freeman sparkling
エレガントの極み、フリーマンの新作スパークリング」という記事でフリーマンのスパークリングワイン「ブラン・ド・ブラン」を試飲しました。これに合わせてフリーマンのアキコさんにインタビューした内容を紹介します。インタビューは2021年12月に都内で行ったものです。涼風シャルドネを飲みながらだったので、自然とシャルドネの話から始まりました。

――米国のフリーマンのサイトを見ると「Hawk Hill」という単一畑のシャルドネもあるんですね。どういう縁で始めたんでしょうか。

2017年に畑のオーナーの方から突然電話をいただいたんです。それまで、この畑のブドウはウイリアムズ・セリエムに卸していたのですが、フリーマンのシャルドネが好きなのでうちにワインを造ってほしいと畑の側からスカウトされたんです。珍しいことです。

Hawk Hillのブドウはシュラムスバーグにも卸していて、フラッグシップのJ.Schramに使われています。非常に酸が立っていてきれいで。うちは一切フィルター類を使わないので、瓶内での発酵を防ぐために100%マロラクティック発酵をしていますが、ここのワインの場合はそうでないとレモネードを飲んでいるかのような酸っぱさになってしまうのです。

――自社畑ではシャルドネを作らないんですか。
Yu-Kiという畑に1エーカーだけシャルドネがあります。それをどうしようかと考えて、ちょうどワイナリー創設20周年なのでワインクラブの人に飲んでもらおうとスパークリングを造りました。Brut Natureといって、ドザージュで糖分を添加しない作り方になっています。

シュラムスバーグのワインメーカーを15年勤めたCraig Roemerという人にスパークリングのコンサルタントに入ってもらっています。この方は、シュラムスバーグをやめた後、2年ほどハワイでサーフィン三昧だったそうですが、それにも飽きてこちらに戻ってコンサルタントをされています。聞いた話ではコスタ・ブラウンでもコンサルタントをしているとか。誰でも面倒を見るというわけではないのです。うちの場合は最初に「畑を見せてください」と言われて、それでYu-Kiの畑を見にきてもらったらCraigさんから「これはぜひやらせてください」と言って、コンサルタントをお願いできました。

最初はカスタム・クラッシュで造ることを考えたのですが、独自性を出したいと考えて酔狂ですが自分のところで造っています。

――Brut NatureにしたのはCraigさんの意向ですか?
いえ、どういうワインを造りたいかということで、ドザージュをいろいろ変えて試飲をしたんです。(アキコさんの師匠の)エド・カーツマンにも入ってもらって。3人で試飲をした結果、Natureで行きましょうということで意見が一致しました。今でもエドさんには、何かあると「お願い、ちょっと来て」といってセカンドオピニオンみたいな感じで意見を伺っているんですよ。

――Craigさんが畑を見て気に入った理由は何だったんですか?
シャルドネはクローン5というクローンを植えています。このクローンは量産型で多くの収量があるんですが、Yu-Kiの畑くらい涼しいと、これでやっと普通の収量くらいになるんです。急斜面で水はけがよくて、ブドウを食べてもらったら「酸がすごくいい」ということで気に入ってもらったようです。

――確かピノ・ノワールも比較的収量が多いディジョン系でしたよね。
ディジョン系とあとスイス系のクローンも使っています。マリアフェルド、23と2Aというクローンを使っています。

――スパークリングはどれくらい造ったのでしょうか。
300ケースくらい造っていますが、そのうち半分を今回ディスゴージして、残りは「レイト・ディスゴージ」にしようと思っています。
最初は1ヴィンテージだけで終わりにするつもりだったのです。ですが、2020年は山火事による煙の影響を避けるために早摘みしてしまったため、また造ることにしました。ピノ・ノワールとシャルドネそれぞれ300ケースくらいをスパークリングにしています。ピノ・ノワールはロゼにしています。このロゼを飲んでみたら、とてもおいしかったので結局2021年もスパークリングを作ることになりました。

――スパークリングワインを実際に造ってみていかがでしたか。
手間がかかりますしステップも多いので、学ぶのに時間がかかっています。一方で、ボトルに詰めたら次の作業までの間は倉庫に預けておいても構わないということもわかりました。カーヴがボトルで一杯になることはないので、とりあえず大丈夫だとほっとしました。

――生産量は全部でどれくらいになりますか。
スパークリングが300ケースずつ。アキコズ・キュベが300ケース、Yu-Kiが450ケース、KRランチが450ケースくらい、ソノマ・コーストやロシアン・リバー・ヴァレーは800~1000ケースくらい。Ryofuが600、Hawk Hillが300ケースくらいです。以前はスティルのロゼも造っていましたが、今はやめてしまいました。
ロゼは当初セニエで造っていましたが、その後Yu-Kiのブドウからもっと軽いプロヴァンス風のロゼを作るようになりました。828のクローンを使っているのですが、そのブロックが現在スパークリングに割り当てています。

――自社畑もやられて、スパークリングも造ってとなると大変ですね。
そうですね。働けば働くほど忙しくなるような感じです(笑)。

――畑は管理会社を使っているんですか?
アート・ログレトさんというソノマ・カトラーで働いていた人の会社にお願いしています。

――West Sonoma CoastのAVAの方はまだ動きがありませんか?
そろそろ決まりそうな感じになってきました。それで2023年にはアジアツアーをしたいと考えています。

――ワイナリーは全部でいくつくらいになりますか。
25くらいになります。そちらの活動は主人が中心にやっています。

――最近はアンフォラとかコンクリートエッグとかで発酵・熟成させるワイナリーもありますが、そのあたりはどうですか。
うちはまだ使ってないです。

――シャルドネは樽発酵、ピノ・ノワールはオープントップの発酵槽でしたっけ。
はい、そうです。シャルドネもステンレスタンクで発酵を始めて、糖度が17~18Brixになったら樽に移すという形にしています。以前は最初から樽で発酵させていたのですが、発酵が途中で止まってしまうことがよくあったのです。樽はカーヴに置くのでどうしても温度が低くなってしまうので。ステンレスタンクで始めて樽に移す方法は、リトライのテッド・レモンさんに勧められたんです。ご近所でよくランチも一緒にするので、そのときに相談したら、うちもそうしているからやってみたらいいよって。それで発酵が止まることがなくなりました。

コンクリートを使う方は最近増えましたね。コンクリートは中が洗えないので衛生的に大丈夫かちょっと心配しています。意外とひびが入ることもあるようなので。うちは失敗するほど量がないので、あまりリスクは取れないのです。

このほかステンレスの樽もありますが、なにか味がメタリックになるような気がしてしまうんですよね。木の樽の柔らかい感じが好きです。

――ピノ・ノワールやシャルドネ以外をやることは考えていますか。
私自身はリースリングが好きなんです。実はうちの向かいにロス・コブさんの畑があって、そこでリースリング造っているんです。いいなあと思って見ているのですが、まだ自分で作るのはやっていないです。ウエスト・ソノマ・コーストのワイナリーの方も家ではリースリング飲んでいる方意外と多いんですよ。

エド・カーツマンはシラーが大好きで、レストランに行ってワインを選んでもらうと必ずシラーを頼むんです。彼のシラーはすばらしくて、すごくきれいに熟成するんですよ。うちにいらしていただけたら彼のシラーがいかに花開くか飲んでいただきたいです。主人はシラー好きで、うちでも考えたことはあるのですが、ディストリビューターに反対されてやめてしまいました(笑)。