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Date: 2024/0428 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのカーネロスにあるトルシャード(Truchard)のオーナーであるアンソニー・トルシャードが来日し、ディナーに参加してきました。トルシャードはちょうど1年前にナパに行ったときに最初に訪問したワイナリーであり、アンソニーとも1年ぶりの再会です。


ディナーの場所は恵比寿の「ロウリーズ ザ・プライムリブ」です。この日のために、普段は使わないタケノコなどの食材もわざわざ用意して、トルシャードのワインに合わせた料理を提供いただきました。

トルシャードの概要を説明します。

トルシャード家は19世紀末にフランスから米国に移住してきました。フランスではワインを作っていたようですが、フィロキセラ禍をきっかけに米国に来たようです。米国でもワイン造りを志しましたが、最初に移住した先はテキサスで、気温も湿度も高く、ブドウ栽培には失敗して農業をやっていました。

アンソニーの父のトニーは陸軍の軍医としてカリフォルニアでも働き、家族の伝統であるブドウ造りをまたカリフォルニアで始めたいと移住してきました。当時はまだほとんど畑がなかった冷涼なカーネロスに地所を買い、ブドウ造りを始めました。今ではナパの家族経営のワイナリーとしてかなり大きな260エーカーの畑をほじしています。

トルシャードは栽培専門として始まり、今でも8割のブドウは他のワイナリーに売却しています。シェーファーやダックホーン、ファー・ニエンテと言った有名ワイナリーも顧客に入っています。「トルシャードのワインだと思っていなくてもトルシャードのブドウを使ったワインを飲んでいる」と思うよとアンソニー。

トルシャードは1988年にワイナリーを始めましたが、今でもブドウの8割は他のワイナリーに売っています。また自社のワインはすべてカーネロスの自社畑のブドウを使っている「エステート」のワイナリーです。

実はナパでは北にいくほど降水量が多く、カーネロスは一番雨が少ないところ。かつてはブドウ栽培が無理ではないかと思われていたほどでした。トルシャードではため池を作って冬場の雨を溜めることで、栽培に必要な水を確保しています。




最初に飲んだのはソーヴィニヨン・ブラン2021。これは「シェパード」というブランド名になっています。カーネロスはスペイン語の「羊」であり、元々牧羊の盛んなところ。そこで「羊飼い」を意味するシェパードというブランド名を使っているそうです。ソーヴィニヨン・ブランは父親のトニーの好きなワイン。トニーは今は85歳になったそうですが、今も畑に出て働いており、夕方家でソーヴィニヨン・ブランを飲むのを楽しみにしているそうです。夕方5時くらいになると近所の人も来て一緒にソーヴィニヨン・ブランを飲んでいるとか。

ライムやマイヤーレモンなど柔らかな柑橘系の香り。ほどよい酸味にミッドパレットのボリューム感もありナパらしさのあるソーヴィニヨン・ブランです。毎日飲みたい気持ちも分かります。

ちなみにアンソニーが好きなワインはルーサンヌ。トルシャードのルーサンヌは私もすごく好きですが、生産量が少なく日本にもわずかしか入っていないため、今回のディナーには登場しませんでした。


オイスターの香草焼きと、オイスターと高知産のトマトジュース。トマトジュースの方が特にソーヴィニヨン・ブランに合いました。香草焼きはパン粉の香ばしさと火を入れたオイスターのジューシー感が次のシャルドネとベストマッチ。

2番目のワインはシャルドネ2022。トルシャードの看板的なワインでもあります。昨年訪問したときに、母親のジョアンが「トルシャードはTrue Chard。本物のシャルドネなのです」とジョークを言っていたのを思い出しました。カリフォルニアらしいリッチさと冷涼な酸のバランスを大事にしているといいます。樽発酵樽熟成で、新樽を3割くらい使っています。マロラクティック発酵も控えめ。
柑橘に白桃の柔らかさが加わった味わい。ほどよい樽感とミネラル感もあります。

トルシャードのシャルドネは私のナパの講座でも使いましたが、ほんとよくできていて美味しいシャルドネです。


料理はカツオのカルパッチョ。カツオも普段はロウリーズで提供していない素材です。

三つ目のワインはピノ・ノワール2020。2020年は山火事の煙の影響で、ナパの多くのワイナリーが赤ワインを諦めましたが、カーネロスは山火事の地域から離れていて比較的影響が少なく、火事の時期もピノ・ノワールの収穫よりは遅かったので、問題なく作られています。

トルシャードのピノ・ノワールはやわらかな味わい。やや濃いめのフルーツで、赤系もイチゴというよりはザクロの味わい。黒系の果実もあります。優しい酸で寄り添ってくれるピノ・ノワール。

次の料理は鴨のローストと季節の野菜のスープ。ビーフコンソメ。写真を撮り忘れていました。次のジンファンデルに合わせた料理とのことでしたが、鴨ですからピノにももちろん合います。

四つ目のワインはジンファンデル2020。涼しいカーネロスでジンファンデルを作っているという意外性もトルシャードの面白いところです。そしてこのジンファンデルが美味しいのです。
2020年は前述のように山火事の問題があり、ジンファンデルの収穫は火事よりも遅く、難しい判断を強いられました。火事を除いては比較的温暖な年であり、カーネロスのジンファンデルとしては結果的にはしっかりしたいいワインになりました。
ジンファンデルらしい甘やかさもあり、赤果実とシナモンなどのスパイスの風味が広がります。冷涼地区だけに酸もほどよくありバランスよく美味しいジンファンデルです。



ロウリーズに来たらプライムリブを食べないわけにはいきません。今回は付け合わせに春の野菜やキノコが入っているのがユニークです。

ワインはカベルネ・ソーヴィニョン2020。冷涼なカーネロスでカベルネ・ソーヴィニヨンを育てるのはチャレンジングで、比較的気温の高い、南向き斜面のブロックに植えています。カベルネ・ソーヴィニヨンのほか、プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン、マルベックをブレンドしてストラクチャーを出しています。冷涼カベルネだけあって、少し青さもあります。多くの人がイメージするナパのカベルネとは一線を画した涼しさのあるカベルネ・ソーヴィニヨンです。


最後にもう一つスペシャルなカベルネ・ソーヴィニヨンです。Cave Blockという特別なブロックのカベルネ・ソーヴィニヨン2021。トルシャードのワイナリーのケーヴの上にあるブロックです。通常のカベルネ・ソーヴィニョンよりも黒果実の風味が強く、ミントやハーブのニュアンスあります。きれいでエレガント。これもナパっぽくはないですが、非常に素晴らしいエレガント系カベルネです。今回のプライムリブの付け合わせの春野菜の天ぷらなどといい相性でした。これは日本食にもよく合いそう。



ナパのワインというと果実味が爆発するような味わいを想像する人が多いと思います。トルシャードはもちろん果実味もありますが、どのワインもエレガントさもあり、一方で繊細すぎるわけでもなく優しい味わいのワインを作っています。日本食にも合わせやすいので、ぜひ試してほしいワインです。
Date: 2024/0418 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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TTB(酒類・たばこ税貿易管理局)は2024年3月15日、カリフォルニアの新たなAVAとしてコンプチ(Comptche)を承認しました。
Comptche
地図にコンプチと、周辺のいくつかのAVAを示しました。コンプチはアンダーソン・ヴァレーよりさらに北に行ったところにあります。同名の町の周辺になります。

このAVAについては非常にユニークな特徴があります。地図に示すようにノース・コーストAVAの内部にありますが、今回のTTBの認定ではノース・コーストのサブAVAには含まれないことになっています。もちろん物理的にはノース・コーストAVAに囲まれているのですが、ここのAVA内のブドウを使ってワインを作った場合、コンプチとは名乗れてもノース・コーストとは名乗れません。ここだけノース・コーストに穴が開いているわけで、えくぼのようなものでしょう。

除外された理由は気候や土壌が特殊だから。ここは標高187~400フィートですが、周りが山ばかりであり盆地状になっています。
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そのため、夜間に冷たい空気がこの地域に立ち込め、特異的に冷涼になっています。ブドウの栽培においては限界に近い涼しさであり、現状ここではピノ・ノワールしか作られていません。

土壌については大きく2種類に分かれており、丘のところはBearwallow–Wolfeyと呼ばれる砂岩で、栄養の乏しく水はけがいいのが特徴です。もう一つはPerrygulch Loamと呼ばれ、盆地部分に多くあります。こちらは水はけ悪くリッチな土壌です。この地域の畑は標高が低いところにありますから、後者の土壌が中心になると思います。

現状、このAVA内にはワイナリーはなく、畑がいくつかあります。調べた範囲ではアントヒル・ファームズが使っている「コンプチ・リッジ」という畑がここに含まれるようです。あとはフィリップス・ヒルのOppenlanderという畑があるようですが、ここのブドウを使ったワインが日本に入ってきているのか定かではありません。

追記:デプト・プランニングでバクスターのOppenlander Vineyardピノ・ノワール2009年の在庫があるとのことです。(サイトはこちら



Date: 2024/0417 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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先日、廃業ワイナリーの20年熟成カベルネが激安という記事で、コン・クリークのワインを取り上げました。

そのときにコン・クリークの売却について調べたのですが、詳しいことがわからず、ただ「廃業」としたのですが、実際には畑やワイナリーなどの設備については2023年にアンティノリに売却していました。その結果、中身のないブランド名としてコン・クリークが残ったわけですが、そのブランド名を「サード・リーフ・ワインズ」に売却したことが判明しました。

サード・リーフ・ワインズは、サード・リーフ・パートナーズという投資会社の子会社です。サード・リーフ・パートナーズはJohn Micek、Aaron D. Faust、Alexander G. Pagonの3人が設立した会社でメドウッド・リゾートなどにも出資しているようです。

サード・リーフ・ワインズが所有しているワイナリーは、アルゼンチンのパタゴニアにあるAlto Limay、ニューヨークにあるEmpire Estate、フランスのLaurent Miquel、南アフリカのMulderbosch、カリフォルニアのStringer Cellars、Turning Tideがあります。

今回の売却はブランドだけですから、今後どのようにコン・クリークを続けていくのかわかりませんが、少なくともナパ・ヴァレーの優秀なワイナリーとしてのコン・クリークはなくなってしまいました。

柳屋です。


トスカニーです。

Date: 2024/0416 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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先週のことですが、日本で初めて開催されたProwine(本国ドイツではProwein)に行ってきました。米国産ワインの出展はほとんどなく、出ていたところも旧知のインポーターだったので、そちらの収穫はほとんどありませんでしたが、普段飲まないワインをいろいろ試飲してきました。

最初に行ったブースはフランスのシャトーデスクラン。フランスのプロヴァンスを代表するロゼの生産者です。前日までにProwineに行った知り合いのほとんどがここの2万円するロゼの写真を上げていたので興味を持ったのでした。ブースに行くと先客が一人いらっしゃったのですが、実はXで以前から知り合いだったクヴェヴリ・エミさんでした。

というわけで2000円台から2万円まで5種類のロゼを試飲しました。2000円台、3000円台、4000円台と明らかにおいしくなっていきますが、7000円台になるとミネラル感やエレガントさなど、良くなるベクトルの方向が少し変わる感じがします。2万円のものも同様。比べて飲めば確かに違いはあるし、良くなっているのもわかりますが、単独で試飲して2万円のワインを2万円と評価できる自信はないです。

ロゼの後、どこに行こうかと思案したところ、エミさんが「PIWI品種を飲んでみたい」とのこと。PIWI(ピーヴィ)とはドイツ語のPilzwiderstandsfähige Rebsortenの略で、カビ類に耐性を持つブドウ品種です。ワイン用のブドウであるヴィティス・ヴィニフェラとアメリカ系のヴィティス・ラブルスカなどのブドウ品種を掛け合わせて作る人工的な品種です。ラブルスカ系の品種は「フォクシー・フレーバー」と呼ばれる独特の臭みがありますが、それにさらに何重にもヴィティス・ヴィニフェラを掛け合わせていくことで、現在作られているものは、ヴィティス・ヴィニフェラに属するということです。

私もNagiさんの動画などでPIWIには興味を持っていたのでドイツのコーナーに行って、PIWI品種がないか聞いてみました。そこで見つけたのがこのワイン。

カベルネ・フランならぬカベルネ・ブラン(Cabernet Blanc)です。カベルネ・ソーヴィニヨンとREGENTの交配で作られたそうです。
ソーヴィニヨン・ブランに似ていると言われたのですが、確かにフレーバーは少し共通点を感じるものの、酸があまりありません。嫌な風味はなかったですが、積極的に選ぶかと言われると難しいところがあります。その後、同じワイナリーのソーヴィニヨン・ブランを試飲しましたが、やはりそちらに軍配を上げます。


このワイナリーでは石灰岩土壌と花崗岩土壌のリースリングの飲み比べもでき、なかなか面白かったです。

セミナーに出るエミさんとはここで別れ、この後は知り合いのミッツィーさんが通訳をしていたスペインのブースに行ったり、モルドヴァワインのブースに行ったり、ヴィーニョ・ヴェルデのところでも知り合いにあったりなど……

面白いものはいろいろありましたが、カリフォルニア以外だと記憶になかなかとどまらないのが難点です。
Date: 2024/0415 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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大リーグ、ロサンゼルス・ドジャーズの大谷翔平選手が、インスタグラムに愛犬デコピンがワインボトルをかじっている写真をアップしていました。

よく見るとかじっているのはガラスのボトルではなく、ワインボトルの形をしたぬいぐるみでした。

デコピンの英語の名前はDecoy。おそらくそれでダックホーンからプレゼントされたのではと思っていますがどうなんでしょう。


この写真を受けて、ワインショップにはデコイのワインの注文が相次ぎ、品切れになったところもあるようです。

インポーターの中川ワインに聞いてみたところ、在庫はまだあるので大丈夫とのこと。これを期に、デコイの人気が上がるといいですね。カリフォルニアの中でもリーズナブルな価格で高品質のワインを提供しているワイナリーです。ボトルのぬいぐるみは、現状は日本にはないそうです。リクエストは出しているそうなので、将来入荷があるかもしれません。

ちなみに、後ろに写っている本当のワインはこれですね。デコイの中でも高品質なリミテッドのワインです。



で、デコピンがかじっているのはこれ。デコイを代表するワインです。


Date: 2024/0415 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンのワイン業界団体「オレゴン・ワイン・ボード」が2022年のオレゴンワインの経済効果を発表しました。2019年のデータと比較すると、12.8%増の81憶ドルとなっています。税収や雇用への効果も同様に1割以上多くなっていますが、ツーリズムだけは15.1%減。コロナによる減少から立ち直っていないことがうかがえます。

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このデータをカリフォルニアと比べると、さすがに全米の8割の生産量を占めるカリフォルニアの方が、だいぶ大きくなっています。経済効果で730憶ドルですから、オレゴンの9倍程度になります。

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こちらはナパだけのデータ。経済効果は54憶ドルでオレゴンの7割程度。雇用も1万8000とオレゴンの半分以下です。カリフォルニアの中では規模が大きいナパですが、オレゴン全体には届きません。ちなみに面積で大きく優るソノマもナパと同程度の経済効果。ナパとソノマを足すとオレゴンを上回ります。
Date: 2024/0412 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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お友達のヒマワインさんが、X(旧Twitter)に下のような投稿をしていました。


これに対して私は
ヒマさんがジョークで書いているのは分かりながらマジレスしますが、ジョークがジョークじゃない、本当にめんどくさいこと言う人が多いのがワインの世界なんですよね。なので、やっぱり「~~じゃなきゃ」みたいなところを全部ぶち壊さないと先に進めないと思っています
とコメントしました。

ヒマさんは「面倒くさい」という言葉の中に、奥深さを意識させたのだろうと想像していますが、あえて嚙みついたのは、実際問題「面倒くさい」しきたりにしばられていたり、それを他人に強制する人ってワイン好きの中でやっぱりいるんですよね。そういう場面に出会ってしまうと、「面倒くさいけど面白い」ことが「面倒くさくて嫌」なことになってしまう恐れがある。だからやっぱり面倒くささを一回全部取り払わないといけないと思っています。

なんてことをつらつら思っていたら、敬愛するワイン商えいじさんが、Noteに次のような投稿をしていました。
あなたは何と答えますか 「ワインって難しいですよね?」|ワイン商えいじ | DipWSET

ちょっと長く引用させていただきます。
ぼくの答えは

「ワインは難しい!!しかも、めちゃくちゃ難しい!!」 です。

おいおい!と思うかもしれませんが、だって、紛れもない事実です。知識という点においては。

そして、最も大事なことは、

この難解なワインの世界を全て把握している人はこの世に1人もいないということ。

それがワイン界の頂点と言われる、マスター・オブ・ワインであろうと。

ワインの話をする楽しみは、さながら誰も答えの知らない人生論や哲学の話をすることに似ています。答えがないのだから、誰が何を言おうと、それは新しい何かを発見するためのヒントでしかない。

(中略)
だから、ぼくはこれからワインを飲む人にこう言いたい。

たしかにワインは難しい、でも怖がる必要はまったくないです!

なぜなら

ワイン好きという生き物たちは、誰も答えを知らないワインの世界で

好き勝手なことを言って楽しんでいるだけなのだから、と。

だからあなたにも、メジャーとかマイナーとか、主流だとかセオリーだとか関係なく、好きなものを飲んで、好き勝手言ってほしい、と。

そしてぼくらプロは
できるだけ多くの人たちが好きなワインにたどり着き
好き勝手言える環境を整えるべきなんだと。
そのために、「プロが」知識を身につけるべきだと思うのです。

これを読んで思い出したことがあります。
昨年、ワインスクールで初心者向けのクラスを教える機会をいただいたのですが、生徒さんたちにこんな話をしたと思います。

ワインて、むちゃくちゃ奥が深いんです。
世の中にワインの数はどれだけあるのか数えきれないし、一人の人が全種類を飲むことも絶対にできません。
僕みたいにカリフォルニアワインという割と狭い世界だけを見ていたって、知らないワインや飲んだことがないワインは山ほどあります。
勉強すればするほど、わからないことも増えていきます。
そして、知れば知るほど、より面白く感じられるんです。
そういうところがワインて奥が深い、面白いなあと思います。

面倒くさいことは取り去って楽しめるというのが前提条件として、その先に知ることの面白さや、知ってから味わうことでより飲むことも楽しめるというのがワインの面白く、すごいところだと思います。だからこそ、大の大人がたかが飲み物にこれだけ夢中になるのでしょう。

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Date: 2024/0410 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパを中心に数多くのブランドを持つトリンチェロ・ファミリー(Trinchero Family)が、ナパで最も有名な栽培家のデイビッド・エイブリュー(David Abreu)と提携して新たなブランドを始めることを明らかにしました。

トリンチェロ・ファミリーでは2021年からエイブリューの自社畑ラス・ポサダス(Las Posadas)のブドウを使ったワインを作っていますが、今回はそれとは別に新たなブランド名を冠したワインになる予定です。ヴィンテージは2024年が最初になります。

トリンチェロ・ファミリーは1948年に、打ち捨てられていたナパのワイナリー「サター・ホーム(Sutter Home)」を買収してワイン造りを始めました。ワイナリー名を変更しなかったのはワイナリーの建物に描かれた「Sutter Home」の文字を描き直すお金がなかったからだといいます。

サター・ホームは1970年に偶然から生まれた「ホワイト・ジンファンデル」で一世を風靡します。今もサター・ホーム・ブランドは残っていますが、そのほかにトリンチェロ・ファミリー、メナージェ・ア・トロワ、ネイヤーズ、ジョエル・ゴット、テイクン、ナパ・セラーズ、フォリエ・ア・ドゥ、チャールズ&チャールズ、シーグラス、トリニティ・オークス、スリー・シーヴズ、ザ・スペシャリスト、カリフォルニア・ルーツなど50近いブランドを保有しています。
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エイブリューのブドウを使うブランドは、新規立ち上げになります。ワインメーカーはトリンチェロ・ファミリーのランドン・ドンリーが担当し、エイブリューとエイブリューのワイナリーでワインを作るブラッド・グライムズがコンサルタントになります。


Date: 2024/0409 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワインを中心に、スペインやニュージーランドのワインなども輸入するデプト・プランニングの試飲会に参加してきました。そこからお薦めのワインを紹介します。


ナパのスプリング・マウンテンにあるワイナリー「テラ・ヴァレンタイン」のドライ・リースリング(5800円)。新ヴィンテージですが、なんと2013年です。ドライなリースリングといってもドライさには幅がありますが、これは本当にドライなリースリングです。香り良く美味しいです。


メンドシーノのジラソーレによるシャルドネ2022(3500円)。自然派のワイナリーで、ワインはやわらかな味わい。コスパいいです。


ニュージーランドのピノ・ノワールを2つ。右はクルクル(Kuru Kuru)のピノ・ノワール2016(4500円)。香り良く果実味もきれいで複雑さもある素晴らしいピノ・ノワール。これで5000円切りは驚きです。この日のメモには0.5点刻みで5点までの評点を付けていましたが、これは「5」を付けた3本のワインの一つです。左はタラス(Tarras)のピノ・ノワール2020(6000円)。これも果実味がとてもきれい。


スペインのリベラ・デル・ドゥエロから2本です。右のヴィーニャアロヨグランレゼルバ2014(8000円)。むちゃくちゃ華やかな味わい。これも5を付けています。左は同じくヴィーニャアロヨのヴィンディミア・セレクシオナーダ2015(12000円)。きわめて複雑でパワフルなワイン。


メンドシーノのモンテ・ヴォルペ(Monte Volpe)のプリモ・ロッソ ロット16(3500円)。ジンファンデルなどのブレンドもの。これも華やかで果実の明るい味わいが光ります。


メンドシーノのグラジアーノ(Graziano)は、実は上のモンテ・ヴォルペと同じワイナリーによるワイン。右はプティ・シラー2012(3400円)。プティ・シラーらしい強靭なタンニンと豊かな酸、素晴らしい果実味で非常にコスパの高いワイン。5点を付けています。3ケースしかないということなので、見つけたら「買い」です。
左はジンファンデル2018(5000円)。芳醇で甘やかさのあるワイン。明るい果実味とバランスの良さがいいワイン。


ナパのシルバー・ゴーストのカベルネソーヴィニヨン(8000円)。シルキーなタンニン、文句なしに美味しい。


アパーチャー・セラーズは今ソノマで大変注目されているワインメーカー「ジェシー・カッツ」のワイナリーです。右からレッド・ブレンド2021(15000円)、カベルネ・ソーヴィニョン2021(20000円)、オリバー・ランチ カベルネ・ソーヴィニョン2019(35000円)。どれもいいワインですが、個人的には中央のカベルネ・ソーヴィニョンが一番良かったです。タンニンや果実感のバランスが素晴らしい。
Date: 2024/0406 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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フリーマンのワインが、4月11日に開かれる岸田首相と、カマラ・ハリス米副大統領、アントニー・ブリンケン国務長官の昼食会で供されます。アキコさんとご主人のケンさんも昼食会に出席します。

フリーマンのワインは、オバマ大統領と安倍首相(どちらも当時)の2015年の晩さん会でも使われましたが、そのときはワインの提供だけで、ワインも「涼風」シャルドネ1種類だけでした。

今回は昼食会への参加とともに、「2020 Yu-Kiヴィンヤード ブラン・ド・ブラン」「2021 涼風シャルドネ」「2021 アキコズ・キュベ ピノ・ノワール」の3本が供されます。ワインの種類の多さも、そこに直接出席できるというのも、大きな名誉です。

Press Democratの記事によると、アキコさんがメールで連絡を受けたのは4月1日のこと。その話をケンさんに伝えたら「仰天した」そうです。

昨年は「大日本農会」から緑白綬有効章を海外在住の女性としては初めて受章する、といった名誉もありました。長年のファンとしてもうれしいことです。
Date: 2024/0405 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サスティナブルを推進するワイナリーや栽培者を表彰するカリフォルニア・グリーン・メダルが10年目となる2024年のリーダーシップ・アワードを発表しました。

表彰されたのは次の3つのワイナリーと、一つの栽培管理会社。
リーダー賞
ランゲツインズ(LangeTwins)・ファミリー・ワイナリー&ヴィンヤーズ
環境賞
グロリア・フェラー(Gloria Ferrer)
コミュニティ賞
クーパー-ギャロッドヴィンヤーズ@ギャロッド・ファームズ(Cooper-Garrod Vineyards at Garrod Farms)
ビジネス賞
ヴィノ・ファームズ(Vino Farms)
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リーダー賞は環境的に健全で(Environmentally sound)、社会的に公平(socially Equitable)、経済的に実行可能(Economically viable)という3つのEで卓越したワイナリーに与えられます。ランゲツインズは1970年代からサスティナブルに取り組んでおり、地域におけるサスティナブルの啓もうにも努めています。

グロリア・フェラーは環境再生型有機農法に2021年から取り組んでいます。特に生物多様性に様々な方法で取り組んでいます。スパークリングワイン用の軽量ワインボトルなど、カーボンフットプリントを下げる取り組みも行っています。

クーパー-ギャロッドはサンタ・クルーズ・マウンテンズにあるワイナリーで地域の慈善活動や、ワイナリー内のハイキング・トレイルへの地元民の招待など、地域を広く巻き込んだ活動を行っています。

ヴィノ・ファームズはローダイの栽培管理会社でサスティナブルを企業活動に落とし込んでいます。様々なモニター技術を使い、水の効率的な活用などを行っています。2010年からはトラックやトラクターをバイオ燃料に切り替えています。


Date: 2024/0404 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワイン協会のスプリングプロモーションが始まっています。期間は5月31日まで、参加しているレストランやワインショップで様々なカリフォルニアワインを提供しているのに加え、インスタグラムでは毎週10名にワインが当たるキャンペーンを実施中です。

参加店舗一覧 料飲店
参加店舗一覧 小売店

今年は昨年より参加している店舗も増えたような気がします。行ったことがない店も結構あるので機会があったら行きたいです。
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また、今年のテーマ産地はパソ・ロブレスなので多くの参加店でパソ・ロブレスのワインを提供していると思います。ジンファンデルやローヌ系品種が有名な地域ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンも素晴らしいものがあります。赤のイメージが強い地域ですが、白もローヌ系など面白いです。

2月のセミナーもご参考まで。
パソ・ロブレスの意外なクールさに驚いた

そして、見逃せないのが毎週10名にワインがあたるというキャンペーン。9週間ありますから全部で90本と大盤振る舞いです。毎週インスタグラムにお題が挙げられて、それにコメントするという申し込み方法です。今週の投稿は現時点では40くらいですから、結構当たる確率は高そうですよ!



みんな奮って参加しましょう。

お店も行ったことないところが結構あるので、開拓できたらいいなと思います。
Date: 2024/0403 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのプリチャード・ヒルにあるワイナリー「ブランド・ナパヴァレー(Brand Napa Valley)」の新オーナーが来日し、インタビューの機会をいただきました。


ブランドは2009年に創設されたワイナリーで2019年からジム・ビーンとクリスティーン・オサリヴァン夫婦がオーナーになりました。二人は元アップルのエグゼクティブで、最高のワインが作れるところをナパで探していました。2019年に同ワイナリーが売りに出ているのを知り、これ以上の場所はないと購入したといいます。ナパヴァレーのブドウ畑が4万7000エーカーほどある中で、プリチャード・ヒルのブドウ畑の面積は1%にもなりません。その中で、コルギンやコンティニュアム、シャペレー、オーヴィッドなどナパの中でもトップクラスのワイナリーがひしめきあっています。これほど貴重な地域でワイナリーを買えるチャンスはそうそうありません。

というと、金に任せてワインを作るだけのオーナーなのかと思ってしまいそうですが、この二人はそうではありません。実はブランド購入前、2013年にセント・ヘレナに20エーカーの畑を買っており、2019年までに65エーカーに拡張し、自らブドウ栽培していました。そのときは家族のプロジェクトという位置づけでした。ワイナリーを本格的にやるにはまず栽培を知らないといけないという考えでやっていたそうです。なので、全く何も知らないところからブランドでのワイン造りを始めたわけではないと強調していました。ブランドの畑の管理はシルバラード・ファーミング・カンパニーですが、オーナー二人も毎日畑に出ており、シルバラードのチームと緊密に作業をしているそうです。ちなみにセント・ヘレナの畑はブランド購入時に売却しています。

ブランドでは栽培を有機栽培、そしてビオディナミ(バイオダイナミクス)に転換。すでに有機栽培では認証を取っています。果実の純粋さを引き出すために栽培が一番大事だと考えています。なお、バイオダイナミクスの認証を取るためには耕作に必要な動物を自分のところで飼っていないといけないのですが、現在は近所の農家から借りて耕作しているので、そちらの認証は「牛を飼ってからね」とのことです。

ワインメーカーはフィリップ・メルカ。前にマーヤン・コシツキーの記事で「アトリエ・メルカ」というコンサルティング会社の話を書いていますが、ブランドに関してはアトリエ・メルカではなくフィリップ自身がワインメーカーとして携わっています。


新オーナーになってから、ラベルデザインも変わりました。

以前は下のようなデザインでした。


新しいラベルは、ワイナリーの建物の印象的な5角形を模したものになっています。


新しいボトルデザインでもう一つ注目してほしいのがキャップシールのところです。ワインの種類によって色が異なっており、ラベルと同じアイコンが描かれています。これはワインセラーに入れたときの分かりやすさのためです。ワインセラーに入れるとキャップシールのところしか見えないのが普通です。その状態でも、これがブランドのワインであるということと、そのワインの種類が、ボトルを引っ張り出さなくても分かるというわけです。こういうところはさすがUX(ユーザー・イクスペリエンス)を大事にしているアップル出身だなあと思わせます。


ワインを試飲しながらインタビューを続けます。最初は唯一の白ワインであるナパの「ホワイト・ブレンド2020」(16000円)。こちらはリボッラ・ジャッラ、フィアーノ、アルネイス、グレコ・ディ・トゥーフォ、ヴェルメンティーノ(多い順)のブレンドという5種類のイタリア系品種を使った非常にユニークなワイン。一般的なシャルドネやソーヴィニヨン・ブランとは違ったきれいなワイン、そしてさまざまなシチュエーションに合うワインを作りたかったとのこと。ブランドの赤ワインはすべて自社畑のブドウを使っていますが、このワインだけは近隣の畑のブドウをメインに使っています。また、アンフォラとステンレス、オークの小樽と3種類の容器を組み合わせて使っています。

5種類のブドウは闇雲にブレンドしているのではなく、それぞれ役割があるそうです。リボッラ・ジャッラはカリフォルニアでは「グラスの中の太陽」などとも言われることがありますが、実はきれいなミネラル感があり、特にアンフォラによってそれが引き出されるそうです。フィアーノはゴージャスな柑橘の風味があります。アルネイスはボディを与えてくれます。グレコは花の香りやマイヤーレモンのような風味をもたらします。この品種は米国のTTBで認められている品種ではないので、ラベルには名前が入れられません。ヴェルメンティーノはごくわずかしか入れていないのですがワインに深みを与え、ブレンド全体をまとめあげています。

実際に飲んでみると、酸が豊かで果実味も広がります。果実味も、柑橘だけでなくトロピカルな味わいも出ています。複雑さもあり非常にバランスのいいワイン。これが突出しているというのがないのでテイスティング・コメントとしては少し書きにくい感じもしますが、美味しいです。応用範囲が広いワインというのはよくわかります。

ちなみに今回試飲した2020年はナパ以外のブドウも使っており「カリフォルニア」の表記になっていますが、2021年は「ナパ」になるそうです。ブランドの自社畑でも少しずつ白ワインを増やしていて2021年は自社畑だけになるとのこと。

プリチャードヒル
赤ワインの話に移る前に、プリチャード・ヒルの特徴について少し説明します。プリチャード・ヒルはオークヴィルの北東側にあるヴァカ山脈系の産地で、いくつかの丘からなり、北側にはレイク・ヘネシーという大きな貯水池があります。シャペレーが名前の登録商標を持っているため、プリチャード・ヒルという名前が付いたワインはシャペレー以外は作れませんが、ナパでも指折りの高級ワイン産地です。ポイントを三つ挙げると、まずは標高の高さ。ブランドの畑で360~430mほどの標高があり霧がかからないため、朝晩は比較的暖かくおだやかです。第2にレイク・ヘネシーからの影響です、そこからの冷却効果で昼間の気温はヴァレーフロアより華氏で10~15°も低くなります。第3にヴァカ山脈の土壌で、いくつか種類はあるのですが、総じて言うと鉄分が多く、岩がちで痩せた土壌です。

Brand

ブランドの地所は110エーカーありますが、畑は15エーカーで三つに分かれています。西のNo95は一番標高が低く、やや粘土質が多く比較的保水性があります。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが主に植えられています。中央のNo92はレイク・ヘネシーからの風の影響を一番受け、その涼しさがカベルネ・フランに最適のサイトになっています。東のNo90は一番標高が高く、すぐ東側にはコルギンの畑があります。コルギンとの境界が尾根になっています。土壌は一番岩が多く、ブドウにとっては過酷な環境です。

今後は既存の畑を拡張する形で30エーカーにまで増やしたいと考えていて、ナパ郡に申請を出しています。畑を拡張できたら現在9種類のクローンを使っているカベルネ・ソーヴィニヨン、4種類のクローンを使っているカベルネ・フランのクローン違いを植えていきたいとのことでした。

ブランドで作ろうとしているワインは、バランスが取れており、エレガントでフレッシュさがあること。果実味爆弾と言われるような濃厚でパワフル過ぎるワインにはしたくないといいます。また、エステートであることにこだわりを持っており、栽培から醸造、ボトル詰めにいたるまですべて自社で行い、オーナー自ら毎日ワイナリーや畑の作業にかかわり、すべてに目を配っています。それだけ手をかけて作っているワインだということです。これは高級ワインであれば当たり前と思われるかもしれませんが、実際に自社畑だけでまかなっているワイナリーはそれほど多いわけではありません。例えばナパのワイナリーは400くらいですが、ブランドの数で言えば3000を超えるわけで、大半はエステートの畑を持っていないのです。

赤の最初のワインはNo.95カベルネ・ソーヴィニヨン。その名の通り、No95の畑のブドウを使っています。この畑はブランドの前にモンターニャが使った畑で一番古く、また一番若い樹(樹齢10年)がある畑でもあります。ブランドの赤ワインの中ではエントリー・レベルになります。以前のオーナーはセカンドラベルのワインを作っていましたが、それよりもレベルが高いワインを少し価格を抑えて出したいというワインです。

2017年のNo.95はカベルネ・ソーヴィニヨン88%にカベルネ・フラン8%、プティ・ヴェルド4%という構成。プティ・ヴェルドはカベルネ・フランに接ぎ木してしまったので、これが最後のヴィンテージになるそうです。新オーナーになる前のワインですが、最終的なブレンドには携わっています。

ブランドの赤の中ではこれが一番リッチでパワフルな印象。ダークなフルーツ感があります。気温が少し高めだったヴィンテージの特徴もあるのかもしれません。その中でミントのような清涼さもあり、土っぽいタンニンの感じもあるいいワインです。

次のワインは2019年のプロプライアタリー・ブレンドです。これはNo92の畑のブドウを使っています。前述のようにカベルネ・フランが多く68%カベルネ・フラン、32%カベルネ・ソーヴィニヨンという構成。少し粘土質の土壌で保水力があるため、ほぼ無灌漑で栽培しています。

米国でもカベルネ・フランの人気は高まっているものの、ナパでの栽培はわずか3%以下にとどまっています。栽培が難しいのがその理由。カベルネ・フランは24℃から35℃の間の気温が最適だそうですが、ナパではそれよりも朝は寒いし、昼は暑くなるところが多いため、いいカベルネ・フランができるところは限られています。No92の畑はレイク・ヘネシーからの冷却効果があり、さらに周りが樹で囲まれていることでその温度が保たれる、カベルネ・フランに最適な畑です。

第一印象はスミレの香り。華やかさが光ります。きれいな赤い果実とブルーベリー。溶け込んだタンニン。リッチ感もありますが、重くなくエレガント。時間が経つと、皮のようなニュアンスも出てきます。カベルネ・フラン好きにはたまらないワイン。実際、このワインが好きな人は熱烈にこれを求めるそうです。プリチャード・ヒルのカベルネ・フランをメインに置いたワインとしては、オーヴィッドのヘキサメーターが素晴らしいと思っていたのですが、それに全くひけを取らないと思います。

最後のワインはNo90の畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを使ったカベルネ・ソーヴィニヨン 2019です。フラッグシップのワインです。一番岩の多い畑で、ブドウは生長に苦労し、とても小さな実のブドウができます。この畑の中でも一番いいブロックが「See」というクローンが植わっているところ。2023年のプルミエ・ナパヴァレー・オークションでは2021年のSeeクローンだけを使ったカベルネが出品され、最高価で落札されました。

100%カベルネ・ソーヴィニヨンのワインの中でもとてもいいものには鉛筆の芯を感じることが多いのですが、このカベルネにもそれを感じます。エレガントで、重いワインではないのですが、緻密でパワーがふつふつと出てくるような強さがあります。最上級のカベルネ・ソーヴィニヨンらしい良さがあります。

フレンチランドリーのワイン・ディレクターがブランドのワインを、美しく料理をオーバーパワーしないワインだと高く評価しているそうですが、そのコメントがよくわかります。

最後に、ナパでは近年気候変動による高温が、大きな問題になりつつあります。例えば2022年はオークヴィルで華氏110°(摂氏43℃ほど)を超える日が26日もあったそうです。プリチャード・ヒルは標高の高さから6日で済んだそうですが、ブランドでは高温に対処するために、畑に霧を撒くシステムを導入したとのこと。1時間ほどで5~7℃ほども気温を下げるそうです。

ブランドのワイン、じっくりと試飲をしたのは初めてでしたが、超有名ワイナリーばかりのプリチャード・ヒルにおいても、見劣りしないだけでなく、非常に魅力的なワインを作っていることがよくわかりました。個人的にはやはりカベルネ・フランが一番好きでしたが、カベルネ・ソーヴィニヨンも非常に良かったです。白のブレンドもこれまで飲んだことがないものでした。まだ新オーナーになってからそれほど年月が経っていませんから、これからさらに良くなっていくことが期待できそうです。
Date: 2024/0403 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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最近買ったワインの本でお薦めを紹介します。

まずは『ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書』。アカデミー・デュ・ヴァンの紫貴先生の書かれたソムリエ/ワインエキスパート受験用の入門書です。

この本のいいのは、とにかくさらっと分かりやすく書いてあり、ストレスなく読めること。ソムリエ/ワインエキスパートの教本はA4サイズで900ページ近くもあり(今年のページ数は未確認ですが)、とにかく重いし、文字も多く、見るだけで押しつぶされそうになり、プレッシャーを感じる人がほとんどだと思います。本書はA5判で200ページちょっと。単純に面積だけ考えても8分の1ですし、基本的に左ページは文章、右ページは図版になっていますから実質的にはもっとずっと少ないです。また、見開き単位で構成されていますから、適当に開いたページを読むといった使い方もできます。
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逆に言うと、これだけで試験に合格することは絶対にできません。例えばフランスのAOCがどんなものかは書いてありますが、具体的にどういうAOCがあるかといった項目はありません。あくまでも勉強のイントロダクションとして使う本です。そういう意味ではこれまである程度ワインの勉強をしたことがある人はわざわざ買わなくていいかもしれませんが、ワインの勉強をどこから始めたらいいかわからない、といった人には、この本で概要をつかんでから、教本や、他の受験用の参考書を見ることで、よりすっきりと内容が頭に入ってくるだろうと思います。試験を受けない人にとっての入門書としても使えます。


ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書



もう一つは『WINE ブラインドテイスティングの教科書』。鈴木明人さんが書かれた本です。副題に「科学的アプローチからワインを理解して品種を当てる」とあるように、化学物質にまで落とし込んでワインの香りや味わいを分析し、それを品種などを考える際にどう使うかを解説しています。著者の鈴木明人さんは製薬会社に勤務する薬剤師であり、化学はお手の物というわけで、理系的な人間にとってはとても納得感がいく解説になっています。

ブラインドテイスティングを楽しむ人だけでなく、一般のワイン愛好家やソムリエ/ワインエキスパートを受ける人にとっても役に立つ内容だと思います。ただ、内容はかなり高度なのですべてを自分のものにしていくのはかなり大変です。一気に読んで内容を理解するというよりも、一つひとつゆっくり咀嚼して身に着けていくのがいいのかなと思います。私もかなりゆっくり時間をかけて読んでいます。


WINE ブラインドテイスティングの教科書 科学的アプローチからワインを理解して品種を当てる


Date: 2024/0401 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Bonny Doonに続いて、Wine to Styleの試飲会でお薦めのワインを紹介していきます。Wine to Styleはボランジェなどをかかえるnakatoとの合併でヨーロッパのワインも扱うようになり、試飲会は300を超えるアイテムが出てきます。試飲は入れ替え制で2時間の時間制限があり、時間的にも全部を試飲するのは不可能です。なので米国産ワインに絞って試飲していますが、それでも130を超える数がありました。

また、従来はニュー・カリフォルニアのコーナーなど、ある程度ジャンルに分かれておいてあったのですが、今回はおおむねアルファベット順に並んでいました。特定のジャンルのワインを試飲したい人にはわかりにくかったかもしれませんが、フラットにいろいろなワインが出てくるのは面白かったです。


クロ・ぺガスのミツコズ・ヴィンヤード メルロー2021です(5500円)。ミツコズ・ヴィンヤードはナパのカーネロスにある畑。冷涼地域のメルローは注目株です。冷涼メルローらしいきれいな味わいで秀逸です。


フェイラはナチュラル系の生産者といっていいでしょう。知名度はそれほど高くないかもしれませんが、非常に良質なワインをリーズナブルな価格で作っています。このソノマ・コースト ピノ・ノワール(6800円)もナチュラル感があっておいしいです。


フェイラのジンファンデル「Day」です(5300円)。「フェイラでジンファンデル?」って思うかもしれませんが、フェイラのエーレン・ジョーダンはジンファンデルで有名なターリー(Turley)のワインメーカーをしていた人なので、ジンファンデルの経験は誰よりも多いのです。ただ、フェイラのジンファンデルはターリーと比べてもずっとエレガント。複雑さもあり美味しいです。


「ベラ・ユニオン」(15500円)と「ファー・ニエンテ」(28000円)そして写真にはないですが「ポスト・ビーム」はいずれも同じグループのワイン。ラベルの雰囲気がよく似ています。ファー・ニエンテはフラッグシップ的位置づけで、リッチな味わい。リッチなだけでなくバランスもいいところを評価しました。「ベラ・ユニオン」は果実味豊かで華やかなカベルネ・ソーヴィニョン。価格はファー・ニエンテよりだいぶ安くコスパいいです。


ジラードのワインは果実味豊かで親しみやすい味わいが特徴。このソーヴィニョン・ブラン(3500円)も例外ではありません。リッチでクリーンな味わい。


グレース・ファミリーのラリークス(Reliquus)というワイン(30000円)。初めて見ました。グレース・ファミリーはクラシック系の味わいですが、こちらはリッチでモダンな味。


ガーギッチ・ヒルズのシャルドネ(9500円)は、個人的にはナパのシャルドネのベンチマーク的ワイン。ビオディナミでの栽培(2023年にはリジェネレーティブ・オーガニックの認証も)、MLFなしでクラシックなエレガント系シャルドネを作っています。いつ飲んでもはずれがないという点でもお薦めのシャルドネ。


右はハーンのピノグリ(2850円)。ピノグリはあまり飲みませんが、これは華やかで美味しい。左はピノ・ノワール。バランスよくやわらかい味わい。ピノとしては酸味も穏やかで、多くの人がイメージするカリフォルニアのピノ・ノワールに近いと思います。


ハンドレッド・エーカーのジェイソン・ウッドブリッジが作る、比較的リーズナブルな価格のブランドがフォーチュネート・サン。「ザ・ドリーマー」(33000円)と「ザ・ディプロマット」(33000円)の2種が試飲で出ていましたが、個人的な好みはザ・ディプロマットの方でした。カベルネ・ソーヴィニョンにメルローとプティ・シラーがブレンドされています。


アイ・ブランド&ファミリーの ペイサン オールド・ヴァイン カベルネ・ソーヴィニョン(4600円)。有機栽培されている樹齢45年と60年の畑のブドウを使っています。とてもやわらかく、優しい味わいのカベルネ・ソーヴィニョン。


兄弟ワイナリーのホナタ(Jonata)とヒルト(Hilt)から、ホナタのトドス(11000円)はシラー系のブレンド。リッチですがきれいな味わい。ローヌ系の味わいです。
ヒルトのベントロック・ヴィンヤード シャルドネ(20000円)はヒルトのワインの中でも上級のもの。非常にレベルの高いシャルドネ。酸のきれいさもひかります。


ホナタとヒルトのセカンドに相当するザ・ペアリング。シャルドネもピノ・ノワール(どちらも4500円)もバランスよくまとまった味わい。とてもよくできています。


古いファンならご存じかもしれませんが、サンタ・バーバラのワインの歴史に残る「Wine Cask」というワインショップ/レストランがあり、サンタ・バーバラのワイン情報の集積地にもなっていました。そのWine Caskを創設した人がダグ・マージェラムで、現在はWine Caskを売却してワイナリーに専念しています。ローヌ系の5種類の品種を使った赤ワインM5(左、4900円)が看板ワインで、右はその白ワイン版として新たに登場したM5ホワイト(4900円)。グルナッシュ・ブランなどのブレンドです。
ホワイトは柔らかな味わいできれいなワイン。M5も非常にきれいでうまみがある、しみわたるようなワインです。どちらも美味しい。


2024年、SNSで一番バズったワインとして知られているのがジョッシュ・セラーズ(Josh Cellars)。バズりはともかく、米国で大ヒットしているワインです。右のソーヴィニョン・ブラン(2600円)は果実味あふれる作り、中央のピノ・グリージョ(2600円)は華やかな香りと味。シャルドネ(2600円)はリッチな味わいで、それぞれ違う魅力をはなっています。個人的にはとくにピノ・グリージョが良かったです。


ジョッシュの「リザーブ・バタリー・シャルドネ」(3800円)はその名の通り、バター系のリッチな味わい。つまりはブレッド&バタータイプのシャルドネです。個人的には「バタリッチ」と呼んでいます。

このほか写真からは抜けていますが、ちょっと甘めですがスパイス感がいいピノ・ノワールや、689系のレッドブレンド「レガシー レッド・ブレンド」、濃い旨系の「リザーブ バーボン・バレル・エイジド カベルネ・ソーヴィニョン」など、濃い系のワイン好きにアピールするワインがたくさんあります。


ジョッシュの隣にエレガントなマサイアソンが並ぶというのも、ちょっとシュールで面白いです。右の「タンデュー レッド」(4500円)はマサイアソンの入門的ワイン。フレッシュな果実味が美味しいです。中央のナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニョン(16000円)はクラシックな味わい。タンニンの強さもクラシカルな雰囲気を出しています。
左のマヤカマス(20000円)はクラシック系カベルネ・ソーヴィニョンの最高レベルといっていいでしょう。しっかりとしたタンニンがいわゆる「山カベ」らしさを出しており、うまみもあります。熟成させて飲みたいワイン。


ミウラのピノ・ノワールは、リッチでストラクチャーのあるタイプの代表格の一つ。エレガント系とは対極的な味わいですが、これはこれでうまいです。


ポップなラベルと親しみやすい価格で人気のスリー・ガールズ。右のソーヴィニョン・ブラン(2450円)はフレッシュな果実味でさわやか。とてもいいです。右のカベルネ・ソーヴィニョン(2450円)はメルローかと思うほどやわらかで上品な味わい。強いカベルネをk対すると肩透かしかもしれませんが、気軽に飲めて美味しいです。


中央のオークリッジ カベルネ・ソーヴィニョン(2550円)は果実味の豊かさに、複雑さもあるカベルネ。上のスリーガールズとは対照的な重厚タイプで美味しいカベルネです。


ポー(POE)のロゼ・スパークリング(6800円)。このワイン、初めて飲んだような気がしますが素晴らしい泡です。ピノムニエを使っています。ソノマ・マウンテンのVan der Kempの畑のブドウ。この畑のピノ・ノワールは以前HdVが作っていて神の雫にも登場しました。


こんなすごいワインを改めて紹介しなくてもいいのですが、中央のワイン、ピーター・マイケルのレ・パヴォというぼるぢー系のフラッグシップです(50000円)。バランスよく複雑でクラシカルな味わい、さすがのレベルの高さです。


右のラシーヌのピノ・ノワール(1万円)。ブルゴーニュのドメーヌ・ド・モンティーユがサンタ・バーバラで始めたワイナリーですが、このピノ・ノワールはカリフォルニアらしい果実味もあり酸もきれい。レベル高いです。
中央のサンディのセントラル・コースト シャルドネ(4900円)はちょっと好みが分かれそうなワイン。かなり酸が高く、酸好きには受けそうですが、ややエレガント系に寄りすぎな感もあります。
その左のサンディのサンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワール(7300円)は鰹節感のあるエレガント系ピノ・ノワール。多少好みが分かれるかもしれませんが、個人的にはシャルドネよりピノ・ノワールが好きです。


シュラムスバーグのスパークリングは何度となく飲んでいますが、あらためて美味しいです。ブラン・ド・ブラン(6300円)。自分のコメントでは「文句なくうまい」と書いています。


最近多くなったバーボン・バレル熟成のワイン。これはサバスチャーニの「レッド・ワイン バーボン・バレル」(3800円)。マルベック50%、メルロー22%などのブレンドです。濃くてリッチな味ですが、意外とバランスは悪くない。前述のジョッシュのバーボン・バレルに比べると、より幅広いユーザーに受けそうです。


1500円を切るリーズナブルな価格帯のワイン「スリー・ブロックス」のシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョン。どちらも1350円でノン・ヴィンテージ。シャルドネはトロピカルなフルーツのフレーバー。カベルネは樽のしっかり効いた甘やかな味わい。


ターンブルのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー(11000円)。ナパらしい果実味豊かな味わいでバランスよく美味しいカベルネ。