ワインとの“出会い”を大事に――ミライズ 清家純社長
これまで紹介してきたインポーターは、比較的規模が小さいところでした。今回紹介する「ミライズ」は扱っているワインが2つだけという、さらに小さなインポーターです。
ただ、メインの商品はただものではありません。このブログでもたびたび紹介している「ポートフォリオ」です。オーパス・ワン、ロバート・モンダヴィで醸造責任者を務めてきたジェヌヴィエーヴ・ジャンセンスさんのプライベート・ブランドです。米国ではメーリング・リストに登録した顧客のみに販売しており、ほとんど市中には出まわらず、ロバート・パーカーなどの評論家の評価もあまり受けていません(これまでWAでは2006年が91、2007年が95。WSでは2010年が93)。そのため、知る人ぞ知る存在ではありますが、知っている人はその品質の高さに舌を巻く、そういうワインです。
社長の清家さんは、このポートフォリオにぴったりの雰囲気を持った方。商売人ぽさはみじんもない、素敵な女性です。
――現在扱っているワインはポートフォリオと、TOQUADE (トカードゥ) というソーヴィニョン・ブランですね。中でも中心になるのはポートフォリオだと思いますが、このワインとの出会いを教えてください。
清家:ちょっと前からお話すると、米国の大学に留学していたときに飲食の手伝いを経験し、サービス業に強い興味を持ちました。大学卒業後、日本に帰国し、食品を主に扱う商社に就職しました。このときの貿易実務経験はワインの輸入を行う上で大変貴重なものとなりました。
その後、知り合った方から「未来画廊」をというギャラリーとワインバーを併設した店を立ち上げるので、そこで店長兼マネージャーとして働かないかという声をかけていただきました。飲食業は学生時代に経験していましたし、アート業界にも強い興味がありましたので、喜んで引き受けることにしました。
ギャラリーがありますから、そこで展示するアーティストを探していて出会ったのがリュック・ジャンセンス氏の作品です。リュック・ジャンセンス氏はフォトグラヴィアという写真にエッチングを加えたような手法で幻想的な作品を作っていて、その個展をやりたいとラブコールを送り、実際に個展を開きました。
そのときにリュックが来日して、ポートフォリオのワインを持ってきて「よかったら、妻が作ったワインなので飲んでみて」と言ってくださったんです。
なんておいしいワインなんだろう、と衝撃を受けました。そしてナパに行って奥様のジェヌヴィエーヴにお会いしました。以前はオーパス・ワン、現在はモンダヴィの醸造責任者もされているわけですが、「やっぱり自分でこだわったワインを作りたい」と年間3000本だけ作っているといったお話を伺いました。
その後、毎年ナパに行くようになり、少し時間はかかったのですが、インポーターとしてポートフォリオを独占輸入するようになりました。
――私もだいぶ前にポートフォリオを飲んだことがあります。エレガントさが印象に残りました。
清家:そうですね。ジュヌヴィエーヴさんとよく似ているワインだと思います。華やかだけど派手ではない、綺麗なワインだと思っています。
――どのヴィンテージから扱うようになったのですか。。
清家:実は未来画廊時代にワイン事業部というのを作って、最初はそこで扱っていました。2003年が最初のヴィンテージです。
未来画廊は代官山で3年、その後六本木のけやき坂で3年。最後は再開発による立退きで、閉店することになりました。そのときに、「在庫を全部買い取るので、このワインのブランディングをやっていきたい」とお願いし、独立してインポーターになりました。2010年のことです。
リュックとジュヌヴィエーヴに連絡して、これまでは大きな会社だったけど、これからはたった一人ですべてをやらなければいけない旨を話したところ、とても喜んでくれ、「手伝えることは何でも手伝うから。私達のワインを大事に思って扱ってくれる人とやっていきたいと思っているので」と言ってくれました。嬉しくて涙が出ました。
――ところで、カリフォルニアワインには以前からなじみがあったのですか。
清家:いえ。大学はイリノイ州の大学だったので、カリフォルニアワインにはあまりなじみがありませんでした。未来画廊はワインバーだったので、ワインも好きで飲んでいましたが、「ワインって美味しいなあ」といった程度の関心でした。
ポートフォリオに出会って「ワインってすごい」と思って勉強を始め、ソムリエの資格も取りました。すべてのきっかけがポートフォリオだと言ってもいいと思います。
――一からインポーターを立ち上げるのは大変だと思いますが。
清家:飲食関係の友人を大事にしていたことが助けになりました。また、ポートフォリオ自体がすばらしいワインなので、それも大きいです。
試飲会やワイン会などで少しずつファンを広げることを大事にして、本当に徐々に徐々に広げていっています。
――日本に輸入しているポートフォリオの量はどれだけですか。
清家:年間1200本です。最近は香港やシンガポールからも引き合いがあり、実質的にはアジアの代理店というような感じにもなっています。
米国ではポートフォリオのワインは、全部メーリングリストで売られています。特に宣伝などもすることなく小規模でやっています。
2014年4月にご夫妻が来日したときに、100人規模のパーティを開いたのですが、こんなに大きなパーティを開いているのかと驚かれました。
日本では、個人向けへの販売が過半数です。木箱があることや、珍しいワインであることで贈答用に使われるケースも多いようです。毎年リリースを楽しみにしてくださるファンの方が増えています。それがとても嬉しいことです。
――最近はネットショップでも販売を始めました。
清家:酒屋さんとのお付き合いは、限定した形でやっていて、ネット上のショップはお断りしていたんです。しかし、もっと色々な方に知っていただいてファンを増やすのと、これからワインの種類も増やしていきたいと思ってネットショップにも卸すようになりました。
――ソーヴィニヨン・ブランも始めましたね。
清家:そうなんです。昨年少し入荷して評判が良かったので、今年から本格的に売り始めました。
ジェヌヴィエーヴに、ソーヴィニヨン・ブランを探しているという話をしたときに「一人紹介したい人がいる」といって紹介されたのがクリスチャン・バーブというトカードゥ(Toquade)の作り手でした。彼女はボルドーでソーヴィニヨン・ブランだけを作っていて、その後ロバート・モンダヴィでジュヌヴィエーヴさんの愛弟子として、そこでもソーヴィニヨン・ブランだけを作っていたんです。2009年に独立して作ったワイナリがトカードゥです。これからもソーヴィニヨン・ブランだけを作っていくとのことで、すごくこだわりを持って作っているワインなんです。
このワインも香りは華やかですが、きれいでピュアなところがポートフォリオに似ていると思います。畑はヨントヴィルにあります。
――ヨントヴィルでカベルネ・ソーヴィニヨン作ったらずっと高く売れるのにすごいですね。
清家:そうなんです。ソーヴィニヨン・ブランだと値段もリーズナブルで。彼女はすごいなあと思います。
――これから先のラインナップの拡充はどう考えていますか。
清家:出会い次第ですね。ご縁だと思っているのでピンときたものがあれば扱いたいと思います。基本的には、少量生産で、作り手の心が見えて、長くお付き合いできるところとやっていきたいです。
――インポーターをやっていて一番うれしかったことは何ですか。
清家:ご夫妻が来日したときに、ジュヌヴィエーヴから「あなたに出会ってとってもよかった」と言ってもらったことですね。
関連サイト:
株式会社ミライズのサイト
株式会社ミライズ|オンラインショップ
インタビューを終えて:
ワインは出会い、そんな素晴らしい偶然が感じられるインタビューでした。
過去のインポーター(とショップ)インタビュー記事
全都道府県でワイン会をやっていきたい――ワインライフ 杉本隆英社長
4000円以下で美味しいワインを紹介していきたい――アイコニック アンドリュー・ダンバー社長
顔の見えるオンラインショップでありたい――Wassy's鷲谷社長、波田店長
ソノマの美味しいワインを日本に紹介したい――ソノマワイン商会 金丸緑郎社長
神様が背中を押してくれているような気がしました――ilovecalwine 海老原卓也社長
ただ、メインの商品はただものではありません。このブログでもたびたび紹介している「ポートフォリオ」です。オーパス・ワン、ロバート・モンダヴィで醸造責任者を務めてきたジェヌヴィエーヴ・ジャンセンスさんのプライベート・ブランドです。米国ではメーリング・リストに登録した顧客のみに販売しており、ほとんど市中には出まわらず、ロバート・パーカーなどの評論家の評価もあまり受けていません(これまでWAでは2006年が91、2007年が95。WSでは2010年が93)。そのため、知る人ぞ知る存在ではありますが、知っている人はその品質の高さに舌を巻く、そういうワインです。
社長の清家さんは、このポートフォリオにぴったりの雰囲気を持った方。商売人ぽさはみじんもない、素敵な女性です。
――現在扱っているワインはポートフォリオと、TOQUADE (トカードゥ) というソーヴィニョン・ブランですね。中でも中心になるのはポートフォリオだと思いますが、このワインとの出会いを教えてください。
清家:ちょっと前からお話すると、米国の大学に留学していたときに飲食の手伝いを経験し、サービス業に強い興味を持ちました。大学卒業後、日本に帰国し、食品を主に扱う商社に就職しました。このときの貿易実務経験はワインの輸入を行う上で大変貴重なものとなりました。
その後、知り合った方から「未来画廊」をというギャラリーとワインバーを併設した店を立ち上げるので、そこで店長兼マネージャーとして働かないかという声をかけていただきました。飲食業は学生時代に経験していましたし、アート業界にも強い興味がありましたので、喜んで引き受けることにしました。
ギャラリーがありますから、そこで展示するアーティストを探していて出会ったのがリュック・ジャンセンス氏の作品です。リュック・ジャンセンス氏はフォトグラヴィアという写真にエッチングを加えたような手法で幻想的な作品を作っていて、その個展をやりたいとラブコールを送り、実際に個展を開きました。
そのときにリュックが来日して、ポートフォリオのワインを持ってきて「よかったら、妻が作ったワインなので飲んでみて」と言ってくださったんです。
なんておいしいワインなんだろう、と衝撃を受けました。そしてナパに行って奥様のジェヌヴィエーヴにお会いしました。以前はオーパス・ワン、現在はモンダヴィの醸造責任者もされているわけですが、「やっぱり自分でこだわったワインを作りたい」と年間3000本だけ作っているといったお話を伺いました。
その後、毎年ナパに行くようになり、少し時間はかかったのですが、インポーターとしてポートフォリオを独占輸入するようになりました。
――私もだいぶ前にポートフォリオを飲んだことがあります。エレガントさが印象に残りました。
清家:そうですね。ジュヌヴィエーヴさんとよく似ているワインだと思います。華やかだけど派手ではない、綺麗なワインだと思っています。
――どのヴィンテージから扱うようになったのですか。。
清家:実は未来画廊時代にワイン事業部というのを作って、最初はそこで扱っていました。2003年が最初のヴィンテージです。
未来画廊は代官山で3年、その後六本木のけやき坂で3年。最後は再開発による立退きで、閉店することになりました。そのときに、「在庫を全部買い取るので、このワインのブランディングをやっていきたい」とお願いし、独立してインポーターになりました。2010年のことです。
リュックとジュヌヴィエーヴに連絡して、これまでは大きな会社だったけど、これからはたった一人ですべてをやらなければいけない旨を話したところ、とても喜んでくれ、「手伝えることは何でも手伝うから。私達のワインを大事に思って扱ってくれる人とやっていきたいと思っているので」と言ってくれました。嬉しくて涙が出ました。
――ところで、カリフォルニアワインには以前からなじみがあったのですか。
清家:いえ。大学はイリノイ州の大学だったので、カリフォルニアワインにはあまりなじみがありませんでした。未来画廊はワインバーだったので、ワインも好きで飲んでいましたが、「ワインって美味しいなあ」といった程度の関心でした。
ポートフォリオに出会って「ワインってすごい」と思って勉強を始め、ソムリエの資格も取りました。すべてのきっかけがポートフォリオだと言ってもいいと思います。
――一からインポーターを立ち上げるのは大変だと思いますが。
清家:飲食関係の友人を大事にしていたことが助けになりました。また、ポートフォリオ自体がすばらしいワインなので、それも大きいです。
試飲会やワイン会などで少しずつファンを広げることを大事にして、本当に徐々に徐々に広げていっています。
――日本に輸入しているポートフォリオの量はどれだけですか。
清家:年間1200本です。最近は香港やシンガポールからも引き合いがあり、実質的にはアジアの代理店というような感じにもなっています。
米国ではポートフォリオのワインは、全部メーリングリストで売られています。特に宣伝などもすることなく小規模でやっています。
2014年4月にご夫妻が来日したときに、100人規模のパーティを開いたのですが、こんなに大きなパーティを開いているのかと驚かれました。
日本では、個人向けへの販売が過半数です。木箱があることや、珍しいワインであることで贈答用に使われるケースも多いようです。毎年リリースを楽しみにしてくださるファンの方が増えています。それがとても嬉しいことです。
――最近はネットショップでも販売を始めました。
清家:酒屋さんとのお付き合いは、限定した形でやっていて、ネット上のショップはお断りしていたんです。しかし、もっと色々な方に知っていただいてファンを増やすのと、これからワインの種類も増やしていきたいと思ってネットショップにも卸すようになりました。
――ソーヴィニヨン・ブランも始めましたね。
清家:そうなんです。昨年少し入荷して評判が良かったので、今年から本格的に売り始めました。
ジェヌヴィエーヴに、ソーヴィニヨン・ブランを探しているという話をしたときに「一人紹介したい人がいる」といって紹介されたのがクリスチャン・バーブというトカードゥ(Toquade)の作り手でした。彼女はボルドーでソーヴィニヨン・ブランだけを作っていて、その後ロバート・モンダヴィでジュヌヴィエーヴさんの愛弟子として、そこでもソーヴィニヨン・ブランだけを作っていたんです。2009年に独立して作ったワイナリがトカードゥです。これからもソーヴィニヨン・ブランだけを作っていくとのことで、すごくこだわりを持って作っているワインなんです。
このワインも香りは華やかですが、きれいでピュアなところがポートフォリオに似ていると思います。畑はヨントヴィルにあります。
――ヨントヴィルでカベルネ・ソーヴィニヨン作ったらずっと高く売れるのにすごいですね。
清家:そうなんです。ソーヴィニヨン・ブランだと値段もリーズナブルで。彼女はすごいなあと思います。
――これから先のラインナップの拡充はどう考えていますか。
清家:出会い次第ですね。ご縁だと思っているのでピンときたものがあれば扱いたいと思います。基本的には、少量生産で、作り手の心が見えて、長くお付き合いできるところとやっていきたいです。
――インポーターをやっていて一番うれしかったことは何ですか。
清家:ご夫妻が来日したときに、ジュヌヴィエーヴから「あなたに出会ってとってもよかった」と言ってもらったことですね。
関連サイト:
株式会社ミライズのサイト
株式会社ミライズ|オンラインショップ
インタビューを終えて:
ワインは出会い、そんな素晴らしい偶然が感じられるインタビューでした。
過去のインポーター(とショップ)インタビュー記事
全都道府県でワイン会をやっていきたい――ワインライフ 杉本隆英社長
4000円以下で美味しいワインを紹介していきたい――アイコニック アンドリュー・ダンバー社長
顔の見えるオンラインショップでありたい――Wassy's鷲谷社長、波田店長
ソノマの美味しいワインを日本に紹介したい――ソノマワイン商会 金丸緑郎社長
神様が背中を押してくれているような気がしました――ilovecalwine 海老原卓也社長