名門ワイナリー2軒のサスティナブルへの取り組み
先日の記事の続きです。
アース・デイにサスティナビリティについて考えた
前回はワイナリーにとってのサスティナブルへの取り組みがどういう意味を持つのか考察しましたが、今回はセミナーでのシルバーオーク(Silver Oak)とリッジ(Ridge)のリットン・スプリングス(Lytton Springs)における取り組みの紹介です。
シルバーオークはカリフォルニアの中でもサスティナブルに最も力を入れているワイナリーです。これまでにLEEDプラティナム、カリフォルニア・グリーン・メダルのリーダー・アワード、リビング・ビルディング・チャレンジといった賞を受賞しています。
LEEDプラティナムはナパのオークヴィルのワイナリーが2016年、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーのワイナリーが2018年に受賞。オークヴィルはワイナリーとしては初めてのLEEDプラティナムです。リビング・ビルディング・チャレンジは2020年にこれもワイナリーとしては初めての受賞。これまで受賞した最大の製造設備だといいます。リビング・ビルディング・チャレンジは世界で25施設しか受賞していない、非常にレベルの高い賞であり、水やエネルギー、マテリアルなど7つの分野で認められる必要があります。
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例えば太陽光発電では1MWの発電が可能であり、ワイナリーで使う電力の100%以上を作っています。水利用も大幅に削減しています。ワイン自体には水は入れませんが、ワイン造りでは清浄などに大量の水を使います。以前は1ガロンのワインを作るのに7~8ガロンの水を使っていましたが、使った水の再利用などを徹底的に行い、わずか1ガロンで作れるようになったそうです。
栽培においては、科学の力、具体的には様々な計測を徹底的に行うことで、灌漑や使う薬剤などを最低限に押さえています。
サスティナブルはこういった物質的なことだけでなく、コミュニティなどの項目も含まれていますが、シルバーオークでは従業員の健康面や、若い人にワインの啓蒙を行うといったこともその一環で行っています。
サスティナブルに取り組むことでワインの品質にどういう影響があったかという質問に対しては、水資源の保護や薬剤利用の最適化、灌漑の最適化などで畑に対してプラスになっているとのことでした。
リッジはサンタ・クルーズ・マウンテンズのモンテ・ベッロとソノマのリットン・スプリングスのワイナリーがありますが、今回はソノマのワイナリーを取り上げています。カリフォルニアワイン協会のバイザグラスの今年のテーマがソノマなのでそれに沿っています。
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リットン・スプリングスのワイナリーはもちろんリットン・スプリングスの畑の隣にあります。1900年代に植樹された120年近い樹齢の畑です。見てわかるように屋上にソーラーパネルが敷かれています。確かここがリニューアルされたのは2000年代の前半だったと思います。まだ太陽光発電を導入したというだけでニュースになった時代でした。
このワイナリーの最大の特徴は壁に藁を使っていること。
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風通しがいいので、エアコンが不要になりました。
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外壁には土をまぜて漆喰にしています。
藁や漆喰を使った建物というのは米国ではあまり見かけませんが、実はリッジのモンテ・ベッロの古い19世紀からある建物の床で漆喰が使われていたとのこと。カリフォルニアでは米も作られているので、藁は比較的容易に手に入るようです。
また、リッジでは畑の有機栽培も行っています。まだ100%有機ではありませんが、ほぼそれに近いところまで来ています。リットン・スプリングスに関しては2008年からとかなり早い段階から有機栽培に切り替えています。ソノマとサンタ・クルーズ・マウンテンズでいずれも最大の有機栽培畑を持っているとのこと。
また、サンタ・クルーズ・マウンテンズの畑では「土を耕さない」とのこと。土が流れ出すのを防ぎ、保水を考慮しています。
さて、この日は虎ノ門のホテル「東京エディション虎ノ門」でセミナーを受けており、2つのワイナリーのプレゼンの後はお楽しみのランチです。
シルバーオークとリッジのワインはもちろん、サスティナブルに取り組んでいる他の2つのワイナリー(Jとシャイド・ファミリー)のワインも飲みました。
シャイドのサニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズは低アルコールと低カロリーを実現したワイン。ここの畑はすべて有機栽培になっており、ワイナリーではモントレーの強い風を生かした風力発電を行っています。低アルコールのワインというと「おいしくない」というイメージがありますが、それを覆すかのようなしっかりとした味わいには驚いた人が多かったようです。
リッジのリットン・スプリングスに合わせたのは、このホテルのスペシャリテだというウィンナーシュニッツェル。ちょっと酸味の効いたソースがリットンの味わいによく合います。
そして、シルバーオークに合わせたのは、ワイナリーのシェフからのメニューだという「ファロット」。お米(リゾ)から作るのがリゾットで、大麦(ファロ)から作るのがファロットとのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンには肉という常識に合わないような料理ですが、シルバーオークのアレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは、ミディアムプラスくらいのボディで、赤系の果実味が結構しっかりするため、肉肉しい料理にはむしろ合わないのです。大麦とチーズの組み合わせが意外と思うほど、おいしくワインにも合っていました。
アース・デイにサスティナビリティについて考えた
前回はワイナリーにとってのサスティナブルへの取り組みがどういう意味を持つのか考察しましたが、今回はセミナーでのシルバーオーク(Silver Oak)とリッジ(Ridge)のリットン・スプリングス(Lytton Springs)における取り組みの紹介です。
シルバーオークはカリフォルニアの中でもサスティナブルに最も力を入れているワイナリーです。これまでにLEEDプラティナム、カリフォルニア・グリーン・メダルのリーダー・アワード、リビング・ビルディング・チャレンジといった賞を受賞しています。
LEEDプラティナムはナパのオークヴィルのワイナリーが2016年、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーのワイナリーが2018年に受賞。オークヴィルはワイナリーとしては初めてのLEEDプラティナムです。リビング・ビルディング・チャレンジは2020年にこれもワイナリーとしては初めての受賞。これまで受賞した最大の製造設備だといいます。リビング・ビルディング・チャレンジは世界で25施設しか受賞していない、非常にレベルの高い賞であり、水やエネルギー、マテリアルなど7つの分野で認められる必要があります。
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例えば太陽光発電では1MWの発電が可能であり、ワイナリーで使う電力の100%以上を作っています。水利用も大幅に削減しています。ワイン自体には水は入れませんが、ワイン造りでは清浄などに大量の水を使います。以前は1ガロンのワインを作るのに7~8ガロンの水を使っていましたが、使った水の再利用などを徹底的に行い、わずか1ガロンで作れるようになったそうです。
栽培においては、科学の力、具体的には様々な計測を徹底的に行うことで、灌漑や使う薬剤などを最低限に押さえています。
サスティナブルはこういった物質的なことだけでなく、コミュニティなどの項目も含まれていますが、シルバーオークでは従業員の健康面や、若い人にワインの啓蒙を行うといったこともその一環で行っています。
サスティナブルに取り組むことでワインの品質にどういう影響があったかという質問に対しては、水資源の保護や薬剤利用の最適化、灌漑の最適化などで畑に対してプラスになっているとのことでした。
リッジはサンタ・クルーズ・マウンテンズのモンテ・ベッロとソノマのリットン・スプリングスのワイナリーがありますが、今回はソノマのワイナリーを取り上げています。カリフォルニアワイン協会のバイザグラスの今年のテーマがソノマなのでそれに沿っています。
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リットン・スプリングスのワイナリーはもちろんリットン・スプリングスの畑の隣にあります。1900年代に植樹された120年近い樹齢の畑です。見てわかるように屋上にソーラーパネルが敷かれています。確かここがリニューアルされたのは2000年代の前半だったと思います。まだ太陽光発電を導入したというだけでニュースになった時代でした。
このワイナリーの最大の特徴は壁に藁を使っていること。
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風通しがいいので、エアコンが不要になりました。
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外壁には土をまぜて漆喰にしています。
藁や漆喰を使った建物というのは米国ではあまり見かけませんが、実はリッジのモンテ・ベッロの古い19世紀からある建物の床で漆喰が使われていたとのこと。カリフォルニアでは米も作られているので、藁は比較的容易に手に入るようです。
また、リッジでは畑の有機栽培も行っています。まだ100%有機ではありませんが、ほぼそれに近いところまで来ています。リットン・スプリングスに関しては2008年からとかなり早い段階から有機栽培に切り替えています。ソノマとサンタ・クルーズ・マウンテンズでいずれも最大の有機栽培畑を持っているとのこと。
また、サンタ・クルーズ・マウンテンズの畑では「土を耕さない」とのこと。土が流れ出すのを防ぎ、保水を考慮しています。
さて、この日は虎ノ門のホテル「東京エディション虎ノ門」でセミナーを受けており、2つのワイナリーのプレゼンの後はお楽しみのランチです。
シルバーオークとリッジのワインはもちろん、サスティナブルに取り組んでいる他の2つのワイナリー(Jとシャイド・ファミリー)のワインも飲みました。
シャイドのサニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズは低アルコールと低カロリーを実現したワイン。ここの畑はすべて有機栽培になっており、ワイナリーではモントレーの強い風を生かした風力発電を行っています。低アルコールのワインというと「おいしくない」というイメージがありますが、それを覆すかのようなしっかりとした味わいには驚いた人が多かったようです。
リッジのリットン・スプリングスに合わせたのは、このホテルのスペシャリテだというウィンナーシュニッツェル。ちょっと酸味の効いたソースがリットンの味わいによく合います。
そして、シルバーオークに合わせたのは、ワイナリーのシェフからのメニューだという「ファロット」。お米(リゾ)から作るのがリゾットで、大麦(ファロ)から作るのがファロットとのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンには肉という常識に合わないような料理ですが、シルバーオークのアレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは、ミディアムプラスくらいのボディで、赤系の果実味が結構しっかりするため、肉肉しい料理にはむしろ合わないのです。大麦とチーズの組み合わせが意外と思うほど、おいしくワインにも合っていました。