ソノマに拠点を置くワイナリー「ポール・ホブズ(Paul Hobbs)」のポール・ホブズ氏が来日し、セミナーに参加しました。Forbes誌では「ワイン界のスティーブ・ジョブズ」、ワイン・スペクテーターでは「マスター・オブ・シャルドネ」、ワイン・アドヴォケイトでは「ワイン・パーソナリティ・オブザイヤー」2回取得など数々の異名や名誉を持ち、米国だけでなく、アルゼンチンやスペインなどでもワイン造りを手掛けるフライング・ワインメーカーでもあり…
ワイン業界の中でも雲の上の人感がありますが、実は本人はとても堅実な性格らしく、東京でも高級ホテルでなく庶民的なホテルに泊まっていると聞いて、いい人感の認識を新たにしました。
以前お会いした時と変わらず若々しく溌溂としており、今年70歳というのもびっくり。しかもこの秋の収穫が80回目のヴィンテージとのことでそのバイタリティにも驚かされます。ちなみにヴィンテージが年齢よりも多いのは南半球でもワインを造っていて1年に2回ヴィンテージがあるから。
ニューヨーク州バッファローの農場で生まれたポール。農場にはチェリーやピーチ、リンゴなどさまざまな果樹がありましたが、ブドウはなく食卓にはワインはおろか酒類が出ることもなかったと言います。曾祖母が医者で医者になるつもりだったといいますが、ノートルダム大学の牧師がワイン造りを勉強することを薦め、親に内緒でカリフォルニアに行ってワインを勉強し、母親に激怒されたとか。
ちなみに父親は歴史やアドベンチャーが好きで、6週間かけて世界旅行をするような人。普通農家が6週間家を空けるということはなく、それだけ旅行好きだったというのは、今も世界を飛び回るポールに受け継がれているようです。
ポールは11人兄弟の2番目で、家は決して裕福ではなく子供時代は納屋のようなところで寝起きし、カリフォルニアに来たときもポケットに500ドルが入っているだけだったそうです。
ノートルダム大学を卒業した後は、UCデーヴィスで栽培と醸造の修士を取りロバート・モンダヴィに職を得ます。オーパス・ワンの初代醸造チームにも加わり、1985年にはシミ(Simi)のワインメーカーになるなど順調に経歴を重ねていきます。
ソノマのセバストポールにポール・ホブズ・ワイナリーを設立したのは1991年。北欧デザインを採用し、シンプルで美しくクリーンなワイナリーにしています。
ワインメーカーとしての印象が強いポール・ホブズですが、実は自社畑も複数持っており、栽培にも力を入れています。ポール本人も「ワインメーカーと呼ばれるよりもヴィネロン(フランスで栽培とワイン造りを両方担当する人)と呼ばれたい」と言っています。また、ワイン造りは自然への介入を最小限にしています。
ワイナリーのあるあたりはゴールドリッジと呼ばれるロシアンリバー・ヴァレーを代表する土壌があります。砂と少しシルト、細かくなって舞い上がったものが落ちてたまった土壌です。セバストポールシリーズという派生した土壌もあります。やや粘土が多く(色が赤で鉄分多い)小石の層もあります。ブドウの樹齢が6年くらいになると下層土に達して灌漑が不要になります。土壌としては粘土質の方が樹の水分のために良いと思われがちですが、粘土自体が水をキープするので樹には水は入りにくく、むしろゴールドリッジの方が水を吸いやすいのだそうです。
ポール・ホブズではブドウはすべてナイトハーヴェストで収穫します。収穫にナイフでなくハサミを使うのもこだわりです。ナイフだとブドウにダメージを与えるからだそうです。機械収穫と比べると4~5倍もコストがかかります。ポール・ホブズには畑のクルーが40人ほどもいます。ただ、収穫期にはこれでも足りないので季節労働者も雇っています。
醸造はすべて野生酵母、MLFも自然に行います。
シャルドネの醸造ではピュアなジュースを取り出すことを重視しています。ジュースと果皮などとの接触を最小限に抑えるために除梗や破砕をせずに、全房のままプレスします。果汁は4時間タンクで落ち着かせてから小樽に移します。樽はあえて完全充填ではなく1割程度空きスペースを作って空気に触れさせます。その方が酵母が活発に動くからだそうです。こうして作ったワインは「開けて3日たっても劣化しない」といいます。
興味深いのは樽の木材の「目の詰まり方」を重視しているということ。樽一つひとつを目視で確認して目の詰まり方を端に記しています。下の写真で「T」と書かれているところが目の詰まった(Tight)なところで「M」が中間的なところとなっています。それから、以前は熱湯で樽を消毒していたのを今は水洗いだけだそうです。理由は忘れてしまいましたが、あまりクリーンにしすぎないということなのでしょうか。
ワインの試飲に移ります。
シャルドネ ロスステーション・エステート 2021
ロシアンリバー・ヴァレーの自社畑でシャルドネの実をおs立てています。ハドソン由来のウェンテ・クローンやカレラ・クローン、マウント・エデン・クローンが植わっています。
高級感あるシャルドネでピュアな果実味が印象的。酸高く、柑橘や青リンゴなどの風味が豊かに広がります。
次はシャルドネ キュベ・ルイーザ ゴールドロック・エステート 2021
ルイーザは末娘の名前だとのこと。ウエスト・ソノマ・コーストの自社畑です。畑を購入したときに植わっていたクローン76(フランス由来のクローンですが、取り立てて大きな特徴はないそうです。植え替え時にはロスステーションと同様のヘリテージ・クローン(カリフォルニアで独自に発展したクローン)を使う予定だとか、
ワインはロスステーションよりミネラル感があり、シルキーなテクスチャが特徴的です。素晴らしく美味しい。リンゴ、柑橘、イチジクなど。
ピノ・ノワール ゴールドロックエステート2021
14%全房発酵を使っています。赤果実から黒果実系の味わい。酸豊かでイチゴのシロップ煮のような柔らかさも。シルキーでグリップ感を感じるテクスチャ。
ピノ・ノワール、ジョージメニニ・エステート 2021
15%全房発酵。果実感強い一方で、果実以外の腐葉土や紅茶などのニュアンスも強く感じる。ややワイルドな印象。
カベルネ・ソーヴィニヨン ネイサン・クームズ・エステート 2020
クームズヴィル初の「100点カベルネ」となった2021年の1年前のヴィンテージです。
カベルネ産地としてはやや冷涼なクームズヴィル。冷涼感を感じつつも、果実の風味としてはダークな黒果実。シルキーなテクスチャ、腐葉土。今飲んでも十分おいしいですが20年以上熟成させて飲んでみたいワイン。
カベルネ・ソーヴィニヨン ベクストファー・ト・カロン 2019
泣く子も黙るベクストファー・ト・カロンのカベルネ・ソーヴィニヨンです。ベクストファー・ト・カロンの中でも、ダークなフルーツの風味が強いクローン4だけのブロックのブドウを使っています。
きめ細かなタンニンに、コーヒーやカカオの風味。やや赤果実を含んだ青果実の風味。
ワイン業界の中でも雲の上の人感がありますが、実は本人はとても堅実な性格らしく、東京でも高級ホテルでなく庶民的なホテルに泊まっていると聞いて、いい人感の認識を新たにしました。
以前お会いした時と変わらず若々しく溌溂としており、今年70歳というのもびっくり。しかもこの秋の収穫が80回目のヴィンテージとのことでそのバイタリティにも驚かされます。ちなみにヴィンテージが年齢よりも多いのは南半球でもワインを造っていて1年に2回ヴィンテージがあるから。
ニューヨーク州バッファローの農場で生まれたポール。農場にはチェリーやピーチ、リンゴなどさまざまな果樹がありましたが、ブドウはなく食卓にはワインはおろか酒類が出ることもなかったと言います。曾祖母が医者で医者になるつもりだったといいますが、ノートルダム大学の牧師がワイン造りを勉強することを薦め、親に内緒でカリフォルニアに行ってワインを勉強し、母親に激怒されたとか。
ちなみに父親は歴史やアドベンチャーが好きで、6週間かけて世界旅行をするような人。普通農家が6週間家を空けるということはなく、それだけ旅行好きだったというのは、今も世界を飛び回るポールに受け継がれているようです。
ポールは11人兄弟の2番目で、家は決して裕福ではなく子供時代は納屋のようなところで寝起きし、カリフォルニアに来たときもポケットに500ドルが入っているだけだったそうです。
ノートルダム大学を卒業した後は、UCデーヴィスで栽培と醸造の修士を取りロバート・モンダヴィに職を得ます。オーパス・ワンの初代醸造チームにも加わり、1985年にはシミ(Simi)のワインメーカーになるなど順調に経歴を重ねていきます。
ソノマのセバストポールにポール・ホブズ・ワイナリーを設立したのは1991年。北欧デザインを採用し、シンプルで美しくクリーンなワイナリーにしています。
ワインメーカーとしての印象が強いポール・ホブズですが、実は自社畑も複数持っており、栽培にも力を入れています。ポール本人も「ワインメーカーと呼ばれるよりもヴィネロン(フランスで栽培とワイン造りを両方担当する人)と呼ばれたい」と言っています。また、ワイン造りは自然への介入を最小限にしています。
ワイナリーのあるあたりはゴールドリッジと呼ばれるロシアンリバー・ヴァレーを代表する土壌があります。砂と少しシルト、細かくなって舞い上がったものが落ちてたまった土壌です。セバストポールシリーズという派生した土壌もあります。やや粘土が多く(色が赤で鉄分多い)小石の層もあります。ブドウの樹齢が6年くらいになると下層土に達して灌漑が不要になります。土壌としては粘土質の方が樹の水分のために良いと思われがちですが、粘土自体が水をキープするので樹には水は入りにくく、むしろゴールドリッジの方が水を吸いやすいのだそうです。
ポール・ホブズではブドウはすべてナイトハーヴェストで収穫します。収穫にナイフでなくハサミを使うのもこだわりです。ナイフだとブドウにダメージを与えるからだそうです。機械収穫と比べると4~5倍もコストがかかります。ポール・ホブズには畑のクルーが40人ほどもいます。ただ、収穫期にはこれでも足りないので季節労働者も雇っています。
醸造はすべて野生酵母、MLFも自然に行います。
シャルドネの醸造ではピュアなジュースを取り出すことを重視しています。ジュースと果皮などとの接触を最小限に抑えるために除梗や破砕をせずに、全房のままプレスします。果汁は4時間タンクで落ち着かせてから小樽に移します。樽はあえて完全充填ではなく1割程度空きスペースを作って空気に触れさせます。その方が酵母が活発に動くからだそうです。こうして作ったワインは「開けて3日たっても劣化しない」といいます。
興味深いのは樽の木材の「目の詰まり方」を重視しているということ。樽一つひとつを目視で確認して目の詰まり方を端に記しています。下の写真で「T」と書かれているところが目の詰まった(Tight)なところで「M」が中間的なところとなっています。それから、以前は熱湯で樽を消毒していたのを今は水洗いだけだそうです。理由は忘れてしまいましたが、あまりクリーンにしすぎないということなのでしょうか。
ワインの試飲に移ります。
シャルドネ ロスステーション・エステート 2021
ロシアンリバー・ヴァレーの自社畑でシャルドネの実をおs立てています。ハドソン由来のウェンテ・クローンやカレラ・クローン、マウント・エデン・クローンが植わっています。
高級感あるシャルドネでピュアな果実味が印象的。酸高く、柑橘や青リンゴなどの風味が豊かに広がります。
次はシャルドネ キュベ・ルイーザ ゴールドロック・エステート 2021
ルイーザは末娘の名前だとのこと。ウエスト・ソノマ・コーストの自社畑です。畑を購入したときに植わっていたクローン76(フランス由来のクローンですが、取り立てて大きな特徴はないそうです。植え替え時にはロスステーションと同様のヘリテージ・クローン(カリフォルニアで独自に発展したクローン)を使う予定だとか、
ワインはロスステーションよりミネラル感があり、シルキーなテクスチャが特徴的です。素晴らしく美味しい。リンゴ、柑橘、イチジクなど。
ピノ・ノワール ゴールドロックエステート2021
14%全房発酵を使っています。赤果実から黒果実系の味わい。酸豊かでイチゴのシロップ煮のような柔らかさも。シルキーでグリップ感を感じるテクスチャ。
ピノ・ノワール、ジョージメニニ・エステート 2021
15%全房発酵。果実感強い一方で、果実以外の腐葉土や紅茶などのニュアンスも強く感じる。ややワイルドな印象。
カベルネ・ソーヴィニヨン ネイサン・クームズ・エステート 2020
クームズヴィル初の「100点カベルネ」となった2021年の1年前のヴィンテージです。
カベルネ産地としてはやや冷涼なクームズヴィル。冷涼感を感じつつも、果実の風味としてはダークな黒果実。シルキーなテクスチャ、腐葉土。今飲んでも十分おいしいですが20年以上熟成させて飲んでみたいワイン。
カベルネ・ソーヴィニヨン ベクストファー・ト・カロン 2019
泣く子も黙るベクストファー・ト・カロンのカベルネ・ソーヴィニヨンです。ベクストファー・ト・カロンの中でも、ダークなフルーツの風味が強いクローン4だけのブロックのブドウを使っています。
きめ細かなタンニンに、コーヒーやカカオの風味。やや赤果実を含んだ青果実の風味。
楽天の赤坂エラベルで閉店セールをやっています。
閉店セールのワイン一覧
割引率でダントツなのはスクライブのピノ・ノワール2021。他の店で9000円程度。米国でも50ドルするワインが4000円台です。ニューカリフォルニア系のエレガントなワインを造る代表的な生産者の一つです。
メイオミのシャルドネが2640円。通常3300円くらいするワインです。
ハーンのピノ・ノワール、メルロー、ピノ・グリ、シャルドネがいずれも1980円。これもかなり安いです。モントレーの代表的な生産者。
スリー・ガールズのカベルネも安い。気楽に飲めるタイプです。サクラアワードでダイヤモンドトロフィー。
閉店セールのワイン一覧
割引率でダントツなのはスクライブのピノ・ノワール2021。他の店で9000円程度。米国でも50ドルするワインが4000円台です。ニューカリフォルニア系のエレガントなワインを造る代表的な生産者の一つです。
メイオミのシャルドネが2640円。通常3300円くらいするワインです。
ハーンのピノ・ノワール、メルロー、ピノ・グリ、シャルドネがいずれも1980円。これもかなり安いです。モントレーの代表的な生産者。
スリー・ガールズのカベルネも安い。気楽に飲めるタイプです。サクラアワードでダイヤモンドトロフィー。
ナパのセント・ヘレナにある名門ワイナリー「スポッツウッド(Spottswoode)」のベス・ノバックCEOが来日し、バックヴィンテージを含む7種のワインを試飲してきました。
スポッツウッドのフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニヨンは最新が2021年。1982年にワイナリーを始めているので、これが40回目のヴィンテージということになります。
まずはソーヴィニヨン・ブランから。スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランはナパでもトップクラスの一つであり、個人的にも大好きなソーヴィニヨン・ブランの一つです。ちなみに、ソーヴィニヨン・ブランは1984年から作っており、こちらも今回の2023年が40回目のヴィンテージです。
スポッツウッドの初代ワインメーカーはトニー・ソーター。その後、ダラ・ヴァレやアラウホ(現アイズリー)、ニーバウム・コッポラ(現イングルヌック)、ヴィアデルといったそうそうたるワイナリーでワインメーカーを務め、1990年代にはナパで一番有名なワインメーカーの一人となった才人です。現在はオレゴンでソーター・ヴィンヤーズを立ち上げてワインを造っています。
トニー・ソーターは肩書きはワインメーカーですが、スポッツウッドの畑を見て栽培にもかかわりたいと思い、1985年からは栽培も担当しています。スポッツウッドはナパで初めて有機栽培を始めたワイナリーですが、それもトニー・ソーターが主導して実現しました。
スポッツウッドは有機栽培の認証であるCCOFのほか、Demeterによるビオディナミの認証、公益性の高い企業を認証するB Corpの認証。そしてここ数年注目が増している再生可能型有機栽培(ROC=Regenerative Organic Certified)の認証も得ています。電力はすべて再生可能型のものを使っています。
1990年代にフィロキセラで全て植え替え。
ソーヴィニヨン・ブランはセント・ヘレナの自社畑にもわずかに植わっていますが、1990年以降は購入したブドウも使うようになっています。すべてトニー・ソーターが選んだ畑であり、家族経営でオーガニック栽培の畑ばかりです。
マップには現在の畑が示されています。ナパだけでなくソノマの畑も入っています。ソノマのブドウを使い始めたのは2000年過ぎくらいから。カーネロスのハイド・ヴィンヤードのソーヴィニヨン・ブランを契約していましたが、それを引き抜いてしまうということで、紹介をしてもらったのがきっかけだそうです。現在ではソノマ・マウンテンやナイツ・ヴァレーなど標高の高い畑をソノマから調達しています。
スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵容器を使っています。2023年の場合、ステンレスの小樽、普通の樽、コンクリートエッグ2つ、セラミックの発酵槽1つ、アンフォラ5つとなっています。複数の発酵槽を組み合わせることで服雑味が生まれ、フレーバーが層のように感じられるようになるそうです。今回、ライブラリーものとして持参された2013年はフレンチオークの樽とステンレスの小樽、コンクリートの発酵槽だけでしたから、種類が増えています。スポッツウッドだけでなく、近年の高級ソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵槽を使うところが多いようです。ほかの品種ではあまりそういった例を見かけないので興味深いです。
このほか、2013年との違いでは2023年の方はセミヨンが加わっていることがあります。セミヨンはカリストガのトファネリとソノマ・ヴァレーのバーソロミューという畑のものを使っています。
試飲に移ります。
2023年は柑橘やグアバ、カモミール。酸高く、厚みのある味わい。改めてカリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの中でもトップクラスの一つであることを感じました。ベス・ノバックさんは「ストラクチャー、バランス、エナジー、酸味、フレッシュ感」があるソーヴィニヨン・ブランだとおっしゃっていました。
一方、2013年はまだまだフレッシュ感があり、きれいで複雑。さわやかだけど柔らかさもあります。柑橘に香木の香り。ソーヴィニヨン・ブランはあまり熟成させて飲むことはありませんが、熟成による複雑さの魅力も感じられるソーヴィニヨン・ブランでした。
その次はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンのセカンドであるリンデンハースト(Lyndenhurst)です。リンデンハーストというのは1908年に屋敷につけられた名前だとのこと。ちなみにSpottswoodeは2010年にここを購入したSpotts夫人が名付けたもの。
リンデンハーストで使うブドウの半分は自社畑のもの。外部の栽培家はすべて有機栽培です。ファーストのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べると果実味が前面に出ていてアプローチしやすいワインではありますがシリアスなナパのカベルネでもあります。
現行ヴィンテージは2021年。
酸柔らかく、カシスやブルーベリーの風味。シルキーなタンニンで飲みやすいですが、ストラクチャーも感じられるいいワインです。
ベス・ノバックさんはスポッツウッドのカベルネについて、フレッシュネスを大事にしているといいます。また、コアにパワーを感じるワインにすること、アルコール度数は14%を超えないことを基本にしています。
アルコール度数を考慮すると収穫時の糖度は24Brixくらいになります。温暖なセント・ヘレナでは収穫を遅くすると水分が蒸発して糖度も上がってしまいます。成熟のピークで収穫できるようにするために、ブドウに日陰を造ったり、カバークロップを植えることで土壌の冷たさを保っています。スポッツウッドやコリソンといったナパの中でもエレガント系なカベルネ・ソーヴィニヨンを造るワイナリーが、温暖なセント・ヘレナにあって、このスタイルをキープしているというのも面白いところです。
エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンは現行の2021に始まり、2016年、2006年、1996年とさかのぼって試飲しました。
2021年はまだまだタンニンの堅さを感じます。酸も高く引き締まった印象。スパイスや黒鉛、ブラックベリー。
2016年もまだ堅いです。酸も高くエレガント。
2006年は素晴らしい。ブラックベリー、カシス、ブルーベリーの果実味。複雑で重層的。飲み頃的にも素晴らしいです。
1996年。スポッツウッドは1990年代にフィロキセラの被害に遭い、ブドウ畑を全面的に植え替えました。何年かかけて行ったため、1996年にも一部初期に植えたブドウが入っています。滋味深い味わい。ウーロン茶の風味。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・ソーヴィニヨンのほかカベルネ・フランとプティ・ヴェルドがブレンドされています。プティ・ヴェルドは2009年に植樹されました。いいクローンが見つかったとのことです。新樽率は60%程度、リンデンハーストでは40%です。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパの中では非常にエレガントな部類に入ります。果実味が爆発するようなワインではないので、もしかするとやや地味に感じられるかもしれませんが、レベルは非常に高いです。
スポッツウッドのフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニヨンは最新が2021年。1982年にワイナリーを始めているので、これが40回目のヴィンテージということになります。
まずはソーヴィニヨン・ブランから。スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランはナパでもトップクラスの一つであり、個人的にも大好きなソーヴィニヨン・ブランの一つです。ちなみに、ソーヴィニヨン・ブランは1984年から作っており、こちらも今回の2023年が40回目のヴィンテージです。
スポッツウッドの初代ワインメーカーはトニー・ソーター。その後、ダラ・ヴァレやアラウホ(現アイズリー)、ニーバウム・コッポラ(現イングルヌック)、ヴィアデルといったそうそうたるワイナリーでワインメーカーを務め、1990年代にはナパで一番有名なワインメーカーの一人となった才人です。現在はオレゴンでソーター・ヴィンヤーズを立ち上げてワインを造っています。
トニー・ソーターは肩書きはワインメーカーですが、スポッツウッドの畑を見て栽培にもかかわりたいと思い、1985年からは栽培も担当しています。スポッツウッドはナパで初めて有機栽培を始めたワイナリーですが、それもトニー・ソーターが主導して実現しました。
スポッツウッドは有機栽培の認証であるCCOFのほか、Demeterによるビオディナミの認証、公益性の高い企業を認証するB Corpの認証。そしてここ数年注目が増している再生可能型有機栽培(ROC=Regenerative Organic Certified)の認証も得ています。電力はすべて再生可能型のものを使っています。
1990年代にフィロキセラで全て植え替え。
ソーヴィニヨン・ブランはセント・ヘレナの自社畑にもわずかに植わっていますが、1990年以降は購入したブドウも使うようになっています。すべてトニー・ソーターが選んだ畑であり、家族経営でオーガニック栽培の畑ばかりです。
マップには現在の畑が示されています。ナパだけでなくソノマの畑も入っています。ソノマのブドウを使い始めたのは2000年過ぎくらいから。カーネロスのハイド・ヴィンヤードのソーヴィニヨン・ブランを契約していましたが、それを引き抜いてしまうということで、紹介をしてもらったのがきっかけだそうです。現在ではソノマ・マウンテンやナイツ・ヴァレーなど標高の高い畑をソノマから調達しています。
スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵容器を使っています。2023年の場合、ステンレスの小樽、普通の樽、コンクリートエッグ2つ、セラミックの発酵槽1つ、アンフォラ5つとなっています。複数の発酵槽を組み合わせることで服雑味が生まれ、フレーバーが層のように感じられるようになるそうです。今回、ライブラリーものとして持参された2013年はフレンチオークの樽とステンレスの小樽、コンクリートの発酵槽だけでしたから、種類が増えています。スポッツウッドだけでなく、近年の高級ソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵槽を使うところが多いようです。ほかの品種ではあまりそういった例を見かけないので興味深いです。
このほか、2013年との違いでは2023年の方はセミヨンが加わっていることがあります。セミヨンはカリストガのトファネリとソノマ・ヴァレーのバーソロミューという畑のものを使っています。
試飲に移ります。
2023年は柑橘やグアバ、カモミール。酸高く、厚みのある味わい。改めてカリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの中でもトップクラスの一つであることを感じました。ベス・ノバックさんは「ストラクチャー、バランス、エナジー、酸味、フレッシュ感」があるソーヴィニヨン・ブランだとおっしゃっていました。
一方、2013年はまだまだフレッシュ感があり、きれいで複雑。さわやかだけど柔らかさもあります。柑橘に香木の香り。ソーヴィニヨン・ブランはあまり熟成させて飲むことはありませんが、熟成による複雑さの魅力も感じられるソーヴィニヨン・ブランでした。
その次はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンのセカンドであるリンデンハースト(Lyndenhurst)です。リンデンハーストというのは1908年に屋敷につけられた名前だとのこと。ちなみにSpottswoodeは2010年にここを購入したSpotts夫人が名付けたもの。
リンデンハーストで使うブドウの半分は自社畑のもの。外部の栽培家はすべて有機栽培です。ファーストのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べると果実味が前面に出ていてアプローチしやすいワインではありますがシリアスなナパのカベルネでもあります。
現行ヴィンテージは2021年。
酸柔らかく、カシスやブルーベリーの風味。シルキーなタンニンで飲みやすいですが、ストラクチャーも感じられるいいワインです。
ベス・ノバックさんはスポッツウッドのカベルネについて、フレッシュネスを大事にしているといいます。また、コアにパワーを感じるワインにすること、アルコール度数は14%を超えないことを基本にしています。
アルコール度数を考慮すると収穫時の糖度は24Brixくらいになります。温暖なセント・ヘレナでは収穫を遅くすると水分が蒸発して糖度も上がってしまいます。成熟のピークで収穫できるようにするために、ブドウに日陰を造ったり、カバークロップを植えることで土壌の冷たさを保っています。スポッツウッドやコリソンといったナパの中でもエレガント系なカベルネ・ソーヴィニヨンを造るワイナリーが、温暖なセント・ヘレナにあって、このスタイルをキープしているというのも面白いところです。
エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンは現行の2021に始まり、2016年、2006年、1996年とさかのぼって試飲しました。
2021年はまだまだタンニンの堅さを感じます。酸も高く引き締まった印象。スパイスや黒鉛、ブラックベリー。
2016年もまだ堅いです。酸も高くエレガント。
2006年は素晴らしい。ブラックベリー、カシス、ブルーベリーの果実味。複雑で重層的。飲み頃的にも素晴らしいです。
1996年。スポッツウッドは1990年代にフィロキセラの被害に遭い、ブドウ畑を全面的に植え替えました。何年かかけて行ったため、1996年にも一部初期に植えたブドウが入っています。滋味深い味わい。ウーロン茶の風味。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・ソーヴィニヨンのほかカベルネ・フランとプティ・ヴェルドがブレンドされています。プティ・ヴェルドは2009年に植樹されました。いいクローンが見つかったとのことです。新樽率は60%程度、リンデンハーストでは40%です。
スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパの中では非常にエレガントな部類に入ります。果実味が爆発するようなワインではないので、もしかするとやや地味に感じられるかもしれませんが、レベルは非常に高いです。
ワイン・スペクテーターの年間トップ10で4位に入ったのはナパのファウスト(Faust)のカベルネ・ソーヴィニヨン2021でした。実は、このワイナリー、ほとんど内容を知らず、今回の好成績から日本に輸入されていることも知ったくらいでした。
ワイナリーのオーナーはフネイアス・ヴィントナーズ(Huneeus)。チリのコンチャイトロなどのオーナー会社です。カリフォルニアではクインテッサ(Quintessa)、フラワーズ(Flowers)、リヴァイアサン(Liviathan)、ファヴィア(Favia)、オレゴンではベントン・レーン(Benton-Lane)を所有しています。なおファヴィアはアンディ・エリクソンと妻のアビー・ファヴィアによるワイナリーで、フネイアスはオーナーというより提携関係になっているようです。
ファウストは1998年にナパのクームズヴィルで設立されました。当時はまだAVA認定前でクームズヴィルでどのようなブドウが向いているのかも分かっていなかったようです。その中で冷涼地でありながらカベルネ・ソーヴィニヨンを選んだのがファウストでした。
ファウストは現在クームズヴィルにワイナリーと畑を所持しています。この畑のブドウだけを使ったフラッグシップの「ザ・パクト」カベルネ・ソーヴィニヨン。クームズヴィルの自社畑に加えてナパ各地の提携畑からのブドウをブレンドしている「ファウスト」カベルネ・ソーヴィニヨン。それからクームズヴィルのブドウにヨントヴィルとオークノールの提携畑のブドウをブレンドした「サルヴェーション」の三つのワインを持っています。
今回4位に入ったのはエントリーレベルのファウスト。ワインスペクテーターのトップ100はワインの味だけでなく、入手しやすさや価格なども合わせて評価されます。94点という高い評価と、65ドルという価格が大きく評価されて上位入賞につながりました。
クームズヴィルは、先日ポール・ホブズのカベルネ・ソーヴィニヨンが100点を取って、クームズヴィルのカベルネとしては初の100点になりました。温暖化が進む中で冷涼地域への関心は高まっており、個人的にも注目している地域です。
ファウストはクームズヴィルのワインの入門的にもいいかもしれません。価格も今の為替水準で考えると現地価格とあまり変わりません。
タカムラワインハウスです。
トスカニーです。
ワイナリーのオーナーはフネイアス・ヴィントナーズ(Huneeus)。チリのコンチャイトロなどのオーナー会社です。カリフォルニアではクインテッサ(Quintessa)、フラワーズ(Flowers)、リヴァイアサン(Liviathan)、ファヴィア(Favia)、オレゴンではベントン・レーン(Benton-Lane)を所有しています。なおファヴィアはアンディ・エリクソンと妻のアビー・ファヴィアによるワイナリーで、フネイアスはオーナーというより提携関係になっているようです。
ファウストは1998年にナパのクームズヴィルで設立されました。当時はまだAVA認定前でクームズヴィルでどのようなブドウが向いているのかも分かっていなかったようです。その中で冷涼地でありながらカベルネ・ソーヴィニヨンを選んだのがファウストでした。
ファウストは現在クームズヴィルにワイナリーと畑を所持しています。この畑のブドウだけを使ったフラッグシップの「ザ・パクト」カベルネ・ソーヴィニヨン。クームズヴィルの自社畑に加えてナパ各地の提携畑からのブドウをブレンドしている「ファウスト」カベルネ・ソーヴィニヨン。それからクームズヴィルのブドウにヨントヴィルとオークノールの提携畑のブドウをブレンドした「サルヴェーション」の三つのワインを持っています。
今回4位に入ったのはエントリーレベルのファウスト。ワインスペクテーターのトップ100はワインの味だけでなく、入手しやすさや価格なども合わせて評価されます。94点という高い評価と、65ドルという価格が大きく評価されて上位入賞につながりました。
クームズヴィルは、先日ポール・ホブズのカベルネ・ソーヴィニヨンが100点を取って、クームズヴィルのカベルネとしては初の100点になりました。温暖化が進む中で冷涼地域への関心は高まっており、個人的にも注目している地域です。
ファウストはクームズヴィルのワインの入門的にもいいかもしれません。価格も今の為替水準で考えると現地価格とあまり変わりません。
タカムラワインハウスです。
トスカニーです。
恒例のワイン・スペクテーター年間トップ100の発表が始まっています。日本時間の12日に10位と9位、13日に8位と7位、14日に6位と5位と発表されています。
今年は今のところ米国多め。ということは上位にはあまりないかもです。10位から5位まで順に紹介します。
チムニー・ロックは今は輸入なし、ウイリアムズ・セリエムもこのアイテムはないと思います。
10位のレイミー(Ramey)はシャルドネの魔術師と言われるシャルドネの名手。個人的にもすごく好きな作り手です。今回はロシアンリバー・ヴァレーのシャルドネ2022です。国内にも入っています。
しあわせワイン倶楽部
柳屋
9位のバローロは国内輸入ありますが、該当ヴィンテージはまだ入っていないようです。
8位のウイリアムズ・セリエムもこのアイテムはなさそう。
7位のシャトーヌフ・デュ・パプは現物あります。米国の114ドルよりもだいぶ安いです。
6位はオレゴンでドメーヌ・ドルーアンが作るローズロック・ピノ・ノワール。ドルーアンはオレゴンでも老舗で、ダンディー・ヒルズに畑を持っていますが、このローズロックは新たにエオラ・アミティ・ヒルズ(先日紹介したイヴニングランドなどがある要注目のAVA)に作った畑。2年ほど前にも高評価でプチばずったことがあります(ドルーアンが造る高評価のオレゴンピノが格安)。
今回もなんと該当ワインを4000円台という、現地より全然安い値段で売っているショップがあります。
その次に安いWassy'sさんでも十分安いですが。
ちなみにWANDSマガジンの記事によると「ダンディー・ヒルズのピノ・ノワールがエレガントなシャンボール・ミュジニーならば、エオラ・アミティ・ヒルズはストラクチャーのあるジュヴレ・シャンベルタンだ」とのこと。
今年は今のところ米国多め。ということは上位にはあまりないかもです。10位から5位まで順に紹介します。
チムニー・ロックは今は輸入なし、ウイリアムズ・セリエムもこのアイテムはないと思います。
10位のレイミー(Ramey)はシャルドネの魔術師と言われるシャルドネの名手。個人的にもすごく好きな作り手です。今回はロシアンリバー・ヴァレーのシャルドネ2022です。国内にも入っています。
しあわせワイン倶楽部
柳屋
9位のバローロは国内輸入ありますが、該当ヴィンテージはまだ入っていないようです。
8位のウイリアムズ・セリエムもこのアイテムはなさそう。
7位のシャトーヌフ・デュ・パプは現物あります。米国の114ドルよりもだいぶ安いです。
6位はオレゴンでドメーヌ・ドルーアンが作るローズロック・ピノ・ノワール。ドルーアンはオレゴンでも老舗で、ダンディー・ヒルズに畑を持っていますが、このローズロックは新たにエオラ・アミティ・ヒルズ(先日紹介したイヴニングランドなどがある要注目のAVA)に作った畑。2年ほど前にも高評価でプチばずったことがあります(ドルーアンが造る高評価のオレゴンピノが格安)。
今回もなんと該当ワインを4000円台という、現地より全然安い値段で売っているショップがあります。
その次に安いWassy'sさんでも十分安いですが。
ちなみにWANDSマガジンの記事によると「ダンディー・ヒルズのピノ・ノワールがエレガントなシャンボール・ミュジニーならば、エオラ・アミティ・ヒルズはストラクチャーのあるジュヴレ・シャンベルタンだ」とのこと。
ピーチーキャニオンの「インクレディブル・レッド」。ジンファンデル系のブレンドの中でもコスト・パフォーマンスの高いワインとして知られています。個人的にも2000円台で信頼できるワインとして、ときどき購入しています。
このインクレディブル・レッド、新ヴィンテージの2021からラベルが大きく変わりました。
味わい的には大きな変化はありませんが、見かけは驚きます。また、価格も以前に比べると2割ほど上がっています。
インポーターとしても、ラベルが大きく変わるため、商品を完全に入れ替える必要があるのでしょう。しあわせワイン倶楽部では輸入元協賛で旧ラベルのワインがセールになっています。税込み2178円は税抜きなら1000円台という安さ。
なお、インポーターの旧ラベル在庫はなくなったそうなので、今店頭に出ているものでいったんは売り切れになります。おそらく実売価格も上がるでしょうから、今のうちにまとめ買い推奨です。
このインクレディブル・レッド、新ヴィンテージの2021からラベルが大きく変わりました。
味わい的には大きな変化はありませんが、見かけは驚きます。また、価格も以前に比べると2割ほど上がっています。
インポーターとしても、ラベルが大きく変わるため、商品を完全に入れ替える必要があるのでしょう。しあわせワイン倶楽部では輸入元協賛で旧ラベルのワインがセールになっています。税込み2178円は税抜きなら1000円台という安さ。
なお、インポーターの旧ラベル在庫はなくなったそうなので、今店頭に出ているものでいったんは売り切れになります。おそらく実売価格も上がるでしょうから、今のうちにまとめ買い推奨です。
サシ・ムーアマンが作るサンタ・バーバラのサンディ(Sandhi)とオレゴンのイヴニングランド(Evening Land)、セーラム(Salem)のワインを、サシの話を聴きながら試飲しました。サシのワインにはほかにシラーなどを手掛けるピエドラサッシ、サンタ・リタ・ヒルズでピノ・ノワールを中心に作るドメーヌ・ド・ラ・コートがありますが、そちらはインポーターが違うので今回はありません。
いつも穏やかな笑顔のサシ・ムーアマン
イヴニングランドはオレゴンの中でも注目が高まっているエオラ・アミティ・ヒルズに自社畑を持つドメーヌ・タイプのワイナリー。イヴニングランドはブルゴーニュのコント・ラフォンのドミニク・ラフォンが当初手がけ、2007年からサシ・ムーアマンとラジャ・パーがかかわっています(2015まではドミニク・ラフォンが関与)。コント・ラフォン時代にビオディナミの認証を受けており、現在もビオディナミで栽培されています。250エーカーの敷地に畑は35エーカー。畑にはブドウ以外に果樹なども植わっており、2割くらいは果樹が占めています。羊なども飼っていて生物多様性の面でも申し分ないところです。東向きの斜面で海からの風も通り冷涼。
土壌はジョリーと呼ばれる火山性の粘土質。鉄分が多く、シャルドネは酸がしっかりして強い味わい。ピノ・ノワールもタンニンが強くなります。ブドウの味わいや骨格が強いので、ほぼすべて除梗し、新樽もほとんど使いません。シャルドネは全房でプレスし、種や皮などからの強い味わいが付くことをさけています。樽もっパンチョンと呼ばれる大型のもので発酵・熟成します。
サンディはいろいろな面でイヴニングランドと対照的です。一部を除いて購入したブドウでワインを造ります。サンフォード&ベネディクトなど、サンタ・リタ・ヒルズの銘醸畑からブドウを仕入れています。サンタ・リタ・ヒルズは風が強く気温はオレゴンより低く乾燥しています。頁岩などの堆積性の土壌が中心です。
サンタ・リタ・ヒルズの方がブドウの味わいは優しく、ブドウの実は小さくなります。タンニンが少ないのでピノ・ノワールは全房を多用します。シャルドネも破砕してからプレスすることで皮からの味わいを果汁に移します。
試飲はイヴニングランドの若木を使ったSalem Wine Co.からです。2021年のシャルドネが4600円、ピノ・ノワールが2023年で4600円。
葛飾北斎風のラベルがユニークなワイン。描かれているのはマウント・フッドというオレゴンの山です。富士山に似た形なのでこのラベルを思いついたそう。シャルドネはエレガントで少し蜜っぽさも感じます。ピノも赤果実を中心にきれいな味わい。どちらもコスパが素晴らしいです。
サンディのピノ・ノワールは2022年のサンタ・リタ・ヒルズ(9500円)と2021年のロマンス(18000円)。
サンタ・リタ・ヒルズはAVAものと言っても、ドメーヌ・ド・ラ・コートなどの銘醸畑のブドウを使っています。赤果実の味わいがきれいで、酸高く、うまみや複雑さもありとても美味しい。
ロマンスは自社畑であるドメーヌ・ド・ラ・コートの畑のみ。購入ブドウを中心とするサンディの中では異色のワインです。ただ、ロマンスで使っていた区画はウイルスの被害にあってしまい、もう抜かれてしまったのでこの2021年が最後となります。ちなみに、なぜロマンスはドメーヌ・ド・ラ・コートではなくサンディで出しているのかを質問したところ、「ドメーヌ・ド・ラ・コートのラインアップは増やしたり減らしたりしたくないから」とのことでした。
果実味よりもうまみや複雑さを強く感じる味わい。ちょっとブレットも感じました。おそらく5年以上の熟成によって本領を発揮するようなワイン。今飲むならサンタ・リタ・ヒルズの方が美味しいです。
次に、イヴニングランドのピノ・ノワールです。いずれも2022年。スタンダードのセヴン・スプリングス(9500円)、ラ・スルス(La Source、16000円)、スマム(サマムとも、Summum、18000円)。
セヴン・スプリングスはバランスよく酸きれい。まとまっています。おすすめ。
ラ・スルスは一番風が強い区画のブドウを使っています。過酷な環境でブドウが深く根を張るところ。樹齢が高い樹の比率が上がっており、タンニンがおだやかになるため、一部全房も入れています。スマムは良年だけ作られるワインでラ・スルスのブロックの中でも最良のブドウを選んでいます。
ラ・スルスは酸高く、複雑さもきれいさもあります。
スマムはより複雑さ強く、うまみ系の味わいもあり、美味しい。ラ・スルスより1ランク上の味わいで、個人的には2000円の価格差ならこちらを選びます。
シャルドネに移ります。
サンディのシャルドネはAVAものが2022年のセントラル・コースト(4900円)と2021年のサンタ・リタ・ヒルズ(6300円)。セントラル・コーストはサンタ・バーバラとサン・ルイス・オビスポの畑のブドウから。どこも冷涼であり、ワインもかなり酸が強く、ややリーンな味わい。
サンタ・リタ・ヒルズはAVAものと言いながら、実は自社畑のドメーヌ・ド・ラ・コートのブドウを90%も使っている贅沢なワイン。これはコスパが素晴らしい。酸の高さはセントラル・コーストと同様ですが、果実の厚みが全然違います。大おすすめ。
単一畑ものが4本並びます。いずれも2022年でパターソン(Patterson、16000円)、リンコナーダ(Rinconada、14000円)、サンフォード・アンド・ベネディクト(Sanford & Benedict、10500円)、ロマンス(Romance、20000円)。
いずれもサンタ・リタ・ヒルズの畑です。
パターソンは標高高く、北向き斜面で酸が落ちにくいとのこと。粘土質の土壌で質感豊かなワインになります。
果実味高く濃密な味わい。美味しいですがやや重さを感じます。
リンコナーダとサンフォード・アンド・ベネディクトは隣り合った畑。サンフォード・アンド・ベネディクトは火打石の成分であるケイ酸塩を含むシレックス(火打石)土壌、リンコナーダは粘土とロームの土壌と、土壌の違いがあります。
リンコナーダはバランスよくエレガント。サンフォード・アンド・ベネディクトは、サンタ・リタ・ヒルズのシグニチャーとも言える塩味を強く感じます。エレガントできれいなのはリンコナーダに通じますが個人的にはサンフォード・アンド・ベネディクトがより魅力的。
ロマンスはドメーヌ・ド・ラ・コートの自社畑のワイン。4つの畑の中で一番冷涼。非常に酸が高く、その奥から果実味が出てきます。深さもありますが、飲み頃になるまでは少し時間がかかりそうなワインです。品質は非常に高いので、セラーに置く余裕があるならお薦め。
最後にイヴニングランドのシャルドネです。ピノと同様、スタンダードなセヴン・スプリングス(6800円)、ラ・スルス(15000円)、スマム(17000円)という構成。ヴィンテージはいずれも2022年。
セヴン・スプリングスは酸とうまみのバランスがいいワイン。
ラ・スルスはディジョン・クローンの高樹齢の樹のブロックだけを使っており、より複雑さを感じます。美味しい。
スマムは最も良いブロックのブドウを使っています。ラ・スルスにさらにリッチさを加えた味わい。やっぱりこれは素晴らしい。ピノと同様、2000円の価格差ならスマムを選びます。
セミナー後、近年ブルゴーニュからオレゴンやカリフォルニアに進出する生産者が増えているのはなぜか聞いてみました。サシの考えでは温暖化など気候変動の影響ではないかとのこと。ブルゴーニュは近年ヴィンテージごとの差が非常に大きく、安定性を大きく欠いているとのこと。品質や味わいも毎年大きく変わります。消費者にとっては安心して選ぶのが難しくなっています。オレゴンも温暖化の影響はありますが、ブルゴーニュのような不安定さはなく、むしろ以前は収穫時期の雨が問題になりやすかったのが、その問題が減っていて良いヴィンテージが増えています。リスクヘッジのために米国に進出しているのだろうとのことです。
いつも穏やかな笑顔のサシ・ムーアマン
イヴニングランドはオレゴンの中でも注目が高まっているエオラ・アミティ・ヒルズに自社畑を持つドメーヌ・タイプのワイナリー。イヴニングランドはブルゴーニュのコント・ラフォンのドミニク・ラフォンが当初手がけ、2007年からサシ・ムーアマンとラジャ・パーがかかわっています(2015まではドミニク・ラフォンが関与)。コント・ラフォン時代にビオディナミの認証を受けており、現在もビオディナミで栽培されています。250エーカーの敷地に畑は35エーカー。畑にはブドウ以外に果樹なども植わっており、2割くらいは果樹が占めています。羊なども飼っていて生物多様性の面でも申し分ないところです。東向きの斜面で海からの風も通り冷涼。
土壌はジョリーと呼ばれる火山性の粘土質。鉄分が多く、シャルドネは酸がしっかりして強い味わい。ピノ・ノワールもタンニンが強くなります。ブドウの味わいや骨格が強いので、ほぼすべて除梗し、新樽もほとんど使いません。シャルドネは全房でプレスし、種や皮などからの強い味わいが付くことをさけています。樽もっパンチョンと呼ばれる大型のもので発酵・熟成します。
サンディはいろいろな面でイヴニングランドと対照的です。一部を除いて購入したブドウでワインを造ります。サンフォード&ベネディクトなど、サンタ・リタ・ヒルズの銘醸畑からブドウを仕入れています。サンタ・リタ・ヒルズは風が強く気温はオレゴンより低く乾燥しています。頁岩などの堆積性の土壌が中心です。
サンタ・リタ・ヒルズの方がブドウの味わいは優しく、ブドウの実は小さくなります。タンニンが少ないのでピノ・ノワールは全房を多用します。シャルドネも破砕してからプレスすることで皮からの味わいを果汁に移します。
試飲はイヴニングランドの若木を使ったSalem Wine Co.からです。2021年のシャルドネが4600円、ピノ・ノワールが2023年で4600円。
葛飾北斎風のラベルがユニークなワイン。描かれているのはマウント・フッドというオレゴンの山です。富士山に似た形なのでこのラベルを思いついたそう。シャルドネはエレガントで少し蜜っぽさも感じます。ピノも赤果実を中心にきれいな味わい。どちらもコスパが素晴らしいです。
サンディのピノ・ノワールは2022年のサンタ・リタ・ヒルズ(9500円)と2021年のロマンス(18000円)。
サンタ・リタ・ヒルズはAVAものと言っても、ドメーヌ・ド・ラ・コートなどの銘醸畑のブドウを使っています。赤果実の味わいがきれいで、酸高く、うまみや複雑さもありとても美味しい。
ロマンスは自社畑であるドメーヌ・ド・ラ・コートの畑のみ。購入ブドウを中心とするサンディの中では異色のワインです。ただ、ロマンスで使っていた区画はウイルスの被害にあってしまい、もう抜かれてしまったのでこの2021年が最後となります。ちなみに、なぜロマンスはドメーヌ・ド・ラ・コートではなくサンディで出しているのかを質問したところ、「ドメーヌ・ド・ラ・コートのラインアップは増やしたり減らしたりしたくないから」とのことでした。
果実味よりもうまみや複雑さを強く感じる味わい。ちょっとブレットも感じました。おそらく5年以上の熟成によって本領を発揮するようなワイン。今飲むならサンタ・リタ・ヒルズの方が美味しいです。
次に、イヴニングランドのピノ・ノワールです。いずれも2022年。スタンダードのセヴン・スプリングス(9500円)、ラ・スルス(La Source、16000円)、スマム(サマムとも、Summum、18000円)。
セヴン・スプリングスはバランスよく酸きれい。まとまっています。おすすめ。
ラ・スルスは一番風が強い区画のブドウを使っています。過酷な環境でブドウが深く根を張るところ。樹齢が高い樹の比率が上がっており、タンニンがおだやかになるため、一部全房も入れています。スマムは良年だけ作られるワインでラ・スルスのブロックの中でも最良のブドウを選んでいます。
ラ・スルスは酸高く、複雑さもきれいさもあります。
スマムはより複雑さ強く、うまみ系の味わいもあり、美味しい。ラ・スルスより1ランク上の味わいで、個人的には2000円の価格差ならこちらを選びます。
シャルドネに移ります。
サンディのシャルドネはAVAものが2022年のセントラル・コースト(4900円)と2021年のサンタ・リタ・ヒルズ(6300円)。セントラル・コーストはサンタ・バーバラとサン・ルイス・オビスポの畑のブドウから。どこも冷涼であり、ワインもかなり酸が強く、ややリーンな味わい。
サンタ・リタ・ヒルズはAVAものと言いながら、実は自社畑のドメーヌ・ド・ラ・コートのブドウを90%も使っている贅沢なワイン。これはコスパが素晴らしい。酸の高さはセントラル・コーストと同様ですが、果実の厚みが全然違います。大おすすめ。
単一畑ものが4本並びます。いずれも2022年でパターソン(Patterson、16000円)、リンコナーダ(Rinconada、14000円)、サンフォード・アンド・ベネディクト(Sanford & Benedict、10500円)、ロマンス(Romance、20000円)。
いずれもサンタ・リタ・ヒルズの畑です。
パターソンは標高高く、北向き斜面で酸が落ちにくいとのこと。粘土質の土壌で質感豊かなワインになります。
果実味高く濃密な味わい。美味しいですがやや重さを感じます。
リンコナーダとサンフォード・アンド・ベネディクトは隣り合った畑。サンフォード・アンド・ベネディクトは火打石の成分であるケイ酸塩を含むシレックス(火打石)土壌、リンコナーダは粘土とロームの土壌と、土壌の違いがあります。
リンコナーダはバランスよくエレガント。サンフォード・アンド・ベネディクトは、サンタ・リタ・ヒルズのシグニチャーとも言える塩味を強く感じます。エレガントできれいなのはリンコナーダに通じますが個人的にはサンフォード・アンド・ベネディクトがより魅力的。
ロマンスはドメーヌ・ド・ラ・コートの自社畑のワイン。4つの畑の中で一番冷涼。非常に酸が高く、その奥から果実味が出てきます。深さもありますが、飲み頃になるまでは少し時間がかかりそうなワインです。品質は非常に高いので、セラーに置く余裕があるならお薦め。
最後にイヴニングランドのシャルドネです。ピノと同様、スタンダードなセヴン・スプリングス(6800円)、ラ・スルス(15000円)、スマム(17000円)という構成。ヴィンテージはいずれも2022年。
セヴン・スプリングスは酸とうまみのバランスがいいワイン。
ラ・スルスはディジョン・クローンの高樹齢の樹のブロックだけを使っており、より複雑さを感じます。美味しい。
スマムは最も良いブロックのブドウを使っています。ラ・スルスにさらにリッチさを加えた味わい。やっぱりこれは素晴らしい。ピノと同様、2000円の価格差ならスマムを選びます。
セミナー後、近年ブルゴーニュからオレゴンやカリフォルニアに進出する生産者が増えているのはなぜか聞いてみました。サシの考えでは温暖化など気候変動の影響ではないかとのこと。ブルゴーニュは近年ヴィンテージごとの差が非常に大きく、安定性を大きく欠いているとのこと。品質や味わいも毎年大きく変わります。消費者にとっては安心して選ぶのが難しくなっています。オレゴンも温暖化の影響はありますが、ブルゴーニュのような不安定さはなく、むしろ以前は収穫時期の雨が問題になりやすかったのが、その問題が減っていて良いヴィンテージが増えています。リスクヘッジのために米国に進出しているのだろうとのことです。
オレゴンのWillamette Valley Wineries Associationが、2024年の収穫レポートを発表しています(Oregon's Willamette Valley Winemakers Celebrate a Spectacular 2024 Harvest: A Vintage to Collect)。
それによると2024年は「コレクター垂涎のヴィンテージ」になるとのこと。「2024年はワインメーカーにとって絶対的な夢でした。ここ数週間、最高気温は20度台前半で、ほとんど晴天が続いています。この時間の贈り物によって、糖分の蓄積とフェノールの成熟が冷涼な気温と連動して進み、鮮やかな酸が保たれ、素晴らしい風味を生み出すことができました」と」とマッツィンガー・デイヴィス・ワイン・カンパニーのワインメーカー、アンナ・マッツィンガーは語っています。
夏の間は38℃くらいに達する日もいくつかありましたが、9月半ばには最低気温が10℃強、最高気温が20℃程度の日が続いて、バランスよく糖とフェノールの蓄積が進みました。天候などによって、仕方なく収穫日を決めるのではなく、より最適なタイミングで収穫することができました。
温暖化はブドウの生育に大きな影響を与えていますが、オレゴンの場合は、収穫時期の天候の安定につながっていると、イヴニングランドのサシ・ムーアマンは語っていました。一方で、ブルゴーニュは天候の不安定さがより増しており、ブルゴーニュの生産者がリスク低下を求めてオレゴンやカリフォルニアに進出する大きな理由になっているようです。
それによると2024年は「コレクター垂涎のヴィンテージ」になるとのこと。「2024年はワインメーカーにとって絶対的な夢でした。ここ数週間、最高気温は20度台前半で、ほとんど晴天が続いています。この時間の贈り物によって、糖分の蓄積とフェノールの成熟が冷涼な気温と連動して進み、鮮やかな酸が保たれ、素晴らしい風味を生み出すことができました」と」とマッツィンガー・デイヴィス・ワイン・カンパニーのワインメーカー、アンナ・マッツィンガーは語っています。
夏の間は38℃くらいに達する日もいくつかありましたが、9月半ばには最低気温が10℃強、最高気温が20℃程度の日が続いて、バランスよく糖とフェノールの蓄積が進みました。天候などによって、仕方なく収穫日を決めるのではなく、より最適なタイミングで収穫することができました。
温暖化はブドウの生育に大きな影響を与えていますが、オレゴンの場合は、収穫時期の天候の安定につながっていると、イヴニングランドのサシ・ムーアマンは語っていました。一方で、ブルゴーニュは天候の不安定さがより増しており、ブルゴーニュの生産者がリスク低下を求めてオレゴンやカリフォルニアに進出する大きな理由になっているようです。
クアディー(Quady)・ワイナリーはカリフォルニアでは珍しい、デザートワイン専門のワイナリーです。オーナーのアンドリュー・クアディーは現在79歳。1973年にUCデーヴィスを卒業し、ローダイでワインメーカーを始めてセントラル・ヴァレーのマデラでワイナリーを続けています。2024年は50年目のヴィンテージとなります。UCデーヴィスの同期にはメリー・エドワーズやティム・モンダヴィといった名ワインメーカーがいます。
同期のほとんどがカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネを作っているのに対して、クアディは酒精強化によるデザートワインに特化しています。特にマデラで、カリフォルニアでは珍しいオレンジ・マスカットを見つけ、それを使ったエッセンシアというデザートワインを造ったのがヒットになりました。ブラック・マスカットを使ったエリジウムというデザートワインも人気です。
このほか変わったものでは、ヴェルモットや、パロミノを使ったフィノ・タイプのシェリーもあります。
デザートワイン、近年ではあまり人気がないのではないかと思われがちですが、クアディーの生産量は驚くほど伸びています。2010年に5万ケースだったのが25万ケースにまで成長しているとのこと。競争相手がすくないブルーオーシャンを満喫しているようです。
価格の安さも特筆できます。コストの低いセントラル・ヴァレーで生産しているからというのもあるでしょうが、日本の価格でハーフボトルが2000円そこそこ。調べたらワイナリー価格は16ドルくらいなので、日本がかなり安く売っているようです。ブラックマスカットは「想いを込めた矢がハートを射抜く」デザインで、好きな人へのプレゼントにもいいと思います。
これも1カ月前のニュースですが、破綻したVintege Wine Estatesの所有するワイナリーの買収先が決まりました(Jay Adair Buys B.R. Cohn, Kunde and Viansa Wineries in Sonoma County - Sonoma County Winegrowers)。
ナパのクロぺガス(Clos Pegase)やジラード(Girard)、ソノマのBRコーン(B.R. Cohn)、カンデ(Kunde)、ヴィアンサ(Viansa)はコパート(Copart)というオンラインの車のオークションの会社が買収することが決まりました。エグゼクティブ・チェアマンのジェイ・アデアとタミ夫妻は、サスーン・ヴァレーにアデア(Adair)ワイナリーを持っており、ワインビジネスは素人というわけではありませんが、今回は大幅にポートフォリオを拡充することになります。
このほか、ボデガ・ベイにテイスティング・ルームを持つソノマ・コースト・ヴィンヤーズなどを、チョーク・ヒルなどのオーナーであるビル・フォーリーが取得しました。
ナパのクロぺガス(Clos Pegase)やジラード(Girard)、ソノマのBRコーン(B.R. Cohn)、カンデ(Kunde)、ヴィアンサ(Viansa)はコパート(Copart)というオンラインの車のオークションの会社が買収することが決まりました。エグゼクティブ・チェアマンのジェイ・アデアとタミ夫妻は、サスーン・ヴァレーにアデア(Adair)ワイナリーを持っており、ワインビジネスは素人というわけではありませんが、今回は大幅にポートフォリオを拡充することになります。
このほか、ボデガ・ベイにテイスティング・ルームを持つソノマ・コースト・ヴィンヤーズなどを、チョーク・ヒルなどのオーナーであるビル・フォーリーが取得しました。
インポーター「リエゾン」の試飲会から美味しかったワインを紹介します。試飲アイテムが全13と少ないので、紹介する数も少なくなっております。決して美味しいワインが少なかったわけではありません。
サンタ・バーバラのワイナリー「リュサック(Rusack)のシャルドネ2020(7500円)。銘醸畑ビエン・ナシードのブドウを使っているそうです。新樽30%ですが樽の風味とのバランスがとてもいいワイン。ビエン・ナシードでこの価格は安いです。
リュサックのピノ・ノワール2021(8000円)です。冷涼なサンタ・バーバラらしい酸の高さが特徴で、エレガントなピノ・ノワール。
人気のナパ・ハイランズを産んだスミス・アンダーソン・グループのブランド「ナパワインアーツ」のカベルネソーヴィニヨン2019(7000円)。ナパのカベルネですが、重くなく、酸の高さとジューシーさが秀逸です。
もう一つリュサックからシラーです。2018年と2019年がありましたが、個人的には2018年が良かったです。
スパイス感と複雑さ、酸が特徴です。
ターリー(Turley)のジンファンデル「エステート2021」(1万1000円)。ナパのセントヘレナの自社畑のブドウで造るワイン。ジンファンデルとしてはストラクチャーがあり複雑。
サンタ・バーバラのワイナリー「リュサック(Rusack)のシャルドネ2020(7500円)。銘醸畑ビエン・ナシードのブドウを使っているそうです。新樽30%ですが樽の風味とのバランスがとてもいいワイン。ビエン・ナシードでこの価格は安いです。
リュサックのピノ・ノワール2021(8000円)です。冷涼なサンタ・バーバラらしい酸の高さが特徴で、エレガントなピノ・ノワール。
人気のナパ・ハイランズを産んだスミス・アンダーソン・グループのブランド「ナパワインアーツ」のカベルネソーヴィニヨン2019(7000円)。ナパのカベルネですが、重くなく、酸の高さとジューシーさが秀逸です。
もう一つリュサックからシラーです。2018年と2019年がありましたが、個人的には2018年が良かったです。
スパイス感と複雑さ、酸が特徴です。
ターリー(Turley)のジンファンデル「エステート2021」(1万1000円)。ナパのセントヘレナの自社畑のブドウで造るワイン。ジンファンデルとしてはストラクチャーがあり複雑。
2024年9月に開かれた中川ワインの試飲会から良かったワインを紹介します。
デコイ初の本格スパークリングワイン。ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエのブレンド。カリフォルニアでムニエが入るのは珍しいような。エレガント系というより、しっかりした味わいでうまみあるスパークリング。
コクレルのソーヴィニヨン・ブランは以前セミナーで紹介しています(ソーヴィニヨン・ブランへのこだわり、ナパのコクレル)。
これはスタンダードレベルのソーヴィニヨン・ブランですが、レベル高いです。ステンレスタンク熟成ですがしっかりと味が乗っています。
ルイスのソーヴィニヨン・ブランも昔から人気のワイン。果実味の強さを感じます。
シェアード・ノーツはカリフォルニアでもハイエンドのソーヴィニヨン・ブランを造るワイナリー。ボルドータイプとロワールタイプがありますが、こちらはロワールタイプ。酸高く、ミネラル感を感じるワイン。新樽100%ですが、樽香はわずかしか感じられません。エレガントなソーヴィニヨン・ブラン。
ティーター・トッターのシャルドネ。ピュアでリッチ、高級感あり7000円は安いです。
元ウェイフェアラーでシェアード・ノーツのワインメーカーでもあるビビアナ・ゴンザレス・レーヴの個人ブランドがカトレア。きれいで華やか。個人的に大好きなワインの一つです。
マウント・エデンのシャルドネはお久しぶり。酸豊かでミネラル感を感じる味わい。きれいで美味しい。
デコイ・リミテッドのピノ・ノワール。果実味広がりおいしい。
オー・ボン・クリマのノックス・アレキサンダー ピノ・ノワール。ノックスはピノ・ノワールとしては結構ストラクチャーがあるスタイル。今回もそのスタイルは変わりません。フラッグシップクラスで8200円というのは安いです。
中村倫久さんが作るノリアのピノ・ノワール。サンタ・クルーズ・マウンテンズのマンズ・ヴィンヤードのものは初登場です。バランスよくおいしい。
ピノ・ノワールが続きますが、その中でベストだったのがアストンの「Xラベル」。2018年なのでまだラベルはソノマ・コーストですが、ウエスト・ソノマ・コーストの北端に近い冷涼なところにある畑。酸の豊かさと、ストラクチャーが際立ちます。すばらしい。
ベッドロックのジンファンデル オールド・ヴァイン2022。これも意外と久しぶりにテイスティングしたような気がします。ジューシーでチューイー。古木ジンファンデルの魅力を過不足なく伝えます。とてもいい。
デコイの高級版リミテッドのメルロー。ナパではなくソノマのアレキサンダー・ヴァレーです。メルローらしい芳醇さと柔らかさがあり、いいメルロー。
ナパ・ハイランズから初めてのジンファンデルです。ジンファンデルらしいジャミーさと酸が好バランス。
ポストマークはダックホーン傘下のブランド。以前はナパヴァレーのカベルネを作っていましたが、今はパソ・ロブレスのカベルネ。しなやかな味わいでバランスいいです。3000円台としては極めて秀逸。とてもいいです。
デコイ・リミテッドのカベルネ・ソーヴィニヨン。今回はこれもアレキサンダー・ヴァレーです。ストラクチャーがしっかりあり、前述のメルローとは対照的。こちらも良いです。
初めて試飲したと思います。ティストリア(TISTRYA)というワイナリーのナパ・カベ。中川ワインではこう紹介してあります。
ナパのカベルネはリッチでパワフルじゃなきゃ、という人にはこちらのキャッターウォウルがお薦めです。ワインメーカーはトーマス・リヴァース・ブラウン。
近年世代交代で以前のややオールドスタイルのイメージから刷新しつつあるペドロンチェリ。ロゼは初めて飲むかもしれません。ジンファンデルのロゼで、フレッシュ感と赤果実の風味が新鮮です。
ペドロンチェリのラベルは変わっても、ジンファンデルは健在です。ジューシーでリッチ。
ルチア(Lucia)からはシャルドネとピノ・ノワールを紹介します。シャルドネはエステート・キュヴェ2022(9500円)。リッチでこくありミネラル感も感じるシャルドネ。
ピノ・ノワールはエステート・キュヴェ2022(10000円)とソベラネス2022(12400円)、ゲイリーズ2021(14000円)。エステートキュヴェは果実味と酸のバランスが秀逸。ソベラネスもより果実感強くおいしい。ゲイリーズはさすがのパワフルさでした。
新規取り扱いのナパのシニョレッロからです。以前はilovecalwineが扱っていたものです。トリムのシャルドネはリッチだけどバランスもいい。3000円は安いです。
同じくシニョレッロの「S」。リッチでストラクチャーもありおいしい。
デコイ初の本格スパークリングワイン。ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエのブレンド。カリフォルニアでムニエが入るのは珍しいような。エレガント系というより、しっかりした味わいでうまみあるスパークリング。
コクレルのソーヴィニヨン・ブランは以前セミナーで紹介しています(ソーヴィニヨン・ブランへのこだわり、ナパのコクレル)。
これはスタンダードレベルのソーヴィニヨン・ブランですが、レベル高いです。ステンレスタンク熟成ですがしっかりと味が乗っています。
ルイスのソーヴィニヨン・ブランも昔から人気のワイン。果実味の強さを感じます。
シェアード・ノーツはカリフォルニアでもハイエンドのソーヴィニヨン・ブランを造るワイナリー。ボルドータイプとロワールタイプがありますが、こちらはロワールタイプ。酸高く、ミネラル感を感じるワイン。新樽100%ですが、樽香はわずかしか感じられません。エレガントなソーヴィニヨン・ブラン。
ティーター・トッターのシャルドネ。ピュアでリッチ、高級感あり7000円は安いです。
元ウェイフェアラーでシェアード・ノーツのワインメーカーでもあるビビアナ・ゴンザレス・レーヴの個人ブランドがカトレア。きれいで華やか。個人的に大好きなワインの一つです。
マウント・エデンのシャルドネはお久しぶり。酸豊かでミネラル感を感じる味わい。きれいで美味しい。
デコイ・リミテッドのピノ・ノワール。果実味広がりおいしい。
オー・ボン・クリマのノックス・アレキサンダー ピノ・ノワール。ノックスはピノ・ノワールとしては結構ストラクチャーがあるスタイル。今回もそのスタイルは変わりません。フラッグシップクラスで8200円というのは安いです。
中村倫久さんが作るノリアのピノ・ノワール。サンタ・クルーズ・マウンテンズのマンズ・ヴィンヤードのものは初登場です。バランスよくおいしい。
ピノ・ノワールが続きますが、その中でベストだったのがアストンの「Xラベル」。2018年なのでまだラベルはソノマ・コーストですが、ウエスト・ソノマ・コーストの北端に近い冷涼なところにある畑。酸の豊かさと、ストラクチャーが際立ちます。すばらしい。
ベッドロックのジンファンデル オールド・ヴァイン2022。これも意外と久しぶりにテイスティングしたような気がします。ジューシーでチューイー。古木ジンファンデルの魅力を過不足なく伝えます。とてもいい。
デコイの高級版リミテッドのメルロー。ナパではなくソノマのアレキサンダー・ヴァレーです。メルローらしい芳醇さと柔らかさがあり、いいメルロー。
ナパ・ハイランズから初めてのジンファンデルです。ジンファンデルらしいジャミーさと酸が好バランス。
ポストマークはダックホーン傘下のブランド。以前はナパヴァレーのカベルネを作っていましたが、今はパソ・ロブレスのカベルネ。しなやかな味わいでバランスいいです。3000円台としては極めて秀逸。とてもいいです。
デコイ・リミテッドのカベルネ・ソーヴィニヨン。今回はこれもアレキサンダー・ヴァレーです。ストラクチャーがしっかりあり、前述のメルローとは対照的。こちらも良いです。
初めて試飲したと思います。ティストリア(TISTRYA)というワイナリーのナパ・カベ。中川ワインではこう紹介してあります。
このワインのブランド名「ティストリア」は古代ペルシャ王国・最古の宗教と言われるゾロアスター教の神で、「雨、収穫、豊穣」を司り、その神は馬の姿をしておりラベルにその姿が描かれている。このブランドのオーナー・シャヒン・シャハビ氏のルーツはイランにあり、彼はそのルーツと古代からワイン造りが行われてきたイラン(ペルシャ)にオマージュを捧げこのブランド名を命名。ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンの個性を銘醸畑から表現する。非常に力強くバランスもいいワイン。これ6000円は安い。
ナパのカベルネはリッチでパワフルじゃなきゃ、という人にはこちらのキャッターウォウルがお薦めです。ワインメーカーはトーマス・リヴァース・ブラウン。
近年世代交代で以前のややオールドスタイルのイメージから刷新しつつあるペドロンチェリ。ロゼは初めて飲むかもしれません。ジンファンデルのロゼで、フレッシュ感と赤果実の風味が新鮮です。
ペドロンチェリのラベルは変わっても、ジンファンデルは健在です。ジューシーでリッチ。
ルチア(Lucia)からはシャルドネとピノ・ノワールを紹介します。シャルドネはエステート・キュヴェ2022(9500円)。リッチでこくありミネラル感も感じるシャルドネ。
ピノ・ノワールはエステート・キュヴェ2022(10000円)とソベラネス2022(12400円)、ゲイリーズ2021(14000円)。エステートキュヴェは果実味と酸のバランスが秀逸。ソベラネスもより果実感強くおいしい。ゲイリーズはさすがのパワフルさでした。
新規取り扱いのナパのシニョレッロからです。以前はilovecalwineが扱っていたものです。トリムのシャルドネはリッチだけどバランスもいい。3000円は安いです。
同じくシニョレッロの「S」。リッチでストラクチャーもありおいしい。
TTBはワシントン州の新しいAVA「Beverly(ベヴァリー)」(正式名称は「Beverly, Washington」)を承認しました。ワシントン州では21番目のAVAとなります(州内が17、オレゴンと共有が3、アイダホと共有が1)。ちなみにオレゴンは24(州内20、ワシントンと共有が3、アイダホと共有が1)、カリフォルニアは154あります。オレゴン、ワシントンはなんとか全部を覚えられるレベルですね。カリフォルニアは全然無理です。
ベヴァリーはワシントン州内ではかなり小さなAVAとなります。地図で示したようにロイヤルスロープAVAの西南のはずれになります。ロイヤルスロープはチャールズ・スミスのKヴィントナーズのフラッグシップ・シラー「ロイヤル・シティ」の畑がある地域です。AVA名にスロープと入っている通り、AVA全体が南向けの斜面になっています。
ベヴァリーも同様に南向き斜面で、ロイヤルスロープと比べても温暖、というかかなり暑いエリアとなります。積算温度でいうと3500度ということで、ウィンクラーのインデックスではリージョン3とリージョン4の間くらいとなります。ワシントン州内では最も暑いAVAの一つです。
もう一つの特徴が風の強さ。ベヴァリーはコロンビア川のすぐそばにあり、このすぐ南に「センティネル・ギャップ」という渓谷があります。このせまい谷を通り抜ける風がAVAに吹きつけるのです。
3つめの特徴は水はけのよさ。
気温の高さから、この地域ではほぼ黒ブドウだけが栽培されています。ただ、ここに拠点を置くワイナリーなどはいまのところないようです。総面積2415エーカーのうち400エーカーほどがブドウ畑です。降水量は年間130㎜ほどとワシントンでもかなり少なく、乾燥した地域です。
ベヴァリーはワシントン州内ではかなり小さなAVAとなります。地図で示したようにロイヤルスロープAVAの西南のはずれになります。ロイヤルスロープはチャールズ・スミスのKヴィントナーズのフラッグシップ・シラー「ロイヤル・シティ」の畑がある地域です。AVA名にスロープと入っている通り、AVA全体が南向けの斜面になっています。
ベヴァリーも同様に南向き斜面で、ロイヤルスロープと比べても温暖、というかかなり暑いエリアとなります。積算温度でいうと3500度ということで、ウィンクラーのインデックスではリージョン3とリージョン4の間くらいとなります。ワシントン州内では最も暑いAVAの一つです。
もう一つの特徴が風の強さ。ベヴァリーはコロンビア川のすぐそばにあり、このすぐ南に「センティネル・ギャップ」という渓谷があります。このせまい谷を通り抜ける風がAVAに吹きつけるのです。
3つめの特徴は水はけのよさ。
気温の高さから、この地域ではほぼ黒ブドウだけが栽培されています。ただ、ここに拠点を置くワイナリーなどはいまのところないようです。総面積2415エーカーのうち400エーカーほどがブドウ畑です。降水量は年間130㎜ほどとワシントンでもかなり少なく、乾燥した地域です。