Archives

You are currently viewing archive for July 2025
Date: 2025/0730 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ポール・ホブズの娘のアグスティーナ(Agustina L. Hobbs)がALHというブランドでワインメーカーとしてデビューします。
アグスティーナ
null
最初のワインは2022年のカベルネ・ソーヴィニヨンで、ポール・ホブズの自社畑であるナパのクームズヴィルのネイサン・クームズ・エステートのブドウを使っています。ここの畑のカベルネ・ソーヴィニョンはクームズヴィルとして初めてのカベルネ・ソーヴィニョンでの「100点ワイン」になっています。

アグスティーナは15歳からワイナリーでボトリングの手伝いをし、ニューヨークのコーネル大学でブドウ栽培と醸造を学びました。その後、アルゼンチンとフランスで収穫の手伝いをし、香港と日本でビジネスも学んだとのこと。

アグスティーナは今回のプロジェクトについて「ALHは私たちの家族の伝統を受け継ぐだけではありません。私を形成した職人技、価値観、遺産に忠実でありながら、ワイン造りで私のビジョンを表現できる場所です。このワインは私が深く信じているワインであり、本物、品質、バランス、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンの新鮮なテイストを大切にする人たちと分かち合えることに興奮しています」と語っています。

ちなみに、ポール・ホブズの2022年のクームズヴィルのワインと、ALHを比較すると

・ブドウ品種
 PH(CS88%、PV6%、M4%、CF2%)
 ALH(CS90%、M7%、CF3%)
・収穫
 PH 9月13~10月10日
 ALH 9月27日~10月4日
・酵母
 PH 天然
 ALH 天然
・樽熟成
 PH フレンチオークの樽(新樽53%)で20カ月
 ALH フレンチオークの樽(新樽29%)で18カ月
・清澄・フィルター
 PH 清澄、フィルターなし
 ALH 清澄なし
・マセレーション
 PH 27日
 ALH 不明

ALHの方が新樽率が低く、樽熟成の期間も2カ月短くなっています。また、収穫時期はPHの方が早く始まり、遅くまで続いています。

ALHのワインは8月1日から発売の予定となっています。価格は現状公表されていません。
Date: 2025/0729 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
北カリフォルニアを中心に、カリフォルニア全体が異例なほどの冷夏になっています(California's Cruel Cool Summer)。
null
ある記事によると、サンフランシスコの気温は1965年以来の低さとのことで、最高気温が華氏70度(約摂氏21度)を上回った日は6月で5日、7月もこれまで7日しかないとのこと。

冷夏の原因は、マリン・レイヤーと呼ばれる太平洋の湿った冷たい雲の塊が非常に強いこと。おそらく8月も今の涼しさが続くであろうとのことです。

北カリフォルニアの冷夏というと、今世紀に入ってからだと2011年が代表的な年。ナパではカベルネ・ソーヴィニョンが成熟しきらないという異例な年になりました。

ワインメーカーは口をそろえて「これまでで一番難しかった年」だと言い、ヴィンテージの評価もあまりよくありません。

一方で、10年を過ぎて熟成を見ると、温暖な年よりもきれいに熟成しているという意見も多々見られます。

生産者によっては、ブドウの房の周りの葉をよけて日当たりをよくするなどの対策を始めているところもあるそうです。ただ、9月10月に熱波が来ることも珍しくないので、リスクを伴う作業でもあります。どちらにしても生産者にとっては悩ましい夏になりそうです。
Date: 2025/0728 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
null
スペインの研究者が、50歳から75歳までの「人生の妙味を知る」1万人の大人たちを対象に、「毎日ワインを飲むのは健康にいいかどうか」という、夢のような健康研究をスタートします(
You Can Get 4 Years of Free Wine to Help Scientists Study the Effects of Moderate Drinking)。4年間の追跡調査を行うこの件空に参加した人は4年分のワインとオリーブオイルを無料で得られるというワイン好きにとっては魅力的な話。

ただし、被験者は「毎日ワインを飲む」か「まったく飲まない」かのどちらかに勝手に分けられます。「まったく飲まない」に分けられた場合は、アルコールを摂取できませんし、ワインの代わりにノンアルコールのビールが提供されることになります。

また、最大の障壁はこの研究に参加する人はスペイン在住に限られること。もし、スペインに住んでいる方がいらっしゃったら、いkがでしょうか。
Date: 2025/0726 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Columbia Gorgeの火事の続報ですが、日本にも輸入されているワイナリー「シンクライン(Syncline)」も大きな被害を受けています。畑は6エーカー以上焼失。ワイナリーは無事なようですが、立ち入りできないため状況は不明だそうです。畑で残ったブドウも、今年のワインには使えないだろうとのこと。濃い煙に長時間さらされており、煙汚染の影響を排除できないとワインメーカーは考えています。
null

暗いニュースが続いたところで、いい話も。

ワシントン州のドライの白ワインに、初めて評論家の100点が付きました。これまで赤ワインでは2006年にクィルシーダ・クリーク(Quilceda Creek)がワイン・アドヴォケイトで、デザートワインでは2012年のシャトー・サン・ミシェル(Chateau Ste. Michelle)のEroica Single Berry SelectがWine & Spirits誌で100点を取っています。
null

ドライの白ワインとして100点を取ったのは「2022 Tenor La Reyna Blanca Vineyard Chardonnay」。残念ながら国内には入っていないワイナリーです。100点を付けたのはジェブ・ダナック。なお、Wine Advocateでは93、Vinousでは94点となっています。

ジェブ・ダナックのコメントは「快楽的でフローラルな美しさとリッチなミッドパレットを持つ2022年のシャルドネ、ラ・レイナ・ブランカ・ヴィンヤードは、単一畑で20ヶ月の樽熟成を経て、111ケースのみ生産された極上のワインだ。白桃が主役で、スパイスの効いたオークの強さとみずみずしいテクスチャーが、表情豊かで複雑な深みとカルダモン、クローブ、マジパンの魅力的なミックスを引き立てている。このワインは本当に驚かされ、ボトルがなくなった後もずっとあなたの心に残るだろう。10~12年、いやそれ以上熟成させる価値がある」

畑はロイヤル・スロープAVAにあります。ロイヤル・スロープはコロンビア・ヴァレーの中でやや北の方にあるAVAで、標高が610フィートから1756フィートまでと、AVAの中でも300mほどの落差があり、南向きの斜面がずっと広がっています。この標高のため、温暖ですがやや冷涼感もあるようです。ワシントン州のシラーで初めて100点を取ったKヴィントナーズの「ロイヤルシティ」もこのAVAで、初シラー100点と初シャルドネ100点を生み出したことになります。
Date: 2025/0723 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワシントン州とオレゴン州の境を流れるコロンビア川で、狭い渓谷になったのがコロンビア・ゴージ(The Columbia Gorge)というAVAです。コロンビア・ヴァレーの巨大な内陸の盆地と、海側を隔てる境のAVAでもあります。この地域で山火事「Burdoin Fire」が発生し、ワイナリーが一軒焼失しました。




私たちは、これまで耐えてきたこと、そして私たちの前に待ち受けているすべてのことに対して、言葉もありません。

家族として、ビジネスとして、私たちには嘆くべきことがたくさんあり、また心から感謝すべきこともたくさんある=人命の安全、第一応答者への計り知れない感謝、ヒーローとして駆けつけてくれた隣人たち、そして我が家が助かったこと!

しかし、多くのものが失われた......。

隣人の家、土地、そしてBAROのワイナリーとセラー。

私たちは明日がどうなるか何も知らないが、誰が明日をその手に握っているかは知っている。

私たちの祈りと愛は、Burdoin火災で被害を受けたすべての人々、ライルのすべての人々、そして私たちのコミュニティのために戦っているすべての人々に送られ続けています。私たちは消防士とすべての第一応答者に永遠に感謝しています!

土曜日の夕方の写真。

上は、ワイナリーが焼失を報告したインスタグラムの投稿とその本文の訳です。ワイナリーの名前はBARO。ワシントン側にあります(コロンビア・ゴージはワシントン州とオレゴン州にまたがっています)。

舵は10700エーカー以上を焼き、少なくとも14個の家が焼失したとされています。最新情報では、コンテイン率はゼロ。まだ火勢をコントロールできていないようです。

Date: 2025/0718 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
小枝絵麻さんが「マジカルペアリング入門」という本を出版されました。同時に、この書籍を使ったペアリングのクラスも開講されます。
shop | 食卓が豊かになるショップ。 — food x wine + bridges



先日開かれた体験レッスンに参加してきました。
私としては、以前からNapa Valley Vintnersでお世話になっており、ペアリングのイベントや動画なども取っておりますので、絵麻さんの「方程式」を使ったペアリングには既になじみがありますが、そうでない人も多いと思いますので、まずは以前の記事や動画も参考になさってください。

ワインと食事のマリアージュに「ブリッジ食材」のマジック

今回のレッスンでは、①アルバリーニョを使ったオレンジワイン、②ややリッチなヴィオニエ、③エレガントなピノ・ノワールのロゼ、という近年人気のスタイルのワイン3つとのペアリングを体験しました。


絵麻さんのペアリング方程式の基本は、食材と調理法と味付けの足し算で料理の重さを出して、それとワインの重さを合わせるというもの。例えば、書籍に載っている「ヘルシーグリルチキン、レモンチーズ挟み」であれば、食材の鶏むね肉が1点、調理法がグリルで2点、チーズとレモン、ホウレンソウのフィリングが1点で計4点というのが料理の重さになり、ライトボディのワインを合わせることになります。

さらに、ペアリングをワンランクアップさせるのが「ブリッジ食材」でワインの味わいと共通性のある食材を料理に加えることで、より合いやすくします。

ややこしい、めんどくさいと思うかもしれませんが、むしろ自由度が上がっているように感じます。
これまでペアリングというと「牡蠣にシャブリ」とか「ブルーチーズにソーテルヌ」とか、決まった組み合わせのものだったり、料理の地方性とワインの地方性を合わせるなど必ずしも味わいと合うとは限らない組み合わせだったり、ちょっと窮屈に感じられることもありました。また、家で普段食べる料理に何を合わせたらいいか、ということにはこれらの組み合わせは答えをくれません。
絵麻さんのメソッドだと、ワインの選びかたも幅があるので、ペアリング的には白だけど今日はロゼの気分、みたいなことにも簡単に対応できます。家にあるのは鶏むね肉だけど、どうしても濃い赤が飲みたければ、調理法と合わせる素材の重さでワインに合うように仕立てられます。家の食材でワインを選んだり、ワインから調理法を選んだりと、自分の優先したいものからペアリングにつなげられるのです。

またこれだけだと、ペアリングとしては「悪くないけど普通」で終わってしまうかもしれませんが、これを見事なペアリングにまで変えてしまうのが「ブリッジ食材」です。これもそんなに難しいことではなく、極端なことを言えば、ちょっと塩を足したり、レモン汁をかける程度のことでも、合い方が変わってくるのです。このちょっとした工夫を取り入れることで、家での食事とワインの組み合わせが1ランク上のものになります。

この日のクラスではヴィオニエに「塩とヨーグルト」を合わせると味わいがより柔らかくなったり、オレンジワインに「アプリコットジャム+塩」がむちゃくちゃあったり、ロゼに「スイカと塩」が合ったりと、いろいろ発見がありました。

絵麻さんの教室に通うとそういった工夫が実際に味わって確かめることができ、また自分で作るときのヒントもたくさん得られます。

家庭でのワインライフをよりよくしたい人は、一度受講されてみてはいかがでしょうか。
Date: 2025/0710 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
null
By Unknown author - TTB.gov, Public Domain, Link

ナパのチャイルズ・ヴァレー(上のマップで右上ピンクのAVAです)をご存じでしょうか。ナパにある程度詳しくても、チャイルズ・ヴァレーのワインを飲んだことがある人は少なさそうです。今回はチャイルズ・ヴァレーのマックスヴィル(Maxville)ワイナリーのCEOであるスコットさんが来日して、初代ナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの富満さんとセミナーと開いたセミナーに参加してきました。ちなみにスコットさんは前Silenusのジェネラルマネージャーで、日本語はペラペラです。

スコット

富満さんも、今年初めてチャイルズ・ヴァレーに行ったとのことですが、ナパヴァレーの中心部から車で30分くらいかかるそうです。途中で不安になるほどの田舎で、携帯電話の電波も通じません。

ヴァレーと名前が付いているように、ヴァカ山脈を越えた先の谷になります。標高はナパヴァレーのヴァレーフロアと比べれば高いですが、ハウエル・マウンテンなどの山のAVAと比べれば低いです。土壌も火山性の岩もありますが、シルトローム層など沖積世の土壌もあり、場所によって様々です。

AVAが策定されたのは1999年で、ナパの中では11番目と比較的遅くなっています。歴史を紐解くと1841年にジョセフ・バリンジャー・チャイルズという人がメキシコ総督から土地を譲り受けて入植し、製粉所を造ったというのが、この地に人が入っていった最初のようです。このあと、フランシス・シーバスという人に土地を一部売却し、その人がワイナリーを設立しました。人里離れたところでフィロキセラの被害もあまりありませんでしたが、禁酒法でブドウ栽培は中断し、1970年代にVolker Eisele(フォルカー・アイズリー)が設立されて、ようやく本格的なワイン造りが始まりました。AVAの申請もVolker Eiseleが中心になって行いました。現在でもワイナリーは5つくらいしかない知られざるAVAです。

気候的には、海から遠く暖かいのかと思っていましたが、夏でも夜には気温が10℃を下回るという意外なほどの涼しさです。霧も入ってくるのだそうです。また、風が強いのも特徴です。

Maxvilleはここで1025エーカーという広大な土地を所有しています。その中の625エーカーは「Napa Valley Land Trust」に登録してあり、その土地は永久に開発の対象外となっています。ワイナリーの設立は1974年で、近くを流れるMaxwell Creekという川と「ville」を組み合わせたそうです。ワイナリーは太陽光発電などを採用して自然と調和して作っていくことを狙っています。


4種類のワインを試飲しました。

2021 Malbec
黒っぽい果実味に土や埃のようなテクスチャー。酸高く、渋みもしっかりあります。オレンジピールのような風味も。洗練されたというよりもどっしりとした力強さを感じるワイン

2021 Merlot
ブルーベリーとレッド・チェリーの風味、酸もタンニンも高い。マルベックと比べると少しトーンが明るいが、力強さを感じるのは共通。酸の高さも共通する要素です。

2021 Cabernet Sauvignon
カシスに黒鉛、しなやかなタンニン。酸はマルベックやメルローと比べると柔らかでまろやか、全体になめらかなテクスチャーが印象的で素晴らしいカベルネ・ソーヴィニョン。

2022 High Valley Cabernet Sauvignon
やや廉価版のワイン。カシスにブラックベリー、酸豊かで芳醇。バランスよくできている
トミーはスモーキーなニュアンスがあると言っていました。

四つのワインに共通するのは、酸が味わいの中心にあること。夜間には10℃以下に下がるという冷涼さがもたらすものでしょう。Chiles Valleyのワインは非常にサンプルが少なく、ジンファンデル系が中心のため、ボルドー系品種はほぼ今回が初めての試飲となりました。とても興味深い産地です。

スコットさんに、今後力を入れたい品種を聞いてみたところカベルネ・フランとのこと。この冷涼感はカベルネ・フランにも非常に合うだろうと思います。

なお、Maxvilleは現在インポーター募集中です。
Date: 2025/0705 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Monte Rosso
ソノマ・ヴァレーのムーン・マウンテンAVAにあるモンテ・ロッソ・ヴィンヤード(Monte Rosso Vineyard)がCCOF(California Certified Organic Farmers)の有機栽培認証を獲得しました。CCOFは米国農務省認定の有機認証機関の一つです。

モンテ・ロッソ・ヴィンヤードや1886年に植樹が始まった古い畑で「ヒストリック・ヴィンヤード・ソサイエティ」に登録されています。名前の通り、標高400mほどの山麓の畑で火山性の赤い土壌が特徴となっています。南向き斜面で完熟したブドウと豊かな酸とミネラル感がワインの特徴となっています。

サンフランシスコで食料品店を営んでいたエマニュエル・ゴールドスタインとビジネス・パートナーのベンジャミン・ドレイファスが畑の創設者。当初はジンファンデルとセミヨンが植えられ、その一部は現在も残っています。ゴールドスタインは1938年に畑をナパのルイス・M・マルティーニに売却しました。マルティーニは1940年に最初のカベルネの樹を植え、その樹は現在も実を付けています。植樹面積は250エーカーに広がり、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、セミヨン、リースリングなど計10品種が植えられています。

2002年にルイ・M・マルティーニがE・J・ガロに売却され、現在もガロがオーナーとなっています。ルイ・M・マルティーニがカベルネ・ソーヴィニョンなどを作っているほか、ベッドロックなどが古木のジンファンデルから素晴らしいワインを造っています。