価格が変わっていないこのワインはむしろ割安感が出てきています。


もう一つパリスの審判銘柄で、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの「アルテミス」カベルネ・ソーヴィニヨン2019(11000円)。こちらはセカンドの位置づけ。とてもバランスよくまとまっています。インポーターはファインズ。


シャルドネの人気が高いジャム・セラーズの「Butter」からのカベルネ・ソーヴィニヨン2018(4290円)。バターの名前が似合うリッチでまろやかな味わい。4000円台だとちょっと高く感じられますが、実売だと3000円強といったところで納得感が出ます。ちなみに、JaMカベルネという赤いラベルのカベルネもあります。中川ワイン。


美味しいメルローを探すのは美味しいカベルネを探すのより10倍くらい難しく感じます。ナパ・ハイランズのメルロー2020(5280円)とリザーブ・メルロー(7700円)はその中で納得できるクオリティと価格のワイン。個人的にはレギュラークラスが特にバランスもよく、うまくまとまっている感じがしました。こちらも中川ワイン。


桃井隆宏さんが作るアーサー・セラーズのチェリーリッジ・ピノ・ノワール2021(6820円)とロシアンリバー・ヴァレー・ピノ・ノワール2021(5720円)。
2つともアーサー・セラーズの新作ですが、多くのワインの中に埋もれてしまうかもしれないこの記事に書くのはちょっともったいないかもしれないワインです。チェリーリッジはロシアンリバー・ヴァレーの中でも冷涼なグリーン・ヴァレーにある畑ですが、なんと栽培を手掛けているのはコブ・ワインズのロス・コブ氏。2021年は、全域的にブドウの収量が少なく、調達に苦労していたという桃井さんが、たまたま縁があってこの畑のブドウを手に入れられたとのこと。アーサー・セラーズのワインはピュアな果実味が特徴的ですが、これはその中にさらにエレガンスが加わって、これまでのアーサーのワインとも一味違う出来になっています。一方、ロシアンリバー・ヴァレーのAVAものは、アーサーらしい果実味豊かで陽性な味わいが前面に出たワイン。飲んでいると美味しくて思わず微笑んでしまうようなワイン。どちらもこの価格はとても安いです。


レイモンドのリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2019(左、8800円)とリザーブ・メルロー(右、4620円)。このワイン、まずラベルが面白いです。ベルベットのような手触りの紙が使われています。さすがJCBという感じです(詳しくは「レイモンドの強烈な世界に皆ノックアウトされる」を参照)。ラベルが面白いだけでなく、味わいも本格派です。どちらもコスパの良さが際立ちますが、特にメルローは、ぎゅっと引き締まった感じもあって美味しかったです。インポーターはアサヒビール。


上の方に挙げたPatrimonyと同じくダオ(Daou)兄弟が作るワイナリー。Soul of a Lion2019(30800円)はDaouブランドでのフラッグシップ。シルキーなテクサチャーで素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンです。ナパのワインに例えるならば、PatrimonyはHundred Acre、Soul of a LionはHarlanといった感じです。インポーターはナニワ商会。新橋のワインバー「ワイン蔵」の会社です。


個人的注目のエドナ・ヴァレーのタンジェント・ワインズによるソーヴィニョン・ブラン・パラゴン・ヴィンヤード2019(3850円)。冷涼産地のソーヴィニョン・ブラン、すばらしいです。輸入元はワインライフ。


平林園枝さんが作るシックス・クローヴズのシャルドネ・リンダ・ヴィスタ2020(8140円)、ピノ・ノワール・アルダー・スプリングス(9900円)、マグノリア・レッド・ブレンド2019(7700円)。シャルドネのリンダ・ヴィスタはナパでスティーブ・マサイアソンが栽培する畑です。エレガントで旨味があります。ピノ・ノワールのアルダー・スプリングスはメンドシーノの北のほうにある孤高の畑。深みのある味わいがすばらしい。マグノリア・レッド・ブレンドは冷涼感があってバランスよくできています。園枝さんの作るワインはどれもとてもエレガント。従来のカリフォルニアワインのイメージで飲むとちょっと違うかもしれませんが、エレガント好きな人にはたまらないと思います。インポーターは布袋ワインズ。


ナパのマルドナド・ヴィンヤーズのシャルドネ・ロス・オリヴォス・ヴィンヤード2020(価格未定)。畑はカーネロスにあります。リッチで美味しいシャルドネ。インポーターはデプト・プランニング。


オー・ボン・クリマの別ブランドであるクレンデネン・ファミリーのプティ・ヴェルド2013(6600円)。畑はなんとビエンナシードです。冷涼なビエンナシードのプティ・ヴェルドなんて、際物のように思うかもしれませんが、これがエレガントでむちゃくちゃ美味しいです。10年熟成で角が取れているのもいいのかもしれません。驚きました。インポーターはJALUX。


オルカ・インターナショナルが最近輸入を始めたザ・ヴァイスのカベルネ・ソーヴィニヨン「ザ・ハウス」2020(7480円)、カベルネ・ソーヴィニヨン オークノール 2020(10780円)、カベルネ・ソーヴィニヨン スタッグス・リープ2019(16500円)。どれもよくできています。「ザ・ハウス」は入門的な位置づけだと思いますが、やはりバランスよくまとまっています。カベルネ・ソーヴィニヨンのオークノールはエレガンスがあります。最近はナパのカベルネでもオークノールやクームズヴィルといった少し冷涼な地域でエレガンスを持ったワインが人気が上がっている感じがします。一方、スタッグス・リープは、期待にそむかない濃厚さ。三様で美味しいです。

Date: 2023/0321 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリン・セラーズ(Kalin Cellars)の創設者でワインメーカーであるテリー・ライトン氏が3月9日、亡くなりました。78歳でした。テリーとフランシスの夫妻がワイナリーを始めたのは1977年のこと。二人とも微生物の博士号を持っています。

カリン・セラーズは十分熟成したワインだけを出荷するというユニークなワイナリーで、これまでリリースした最も若いヴィンテージのワインで2001年です(この年が最後という説もあります)。ワイナリーのサイトには「Kalin Cellars - Wines With The Fifth Taste」とあり、旨味を重視したワイン造りになっています。

本業は大学の教授で微生物学を教えtいたそうです。2002 年に名誉教授を辞任し、その後もChildren’s Hospital Oakland Research Instituteで研究を続けました。また微生物学の基礎研究と応用研究も続けていました。

日本には布袋ワインズを通して輸入されています。布袋ワインズに今後について聞いたところ、まだ在庫は持っているようなので、今後もリリースは続いていく見込みだとのこと。ただ、元々テリー・ライトン氏は、何がどれだけあるといった情報を全く出していなかったので、いつまでワインがあるかといったことは全くわからないそうです。

ジム・クレンデネン、ショーン・サッカリー、ジョシュ・ジェンセン、テリー・ライトンと個性的なヴィントナーが次々と亡くなり、寂しいです。

ご冥福をお祈りします。
Date: 2023/0320 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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フランシス・フォード・コッポラのワインの日本におけるインポーターがWine to Styleからエノテカに変わりました(Enoteca Japan Awarded Exclusive Japan Distribution Rights for Delicato Family Wines' Prestigious Francis Ford Coppola Wine Portfolio)。


対象になるのはロッソ・エ・ビアンコやディレクターズ・カット、ソフィアなど写真に上がっているブランド。ナパの高級ブランド「イングルヌック」は対象に入っていません。

だいぶ驚きましたが、たしかに先日のWine to Styleの試飲会にはコッポラのワイン、出ていませんでした、現在サイト上では「3月末取り扱い終了」となっています。
Date: 2023/0319 Category: グルメ
Posted by: Andy
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今週いっぱいくらいまで、いろいろ忙しくてブログ更新が滞りそうです。試飲会レポートとか忘れないうちに早く書きたいのですが…

先週はTaste of Californiaというイベントに参加しました。カリフォルニア州副知事も登場するというなかなか気合いの入ったイベントで、コロナ禍明けの観光客を呼び込みたいという熱意が伝わってきました。



ワインもかなりいいものが出ていてどれも美味しかったです。久しぶりにアイアン・ホースのスパークリングも飲みました。



ワインとペアリングする料理もいろいろ出ていました。監修はナパヴァレー・ヴィントナーズの小枝さんです。



なかでも絶妙なマリアージュだったのがこれ。ココナッツサブレにブルーチーズが塗ってあって上にダイスカットしたメロン。さらにトッピングできゅうりとディルを刻んだものがかけてあります。

これに合わせたのがナパのケークブレッド・セラーズのソーヴィニヨン・ブラン。冷涼な地区と温暖な地区のソーヴィニヨン・ブランをブレンドしています。爽やかさと柔らかな果実味が共存して美味しいのですが、このカナッペと合わせると、特にメロンとワインの甘やかな部分、トッピングとワインの爽やかな部分がマッチして、どちらもとても美味しく感じられました。思わずおかわりももらってしまいました。

ペアリングにはこれまで割と無頓着でしたが、ちょっと考えないといけないなと思っていむす。
Date: 2023/0317 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2月28日に東京、3月2日に大阪、その後は韓国・ソウルでカリフォルニアワイン協会による「アライブ」テイスティングが開催されました。東京は710名、大阪は335名、ソウルは610名の参加者を集め、非常に盛況でした。

米国からのワインの輸出も増加傾向にあります。2022年には日本への輸出は前年比28.3%増と大幅に増えて1億900万ドルに達しました。ここ数年の統計データが確認できていないのですが、1億ドルを超えたのはおそらく2013年以来ではないかと思います。なお、米国のワイン輸出の95%はカリフォルニアワインです。

韓国への輸出も9000万ドル近くに達しました。人口が日本の半分以下であることを考えると、かなりの額になります。冒頭に書いた試飲会での610名の参加というのも、韓国のワイン業界では過去最多ということで、カリフォルニアワインへの注目が高まっているようです。
Date: 2023/0314 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイン業界にも激震、シリコンバレー銀行破綻の影響は?」の続報です。ナパにワイナリー専門のオフィスを持ち、ワイナリーの顧客も多いシリコンバレーバンクが3月10日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入りました。

預金者は法律で保護されるのは25万ドルまで。特に、シリコンバレーのIT企業では給与支払いなどの資金繰りへの影響が懸念されていましたが、米政府が預金の全額保証を発表したため、パニック的状況が起こることは避けられたようです。

ただし、今後については予断を許さないところもあります。今後シリコンバレーバンクのアセットは他の銀行などに売却されていくことになります。それによって、今後の融資などがどうなるか。ワイナリービジネスに理解のある担当者がいないと、これまで融資されていたような案件でも融資が難しくなるかもしれません。

また、ワイン業界にとって最大の関心事は毎年2月に発表される「Stete of the Industry Report」が来年以降どうなるか、です。同レポートの執筆者であり、シリコンバレーバンクのワイン部門のエグゼクティブ・バイス・プレジデントだったロブ・マクミラン氏のところにも同様の問い合わせが多数来ているそうです。

レポートの執筆者は一人ですが、動画などさまざまな面を含めると数十人のスタッフが関わっているというプロジェクトであり、これまでは無償でレポートを公開してきたわけですが、かなりの費用がかかっています。スポンサーの申し出などもあるようなので、何らかの形で継続していく可能性が高そうですが、ロブ・マクミラン氏自身の今後が決まっていないので不透明な部分も多いです。

また、もう一つ近年作っていたDtC(direct-to-consumer)のレポートは今年は作れないだろうとのことです。
Date: 2023/0313 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2月28日には東京で、3月2日には大阪でカリフォルニアワイン協会の試飲会とセミナーが開かれました。3年ぶりに現地からも大勢が来日、活気のある試飲会でした。

カリフォルニアワイン協会では毎年「テーマ産地」を設定していますが、今年のテーマは「ウエスト・ソノマ・コースト」。2022年にAVAが認められたばかりのまさに今売り出し中の産地です。4月から5月にかけてはこの地域をテーマにしたプロモーションも行われ、インスタグラムではワインプレゼント企画も開催されるとのことです。

セミナーのテーマも「ウエスト・ソノマ・コースト」。現地の生産者団体から9つのワイナリーの代表者が来日して地域の解説をしました。生産者団体に属するワイナリーは28ですからおよそ3分の1のワイナリーが参加したことになります。

ブルゴーニュ品種の新潮流、ウエスト・ソノマ・コーストのコア・メンバーが来日
真のテロワールワイン -West Sonoma Coast AVA- 【特別無料公開】
と既に詳細なレポートも出ているので、ここでは私なりの感想を記していきます。

West Sonoma Coastの話をする前にそもそもSonoma Coastとは何なのかということを知っておく必要があると思います。

Sonoma Coastは上のマップで赤線で囲んだ、ソノマのほぼ半分を占めるような広域のAVAです。Coastと言いながら、比較的内陸のロシアンリバー・ヴァレーも大部分が含まれており、かなり温暖な産地であるチョークヒルも半分くらいが含まれています。また、太平洋だけでなくサン・パブロ湾に面したカーネロス(のソノマ側)も全域が含まれています。北の端から南の端までは100kmほどもあります。

なぜ、このような広域を占めているのかというと、Sonoma Coast AVA設立時(1987年)にSonoma Cutrerというワイナリーが、自社の畑を全部含むように領域を申請し、それが認められてしまったからです。Sonoma Cutrerは当時シャルドネ専業のワイナリーで、かなりの人気を誇っていました。そこがSonoma CoastというAVA名に加えてEstateという100%自社畑で100%そのAVAに入っていないと認められない表記を入れたいと思ったがための広域の申請でした。実は、こういったマーケティング的経緯でできたAVAはSonoma Coastだけではありません。その2年前にNorthern SonomaというAVAをGalloが主導して設立したときもGalloの畑を全部入れるために広域になったというのがありました。

ちなみに、Northern SonomaのAVAを冠したワインは現在ではGalloも作らなくなり、私の知る限りGallo以外で唯一使っていたRodney Strongもやめてしまっています。ほぼ有名無実なAVAになりました(上のマップにも実は含まれていません)。

一方、Sonoma Coastの方も当初から「無駄に広い」と言われ続けていましたが、ワインのラベルに表記されているという意味ではどんどん存在感を増しています。

カリフォルニアのピノ・ノワールのブームが本格化したのは2004年の映画「サイドウェイズ」以降と言われていますが、その頃は酸味を苦手とする人が多いアメリカ人の舌に合わせて、濃厚で甘やかなスタイルのピノ・ノワールが人気でした。ピノ・ノワールの産地としてはやや温暖なロシアンリバー・ヴァレーはそういったピノ・ノワールを作るのにぴったりで、ロシアンリバー・ヴァレーのピノ・ノワールがもてはやされました。「シラーみたいなピノ」と呼ばれることもしばしばありました。

2010年代になって、よりバランスのいいワインやエレガントなワインを求める人も増えていきました。IPOBやニュー・カリフォルニア・ワインのムーブメントがそれを後押しし、冷涼産地がもてはやされるようになってきました。そこで一気にロシアンリバー・ヴァレーからソノマ・コーストへのシフトが始まりました。とはいえ、ロシアンリバー・ヴァレーも実際にはほぼソノマ・コーストに含まれていますから、ロシアンリバー・ヴァレー産のブドウを使い続けて、ラベルだけソノマ・コーストに変えるといったことも可能なわけです。実際にどれくらいそういうことが起こっているのかはわかりませんが、例えばキスラーのWebサイトには一時期「キスラーはソノマ・コーストのワイナリー」といったことが書いてありました(キスラーのワイナリーはロシアンリバー・ヴァレーの中央部にあります)。

このほか、2011年にはFort Ross-Seaview(現在のWest Sonoma Coastに完全に含まれています)AVAも誕生しました。このAVAにはFlowersやHirsch、Marcassinなど重要なワイナリーが含まれていますが、AVAの名称としてはソノマ・コーストのようなわかりやすい冷涼感を表現するには力不足だった感じがします。Fort Ross-SeaviewのワインであってもSonoma Coastとして売られているケースが今でも主流だと思います。

West Sonoma Coastは、上記のようなAVAとしての一体感を無視して作られたSonoma Coastへのアンチテーゼとして90年代くらいから作ろうという動きが始まったようですが、実際にTTBへの申請という形で動きが本格化したのは2010年代に入ってからです。当初は「True Sonoma Coast」という案がありましたが、「True」というのはAVAの名称としては穏当ではないということで「West」に変えたという経緯があります。
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そのとき申請した領域は、上のマップの全域になります。
ところが、このころTTBではかつての無節操なAVA認定への反省から「AVAが他のAVAを完全に包含するのはOKだけど、部分的に重なっているのは認めない」という方針が打ち出されました。申請した領域の中でロシアンリバー・ヴァレーと重なっているところがあることから、門前払いになってしまいました。

そこで、上のマップの右下の色の薄い部分を外して申請をし、ようやく認められたわけです。

というところでようやく、今回のWest Sonoma Coast AVAの話に入っていくのですが、このマップを見ても、本当はここまで申請したかった、という思いが伝わってくるような気がします。実際に、将来はここまで広げたいという希望は今も捨てていないようですが、上記の理由により、そのためにはロシアンリバー・ヴァレーAVAの領域を狭くしなければいけないということになります。ロシアンリバー・ヴァレー側が簡単に承諾するとは思えないので、現実にはなかなか難しいだろうと思います。そんなことは当事者が一番わかっていることですが、それでもあえて、現在のAVAに含まれていないところまでマップに含めたことが、その10数年のバトル?の重さを感じさせます。


気候の説明で面白いと思ったのは「冷涼な海洋性気候」という言い方をしていたところです。通常、カリフォルニアの沿岸の気候は地中海性気候と言われています。実際に気候区分としては地中海性気候に入ります。海洋性気候というのは気候区分ではなく、海に近いところで、気温や湿度など海からの影響を強く受けているということで矛盾はしていないのですが、今までこういう説明の仕方は聞いたことがなかったのでなるほどと思いました。ちょうどソノマ・コーストのセミナーがこの後あったので、この説明、さっそく採用させていただきました。

ここでポイントになるのは、ただの海洋性気候ではなく「冷涼な」というのが着くところです。ワインの世界で海洋性気候の代表的産地というとボルドーを思い浮かべる人が多いと思います。ボルドーの場合は比較的緯度が高い地域にもかかわらず、暖流の影響で温暖な気候になるわけですが、ウエスト・ソノマ・コーストの場合は、雨が少なく日照も多いのに、昼も夜も冷涼にするというのがポイントです。


この、地中海性気候+冷たい海洋性気候がウエスト・ソノマ・コーストのワインの特性の多くを決めていると思います。日照が多いので、畑によってはアルコール度数は高めになることもありますが、酸の高さとピュアな果実味、フェノール類の発達による複雑な風味が特にピノ・ノワールでは典型的なウエスト・ソノマ・コーストの味わいになっています。


レッドウッドについても、これまであまり考えてこなかったところでした。ウエスト・ソノマ・コーストの畑の多くはレッドウッドの林を切り開いて作られており、今でも周囲はレッドウッドに囲まれているところが多くあります。冒頭のマップを見ると、ウエスト・ソノマ・コーストの大半は丘陵地帯になります。畑を作るのが容易な平地はほとんどありません。周囲のレッドウッドによって湿度が保てたり、風をブロックしてくれたり、フレーバーへの影響もあるそうです。

土壌はソノマの中でも多様で複雑です。ウエスト・ソノマ・コーストにはサンアンドレアス断層という巨大な断層が走っています。これは3つのプレートの衝突でできたもので、結果として堆積岩や海洋性の砂岩など様々な土壌がまじりあっています。あまり多くはありませんが火山性の土壌も一部混じっています(火山性だけというより火山由来の土壌と海洋性の土壌が混じり合ったものなど)。共通するのは、多くの土壌が栄養分に乏しく水はけがいいこと。ワイン用のブドウに適した性質と言われています。

リトライのテッド・レモンさんによると、どんな植物が生えているかを見るだけで、土壌は大体わかるとか。さすがです。

このほか、歴史の話などもありましたが、長くなったのでちょっと割愛して試飲に入ります。

Ernest Vineyards Joyce Vineyard Chardonnay 2020
Senses Wines B.A. Thieriot Chardonnay 2021
Alma Fria Holtermann Vineyard Pinot Noir 2021
Littorai The Pivot Vineyard Pinot Noir 2019
Hirsch Vineyards ‘Raschen Ridge’ Estate Pinot Noir 2019
Wayfarer The Estate Pinot Noir 2019

今回はこの6種類です。
シャルドネはアーネストとセンシーズの好対照の2つ。アーネストは、かなり自然派な作り手です。ワインの熟成には500リットルの大きな樽を使っています。アルコール度数12%とかなり低め。新樽を使っていないため、樽感はなく香りの第一印象ではややおとなしいワインかと思ったのですが、飲んでみると予想以上にリッチさがあります。酸がかなり高くレモンやカリンの風味。とてもきれいな味わい。

センシーズは幼馴染の若者3人によるワイナリー。著名な畑B.A. Thieriotのオーナーの息子のマックス・ティエリオット(彼は俳優としても有名です)もその一人で、ティエリオットのブドウを使っている一人だった著名ワインメーカーのトーマス・リヴァース・ブラウンが、自ら申し出てワインメーカーをしています(私の知る限り、トーマス・ブラウンが自分から申し出てワインメーカーをしているのはここだけです)。こちらはアルコール度数が14.2%あり、味わいに厚みを感じます。オレンジオイルやグリセリン。アルコール度数は高いですがバランスよく、酸もしっかりしています。

ピノ・ノワールの最初の試飲のアルマ・フリアはあまり知らないワイナリーでしたが、人気ワイナリーのレッド・カーのワインメーカーだったキャロル・ケンプが作ったワイナリーだとのこと。レッド・カーは2017年に売却してしまったようです。これもかなり自然派の傾向の強いワイナリー。キャロル・ケンプは「不介入型」だと称しています。レッドチェリーやストロベリーの風味。酸はきつくなく柔らかい味わい。マッシュルームやドライハーブといった熟成的なフレーバーもかなりあります。全房15%、10%新樽で14カ月熟成とのこと。

リトライはビオディナミの実践で知られていますが、契約畑も多いため、ビオディナミかどうかは畑によって変わります。これは自社畑のピヴォットなのでビオディナミです。とても旨味感の強いワイン。マッシュルームやハーブ、皮革も感じます。果実味もきれい。

ハーシュはウエスト・ソノマ・コーストでも最も古い時期に作られた畑の一つ。当初は栽培だけで、いくつかのワイナリーにブドウをおろしていましたが、1994年に大きな転機が訪れます。リトライのテッド・レモン、ウィリアムズ・セリエムのバート・ウィリアムズ、キスラーのスティーブ・キスラーという3つのワイナリーから相次いでブドウを買いたいという電話がきたのです。実はこの3人は同じ低スティグ・グループで試飲をしていて、それでハーシュのブドウに同時に興味を持ったのでした。特に当時から有名だったキスラーやウィリアムズ・セリエムで採用されたことで一気にその名前が広がりました。2002年からワイナリーを始め、今ではそちらがメインになっているとのこと。2011年からビオディナミになっています。
ワインはレッド・チェリーやマッシュルームの風味。味わいの広がりが素晴らしいです。非常にやわらかくまとまりのある味。アルコール度数は13.4%

最後はウェイフェアラー。ナパの人気ワイナリー「パルメイヤー」の創設者が始めたワイナリーですが、現在はナパのブランドは売却してしまったのでウェイフェアラーだけをやっています。マーカッシンのヘレン・ターリーに「ソノマ・コーストのラ・ターシュになる」と薦められた土地を買って始めたという経緯があります。
ピノ4つの中でこれが一番外交的なワイン。果実味豊かで味もこの中では濃いめです。ベリーや甘草の風味。

テイスティング・コメントだけではよくわからないと思いますが、予想以上に個性がありしかもどれも非常にハイレベルです。ウエスト・ソノマ・コーストの中でも冷涼感の強い北部、標高が高く霧の影響が比較的少なく味わいも強くなる中部(Fort Ross-Seaviewエリア)、海からの距離はちょっと離れますが標高が低く、霧のかかり冷気が滞留する時間が長いためワインも一番エレガントになる南部と、地域差が結構あることもだんだん分かってきました。このあたりはもっと勉強が必要だと思っていますが。

このAVAはまだ誕生したばかりで、実際に「West Sonoma Coast」とラベルに記されているワインはほとんど存在していません。もしかするとWest Sonoma Coastに属してもマーケティングなどさまざまな理由でSonoma Coast表記を選ぶワイナリーもあるかもしれません。今回取り上げたワイナリーもWest Sonoma Coastのワインしか作っていないわけではありません。そういう意味ではまだ消費者にとってはわかりにくいところの多いAVAですが、まずはここで挙げたワイナリーや、以下のWest Sonoma Coastの団体に含まれるワイナリーのワインを、試してみるのがいいでしょう。どれも水準をはるかに超えたワインであること、それは保証していいと思います。
Date: 2023/0312 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国のシリコンバレーバンク(SVB)が3月10日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入りました。リーマンショック時のワシントン・ミューチュアルの破綻に次ぐ規模だと言われています。
SVB

シリコンバレーのIT企業への投資で知られるSVBですが、ワイン業界でも極めて存在感が大きな銀行です。ナパに「プレミアム・ワイン」部門を持ち35人もの専門家を抱えています。また、年に1回公開される「State of the Industry Report」はカリフォルニアのワイン業界の状況を分析したもので、業界では必須の資料となっています。現在も400を超えるワイナリーやワイン関連企業がSVBから融資を受けています。有名なワイナリーではシャトー・モンテリーナ、ハーシュ、ダリオッシュ、トレフェッセンなどがSVBの顧客に含まれています。

SVBの破綻によって、今すぐワイナリーの経営が傾くといったことはなさそうですが、当面25万ドルまでしか預金を引き出せないということになっており、ワイナリーによっては運転資金の確保が問題になるケースは出てきそうです。また、開発中のワイナリーやブドウ畑などは開発が止まってしまう可能性がありそうです。運転資金を確保するために古い在庫を投げ売りするようなワイナリーもあるかもしれません。

SVBのワイン部門の創設者であるロブ・マクミランは、現時点ではコメントできないと問い合わせに対して返答しているとのことです。
Date: 2023/0311 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サスティナブルに非常に力を入れているワイナリーの一つがパソ・ロブレスのタブラス・クリーク。2010年から軽量ボトルを採用しています。このほど、それから14年でいくらの節約になったのか、試算結果を公表しています。



ワイン作りにおける二酸化炭素の排出量で一番大きな要素をしめるがガラス瓶です。製造時の二酸化炭素排出量が大きいだけでなく、輸送時にも多くの二酸化炭素を使用します。タブラス・クリークでは2010年に23オンス(約650g)のガラス瓶から16オンスのガラス瓶に変更しました。今回は、それによる二酸化炭素排出量の削減ではなく、純粋にワイナリーとしてどれだけコスト削減につながったかを計算しています。

今回の試算ではボトルの価格と、FedExなどによるう送料だけを計算しています。タブラス・クリークではそれまで2割の高級ワインには背が高くて重みもあるガラス瓶を使っていました。軽量のボトルはそれよりもボトルあたり60セント安く、それまでの普通のボトルよりも6セント安い計算になります。これだけで年間6万3200ドルの節約になります。

送料の計算は簡単ではありませんが、それまでのボトルの重さは軽量ボトルより5%ほど重いので、送料も5%増える、重量級のボトルでは16%も重くなるので、送料も16%増えると想定して、重いボトルを使い続けた場合のコスト増を考えました。

それが年間9万6539ドルに相当します。これと先程の6万3200ドルを足した約16万ドルが年間のコスト低下分ということになります。14年に換算すると実に223万6346ドル節約したことになります。

実際にはボトルの値段が上がっており、価格の差分ももっと大きかった可能性があります。また、大きくて重いボトルは箱のサイズも大きくなり、トラックなどの台数も増えた可能性がありますが、それも計算に入っていません。

「重くて背の高いボトルに入れるのが高級ワイン」というのはもはや幻想です。消費者も重いボトルを褒める風潮をやめるべきです。

ワイナリーにとってもこれだけのコストメリットは大きいはず。軽量ボトルはだれから見てもメリットになるはずです。
Date: 2023/0310 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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いろいろ忙しくて楽天スーパーセールもあまりチェックできていなかったのですが、カリフォルニアワインでかなりお買い得になっているものもいくつかありました。11日の午前1:59までの限定価格です。

「赤坂ワインストア エラベル」ではサンタ・バーバラのザ・ペアリングのシャルドネとピノ・ノワールが激安です。ザ・ペアリングはスクリーミング・イーグルのオーナーがサンタ・バーバラに持つホナタ(Jonata)とヒルト(Hilt)の2つのワイナリーのセカンドワインとなるブランド。昨年はNHKの番組でソーヴィニョン・ブランが取り上げられて一時品薄になるなど、人気も高く、通常価格の3000~4000円台でも十分お買い得なワインです。それが今回はピノ・ノワールとシャルドネが税込み2706円と、他店より1000円以上も安くなっています。どちらも残り1桁なのでお早めに。ソーヴィニョン・ブランは売り切れです。




ペアリングの安さも驚きましたが、もっと驚いたのが「リカオー」。ボーリュー・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨン タペストリー・リザーブ2015がなんと税込み5849円。ほかの店より3000円以上安く、ワンランク下のナパ・ヴァレーのカベルネよりも安い価格。現地価格よりも安いです。よほど評価低いのかと調べてみましたがワイン・アドヴォケイトもヴィナスも92点と、むしろ高評価のヴィンテージ。


このショップではロバート・モンダヴィも激安。シャルドネもピノ・ノワールも2000円台。「値段そんなもんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、これはロバート・モンダヴィでもカリフォルニア全域のブドウから作る「プライベート・セレクション」ではなく、ナパ・ヴァレーのブドウで作る「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」のもの。この2つの違いはとても大きく、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーのサイトにはプライベート・セレクションの情報は全く載っていません。本当の意味でロバート・モンダヴィのワインと呼んでいいのはロバート・モンダヴィ・ワイナリーのものなのです。ほかのショップでは4000円台後半からですから2000円程度も安くなっています。



Date: 2023/0307 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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デコイのリミテッド・カベルネ・ソーヴィニヨン2019を飲みました。ナパ・ヴァレーらしい芳醇な果実味と力強さを持ち、花の香りが華やかさ、しなやかなタンニンがストラクチャーを与え、きれいな酸が全体をバランスよくまとめています。期待以上の美味しさにちょっと驚きました。

インポーター資料には
Cabernet Sauvignon 92%, Merlot 8% ラザフォード、ヨントヴィル、アトラス・ピーク、スタッグス・リープ、セント・ヘレナの自社畑及び契約畑のブドウを使用。仏産樽で14カ月熟成(新樽40%)

とあります。ちなみに、ダックホーンのナパヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨンは

Cabernet Sauvignon 83%, Merlot 13%, Cabernet Franc 2%, Petit Verdot 2% 仏産樽16ヶ月熟成(新樽50%) ナパ・ヴァレー各地にある自社畑を中心に、長期契約を結ぶ信頼関係のある栽培農家からの葡萄をブレンド。

新樽率や樽熟成の期間は少し違いますが、どちらも自社畑と契約畑のブドウをブレンドしています(もちろんその比率も違うでしょうけど)。ほぼダックホーンのナパカベのエントリー版と呼んでもいいようなワインです。

価格はダックホーンのナパカベが安い店で税込み8000円超なのに対し、デコイ・リミテッドは3000円台の店もあり、ほぼ半額。かなりお買い得なワインです。本格的なカベルネ・ソーヴィニヨンの入門編としてもふさわしい、いいワインです。

ココスです。


しあわせワイン倶楽部です。


フェリシティーです。


デコイとは全く関係ありませんが、もう一つ楽天スーパーセールで激安になっているワインを紹介。
先日、世界一になった最新ヴィンテージを紹介したBV(ボーリュー)のジョルジュ・ド・ラ・トゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンの2017年です。今のワインメーカーの最初のヴィンテージ。
米国のセール価格よりもまだ2、3割安い激安価格です。ショップは勝田商店。レアワインの専門店ですね。

Date: 2023/0306 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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しあわせワイン倶楽部でボドキン(Bodkin)の ”ジ・アルビノ” スキンファーメンテッド ソーヴィニヨンブラン ドライクリークヴァレー 2014が特価で出ています。ワイナリーに訪問した際に紹介されて在庫全量を買い取ったことでの特価なのでほかでは買えないワインです。

ボドキンはクリストファー・クリステンセンという人がソーヴィニョン・ブラン専業として立ち上げたマイクロワイナリー。SFクロニクルの注目のワインメーカーに選ばれるなど、米国でも注目されています。

米国で近年ソーヴィニョン・ブランの人気が上がっており、ブドウが争奪戦になっているという話を先日書きましたが、その中でもソーヴィニョン・ブラン専業でやっているのはこことシェアード・ノーツ(元ウェイフェアラーのビビアナ・ゴンザレス・レーヴとピゾーニのジェフ・ピゾーニ夫妻によるワイナリー)くらいしか知りません。シェアード・ノーツがボルドースタイル、ロワールスタイルとトラディショナルなスタイルのソーヴィニョン・ブランとして極めているのと対象的にボドキンはスパークリングやデザートワインも作るなど、ソーヴィニョン・ブランの可能性を広げている点でも注目です。このオレンジワインもそんな一つと言っていいでしょう。

ワイナリーでのリリース価格は42ドルだったそうですが、今回は在庫一括による特価でそれよりもずっと安い税込み3960円を実現しています。


Date: 2023/0304 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマのサンジャコモ・ヴィンヤードの創設者の1人であるアンジェロ・サンジャコモが2月27日、亡くなりました。92歳でした。ご冥福をお祈りします。


サンジャコモ家はソノマで果樹園を営んでいましたが、1960年代にアンジェロが中心となってブドウ栽培を始めました。現在ではカーネロスを中心に1600エーカー(約650ヘクタール)の広大な畑を持っています。ワイナリーのクライアントは80に及び、2016年からは自社のワイナリーも始めています。現在はアンジェロの3人の子供が経営しています。

サンジャコモといえば、ベッドロックのモーガン・トゥエイン・ピーターソンとのエピソードも忘れられません。モーガンもアンジェロの死を悼んで、そのエピソードを投稿しています。

モーガンがまだ5歳のとき、父のジョエル・ピーターソンに「ピノ・ノワールを作りたい」と言ったところ、ジョエルが「どこからブドウを調達するのか」と聞きました。モーガンの返事は「アンジェロ。彼はたくさんピノ・ノワールを作っている」。
それで自転車で5分くらいのところにあるアンジェロの家に行って、質問攻めにしたところ、アンジェロはていねいに一つずつモーガンの質問に答えてくれたそうです。それでピノ・ノワールを買えるかどうかとモーガンが聞いたところ、500kgのブドウが家に届きました。しかも請求書もなく。モーガンはそれでピノ・ノワールを作り、地元のレストランに納入しました。この関係はモーガンが大学に入って家を離れるまで続きました。請求書は一度も来なかったそうです。

彼のような寛大な精神を皆が持てば世界はより良くなるのにとモーガンは書いています。
RIP


先日のセミナーで1番人気だったサンジャコモのピノ・ノワール。生産者はノリア(中村セラーズ)。

Date: 2023/0303 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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楽天の「大人の至高屋」で売っている11本のワインセットがとてもおトクです。11本で税込み2万5990円なので1本2300円程度になりますが、1本で買ったら3000円以上するブレッド&バターのシャルドネや、個人的にお薦めのピーチ-・キャニオンのインクレディブル・レッド、689の上位版「キラー・ドロップ」、デコイのメルロー、個人的注目のワイナリー「ファブリスト」のカベルネ・ソーヴィニヨンなど、私が水準以上と思うワインが数多く入っています。

ただ、11本セットって半端ですよね。ここも理由があって、実は2万2000円以上このショップで購入すると、名ソムリエ「ラリー・ストーン」のかつてのワイナリー「シリタ」のワインが1本プレゼントされて、合わせて12本になるのです。ということは実質1本2100円台でシリタまで入ってしまうということです。

シリタのワインは選べるようですが、個人的にはカベルネ・フランがお薦めと言っておきましょう。熟成ワインなのでボトル差もあるとは思いますが、先日試飲しあ中ではカベルネ・フランが一番好みでした。

一つだけ大事な注意があります。タイトルで書いたように楽天スーパーセールに入る前に買ってください(終わった後でもいいですが)。スーパーセール期間中はシリタのおまけはありません。

Date: 2023/0302 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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今週、リトライ(Littorai)のテッド・レモンさんとランチをする機会がありました。もちろんリトライのワインは素晴らしかったし、一緒に食べた大手町「今よし」さんの寿司も美味しく、またワインにも合ったのですが、軽い気持ちで投げかけた質問の答えがあまりにも深くて、さすがテッド・レモンさんと思った話だけ、とりあえず書いてみます。

リトライのWebサイトを見ると「Generative Agriculture」というページがあります。「最近は『リジェネレーティブ』というのがちょっとバズワードになっているけど…」といったことが書いてあります。
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「リジェネレーティブ」については前に「有機栽培の最高峰認証、ナパのニール・ファミリーがナパで初の取得」という記事で取り上げています。土壌を改善して環境を修復するといった目的があり、地面を極力耕さないなどの特徴があります。また、従業員や動物の福祉といったところも審査対象になっているのも興味深いところです。要はサスティナブルのもう一歩先を行く概念という感じで使われています。

それで「ジェネレーティブとリジェネレーティブはどう違うのか?」と軽い気持ちで聞いたところ、「それは簡単ではないので後で答えよう」と後回しにされてしまいました。食事も終わりに近づいたところであらためて「さっきの質問に戻っていいでしょうか」と聞いたところ、「これはとても難しい質問だ」として、10分間くらいも、その心の説明をしてもらうことになったのでした。内容もとても深く、単なる農法というよりは哲学や生きることそのもののような話で、改めてビオディナミの実践で多くの人の模範になっていることを感じさせられました。

で、肝心の質問への答えの内容ですが、正直私の英語力では完全に理解できておりません。英語が分かってもその精神にまでたどり着くのは難しいとも思いました。

ポイントをいくつか挙げると
・リジェネレートという言葉が流行っているが、例えば1700年代の自然を再生できるのか。
・チャレンジが大きすぎて単純に過去に戻ることはできないし、戻れば十分というものではない。
・気候変動はそれ自体が「病気」なのではなく、病気から現れる「症状」である。
・ジェネレーティブ(生成)は、人間が自然との新しい関係を築いていくことにある。
・その中には例えば従業員をちゃんと面倒見るといったこともある(従業員は全員フルタイムで、保険も年金もちゃんとカバーして安全に暮らせるようにしている)
・畑で動物を飼うということもとても大事だ。動物を飼うというのは動物とリレーションシップを持つということ。動物を飼うようになって従業員全員の意識が変わった。
・おおよそこういうことがジェネレーティブ(生成的)なのだ。


と、かいつまむとこんなことだったと理解しております。
ひとしきり話をうかがったところで、ほかの参加者(大橋健一MWも隣の席にいらっしゃいました)と「深いねえ」「スイッチ入れちゃったねえ」と感想を述べあったのでした。
なかなか、普通のセミナーではこういうことまでは聞けないので、貴重な機会となりました。
Date: 2023/0301 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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TwitterやYoutubeを拝見している「Nagi@ドイツでワイン醸造家(@Gensyo)さん / Twitter」さんが一時帰国中にアカデミー・デュ・ヴァンでセミナーを開くというので受講してきました。タイトルは「1日醸造家体験:ワインと添加剤」です。

このセミナーは、ワインに添加することがEUの規定で認められている添加剤について、EU規定量を添加するとどれくらい味が変わるのかを実際に実験して確かめるというもの。添加剤はメタ酒石酸、アラビアガム(アカシア)、アスコルビン酸、二酸化硫黄(SO2)の4種類です。なお、ベースにするワインは市販の酸化防止剤無添加のものでした。

メタ酒石酸は、酒石が析出するのを防ぐための添加剤。日本では使われておらず、代わりにカルボキシメチルセルロース(CMC)が使われることがあるそうです。なお、酒石は析出してもワインの品質が悪くなるわけではないので、どうしても必要な添加剤というわけではありません。最大2年間の効果とか、気温が高いと効果が薄れてしまうとか、なかなか使いにくそうですが、安ワインでは結構使われているようです。

EUにおける添加の上限は1000リットルあたり10gとなっています。これに相当する濃さになるようにグラスにスポイトでワインや添加剤を入れます。

こんなの簡単にわかるだろうと思っていたのですが、意外にもほとんど違いがわかりません。レモン系の香りがちょっと減ったような気がしたのですが、それも気のせいかも。これ、単独で味わってみると名前に「酸」が入っているように、結構酸味を感じます。でも意外なほどワインに入れてしまうと、ちょっと変わったかなあというくらいで、比較しなければわかりません。

2番めはアラビアガム(アカシア)。安ワインでは安定化剤としてしばしば使われており、これの味が嫌いといった投稿も見かけます。金属製の化合物が沈殿するのを防ぐ効果があります。なお、EUでは上限の規制がないそうです。

これ単独で匂いをかぐと「アラビアガム」という名前の通り、ちょっと焼けるようなゴムの匂いがします。ワインに入れたときの味わいも微妙にゴムっぽく変化した感じがあります。ただ、これも予想以上にわからなかったです。

3番めは「アスコルビン酸」、いわゆるビタミンCです。酸化防止剤として使われています。EUでは1リットルあたり250mgまで添加できます。

これはビタミンCですから、単独で味わうとかなりシャープな酸を感じます。ワインにいれたときも少し酸が増えた感覚がありました。一番わかりやすいですが、酸好きな人ならむしろ入れたほうが美味しいと思うケースもありそうです。

最後は二酸化硫黄=SO2です。何かと評判の悪いやつですね。酸化防止剤ですが、それだけでなく酵母を含む微生物の活動を抑えるためにも使われています。その両方の働きをする添加剤はほかにないそうです。ワインに添加するときはガスを直接タンクの中に添加する方法と、「メタカリ」と呼ばれるカリウムと結合させた粉を少量の水などに溶かして加える方法があるそうです。今回は後者の方法を取っています。

なおEUにおける添加上限は1リットルあたり400mg。今回は「遊離SO2」が30mgくらい残るような形で準備いただいています。

ワインに入れる前に水溶液を単体で臭ってみると、刺激臭を感じます。温泉ぽい感じもしましたが、ナギさんには「気のせいでしょう」と一笑に付されてしまいました。ワインに入れてみると、意外なほど違いがわかりません。多めに入れてみるとなるほどなあという感じがしましたが、EU規定ではほぼわかりませんでした。

いずれも添加剤として認められているものですから、それほど味に影響がないのは当然かもしれませんが、もっと簡単にわかるだろうと思っていたので、かなり予想外で面白い結果でした。

セミナー後半ではナギさんのワインを試飲しました。口直しというかなんというか、前半の実験ではベースワインそのものが、それほどおいしいものではなかったので、とにかく美味しかったです(語彙力!)。

来年の一時帰国ではさらにパワーアップした実験を考えているというのでまた楽しみです。