ナパの巨頭ワインメーカーの一人、ブノワ・トゥケのプライベート・ブランドを味わう
ナパには引く手あまたの著名ワインメーカーが数多くいますが、トップの一人と目されているのがブノワ・トゥケ。レアム(Realm)では10回を超えるパーカー100点を獲得しており、フィリップ・メルカ、トーマス・リヴァース・ブラウンと並んで「フェアレスト・クリーチャー」というトップワインメーカーを並べたプロジェクトにも選ばれています。
ナパのトップ・ワインメーカー3人の競演!? 「夢の新プロジェクト」発進
そのブノワ・トゥケが来日し、セミナーで彼個人のプロジェクトであるティーター・トッター(Teeter-Totter)とフェマン(Fait-Main)のワインを試飲しました。
ブノワ・トゥケはフランス・リヨンの出身。ボルドー大学で醸造を学び、ミシェル・ロランと知り合います。そしてミシェル・ロランから派遣されて研修として米国に来ました。アンディ・エリクソンの下でスクリーミング・イーグルやダラ・ヴァレ、オーヴィッド、ダンシング・ヘアといったワイナリーで働きます。その後、レアムのワインメーカーになり、100点ワインを輩出して注目を集めました。レアムでは現在は共同オーナーになっています。
ティーター・トッターはシーソーの意味。ラベルにはシーソーに乗ったネズミと象(ネズミの方が下がっている)という絵柄が描かれています。「シーソーに乗った小さなねずみ(ブノワが造るワイン)が、巨象(巨匠のワイン)に立ち向かう」という意味を込めているのだとか。リーズナブルな価格で高品質なワインを造ることを目的にしています。トーマス・リヴァース・ブラウンが作るダブルダイヤモンドあたりと、コンセプトや価格帯的には共通すると言っていいでしょう。2012年にブランドを始めたときは100ケースほどでしたが、現在は6000ケースほどにまで成長しています。
ティーター・トッターのシャルドネ ナパ・ヴァレー2022(7000円)から試飲しました。Beckstofferがカーネロスに持っている畑のブドウを使っています。おそらく下の「Carneros Creek Vineyard」です。ニュートンもここの単一畑を作っています。場所はハドソンとハイドのちょうど中間くらい。単一畑のワインですが、畑名を名乗っていないのは契約の関係だそう。単一畑を名乗る場合、契約が高くなるので、ワインを少しでも安くするために、「ナパ・ヴァレー」としています。
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半分新樽、半分はステンレスタンクで発酵、100%マロラクティック発酵しています。シャルドネのワイン造りではミネラル感や低アルコール、酸、バランスを大事にしているそうです。
ミネラル感強く、ほのかなかんきつにピーチのフレーバー。酸高くエレガントなシャルドネです。ナパヴァレーとは言われなければ気がつかないかも。サンタ・クルーズ・マウンテンズあたりのシャルドネのイメージに近いです。
次はカベルネ・ソーヴィニョン ナパヴァレー2021(12000円)。こちらは2021年からラザフォードにあるBeckstoffer Georges III(ジョージズ・ザ・サード)の畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを使っています。この畑はナパ開発の初期に大地主だったジョージ・ヨーントが娘婿のトーマス・ラザフォードに与えた土地の一部。最初の植樹は19世紀にさかのぼります。その後、ボーリュー・ヴィンヤード(BV)を経てアンディ・ベクストファーの畑になりました。銘醸畑の一つで、300エーカーとかなり広く、多くのワイナリーがここからブドウを調達しています。シャルドネ同様、ワインには畑名は記されていません。
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ブノワ・トゥケが師匠であるミシェル・ロランから学んだことの一つとして、カベルネ・ソーヴィニョンに地元のブドウ、例えば南アフリカであればピノタージュ、を少しブレンドする、ということがあります。そこで、このワインもカベルネ・ソーヴィニョンのほか、ジンファンデル、プティ・シラー、シャルボノをそれぞれ5%ほど入れています。カベルネ・ソーヴィニョン以外の3品種はカリストガからでシャルボノは、トファネリ(ターリーなどが使用)の畑です。樹齢40年で無灌漑栽培されています。
なお、シャルボノについては、こちらをご覧ください:絶滅寸前、シャルボノに惹かれる人たち
プラムやチョコレート、黒鉛。香り高くスパイシー。パワフルで美味しい。酸もあり、濃密な味わいとスパイスが心地よい。これはコスパ高いと思います。
フェ・マンに移ります。「フェ・マン」はフランス語で手造りの意味だとのこと。ラベルには出身地であるリヨンの紋章が描かれています。彼がフランスからナパに来たときに、ナパで作られている品種はボルドーに近いけれど、ナパの地域の特性はむしろブルゴーニュ的だと感じたそうです。さまざまなテロワールが存在するというのがその理由で、テロワールを表現する「単一ヴィンテージ、単一畑」のワインを造るブランドがフェ・マンとなります。
今回は2021年のワインからナパヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン(2万円)、ベクストファー・ミズーリ・ホッパー カベルネ・ソーヴィニョン(3万5000円)、ベクストファー・ラス・ピエドラス カベルネ・ソーヴィニョン(4万8000円)。そして2016年のベクストファー・ラス・ピエドラス カベルネ・ソーヴィニョンです。
ナパヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは2021年が最初のヴィンテージ。これだけは複数畑のブレンドです。単一畑として出しているベクストファー ラス・ピエドラス・ヴィンヤード(セント・ヘレナ)、ベクストファーミズーリ・ホッパー・ヴィンヤード(オークヴィル西側)、ティエラ・ロハ・ヴィンヤード(オークヴィル東側)の3つの畑を中心に、今後単一畑として候補になっている畑のブドウをブレンドしています。
ちなみに、ベクストファー・ラス・ピエドラスの、このワインに使っているブロックは、元々シュレーダーが使っていたところで、シュレーダーがコンステレーションの畑だけを使うことになって手放したところだとか。現在は植え替え中で樹齢が若いために、こちらに入れているそうです。(ブノワ・トゥケさん、結構こんなことまで話していいのということも話してくれます)
濃厚でリッチです。ブルーベリーなど青系果実を強く感じます。適度に酸も感じ、濃厚ですがバランスは悪くないです。
次はベクストファー・ミズーリ・ホッパーの2021年です。ミズーリ・ホッパーはオークヴィルの西側、有名なヴァイン・ヒル・ランチやドミナスのユリシーズの畑に隣接しています。沖積扇状地で表土が深く、樹勢が強くなるそうです。
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顕著なカシスの香りに、とてもなめらかなタンニン。まさにト・カロンなどオークヴィルの西側の味わいです。リッチでふくよか、ナパのカベルネのお手本と言っていいでしょう。
次はベクストファー・ラス・ピエドラスの2021年。ラス・ピエドラスはセント・ヘレナの西側。これも有名なベクストファー・ドクター・クレーンの少し西にいったところにある畑です。かなり山に近いところで、畑に石がごろごろしています。これが「ラス・ピエドラス」(スペイン語の小石)の語源となっています。
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この畑ではライヤー(Lyre)という、仕立ての方法を取っています。写真のように、枝をU字型に誘引して、その下にブドウの実が付くようにします。エアフローがいいのとブドウに日があたりすぎないというメリットがあります。ただ、これが最適な仕立てというわけではなく、今では他の仕立てでよりよい効果が得られる方法もあるそうですが、ここは歴史的にこの仕立てを続けています。
オークヴィルよりも温暖なセント・ヘレナですが、ワインの味わいはこちらの方が引き締まった印象です。赤果実もあり酸とタンニンがしっかりしています。この畑はカベルネ・ソーヴィニョンのクローンが4と337の2種類ありますが、2021年は337を多く使っていることもこのエレガントな印象につながっているようです。
最後に、ヴィンテージ違いで2016年のラス・ピエドラスです。やや固い印象の2021年に対して、2016年はタンニンが多少ほぐれて柔らかさが出てきていますが、まだまだ強いワインです。第3のアロマは感じません。この年は一番味わいが強いと言われているクローン4を多く使っており、それも味わいにつながっています。
ところで、今回は2021年の試飲でしたが、次の2022年は9月10日前後の熱波で難しいヴィンテージだったと言われています。40℃を超えるような熱波が一週間ほども続き、酸が落ちてしまったり、ブドウが「閉じた」状態になってしまったりしました。この熱波の前に収穫したか、熱波の後に収穫したかで、ワインの性格も大きく変わります。フェ・マンは熱波の前に収穫できたそうです。このほか、ハーランやダラ・ヴァレなどのプレミアムなワイナリーも早く摘んだとか。
9月上旬というのは熱波が起こりやすい時期なので、その前に収穫することが今後より大事になり、早く収穫できる畑を今後は選んでいきたいとのこと。ただ、これは早く摘めばいいというほど簡単な話ではありません。その時期に摘んでもフェノリックなどがちゃんと成熟していることが必要です。そのために、無灌漑での栽培や、早い時期に剪定することなどが必要で、栽培により手間をかけなければいけません。
ここまで説明してきたように、ティーター・トッターにしても、フェ・マンにしてもベクストファーの畑のブドウを多く使っています。引く手あまたの栽培家ですが、どうしてこれだけブドウの提供を受けられるようになったのか、質問してみました。
レアムの創設者がアンディ・ベクストファーと仲が良かったというのが最初にあり、またブノワ・トゥケが作るワインの高品質であることが加わっていい関係を築いたとのことでした。長年の信頼で培ったきずながあり、いまは欲しければもっともらうことも可能だとのこと。
最後に、今回の試飲では登場しなかったティエラ・ロハの畑について聞きました。この畑は2023年にナパにいったときに、訪問しています(ナパツアー4日目その1ーー畑作業をむちゃくちゃ楽しむ)。オークヴィルの東側の斜面の畑で、ダラ・ヴァッレの畑の下にあります。
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ブノワ・トゥケによると、オーナーのリンダさんは子供をかわいがるようにブドウを扱っており、その精神と考えが彼とも合っているそうです。2021年から作り始めたワインですが、長く関係を続けていきたいとのこと。畑はヴァカ山脈系の火山性土壌で、色が赤く、ワインは力強く、ミネラル感を強く感じるそうです。
ナパのトップ・ワインメーカー3人の競演!? 「夢の新プロジェクト」発進
そのブノワ・トゥケが来日し、セミナーで彼個人のプロジェクトであるティーター・トッター(Teeter-Totter)とフェマン(Fait-Main)のワインを試飲しました。
ブノワ・トゥケはフランス・リヨンの出身。ボルドー大学で醸造を学び、ミシェル・ロランと知り合います。そしてミシェル・ロランから派遣されて研修として米国に来ました。アンディ・エリクソンの下でスクリーミング・イーグルやダラ・ヴァレ、オーヴィッド、ダンシング・ヘアといったワイナリーで働きます。その後、レアムのワインメーカーになり、100点ワインを輩出して注目を集めました。レアムでは現在は共同オーナーになっています。
ティーター・トッターはシーソーの意味。ラベルにはシーソーに乗ったネズミと象(ネズミの方が下がっている)という絵柄が描かれています。「シーソーに乗った小さなねずみ(ブノワが造るワイン)が、巨象(巨匠のワイン)に立ち向かう」という意味を込めているのだとか。リーズナブルな価格で高品質なワインを造ることを目的にしています。トーマス・リヴァース・ブラウンが作るダブルダイヤモンドあたりと、コンセプトや価格帯的には共通すると言っていいでしょう。2012年にブランドを始めたときは100ケースほどでしたが、現在は6000ケースほどにまで成長しています。
ティーター・トッターのシャルドネ ナパ・ヴァレー2022(7000円)から試飲しました。Beckstofferがカーネロスに持っている畑のブドウを使っています。おそらく下の「Carneros Creek Vineyard」です。ニュートンもここの単一畑を作っています。場所はハドソンとハイドのちょうど中間くらい。単一畑のワインですが、畑名を名乗っていないのは契約の関係だそう。単一畑を名乗る場合、契約が高くなるので、ワインを少しでも安くするために、「ナパ・ヴァレー」としています。
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半分新樽、半分はステンレスタンクで発酵、100%マロラクティック発酵しています。シャルドネのワイン造りではミネラル感や低アルコール、酸、バランスを大事にしているそうです。
ミネラル感強く、ほのかなかんきつにピーチのフレーバー。酸高くエレガントなシャルドネです。ナパヴァレーとは言われなければ気がつかないかも。サンタ・クルーズ・マウンテンズあたりのシャルドネのイメージに近いです。
次はカベルネ・ソーヴィニョン ナパヴァレー2021(12000円)。こちらは2021年からラザフォードにあるBeckstoffer Georges III(ジョージズ・ザ・サード)の畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを使っています。この畑はナパ開発の初期に大地主だったジョージ・ヨーントが娘婿のトーマス・ラザフォードに与えた土地の一部。最初の植樹は19世紀にさかのぼります。その後、ボーリュー・ヴィンヤード(BV)を経てアンディ・ベクストファーの畑になりました。銘醸畑の一つで、300エーカーとかなり広く、多くのワイナリーがここからブドウを調達しています。シャルドネ同様、ワインには畑名は記されていません。
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ブノワ・トゥケが師匠であるミシェル・ロランから学んだことの一つとして、カベルネ・ソーヴィニョンに地元のブドウ、例えば南アフリカであればピノタージュ、を少しブレンドする、ということがあります。そこで、このワインもカベルネ・ソーヴィニョンのほか、ジンファンデル、プティ・シラー、シャルボノをそれぞれ5%ほど入れています。カベルネ・ソーヴィニョン以外の3品種はカリストガからでシャルボノは、トファネリ(ターリーなどが使用)の畑です。樹齢40年で無灌漑栽培されています。
なお、シャルボノについては、こちらをご覧ください:絶滅寸前、シャルボノに惹かれる人たち
プラムやチョコレート、黒鉛。香り高くスパイシー。パワフルで美味しい。酸もあり、濃密な味わいとスパイスが心地よい。これはコスパ高いと思います。
フェ・マンに移ります。「フェ・マン」はフランス語で手造りの意味だとのこと。ラベルには出身地であるリヨンの紋章が描かれています。彼がフランスからナパに来たときに、ナパで作られている品種はボルドーに近いけれど、ナパの地域の特性はむしろブルゴーニュ的だと感じたそうです。さまざまなテロワールが存在するというのがその理由で、テロワールを表現する「単一ヴィンテージ、単一畑」のワインを造るブランドがフェ・マンとなります。
今回は2021年のワインからナパヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン(2万円)、ベクストファー・ミズーリ・ホッパー カベルネ・ソーヴィニョン(3万5000円)、ベクストファー・ラス・ピエドラス カベルネ・ソーヴィニョン(4万8000円)。そして2016年のベクストファー・ラス・ピエドラス カベルネ・ソーヴィニョンです。
ナパヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは2021年が最初のヴィンテージ。これだけは複数畑のブレンドです。単一畑として出しているベクストファー ラス・ピエドラス・ヴィンヤード(セント・ヘレナ)、ベクストファーミズーリ・ホッパー・ヴィンヤード(オークヴィル西側)、ティエラ・ロハ・ヴィンヤード(オークヴィル東側)の3つの畑を中心に、今後単一畑として候補になっている畑のブドウをブレンドしています。
ちなみに、ベクストファー・ラス・ピエドラスの、このワインに使っているブロックは、元々シュレーダーが使っていたところで、シュレーダーがコンステレーションの畑だけを使うことになって手放したところだとか。現在は植え替え中で樹齢が若いために、こちらに入れているそうです。(ブノワ・トゥケさん、結構こんなことまで話していいのということも話してくれます)
濃厚でリッチです。ブルーベリーなど青系果実を強く感じます。適度に酸も感じ、濃厚ですがバランスは悪くないです。
次はベクストファー・ミズーリ・ホッパーの2021年です。ミズーリ・ホッパーはオークヴィルの西側、有名なヴァイン・ヒル・ランチやドミナスのユリシーズの畑に隣接しています。沖積扇状地で表土が深く、樹勢が強くなるそうです。
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顕著なカシスの香りに、とてもなめらかなタンニン。まさにト・カロンなどオークヴィルの西側の味わいです。リッチでふくよか、ナパのカベルネのお手本と言っていいでしょう。
次はベクストファー・ラス・ピエドラスの2021年。ラス・ピエドラスはセント・ヘレナの西側。これも有名なベクストファー・ドクター・クレーンの少し西にいったところにある畑です。かなり山に近いところで、畑に石がごろごろしています。これが「ラス・ピエドラス」(スペイン語の小石)の語源となっています。
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この畑ではライヤー(Lyre)という、仕立ての方法を取っています。写真のように、枝をU字型に誘引して、その下にブドウの実が付くようにします。エアフローがいいのとブドウに日があたりすぎないというメリットがあります。ただ、これが最適な仕立てというわけではなく、今では他の仕立てでよりよい効果が得られる方法もあるそうですが、ここは歴史的にこの仕立てを続けています。
オークヴィルよりも温暖なセント・ヘレナですが、ワインの味わいはこちらの方が引き締まった印象です。赤果実もあり酸とタンニンがしっかりしています。この畑はカベルネ・ソーヴィニョンのクローンが4と337の2種類ありますが、2021年は337を多く使っていることもこのエレガントな印象につながっているようです。
最後に、ヴィンテージ違いで2016年のラス・ピエドラスです。やや固い印象の2021年に対して、2016年はタンニンが多少ほぐれて柔らかさが出てきていますが、まだまだ強いワインです。第3のアロマは感じません。この年は一番味わいが強いと言われているクローン4を多く使っており、それも味わいにつながっています。
ところで、今回は2021年の試飲でしたが、次の2022年は9月10日前後の熱波で難しいヴィンテージだったと言われています。40℃を超えるような熱波が一週間ほども続き、酸が落ちてしまったり、ブドウが「閉じた」状態になってしまったりしました。この熱波の前に収穫したか、熱波の後に収穫したかで、ワインの性格も大きく変わります。フェ・マンは熱波の前に収穫できたそうです。このほか、ハーランやダラ・ヴァレなどのプレミアムなワイナリーも早く摘んだとか。
9月上旬というのは熱波が起こりやすい時期なので、その前に収穫することが今後より大事になり、早く収穫できる畑を今後は選んでいきたいとのこと。ただ、これは早く摘めばいいというほど簡単な話ではありません。その時期に摘んでもフェノリックなどがちゃんと成熟していることが必要です。そのために、無灌漑での栽培や、早い時期に剪定することなどが必要で、栽培により手間をかけなければいけません。
ここまで説明してきたように、ティーター・トッターにしても、フェ・マンにしてもベクストファーの畑のブドウを多く使っています。引く手あまたの栽培家ですが、どうしてこれだけブドウの提供を受けられるようになったのか、質問してみました。
レアムの創設者がアンディ・ベクストファーと仲が良かったというのが最初にあり、またブノワ・トゥケが作るワインの高品質であることが加わっていい関係を築いたとのことでした。長年の信頼で培ったきずながあり、いまは欲しければもっともらうことも可能だとのこと。
最後に、今回の試飲では登場しなかったティエラ・ロハの畑について聞きました。この畑は2023年にナパにいったときに、訪問しています(ナパツアー4日目その1ーー畑作業をむちゃくちゃ楽しむ)。オークヴィルの東側の斜面の畑で、ダラ・ヴァッレの畑の下にあります。
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ブノワ・トゥケによると、オーナーのリンダさんは子供をかわいがるようにブドウを扱っており、その精神と考えが彼とも合っているそうです。2021年から作り始めたワインですが、長く関係を続けていきたいとのこと。畑はヴァカ山脈系の火山性土壌で、色が赤く、ワインは力強く、ミネラル感を強く感じるそうです。