クインテッサとファヴィア、対照的な2ワイナリーのワインを堪能
クインテッサ(Quintessa)などの輸出担当ディレクターであるディエゴ・ギャーレイ氏が来日し、クインテッサとファヴィア(Favia)のディナー会が催されました。
クインテッサとファヴィア、一見関係なさそうな2つのワイナリーですが、実は深い関係にあります。
「アンディ・エリクソン夫妻のファヴィア、オーパス・ワンの隣に畑を取得」という記事に詳しく書いていますが、ファヴィアは今年、オーパス・ワンの裏側にある元スワンソンの畑を入手しています。実はこの畑はクインテッサのオーナーであるフネイアス(チリのコンチャイトロなどのオーナー会社。正しい発音はフネウスだそうです)が所有している畑で、ファヴィアはフネイアスから独占使用権を得た形で使うことになっています。
また、ファヴィアは2022年からワインの一部をボルドーの流通システムであるラ・プラス・ド・ボルドーを使って輸出しています。クインテッサも2019年からラ・プラスを使っており、フネイアスがファヴィアの輸出も手伝う形になっています。
一方で、ワイナリーとしてはクインテッサとファヴィアはナパのワイナリーの中でも対照的なところにあります。クインテッサは少量のソーヴィニヨン・ブランを作っているほかは、「クインテッサ」のボルドー系ブレンドワインの一つだけを作っていて、セカンドワインに相当するものもありません。畑はラザフォードの自社畑だけを使っています(ソーヴィニヨン・ブランはソノマのブドウも使っています)。
なお、クインテッサの説明については「進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力」をご覧ください。
一方で、ファヴィアは自社畑だけでなく、ブドウを購入している畑も含めて単一畑や単一AVAのワインを複数作るスタイルです。どちらかというとブルゴーニュのスタイルに近いといってもいいかもしれません。品種もボルドー系中心ですがカベルネ・フラン主体のものなどもあります。
今回は、赤坂の「ロウリーズ」でプライムリブをいただきながら、以下のワインを飲みました。
Illumination 2022
Quintessa 2020
Quintessa 2015
Favia Coombsville 2020
Favia Cerro Sur 2014
なお、日本ではイルミネーション(クインテッサのソーヴィニヨン・ブラン)だけはファインズが輸入しています。輸入量は80ケースとかなり限られています(イルミネーション全体の生産量は2000ケース程度)。
イルミネーションはソーヴィニヨン・ムスク(ソーヴィニヨン・ブランの中でも香りの豊かさで知られるクローン)が50%、ソーヴィニヨン・ブラン33%、セミヨン17%の構成。果実の風味がとてもきれいで、リッチだけどすっきりした味わい。
前菜のサーモンともいいペアリングでした。
クインテッサは2020年と2015年。2020年は山火事の影響で、生産量は例年の3分の1程度しかありませんでした。ワインを作らなかったワイナリーも多くありましたが、クインテッサではコンサルタントのミシェル・ロラン氏が、どんな年でもそれを経験することが大事だというアドバイスをしたことで、この年もワイン造りをしています。
やや温暖な年で、ワインからも暖かさを感じます。ブラックチェリーにプラム、バラ、コーヒー、トフィーなどの味わい。
なお、2022年のイルミネーションと2020年のクインテッサについては「災難の年2020、クインテッサのできはどうだったか?」でも試飲コメントを掲載しています。
クインテッサでは2020年の生産量が少ないため、ラ・プラスには2020年を300ケース出したほか、2015年と2014年を200ケースずつ出したそうです。今回はそのうちの一つである2015年も飲みました。熟成による腐葉土やマッシュルームの香りが出てきています。まだまだ果実味も豊かでリッチな味わい。今飲むならこちらが美味しいですね。
ファヴィアは2020年のクームズヴィル・カベルネ・ソーヴィニヨンから。こちらはクームズヴィルの3つの畑のブドウをブレンドしています。クームズヴィルはナパのAVAの中ではカーネロスに次いで海から近く冷涼ですが、盆地型の地形でカベルネ・ソーヴィニヨンも熟します。土壌はヴァカ山脈系の火山性の土壌と沖積土壌の混じったもので、気候と相まってタイトなスタイルのワインを生み出す注目の生産地です。
2020年は前述のように難しいヴィンテージでしたが、クームズヴィルは火事からある程度距離があったので、比較的無事にワインが作れたようです。
ワインは非常に緻密な味わい。果実のフレッシュさと緊張感ある味わいが素晴らしいバランスです。クラシックな複雑さを身上とするクインテッサとはだいぶ違ったスタイルで、これも美味しい。
最後は2014年のセロ・スール(Cerro Sur)。これはカベルネ・フランを主体としたブレンドでクームズヴィルの北東方面にあるランチョ・チミレスという、ネスティッドAVAには含まれていない地域の畑のブドウを使っています。
赤果実系の味わいにタイトで緻密なタンニン、スケールも大きく超絶美味しいです。個人的にはこの日のナンバーワン。素晴らしかったです。今年の7月にセミナーでセロ・スールの2018年を試飲しましたが、そのときはパワフルすぎるのと若すぎるので、まだ飲み頃は先の印象でした。やはり10年くらい経つとだいぶこなれてくるのでしょう。
ロウリーズのプライムリブは何度も食べていますが、いつ行っても美味しく楽しいレストランです。
なお、プライムリブ自体はペロッと食べられてしまいますが、付け合わせのコーンやマッシュポテトは生クリームたっぷりでかなりボリュームがあるので、こちらをたくさん食べてしまうとプライムリブが食べきらない人もいるかもしれません(僕はどちらも完食ですが)。
デザートまで堪能しました。
ところで、冒頭の話に戻って、ラ・プラス・ド・ボルドーを使うことのメリットとデメリットについてディエゴ氏にうかがいました。
クインテッサの場合はラ・プラスを使う前は米国外への輸出はごく少量でした(日本には入っていましたが)。それがこれまで全く輸出していなかった国でも飲まれるようになったことは大きなメリットだったといいます。一方で、これまで輸出されていた国では、インポーターがマーケティングをしていたわけですが、ラ・プラスを使うとそれが期待できなくなります(どのインポーターも輸入できるので)。そのリスクは認識しつつ、少しずつ進めていくようにしているとのことです。ファヴィアの場合は初年はマグダレーナとオークヴィルの二つのワイン、今年はそれにセロ・スールとクームズヴィルを追加します。
日本はしっかりしたインポーターが多いので、今のところデメリットの方が目立つ場合も多いように感じています。ラ・プラス利用が今後どうなっていくのかは気になるところです。
クインテッサとファヴィア、一見関係なさそうな2つのワイナリーですが、実は深い関係にあります。
「アンディ・エリクソン夫妻のファヴィア、オーパス・ワンの隣に畑を取得」という記事に詳しく書いていますが、ファヴィアは今年、オーパス・ワンの裏側にある元スワンソンの畑を入手しています。実はこの畑はクインテッサのオーナーであるフネイアス(チリのコンチャイトロなどのオーナー会社。正しい発音はフネウスだそうです)が所有している畑で、ファヴィアはフネイアスから独占使用権を得た形で使うことになっています。
また、ファヴィアは2022年からワインの一部をボルドーの流通システムであるラ・プラス・ド・ボルドーを使って輸出しています。クインテッサも2019年からラ・プラスを使っており、フネイアスがファヴィアの輸出も手伝う形になっています。
一方で、ワイナリーとしてはクインテッサとファヴィアはナパのワイナリーの中でも対照的なところにあります。クインテッサは少量のソーヴィニヨン・ブランを作っているほかは、「クインテッサ」のボルドー系ブレンドワインの一つだけを作っていて、セカンドワインに相当するものもありません。畑はラザフォードの自社畑だけを使っています(ソーヴィニヨン・ブランはソノマのブドウも使っています)。
なお、クインテッサの説明については「進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力」をご覧ください。
一方で、ファヴィアは自社畑だけでなく、ブドウを購入している畑も含めて単一畑や単一AVAのワインを複数作るスタイルです。どちらかというとブルゴーニュのスタイルに近いといってもいいかもしれません。品種もボルドー系中心ですがカベルネ・フラン主体のものなどもあります。
今回は、赤坂の「ロウリーズ」でプライムリブをいただきながら、以下のワインを飲みました。
Illumination 2022
Quintessa 2020
Quintessa 2015
Favia Coombsville 2020
Favia Cerro Sur 2014
なお、日本ではイルミネーション(クインテッサのソーヴィニヨン・ブラン)だけはファインズが輸入しています。輸入量は80ケースとかなり限られています(イルミネーション全体の生産量は2000ケース程度)。
イルミネーションはソーヴィニヨン・ムスク(ソーヴィニヨン・ブランの中でも香りの豊かさで知られるクローン)が50%、ソーヴィニヨン・ブラン33%、セミヨン17%の構成。果実の風味がとてもきれいで、リッチだけどすっきりした味わい。
前菜のサーモンともいいペアリングでした。
クインテッサは2020年と2015年。2020年は山火事の影響で、生産量は例年の3分の1程度しかありませんでした。ワインを作らなかったワイナリーも多くありましたが、クインテッサではコンサルタントのミシェル・ロラン氏が、どんな年でもそれを経験することが大事だというアドバイスをしたことで、この年もワイン造りをしています。
やや温暖な年で、ワインからも暖かさを感じます。ブラックチェリーにプラム、バラ、コーヒー、トフィーなどの味わい。
なお、2022年のイルミネーションと2020年のクインテッサについては「災難の年2020、クインテッサのできはどうだったか?」でも試飲コメントを掲載しています。
クインテッサでは2020年の生産量が少ないため、ラ・プラスには2020年を300ケース出したほか、2015年と2014年を200ケースずつ出したそうです。今回はそのうちの一つである2015年も飲みました。熟成による腐葉土やマッシュルームの香りが出てきています。まだまだ果実味も豊かでリッチな味わい。今飲むならこちらが美味しいですね。
ファヴィアは2020年のクームズヴィル・カベルネ・ソーヴィニヨンから。こちらはクームズヴィルの3つの畑のブドウをブレンドしています。クームズヴィルはナパのAVAの中ではカーネロスに次いで海から近く冷涼ですが、盆地型の地形でカベルネ・ソーヴィニヨンも熟します。土壌はヴァカ山脈系の火山性の土壌と沖積土壌の混じったもので、気候と相まってタイトなスタイルのワインを生み出す注目の生産地です。
2020年は前述のように難しいヴィンテージでしたが、クームズヴィルは火事からある程度距離があったので、比較的無事にワインが作れたようです。
ワインは非常に緻密な味わい。果実のフレッシュさと緊張感ある味わいが素晴らしいバランスです。クラシックな複雑さを身上とするクインテッサとはだいぶ違ったスタイルで、これも美味しい。
最後は2014年のセロ・スール(Cerro Sur)。これはカベルネ・フランを主体としたブレンドでクームズヴィルの北東方面にあるランチョ・チミレスという、ネスティッドAVAには含まれていない地域の畑のブドウを使っています。
赤果実系の味わいにタイトで緻密なタンニン、スケールも大きく超絶美味しいです。個人的にはこの日のナンバーワン。素晴らしかったです。今年の7月にセミナーでセロ・スールの2018年を試飲しましたが、そのときはパワフルすぎるのと若すぎるので、まだ飲み頃は先の印象でした。やはり10年くらい経つとだいぶこなれてくるのでしょう。
ロウリーズのプライムリブは何度も食べていますが、いつ行っても美味しく楽しいレストランです。
なお、プライムリブ自体はペロッと食べられてしまいますが、付け合わせのコーンやマッシュポテトは生クリームたっぷりでかなりボリュームがあるので、こちらをたくさん食べてしまうとプライムリブが食べきらない人もいるかもしれません(僕はどちらも完食ですが)。
デザートまで堪能しました。
ところで、冒頭の話に戻って、ラ・プラス・ド・ボルドーを使うことのメリットとデメリットについてディエゴ氏にうかがいました。
クインテッサの場合はラ・プラスを使う前は米国外への輸出はごく少量でした(日本には入っていましたが)。それがこれまで全く輸出していなかった国でも飲まれるようになったことは大きなメリットだったといいます。一方で、これまで輸出されていた国では、インポーターがマーケティングをしていたわけですが、ラ・プラスを使うとそれが期待できなくなります(どのインポーターも輸入できるので)。そのリスクは認識しつつ、少しずつ進めていくようにしているとのことです。ファヴィアの場合は初年はマグダレーナとオークヴィルの二つのワイン、今年はそれにセロ・スールとクームズヴィルを追加します。
日本はしっかりしたインポーターが多いので、今のところデメリットの方が目立つ場合も多いように感じています。ラ・プラス利用が今後どうなっていくのかは気になるところです。