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Date: 2025/0930 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマのロシアンリバー・ヴァレーにあるエイコーン(Acorn)・ワイナリーが売却されました。エイコーンはアレグリア(Alegría)・ヴィンヤードという1890年代に植樹された古木のジンファンデルの畑を持っています。アレグリアはかつてはリッジやローゼンブラムがワインを造っていたこともありました。

これまでのオーナーのナックバウアー夫妻が畑を買ったのは1990年のこと。最初は栽培だけをしていましたが、1994年にエイコーンを設立してワイン造りを始めました。ただ、老齢化のため近年は売却を模索していたようです。
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ただ、手間がかかり、収量は少ないのにワインの価格はリーズナブルなレベルの古木のジンファンデルはビジネス的には難しい位置付けです。事業継承には苦労するワイナリーが少なくありません昨年は似た状況だったカーライルが売却をせずに廃業を選びましたし、それ以前にはラジエ・メレディスが無償でワイナリーを売却するといったこともありました。

今回、ワイナリーを買ったのはメリッサ・モホルト・シーベルト。近隣のエンシャント・オーク・セラーズ(Ancient Oak Cellars)のオーナーです。

実はナックバウアー夫妻はワイナリーを売却したかったものの、畑は手放したくないという事情がありました。畑のところに自宅があるというのも理由の一つです。そこで、メリッサは夫妻からワイナリーのブランドだけを購入し、夫妻からブドウを買ってワインを造るという形でエイコーンのワインを続けることにしたのです。こういった形での継承は今まで意外になかったようでユニークなスタイルのようです。売却価格は明らかにしていません。

メリッサはエイコーンとエンシャント・オークの両ブランドで続けていくことになります。
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左が前オーナーのビル・ナックバウアー、右がメリッサ・モホルト・シーベルト。

Date: 2025/0927 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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アカデミー・デュ・ヴァン2025年秋冬講座で11月1日開講の「カリフォルニア〜品種で産地を探検しよう」。実はまだ開講が決まっておりません。このまま不催行になるのはかなり悲しいので、講座の狙いと魅力、私の思いを書いておきたいと思います。

青山校 カリフォルニア〜品種で産地を探検しよう | ワイン初心者からソムリエ資格取得まで - ワインスクール アカデミー・デュ・ヴァン

これまでカリフォルニア全体を地域ごとに学ぶ講座や、ナパやソノマといった地域を深堀するものなど、地域を中心にした講座を比較的多くやってきました。また、昨年はシャルドネに特化して地域ごとにワインを見ていくという講座もありました。

一回に一つの地域というのは教えるのは楽ですが、地域間の違いというのは少し分かりにくいような気がして新しい試みとして出しているのが今回の講座です。

1回に一つの品種を取り上げて、その品種についてカリフォルニアの各地のワインを試飲して、テロワールによる違いや、逆に共通するものを感じてほしいという狙いです。

マニア向けの講座かというとそうではありません。むしろ、ワイン・エキスパートを今年受験しています、とかSTEP-1を取りましたといった人たちが受けてくれたら嬉しいです。

ワイン・エキスパートを受験している人は、今まさにテイスティングの練習をしていると思いますが、例えばカリフォルニアのシャルドネだったら、樽がしっかり効いていて色が濃く、酸がやや低いといった特徴から導き出すように教わるだろうと思います。試験的にはそれで間違っていないですが、そういった特徴があるのは、試験に出題されるような2000円台とかの価格帯の話であって、カリフォルニア全体が同じ特徴を持つわけではありません。一つの州で日本やフランスよりも広く、気候のバリエーションも大きいです。フランスワインを語るときにボルドーとブルゴーニュを同じ特徴で語る人はいないと思いますが、同じようにカリフォルニアも一つの特徴では語れないのです。

一方で、ニューワールドではEUのような品種の規制はありませんから、いろいろな品種がいろいろな土地で個性を持って作られることになります。それらを飲むことで、カリフォルニアの多様性を感じてほしいのです。

また、カリフォルニアに詳しい人にとっても、ワインをブラインドで試飲して地域を当てるというのはそんなに簡単なことではないですし、当たれば満足感も高い、またそれを考える過程だけでも非常に勉強になると思います。

最後にもう一つ。
いろいろ講座の内容について書きましたが、結局は講座の魅力の8割は試飲するワインが美味しいかどうかだと思っています。多分私の話は半年後には1割も覚えていないかもしれませんが、それでもワインが美味しくて満足してもらえれば大成功です。なので、限られた予算の中でどれだけ講座の内容に即し、そして美味しいワインを出せるかに一番力を入れています。美味しいカリフォルニアワインを知って、それを今後の購入などに生かしてもらえたら教師冥利に尽きます。
なので、初めの方を読んでそんなめんどくさいことは知らんと思った人でも、美味しいワインを飲むためと思って受講いただけたら嬉しいです。

講座内容
第1回ソーヴィニヨン・ブラン
第2回ジンファンデル
第3回シャルドネ
第4回シラー
第5回ピノ・ノワール
第6回カベルネ・ソーヴィニヨン

青山校 カリフォルニア〜品種で産地を探検しよう | ワイン初心者からソムリエ資格取得まで - ワインスクール アカデミー・デュ・ヴァン

申し込みお待ちしております。
Date: 2025/0927 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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パソ・ロブレスで高級シラーなどを作るブッカー(Booker)が、ワイン造りのプロセスでCCOFオーガニックの認証を得ました。
Winamaker
Senior Winemaker Molly Lonborg

ブッカーは既に、栽培でCCOF認証を取っており、再生可能有機認証のROCも取得しています。これでワイン造り全般にわたってオーガニックの認証を得たことになります。

ワイン造りでオーガニック認証を得るためには、使用するすべての原材料がオーガニック認証を受けている必要があります。化学薬品、防腐剤、SO2の添加は認められません。小麦などグルテンを含む製品も使われないためグルテンフリーであり、実質的にヴィーガンにも対応することになります。

また、これらが実際に守られていることを検査を受けて証明しなければならず、それも毎年必要だとのことです。

ワイン造りではSO2無添加というところが大きなネックになるため、栽培でオーガニック認証を取るところは増えても醸造で取るところはほとんどなかったのが現状です。

勇気ある一歩を踏み出したブッカーの今後に注目です。

Date: 2025/0924 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのハーラン・ファミリーには、大きく3つの柱のブランドがあります。その中でも特殊な立ち位置にあるのがボンド(Bond)です。残りの二つ、ハーラン・エステートとプロモントリーはどちらも自社の単一畑から、その名のワインを生み出しています。それに対してボンドは、自社畑ではなく5つの契約畑からカベルネ・ソーヴィニョン100%の5つのワインを造っています。

今回は、ボンドのマックス・カースト支配人が来日し、マスタークラスで五つの畑のワイン、およびセカンドのメイトリアーク(Matriarch)の2021年を水平テイスティングしました。

ハーラン・エステートおよびボンドの誕生は、ハーランの創設者であるビル・ハーランと、カリフォルニアワインの父と言われるロバート・モンダヴィとの結びつきによるものです。1980年代に、ロバート・モンダヴィは世界最高の産地を勉強するという目的でビル・ハーランらとボルドーとブルゴーニュにツアーに行きました。ボルドーでは1級シャトーをめぐり、100年以上同じ家族が経営していることに感銘を受けて、ビル・ハーランはハーラン・エステートのコンセプトである家族経営で200年かけて超一流ワイナリーを築き上げるという「200年プラン」を書きました。現在はその41年目にあたります。

一方、ブルゴーニュではグラン・クリュの畑を試飲して、同じ品種なのにテロワールによって味が異なることや、斜面の中腹の畑が最高のブドウを生み出すことを学びました。当時のナパの畑は、いわゆるヴァレーフロアの平地の畑がほとんどで、それ以外には山の上にいくつかの畑があるくらいでした。そこで、斜面の畑をナパ中から探し回って「グラン・クリュ」となる畑を見つけたのがボンドです。つまり、ボルドーのコンセプトからハーラン・エステートが生まれ、ブルゴーニュのコンセプトからボンドが生まれたのです。

ちなみに、以前ビル・ハーランから伺った話ではボンドの畑を選ぶために70もの畑と契約してワインを実際に造ってみて、最終的に使う畑を決めていったそうです。ボンドで実際にワインを造り始めるまで12年もかけて畑を選んでいったといいます。なお、Bondという名前はビル・ハーランの母親の旧姓です(初耳でした)。セカンドのMatriarch(メイトリアーク)は女主人という意味です。

Bond Map

こうして1996年に最初に選ばれた畑がVecina(ヴァシーナ)とMelbury(メルバリー)でした。(最初のヴィンテージは1999年)。その後、2001年のヴィンテージからSt. Eden(セント・エデン)、2003年からPluribus(プルリバス)、2006年からQuella(クエラ)が加わっています。計画では最終的に6つのグラン・クリュを選ぶとしていて、マックス・カースト支配人によると、残り一つがいつになるかはまだ分からないとのこと。

実は1年前に現オーナーのウィル・ハーランが来日したときに、ボンドの6つめの畑について聞いてみたことがあるのですが、そのときは「もうじき(soon)」と言っていました。それをマックスさんにぶつけてみたところ「ウィルはその質問にはもうじきと答えるんだけど、そのもうじきが、1年なのか20年なのかは分からないんだよね」ということでした。マックスさんやワインメーカーのコーリー・エンプティングはまだしばらくかかりそうという印象を持っているそうですが、本当にすぐに決まる可能性がないとも言えないようです。前述のように、Bondを立ち上げるときにも10年以上のリサーチ期間があったわけなので、ハーラン家にとっては10年くらいは「もうじき」なのかもしれません。

前述のように、ボンドの畑は自社のものではなく契約畑ですが、栽培はハーラン自身で行っています。ボンドの畑の多くはハーランだけが使用していますが、ヴァシーナはオークヴィルにあるヴァイン・ヒル・ランチ(Vine Hill Ranch)の畑。ハーランはここの一番山寄りのブロックを専用で使っており、ここも自社で栽培しています。

ハーラン/ボンドの品質を支えているのが栽培チームです。栽培は外部の会社を使うワイナリーも多い中で、ハーランの栽培チームは社員として働いています。ヴァインマスターというプログラムがあり、試験を受けて4段階昇進していく仕組みになっています。最後の試験に通ると、一人当たり1.5ヘクタールほどのブロックをすべて責任を持って管理することになります。その知識は、担当のブロックの樹の性質や状況などをすべて説明できるレベルで、隣の樹との違いや、冬季のブドウを見てもどこにブドウの房ができるかを言えるとのこと。まるで盆栽のように樹の手入れをするとも言われています。ファーミングというよりガーデニングだともいいます。こういったことから、マックス・カーストさんはテロワールという言葉を人と土地とのコネクションだと考えているそうです。


写真が緑がかっているのは撮影した角度の関係です。

ボンドの醸造設備はオークヴィルのハーラン・エステートの近辺の山の中にあります。ファンシーさやゴージャスさはなく、醸造に徹した質実剛健なワイナリーです。どのワインにも共通するプログラムとしては、天然酵母で発酵し、28カ月新樽と旧樽を合わせて熟成、ボトル詰めしてからさらに1年間熟成させて出荷します。収穫から出荷まで4年というのはナパの標準より1年程度長くなっています。ただ栽培と同じように、細かいトリートメントについては畑やヴィンテージなどブドウの状態で調整をしています。

今回は2021年のワインですが、近年のヴィンテージをおさらいすると、2019年は冬にたっぷり雨が降った年。気温もマイルドで、前年の2018年と並んで非常にいいヴィンテージと言われています。2020年は9月の山火事の影響が大きく、赤ワインを造らなかったワイナリーもたくさんあります。ただ、比較的高温が早くから続いたことから、ハーランやボンドでは山火事の前に収穫が済んでいました。結果として非常にエレガントなスタイルになりました。そして2021年は干ばつの2年目で冬の間に200ミリ程度しか雨が降りませんでした(カリフォルニアは冬が雨季で、大半の雨は冬に降ります)。そのため、果実が小さく皮が厚くなり、パワフルなワインになったそうです。

ボンドで特徴的なのはそのラベルです。ラベルには畑の名前と、畑をイメージした色が塗られた円が描かれています。それ以外はどのワインも同じで、ブドウの品種名や畑のAVAは書かれておらず、Napa Valley Red Wineとだけ記されています。ボンドのワインはすべてカベルネ・ソーヴィニヨン100%であり、いちいちそれを記す必要はないということだそうです。

テイスティングに移ります。

最初はセカンドワインのメイトリアーク(Matriarch)です。メイトリアークは、単一畑のワインを選んだ後に残ったワインをブレンドしたもので、単一畑ものと比べると、果実味が強く、長期熟成よりも若いうちに飲むスタイルのワインになります。

赤い果実にブルーベリー、リコリスに、少し土っぽいニュアンス。濃縮感強く、ストラクチャーしっかりで余韻の長さを感じます。ストラクチャーの強さはヴィンテージの特徴によるものでしょうか。ファーストとは違うとはいえ、非常にレベルの高いカベルネ・ソーヴィニヨンです。


クエラに進みます。クエラはセント・ヘレナの東方、ナパヴァレーを見下ろす南西向きの急斜面にある畑です。ドイツ語で「分水嶺」の意味があり、かつてはここで水が湧いていたとのこと。五つの畑の中では一番温暖ですが、できるワインはエレガントになります。表土はトゥファと呼ばれる火山灰の固まったもので、下の方は過去の川底で石がゴロゴロしています。

仕立てはダブルコルドンのVSPで、植樹した1990年代に流行っていたスタイルです。

赤い果実から青系果実の風味、タンニンはかなり強いですが非常になめらか、酸高くミネラル感があります。マックス・カーストさんは「筋肉質のバレーダンサー」とその酒質を表していました。

メルバリーはクエラ同様、ナパの東側の丘陵地です。直線距離では2kmくらいですが、10kmくらいドライブする必要があります。畑はレイク・ヘネシーの北側で、斜面の向きは東から南東になります。土壌は粘土質の岩盤に堆積土壌が積もり、石が混じります。植樹は1989年と一番古く、深くまで根が張り巡らされています。


メルバリーの畑はオーガニックで栽培され、自然のままをキープしています。耕起しない、ドライファーミングなどを実践しています。ワインメーカーのコーリー・エンプティングは福岡正信の自然農法に大きな影響を受けており、その思想を年々取り入れていっています。それによって、従来よりも2~3週間収穫が早まり、2021年は9月上旬に収穫が終わっています。

メルバリーはなめらかさやしなやかさのあるテクスチャーが特徴的。これは表土の粘土質に由来するもののようです。カベルネ・ソーヴィニヨンというよりもメルロー的なテクスチャー。赤い果実は感じず、ブルーベリーやブラックベリーのニュアンス。マックス・カーストさんは紅茶やバラの花をクラッシュした香りやシナモンなどを感じると言っていました。また、クエラとメルバリーはカベルネ・ソーヴィニヨンらしくないとも言っていました。

単一畑の三つ目はセント・エデンです。セント・エデンはオークヴィルのヴァレーフロアの東寄り、スクリーミング・イーグルから400mほど北に行ったところにあります。五つの畑の中で一番標高が低く、夜は一番寒く、昼は一番暑くなります。完熟して酸が残るのが特徴です。プリチャード・ヒルから落ちてきた火山性の赤い土壌が特徴です。



セント・エデンはやや北向きの斜面になっています。この写真は三つの畑に見えますが、全部セント・エデンです。植樹したときの流行りが列の向きや剪定方法に反映されています。一番手前は1984年に植樹されておりダブルコルドンで列の向きは東西になっています。日当たりの良さを重視しています。
その上はダブルギィヨで南北の列方向になっています。その上が一番新しいセクションでまだ台木を植えた段階なのですが、ゴブレットやカリフォルニアスプロールと言われる形にしていきます。ブドウの樹の競争を促進することと、ブドウの実に日陰を作り、灌漑なしでの栽培を行うためにこの形にしています。1エーカーあたり4000本と、ナパとしてはかなりの密植です。欧州のゴブレットと違うのは、フルーツゾーンと呼ばれる果実を付ける位置は高くしていること。将来はハーランやプロモントリーもこの形になるだろうとのことです。なお、若い樹のブドウはメイトリアークには入れず、サードワインのマスコットに使われます。

完璧なカベルネ・ソーヴィニヨンがあるとしたらこのワインかなと感じました。パワフルでシルキーなタンニン、果実味と酸の高度なバランス。非の打ち所がありません。

次はヴァシーナです。前述のように畑はVine Hill Ranch。その一番山寄りのブロックをボンドが使っています。セント・エデンと同じオークヴィルの畑ですが、セント・エデンが東寄りでヴァカ山脈の火山性土壌であるのに対して、ヴァシーナはオークヴィルの西側の沖積扇状地。ドミナスやト・カロンからそれぞれ1km程度、ハーラン・エステートからも数百mという近さです。サンパブロ湾からの風が吹き抜けるため、ボンドの畑の中ではここが一番涼しくなっています。東向きの斜面で午前の日照をしっかり浴びますが、山が迫っているため午後は早くから日陰になります。
2021年に収穫は8月末から始まり9月16日に終了したとのこと。ここもゴブレット仕立てになっています。

オークヴィルの西側というと、前述のト・カロンやベクストファー・ト・カロンが代表的な畑。ハーランもそうですし、マーサズ・ヴィンヤード、ドミナスのユリシーズなど綺羅星のような畑が並びます。ヴァシーナもト・カロンに通じるような芳醇さや、ストラクチャー、ブラックペッパーやハーブの風味があります。かなりパワフルなのはヴィンテージの特徴もあると思いますが、ココア・パウダーのようなタンニンもまた心地よいワイン。個人的にはやはりオークヴィルの西側のイメージをそのまま具現化したワインだと感じており、その中でもトップクラスは間違いないでしょう。今回のセミナーでもこれが一番好きという人が多かったと思います。

五つの畑の最後がプルリバス。ナパヴァレーとソノマの間にあるマヤカマス山脈側のAVAは南からマウント・ヴィーダー、スプリング・マウンテン、ダイヤモンド・マウンテンとなっていて、プルリバスはスプリング・マウンテンにあります。マヤカマスの畑はほとんどが他の畑から隔絶されたところにあり、プルリバスも例外ではなく隣接する畑はなくレッドウッドの森に囲まれています。栽培は無灌漑。五つの畑の中では一番標高が高いところにある畑です。

杉や腐葉土、セージなどの風味に、赤い果実とブラックプラム、タンニンの強さはこれが一番感じます。酸のフレッシュさも印象的。「山カベ」と呼ばれるスタイルとして、個性的で素晴らしいワインです。個人的には五つの単一畑ワインの中でこれが一番好きでした。

最後に、2011年のプルリバスが振舞われました。2011年は冷涼な年で、ナパでは珍しくブドウが完熟しない畑もあったのですが、熟成すると非常にいいニュアンスを出してきていると言われています。

マッシュルームに腐葉土やハーブなど熟成によるアロマがあふれてきます。タンニンは2021年よりもこなれています。これも熟成によるものでしょう。きれいに熟成して美味しく飲めますが、まだ数年は熟成していくのではないかと感じました。

Date: 2025/0921 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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リンカーン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニヨンが税別3000円弱と、激安になっています。残念ながら輸入停止によるものだそうです。元の価格は6000円ですが、6000円でもコスパは高いと感じられるクオリティでした。ブドウはドミナスなどがあるヨントヴィルのものを使っています。

価格3000円程度というと、人気の689セラーズより300円ほど高い感じですが、689のレッドワインはジンファンデルが4割近く入っており、カベルネ・ソーヴィニヨンは3割弱。柔らかな味わいを求めるなら689がいいですが、本格的なカベルネ・ソーヴィニヨンの味わいとは全く別物です。

また、ナパの人気カベルネ・ソーヴィニヨンというとナパ・ハイランズがありますが、こちらは5000円程度。また、ヨントヴィルなどの地域ものではなく、ナパヴァレー広域のワインになります。格的にも実際の味わい的にもリンカーン・セラーズが上回ります。ナパらしいカベルネ・ソーヴィニヨンを求める方にはお薦めです。


Date: 2025/0914 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Wine to Styleのニュー・カリフォルニア試飲会で美味しかったワイン(前編)の続きです。


グリーン&レッドは、カリフォルニア料理のパイオニアであるシェ・パニーズでハウスワインとして長年使われているワイナリーで、ナパのジンファンデルをメインで作っています。ジンファンデル ティップ・トップ・ヴィンヤード2018は標高540~600mの山の上の畑。野菜中心の料理であるシェ・パニーズで使われていることでわかるように、エレガントさがあるワイン。複雑さもあり一般にイメージするジンファンデルとは一線を画しています。実はアルコール度数は15.4%もあるのですが、それを感じさせないバランスの良さがあります。


スクライブはニュー・カリフォルニア系でも人気の高いワイナリーの一つ。イケメン兄弟がワインを造っています。ピノ・ノワール カーネロス2023(8900円)は果実味がきれいで、うまみもたっぷり。微笑みが出るようなワイン。


ペイザンはアイ・ブランド&ファミリー(I. Brand &Family)の兄弟ブランド。イアン・ブランドという人がモントレーで作るワインです。ペイザンは廉価版のブランド。シャルドネ ジャックス・ヒル2023(4200円)は酸がきれいでバランスよいワイン。コスパ抜群です。


こちらはアイ・ブランド&ファミリーのワイン。カベルネ・フラン デローズ・ヴィンヤード2022(7800円)。シエネガ・ヴァレーというちょっとマイナーな産地(カレラの山の麓になります)。少しピラジンを感じます。酸高く、グリップ感があっておいしいカベルネ・フラン。


ウルトラバイオレットはPoeというワイナリーでも有名なサマンサ・シーンという女性醸造家のワイナリー。このカベルネ・ソーヴィニョン2022(3300円)はなんといってもコスパで他の追随を許さないワイン。エレガントさや花の香りもあり、ミディアム・ボディで美味しい。


アルノー・ロバーツはダンカン・アルノーとネイサン・ロバーツによるワイナリーです。ニュー・カリフォルニアを代表するワイナリーといってもいいでしょう。ネイサンの祖母はロバート・モンダヴィの奥さんのマルグリットで、ラベルのデザインもマルグリットによるものです。このワインはシエラ・フットヒルズのエル・ドラドのガメイ・ノワール2023(5800円)。ジューシーな果実味にこくのあるうま味、それでいて軽やかな味わいで美味しい。


アルノー・ロバーツのワインの中でも人気の高いのがこのトゥルソー(2022年、7500円)。奥行きがある味わい。素晴らしい。


パックスは、シラーの名手であるパックス・マーリーによるワイナリー。シラーではヴィナスで100点も取っています。これはエル・ドラドのシラー2022(5900円)。酸高くスパイシーで、冷涼感のあるシラー。


最後はメートル・ド・シェのワイン。Wine to Styleのページには以下のように説明があります。

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カリフォルニアのナチュール・ムーヴメントを切り開いた先駆者「スコリウム・プロジェクト」のアシスタント・ワインメーカーとして長年活躍したアレックス・ピッツ(Alex Pitts)が独立し、レオ・スティーンで醸造を学び、ナパでミシュラン三つ星の「メドーウッド」でソムリエをしていたマーティン・ウィンター(Martin Winter)とタッグを組んで2012 年に設立したブランドです。2019 年には米国の全国紙『San Francisco Chronicle』にて、Winemakers to Watch(最も注目すべき醸造家)に選ばれ、今最も勢いがある若手コンビです。
「メートル・ド・シェ」はフランス語(主にボルドー)で醸造責任者を意味する言葉です。現在では独立して自身のワイナリーの経営だけで生活ができるようになりましたが、「メートル・ド・シェ」設立当初は二人とも別のワイナリーの醸造責任者やアシスタントとして仕事を掛け持ちしていました。そんな苦しい中、自分たちにセラーで働くチャンスを与えてくれて、醸造や栽培の知識を共有してくれた恩師がいたからこそ現在の自分が居るという意味で、労いの気持ちを表現したブランド名です。つまり、「メートル・ド・シェ」とはアレックスとマーティンがワインの業界に入るきっかけとなった役職名であり、彼らの原点なのです。
1883 年に描かれたイラストがラベルに採用されていて、ローマ神話における自由の女神「リーベルタース」とカリフォルニアのシンボルであるハイイログマが乾杯をしています。カリフォルニアが州旗としてハイイログマを採用したのが1911 年なので、この絵はその前に描かれたものになります。樽の側面にはゴールドラッシュ発生時(1848 年)に長い道のりを経てアメリカ西海岸にたどり着いた帆船とクワを持つ労働者が描かれています。もともとのオリジナルのイラストには樽の側面に「見つかった!」を意味する「Eureka」の文字があり、ワイン木箱の側面にはそれぞれ「Mission」、「Pineau」、「Riesling」、「Zinfandel」と書かれていましたが、そのままでは米国酒類タバコ税貿易管理局からの許可が降りなかった為、「Eureka」の文字を削除し、木箱の側面には実際に中に入っているワインに使われたブドウ品種が記載されています。
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個人的には今回ここのワインがどれもとても良かったです。右からシュナン・ブランのスパークリング・ワイン(6800円)、シャルドネ ウィーラー・ヴィンヤード 2021(6300円)、レッド・テーブル・ワイン2022(4900円)、ジンファンデル スタンピード・クレメンツ・ヒルズ2022(6200円)、カベルネ・ソーヴィニョン ガラ・マウンテン2020(8200円)。
シュナン・ブランのスパークリングはあまり飲んだことありませんが、果実味豊かでバランスもよく美味しい。シャルドネもバランスタイプ。レッド・テーブル・ワインはリッチ感があり、タンニンが味を引き締めていてとても美味しい。ジンファンデルも華やかな香りでエレガントで素晴らしい。カベルネはややリッチ。これもいいです。
Date: 2025/0912 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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インポーターWine to Styleが、ニュー・カリフォルニアに絞った試飲会を開催しました。そこから良かったワインを報告します。

ニュー・カリフォルニアっていったい何? という人もいると思うので簡単に解説します。ニュー・カリフォルニアとは2013年に当時SFクロニクル紙のワイン担当だったジョン・ボネが書いた「New California Wine」という本に端を発するワインのスタイルです。これより数年前にIPOB(In Pursuit of Balance)という団体で、濃厚でアルコール度数の高いカリフォルニアワインへのアンチテーゼとして、エレガントでアルコール度数が低く、食事に合わせやすいワインを造るという運動が起こっており、ニュー・カリフォルニアはその流れを汲むものでした。テロワールを重視し、濃厚さや味わいの強さよりもバランスの良さを求めるスタイル。また、ヴァルディギエやトゥルソーなど、マイナーな品種やごく少量作られている古い畑のブドウなどに取り組む生産者、いわゆる自然派的なワイン造りをする生産者などが含まれます。

Wine to Styleは以前からニュー・カリフォルニア系の生産者のワインを積極的に輸入しており、今回は久しぶりにニュー・カリフォルニアに限定した試飲会となりました。

参考:以前4社で行った試飲会の記事はこちら
ニュー・カリフォルニア試飲会でおいしかったワイン(前編)
ニュー・カリフォルニア試飲会でおいしかったワイン(後編)


フェイラは、以前ターリーのワインメーカーだったエーレン・ジョーダンのワイナリー。ターリーがむちゃくちゃ濃厚だった時代のワインメーカーですが、自身のワイナリーではバランスを重視したワインを造っています。このソノマ・コーストのピノ・ノワール2023(6800円)とDayブランドのジンファンデル2022(5300円)はコスト・パフォーマンス抜群。どちらもきれいな味わいです。


タトーマーはリースリングの名手として知られるワイナリーですが、サンタ・バーバラのピノ・ノワール2021(5900円)とサンタ・リタ・ヒルズのクステンニーベルピノ・ノワール2022(6800円)を紹介します。サンタ・バーバラはとてもエレガント、サンタ・リタ・ヒルズはうまみがあり、柔らかなテクスチャーのワインです。


サンディはオレゴンのイヴニングランドやサンタ・バーバラのドメーヌ・ド・ラ・コートを持つラジャ・パーとサシ・ムーアマンがもう一つサンタ・バーバラで営むワイナリー。ドメーヌ・ド・ラ・コートが自社畑なのに対し、サンディは買いブドウでコスパの高さが光ります。シャルドネ・セントラル・コースト2021(4900円)は酸高く、複雑さもあり、コスト・パフォーマンス抜群。


ロマンスは、上記のサンディのワインですが、これだけラベルが大きく異なっています。畑はドメーヌ・ド・ラ・コートのもので、自社畑みたいなものというちょっと変わった位置付けのワインです。ロマンス・ピノ・ノワール2021(18000円)は非常に高いレベルでバランスの取れたワイン。酸もきれいでうまみもあります。素晴らしい。


マヤカマスはクラシックな造りで知られる老舗ワイナリー。クラシックな造りがニュー・カリフォルニアに分類されるのも面白いです。シャルドネ2022(1万3000円)は、ほどよい樽感も魅力です。


センティアムは、ロバート・モンダヴィの次男でナパのプレミアムワイン「コンティニュアム」を作るティム・モンダヴィの次女キアラが作るソーヴィニヨンブランのワイナリー。ブドウはメンドシーノから調達しています。16000円は、カリフォルニアのソーヴィニヨンブランの中でもかなり高価ですが、のびやかな酸ときれいな果実味や複雑さが非常に魅力的。高級ソーヴィニヨンブランとして十分なクオリティを持っています。ヴィンテージは2023年。


もはや、カリフォルニアのエレガント系ピノ・ノワールのトップを走るといっても過言ではないほど高い評価を受けているのが、レイン(Raen)。上記のキアラの兄弟であるカルロとダンテがソノマ・コーストで作っています。全房発酵にこだわりを持っているのも特徴。ロイヤル・セント・ロバート2023(16000円)は、こくと奥行きが素晴らしいワイン。

以下は後編で。
Date: 2025/0909 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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楽天スーパーセールでお買い得になっているカリフォルニアワインをまとめておきます。

リカオーで、ウッドブリッジの缶がセール。ウッドブリッジに缶があるの知らなかったのですが1本187mlが6本なので、通常の1.5本分で1020円はいいですね。こういうのが家にあるとちょっと飲みたいときに重宝します。



同じくリカオーで、リッジのジンファンデル系がかなり安いです。中でも驚いたのはパガニ・ランチが5000円台ということ。1900年頃に植えられた古木の畑で、リッジ以外にベッドロックやビアーレ、セゲシオなどジンファンデルの名手たちがこぞってブドウを買っている銘醸畑です。しかも2022年はパーカー94点と非常に評価の高い年です。
リッジのエントリー版「スリー・ヴァレー」も安いです。



Cave de L Naotakaではオレゴンのドメーヌ・ドルーアンのピノ・ノワールが安いです。現地価格で40ドル台が5390円。2022年はVinous 93点とこれもいい年。


同じショップで、ナパの名門BVのフラッグシップ「ジョルジュ・ドゥ・ラトゥール・プライベートリザーブ」2019が1万5000円台と激安です。2019年はVinousで97+と非常に高い評価です。この倍の価格でも全然おかしくないワイン。



うきうきワインではダイアトムのシャルドネがセール価格。ダイアトムはグレッグ・ブリュワーが作るシャルドネ専門のワイナリー。あえて樽を使わないワインですが、シャルドネ好きだったら一度は飲まないといけないワインです。


次はダイアトムとは真逆のこてこて系シャルドネのセット。樽好きにはたまらないですね。


しあわせワイン俱楽部ではケンゾーがセールになっています。ロゼのYuiはお祝いのプレゼントにもいいですね。


ユニオン・サクレのオレンジは2割引。これ、美味しいですよ。



同じくしあわせワイン俱楽部から樽系シャルドネのセット。前述のものより、ちょっと高級で品のいい樽系が並んでいます。

Date: 2025/0906 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2020年の山火事「グラス・ファイア」でワイナリーや畑を焼失し、今年2月に閉鎖がアナウンスされたニュートン(Newton)ですが、再出発することがワイン・スペクテーターの記事で判明しました。

ワイナリー閉鎖の記事(ナパの名門ワイナリー「ニュートン」、48年の歴史に幕切れ

Newton
在りし日のニュートン

ナパの歴史に名を遺すニュートンですが、特に有名なのは現在はコングスガードでトップ中のトップのシャルドネを作っているジョン・コングスガードがニュートンのワインメーカー時代に始めたアンフィルタードのシャルドネです。樽熟成や天然酵母発酵などブルゴーニュの伝統的な手法に習い、フィルターをかけずにボトル詰めしたシャルドネはその風味の豊かさや複雑さで一世を風靡しました。

2001年にLVMHが過半数の株式を取得してからは、主にマヤカマス山脈のさまざまなテロワールを生かしたカベルネ・ソーヴィニヨンを主力に置きました。美しい庭園など風光明媚なワイナリーで、日本版の『サイドウェイズ』など映画にも使われています。

ブラック・レイン
(1989年の映画『ブラック・レイン』)

2020年の火事の後、再起を図っていましたが、今年2月にメーリング・リスト会員向けに閉鎖を発表していました。そのワイナリーを新たに購入したのがニック・リヴァノスとエリック・ブライアン・スーテという友人の二人組。スプリング・マウンテンのワイナリーと畑、それからブランドを購入しています。スプリング・マウンテン以外の畑は含まれていません。

二人はナパのデイヴィース(シュラムスバーグのワイナリー)のイベントで知り合い、友人になったそうです。スーテ氏は弁護士でカリストガにも畑とワイナリーがあり、ロスアンゼルスとナパを行き来しています。リヴァノス氏はカリフォルニアの酸ラモンで特殊潤滑油とオイルを製造するレンカート・オイルという会社を経営しています。二人はいつかナパで一緒にワイナリーを持ちたいと思っており、ニュートン購入の機会を得て興奮しているといいます。「私たちはベンチャーキャピタリストではありません。ただナパバレーとナパバレーのワインを愛する人間です。そして、このような歴史ある美しい土地を購入する機会を逃しませんでした」とスーテ氏は語っています。