プリチャードヒルとメルカに注目しています――ワイン蔵TOKYO中川正光オーナー
新橋にある「ワイン蔵TOKYO」はカリフォルニアワインに特化したワインバーです。カリフォルニアワインのストックは約1200本。メジャーなワインから、日本でほとんど知られていないマニアックなワインまで幅広い品揃えを誇ります。
このワインバーのオーナーが中川正光さん。苗字から推測された人もいるかもしれませんが、日本屈指のカリフォルニアワインのインポーターの一族の生まれです。といっても、そのインポーターの系列としてワインバーをオープンしたわけではありません。経営的には全く独立しています。
ワインバーをオープンした経緯や、注目するワインなどについて話を伺いました。
――ワイン好きになられたきっかけを教えて下さい。
中川:慶應義塾大学を卒業した後、ベンチャーキャピタルのジャフコに就職しました。会社の仲間と自宅で飲んだときに開けたキスラーのシャルドネがとてもおいしく、忘れられない味になりました。自宅のセラーにあったワインで、今となっては畑もヴィンテージも分からないのですが。
カリフォルニアワインのビジネスをやっている家でしたから、それまでも親に薦められてワインを飲むことはありましたが、本当においしいと思ったのはそのときが最初でした。
――それから、ワイン蔵TOKYOを始めるまでの経緯を教えてください。
中川:ジャフコには結局6年いました。その後、アンティークの勉強をするためイギリスで2年修行をしました。帰国後、アンティークの店をやるつもりだったのですが、妻にもっとアクティブな仕事をしてほしいと言われ、ワインバーを開こうと思いました。
――なぜ新橋なのでしょうか。
中川:最初は銀座に店を出すことを考えて、2カ月物件を探しました。ただ、銀座はワインバーが多く、なかなかいい物件もありませんでした。
あるときふと新橋を通ったら、とても活気があり、ワインバーが少ないことに気付きました。新橋らしくない店を作ったらニーズがあるのではと考えました。カリフォルニアワインのワインバーに来そうな顧客層を考えたとき、新橋は行きやすい場所にあるといった調査もして、新橋に決めました。オープンしたのは2007年7月3日です。
最初の3カ月はかなり苦しく、その後も2年間は赤字でしたが、今は黒字になっています。
――どのようなお客さんが多いですか。
中川:やっぱり出張などでカリフォルニアに行ったことがある人が多いです。日本に帰ってきてカリフォルニアワインが飲めるところとしていらっしゃいます。
また、ここはレストランではなくワインバーなので、2軒目として選ばれる方も多くいます。食事に合わせてワインを飲むというよりも、ワインだけを楽しまれるお客さんが多いので、比較的濃い味のはっきりしたワインが好まれる傾向があります。
――こだわっていることはありますか。
中川:現場主義ですね。カリフォルニアに年に1回は行って、新しい情報を得ています。店のスタッフにも順番にカリフォルニアに行ってもらうようにしています。
――カリフォルニアではどういうワインに注目していますか。
中川:ナパの変化が面白いと思っています。次々と新しいワイナリーが出てきています。店を始めたころは、シャトー・モンテリーナとか、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズといったパリ・テイスティングのころからのワイナリーが幅を利かせていましたが、最近では新しいワイナリーの名前をお客さんからもよく聞くようになってきました。
また、ワインの産地としてはナパのプリチャードヒル、ワインメーカーではフィリップ・メルカに惹かれています。メルカが作るワインはインパクトがあります。先日行われたプリミア・ナパ・ヴァレー・オークションで1番高額のロットになったBrand(ブランド)は、メルカが作るプリチャードヒルのワインで、日本ではうちくらいしか置いてありません。オークションで1位になったのを知ったときはやったと思いました。
プリチャードヒルではこのほかOvid(オービッド)や、Gandona(ガンドナ、ワインメーカーはフィリップ・メルカ)、Continuum(コンティニューム)などにも注目しています。
ピーター・モンダヴィ(ロバート・モンダヴィの弟でチャールズ・クリュッグのオーナー)の息子のマークが、妻や娘たちとやっているAloft(アロフト)のワインもいいと思っています。ハウエル・マウンテンのワインでトーマス・リバーズ・ブラウンがワインメーカーです。
――ピノ・ノワールはどうですか。
中川:うちのスタッフはみんなピノ・ノワールが好きです。私の家系は濃いカベルネが好きな傾向があり、私もそうなのですが、最近はピノ・ノワールも飲むようになりました。
ilovecalwineの海老原さんが入れているピノ・ノワールはマニアックで美味しいので私は「海老ピノ」と呼んでいます。ピゾーニなど、美味しいですね。
――注目している品種はありますか。
中川:ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンはどうしても高価になってしまうので、コスト・パフォーマンスがいいシラーとジンファンデルに注目しています。
シラーではZaca Mesa(ザカ・メサ)やOjai(オーハイ)のものが店ではよく出ます。
ジンファンデルではGirard(ジラード)やMacauley(マコーリー)のものが好きです。Girardはほかの品種もコスト・パフォーマンスがいいですね。
――私もGirardのジンファンデル好きです。以前ワイン蔵TOKYOに来たときもGirardのワインを注文しました。
中川:うちでは、Girardにお願いしてオリジナルラベルのワインも作っているんですよ。ラベルのデザインには片岡鶴太郎さんに描いてもらった絵を使っています。
――お店をやっていて良かったと思うことは何ですか。
中川:やっぱりお客さんに喜んでもらったときですね。特に、好みを教えてもらって出したワインを美味しく思ってもらえることが一番です。私が選んだワインがお客さんの好みに合わない場合は、お代をいただかずに別のワインをお出ししています。
とにかく一口でもいいからカリフォルニアワインを飲んでいただき、知ってもらうことが私の使命だと考えています。
関連サイト:
カリフォルニア専門ワインバー 銀座・新橋「ワイン蔵 TOKYO」
インタビューを終えて:
インタビューをしたのは「ナパ・ヴァレー・ワイン・バイ・ザ・グラス・プロモーション2014」の表彰式があった日。レストラン・ワインバー部門で4年連続最優秀賞という素晴らしい結果をだしています。インタビュー中も、お客さんへの目配りは怠らない点なども「現場主義」の現れに感じました。それがバイ・ザ・グラスの結果にもつながったのでしょう。インタビュー中にごちそうになったMacauleyのジンファンデルもGirardと似たふくよかな味わいで、美味でした。
過去のインポーター(とショップ)インタビュー記事
全都道府県でワイン会をやっていきたい――ワインライフ 杉本隆英社長
4000円以下で美味しいワインを紹介していきたい――アイコニック アンドリュー・ダンバー社長
顔の見えるオンラインショップでありたい――Wassy's鷲谷社長、波田店長
ソノマの美味しいワインを日本に紹介したい――ソノマワイン商会 金丸緑郎社長
神様が背中を押してくれているような気がしました――ilovecalwine 海老原卓也社長
ワインとの“出会い”を大事に――ミライズ 清家純社長
好きなワインを選んでいったら自然派に行き着きました――オーシャンワイン 早坂恵美社長
ロバート・モンダヴィさんに畑で叱られました――桑田士誉(あきたか)さん
このワインバーのオーナーが中川正光さん。苗字から推測された人もいるかもしれませんが、日本屈指のカリフォルニアワインのインポーターの一族の生まれです。といっても、そのインポーターの系列としてワインバーをオープンしたわけではありません。経営的には全く独立しています。
ワインバーをオープンした経緯や、注目するワインなどについて話を伺いました。
――ワイン好きになられたきっかけを教えて下さい。
中川:慶應義塾大学を卒業した後、ベンチャーキャピタルのジャフコに就職しました。会社の仲間と自宅で飲んだときに開けたキスラーのシャルドネがとてもおいしく、忘れられない味になりました。自宅のセラーにあったワインで、今となっては畑もヴィンテージも分からないのですが。
カリフォルニアワインのビジネスをやっている家でしたから、それまでも親に薦められてワインを飲むことはありましたが、本当においしいと思ったのはそのときが最初でした。
――それから、ワイン蔵TOKYOを始めるまでの経緯を教えてください。
中川:ジャフコには結局6年いました。その後、アンティークの勉強をするためイギリスで2年修行をしました。帰国後、アンティークの店をやるつもりだったのですが、妻にもっとアクティブな仕事をしてほしいと言われ、ワインバーを開こうと思いました。
――なぜ新橋なのでしょうか。
中川:最初は銀座に店を出すことを考えて、2カ月物件を探しました。ただ、銀座はワインバーが多く、なかなかいい物件もありませんでした。
あるときふと新橋を通ったら、とても活気があり、ワインバーが少ないことに気付きました。新橋らしくない店を作ったらニーズがあるのではと考えました。カリフォルニアワインのワインバーに来そうな顧客層を考えたとき、新橋は行きやすい場所にあるといった調査もして、新橋に決めました。オープンしたのは2007年7月3日です。
最初の3カ月はかなり苦しく、その後も2年間は赤字でしたが、今は黒字になっています。
――どのようなお客さんが多いですか。
中川:やっぱり出張などでカリフォルニアに行ったことがある人が多いです。日本に帰ってきてカリフォルニアワインが飲めるところとしていらっしゃいます。
また、ここはレストランではなくワインバーなので、2軒目として選ばれる方も多くいます。食事に合わせてワインを飲むというよりも、ワインだけを楽しまれるお客さんが多いので、比較的濃い味のはっきりしたワインが好まれる傾向があります。
――こだわっていることはありますか。
中川:現場主義ですね。カリフォルニアに年に1回は行って、新しい情報を得ています。店のスタッフにも順番にカリフォルニアに行ってもらうようにしています。
――カリフォルニアではどういうワインに注目していますか。
中川:ナパの変化が面白いと思っています。次々と新しいワイナリーが出てきています。店を始めたころは、シャトー・モンテリーナとか、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズといったパリ・テイスティングのころからのワイナリーが幅を利かせていましたが、最近では新しいワイナリーの名前をお客さんからもよく聞くようになってきました。
また、ワインの産地としてはナパのプリチャードヒル、ワインメーカーではフィリップ・メルカに惹かれています。メルカが作るワインはインパクトがあります。先日行われたプリミア・ナパ・ヴァレー・オークションで1番高額のロットになったBrand(ブランド)は、メルカが作るプリチャードヒルのワインで、日本ではうちくらいしか置いてありません。オークションで1位になったのを知ったときはやったと思いました。
プリチャードヒルではこのほかOvid(オービッド)や、Gandona(ガンドナ、ワインメーカーはフィリップ・メルカ)、Continuum(コンティニューム)などにも注目しています。
ピーター・モンダヴィ(ロバート・モンダヴィの弟でチャールズ・クリュッグのオーナー)の息子のマークが、妻や娘たちとやっているAloft(アロフト)のワインもいいと思っています。ハウエル・マウンテンのワインでトーマス・リバーズ・ブラウンがワインメーカーです。
――ピノ・ノワールはどうですか。
中川:うちのスタッフはみんなピノ・ノワールが好きです。私の家系は濃いカベルネが好きな傾向があり、私もそうなのですが、最近はピノ・ノワールも飲むようになりました。
ilovecalwineの海老原さんが入れているピノ・ノワールはマニアックで美味しいので私は「海老ピノ」と呼んでいます。ピゾーニなど、美味しいですね。
――注目している品種はありますか。
中川:ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンはどうしても高価になってしまうので、コスト・パフォーマンスがいいシラーとジンファンデルに注目しています。
シラーではZaca Mesa(ザカ・メサ)やOjai(オーハイ)のものが店ではよく出ます。
ジンファンデルではGirard(ジラード)やMacauley(マコーリー)のものが好きです。Girardはほかの品種もコスト・パフォーマンスがいいですね。
――私もGirardのジンファンデル好きです。以前ワイン蔵TOKYOに来たときもGirardのワインを注文しました。
中川:うちでは、Girardにお願いしてオリジナルラベルのワインも作っているんですよ。ラベルのデザインには片岡鶴太郎さんに描いてもらった絵を使っています。
――お店をやっていて良かったと思うことは何ですか。
中川:やっぱりお客さんに喜んでもらったときですね。特に、好みを教えてもらって出したワインを美味しく思ってもらえることが一番です。私が選んだワインがお客さんの好みに合わない場合は、お代をいただかずに別のワインをお出ししています。
とにかく一口でもいいからカリフォルニアワインを飲んでいただき、知ってもらうことが私の使命だと考えています。
関連サイト:
カリフォルニア専門ワインバー 銀座・新橋「ワイン蔵 TOKYO」
インタビューを終えて:
インタビューをしたのは「ナパ・ヴァレー・ワイン・バイ・ザ・グラス・プロモーション2014」の表彰式があった日。レストラン・ワインバー部門で4年連続最優秀賞という素晴らしい結果をだしています。インタビュー中も、お客さんへの目配りは怠らない点なども「現場主義」の現れに感じました。それがバイ・ザ・グラスの結果にもつながったのでしょう。インタビュー中にごちそうになったMacauleyのジンファンデルもGirardと似たふくよかな味わいで、美味でした。
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