災難の年2020、クインテッサのできはどうだったか?
2017年のヴィンテージから続いているクインテッサ(Quintessa)の新ヴィンテージリリースの試飲。2020年のものはどうなるか心配していましたが、4月に現地でジェネラルマネージャーのロドリゴ・ソト氏に会ったときに、「今年もちゃんと出るから楽しみにしていて」との言葉をいただきました。その言葉の通り、今年もサンプルをいただき、試飲とインタビューをしました。
昨年までの記事はこちら。
クインテッサ2019は傑作2018を超える!?
クラシックスタイルのトップ級、さらに進化するクインテッサ
進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力
まずはクインテッサについて基本情報を記しておきます。
クインテッサはチリのコンチャイトロのCEOだったアグスティン・ヒューネウス(Agustin Huuneus)がナパのラザフォードに設立したワイナリー。設立以来、オーガニックで栽培をしており、現在はデメターからバイオダイナミクス(ビオディナミ)の認証も受けています。畑を切り開いた最初から有機栽培であり、土地に農薬が一度も使われていないという価値があります。
場所はラザフォードの東北部。ちょうどナパ・ヴァレーがぐんと幅を狭くしていくあたりです。西側はナパ・リヴァー、東側はシルバラード・トレイルに挟まれた200エーカーを超える広大な畑を持っています。ヴァレー・フロアではありますが畑の中に丘や池などがあり、5種類の斜面からなり、土壌などもかなり変化に富んだ畑です。
ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドなど。珍しいところではチリの固有品種であるカルメネール(正確にはボルドーから持ち込まれた品種ですが、現在ではほとんどチリだけで作られています)を一部植えています。
ワインはボルドー系ブレンドのクインテッサのほか、ソーヴィニョン・ブランのイルミネーションの二つだけを作っています。セカンドワインもありません。
クインテッサのワインのスタイルはクラシック。ナパのボルドー系ブレンドの中でもオーパス・ワンと並んでエレガントな作りです。
写真はクインテッサの畑を映したものです。南から北側を映しています、中央にため池があり、その両側も畑。東側はシルバラード・トレイル、西側はナパ川が区切りとなっています。
この写真からもわかるように、クインテッサの畑は斜面の向きや土壌の種類など、かなり多様性に富んでいます。数あるナパのワイナリーの中でもこれだけ多様な土地を持っているところはほとんどないのではないかと思います。ラザフォードの北部でナパヴァレーの谷幅が狭くなるあたり。東の山からの火山性の土壌とナパ川による退席性の土壌がどちらも畑の中にあります。クインテッサでは近年は土壌の専門家を招聘し、最適な品種や仕立てなどを追求しています。
今回のインタビューにおいても、ロドリゴ氏は多様性の維持が大事だと言っており、それがワインにもたらす要素を大事にしています。例えばため池の西側は石が多く、ストラクチャーの強いワインができます。そのためストラクチャーの元となるカベルネ・ソーヴィニョンを植えています。シルヴァラード・トレイルに沿ったところは火山由来の灰が多く、ワインにもチョーキーなニュアンスが出ます。ここにはカベルネ・フランを植えています。逆に川に近いところはちょっと重い土壌でワインは柔らかくなります。ここはメルローです。
このほかクインテッサの特徴としてはカルメネールがありますが、これもメルロー同様川に近いところがいいようです。
土壌の話が長くなりましたが、生物多様性も重視しており、多様な動物がいられる環境を作っています。これは地球温暖化や干ばつへの対策にもなると考えています。
ワイン造りでは新樽の比率を年々減らしており60%減ったとのことでした。ワインのピュアさを大事にしていくそうです。
ワインの試飲は2022年のイルミネーションから始めました。ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンドで、セミヨンは外部のブドウも使っています。具体的にはナパのカリストガ、ソノマはベネット・ヴァレーから調達しているそうです。発酵は古樽とコンクリートを使っています。
グレープフルーツにややトロピカルなグアバの印象。樽からくるヴァニラはかなり控えめ、アカシアの花、シナモン、貝殻など香り豊かで多彩。酸はやや豊か、ボディも比較的しっかりしており長い余韻を持っています。とてもいいソーヴィニヨン・ブランです。
なお、クインテッサはボルドー経由で日本に入ってきますが、イルミネーションはファインズの扱いになっています。
次にいよいよ2020年のクインテッサです。
2020年は9月下旬にグラス・ファイアーの火災が起き、ナパのスプリングマウンテンからセントヘレナにかけて延焼していきました。クインテッサのあるラザフォードもかなり近い地域です。温暖で収穫が早めに始まり、火事の前に収穫できたものがワインになっています。
香りは例年に比べるとソフトで温かい印象。ヴィンテージの温暖さが表れているようです。ブラックチェリーにプラム、バラ、生肉、白コショウ、トマトの葉などの香りを感じました。個人的にはより緊張感のある仕上がりだった2019年や2018年に比べると少し落ちるとは思いますが、十分にいいワインです。
最後に2023年について伺いました。今年は冬から春先に雨が多く、それで土壌の状態がかなり改善されたといいます。前の年と比べると5倍ほどの降水があったようです。そういったことから、ブドウに新鮮さと明るさがあるとのこと。素晴らしいできで9月26日から収穫を始めたそうです。
来年以降がまた楽しみになるクインテッサです。
昨年までの記事はこちら。
クインテッサ2019は傑作2018を超える!?
クラシックスタイルのトップ級、さらに進化するクインテッサ
進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力
まずはクインテッサについて基本情報を記しておきます。
クインテッサはチリのコンチャイトロのCEOだったアグスティン・ヒューネウス(Agustin Huuneus)がナパのラザフォードに設立したワイナリー。設立以来、オーガニックで栽培をしており、現在はデメターからバイオダイナミクス(ビオディナミ)の認証も受けています。畑を切り開いた最初から有機栽培であり、土地に農薬が一度も使われていないという価値があります。
場所はラザフォードの東北部。ちょうどナパ・ヴァレーがぐんと幅を狭くしていくあたりです。西側はナパ・リヴァー、東側はシルバラード・トレイルに挟まれた200エーカーを超える広大な畑を持っています。ヴァレー・フロアではありますが畑の中に丘や池などがあり、5種類の斜面からなり、土壌などもかなり変化に富んだ畑です。
ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドなど。珍しいところではチリの固有品種であるカルメネール(正確にはボルドーから持ち込まれた品種ですが、現在ではほとんどチリだけで作られています)を一部植えています。
ワインはボルドー系ブレンドのクインテッサのほか、ソーヴィニョン・ブランのイルミネーションの二つだけを作っています。セカンドワインもありません。
クインテッサのワインのスタイルはクラシック。ナパのボルドー系ブレンドの中でもオーパス・ワンと並んでエレガントな作りです。
写真はクインテッサの畑を映したものです。南から北側を映しています、中央にため池があり、その両側も畑。東側はシルバラード・トレイル、西側はナパ川が区切りとなっています。
この写真からもわかるように、クインテッサの畑は斜面の向きや土壌の種類など、かなり多様性に富んでいます。数あるナパのワイナリーの中でもこれだけ多様な土地を持っているところはほとんどないのではないかと思います。ラザフォードの北部でナパヴァレーの谷幅が狭くなるあたり。東の山からの火山性の土壌とナパ川による退席性の土壌がどちらも畑の中にあります。クインテッサでは近年は土壌の専門家を招聘し、最適な品種や仕立てなどを追求しています。
今回のインタビューにおいても、ロドリゴ氏は多様性の維持が大事だと言っており、それがワインにもたらす要素を大事にしています。例えばため池の西側は石が多く、ストラクチャーの強いワインができます。そのためストラクチャーの元となるカベルネ・ソーヴィニョンを植えています。シルヴァラード・トレイルに沿ったところは火山由来の灰が多く、ワインにもチョーキーなニュアンスが出ます。ここにはカベルネ・フランを植えています。逆に川に近いところはちょっと重い土壌でワインは柔らかくなります。ここはメルローです。
このほかクインテッサの特徴としてはカルメネールがありますが、これもメルロー同様川に近いところがいいようです。
土壌の話が長くなりましたが、生物多様性も重視しており、多様な動物がいられる環境を作っています。これは地球温暖化や干ばつへの対策にもなると考えています。
ワイン造りでは新樽の比率を年々減らしており60%減ったとのことでした。ワインのピュアさを大事にしていくそうです。
ワインの試飲は2022年のイルミネーションから始めました。ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンドで、セミヨンは外部のブドウも使っています。具体的にはナパのカリストガ、ソノマはベネット・ヴァレーから調達しているそうです。発酵は古樽とコンクリートを使っています。
グレープフルーツにややトロピカルなグアバの印象。樽からくるヴァニラはかなり控えめ、アカシアの花、シナモン、貝殻など香り豊かで多彩。酸はやや豊か、ボディも比較的しっかりしており長い余韻を持っています。とてもいいソーヴィニヨン・ブランです。
なお、クインテッサはボルドー経由で日本に入ってきますが、イルミネーションはファインズの扱いになっています。
次にいよいよ2020年のクインテッサです。
2020年は9月下旬にグラス・ファイアーの火災が起き、ナパのスプリングマウンテンからセントヘレナにかけて延焼していきました。クインテッサのあるラザフォードもかなり近い地域です。温暖で収穫が早めに始まり、火事の前に収穫できたものがワインになっています。
香りは例年に比べるとソフトで温かい印象。ヴィンテージの温暖さが表れているようです。ブラックチェリーにプラム、バラ、生肉、白コショウ、トマトの葉などの香りを感じました。個人的にはより緊張感のある仕上がりだった2019年や2018年に比べると少し落ちるとは思いますが、十分にいいワインです。
最後に2023年について伺いました。今年は冬から春先に雨が多く、それで土壌の状態がかなり改善されたといいます。前の年と比べると5倍ほどの降水があったようです。そういったことから、ブドウに新鮮さと明るさがあるとのこと。素晴らしいできで9月26日から収穫を始めたそうです。
来年以降がまた楽しみになるクインテッサです。